未来が分かるチートな日記を手に入れた〜だけど悲惨な未来が降り注ぐので、タイムリープで全力回避しようと思います!〜

カツラノエース

文字の大きさ
上 下
69 / 80

第69話【一時の平穏から】

しおりを挟む

 サンボイルにて起こるはずだった「冒険者同士の大規模な殺し合い」を阻止してから数日後。
 あの後、デスティニーレコードから5月4日に冒険者同士の殺し合いが起こるという文章が消えた事を確認した俺は次の日に協力してくれたウェイリスさん、レイバー、イザベル。そしてケティ、セリエラと共にフレイラへ帰った。

 ちなみに、ケティたち以上に色々と知っているマーニは「もしなにかが起きた時」の為にフレイラについてきてくれている。

 ――だが、あれからもイザベルの様子がおかしくなるという事も無く、俺からしたら久しぶりの日常へと戻っていた。
 これで惨劇が終わってくれれば……心の中で切にそう願っている。

 そして、今日はそんな日常の1ページから始まる。


 いつも通り依頼を終えた俺はケティ、セリエラと冒険者ギルドで別れると家に帰った。
 そしてひとりで自身の剣を研いでいるとそこで扉を誰かがノックする音が聞こえる。

 なんだ?来客が来るなんて予定が無いが。

 俺は椅子から立ち上がると玄関の方へ歩いて行き、扉を開ける。

「誰だ――って、」
「今大丈夫か?」「……」

 すると、そこに立っていたのはレイバーとイザベルの2人だった。
 2人ともしっかりと全身に鎧を纏っており、おそらく依頼を終えた帰り道だろう。

「レイバーにイザベルじゃねぇか。どうしたんだ?」
「いやそれがな、俺たちもさっき知ったんだが――ウェイリスがひとりの冒険者に襲われたらしい。」
「……ッ!?」

 その瞬間、一気に心臓を締め付けられた感覚に陥った。
 ウェイリスさんが……襲われた……?

「まぁ返り討ちにして捕らえたらしいんだが。」
「よ、良かった!?びっくりしたぞてっきりウェイリスさんが大怪我でも負ったのかと……」

「そんな訳あるか、あのウェイリスだぞ」両手を腰に当ててそう言うレイバー。

「それに、なんでもその襲ってきた冒険者が初めて見るやつみたいでな、他の街の冒険者の可能性があるみたいだ。」
「違う街の冒険者……?余計になんで襲うんだ……?」
「分からん、分からないからこそ今お前のところに来たんだよ。これからケティとセリエラにも言って、みんなでウェイリスの屋敷へ行かないか?」

 なるほど、要するにそのいきなりウェイリスさんを襲った冒険者がどんなやつかを見に行く訳か。そんなの――

「分かった、すぐに準備する。――あ、後一応マーニも連れて行って良いか?」
「ん?あぁ、サンボイルで泊まらせてもらったやつだよな。良いぞ。」

 そうしてその後、ケティ、セリエラ、マーニの3人にも同じ説明をして合計6人でウェイリスさんの屋敷へ向かった。

 ♦♦♦♦♦

「おいウェイリス!!来たぞ!!」
『今開けるわ、勝手に入ってきてくれるかしら。』

 ウェイリスさんの屋敷へ着いた俺たち。
 早速閉まった門の前でレイバーがそう叫ぶと、どこからかウェイリスさんの声が聞こえる。
 それからしばらく経つと門が開いた。

 これ、やっぱり何度見てもすごい技術だよな。

「じゃあ入るぞ」
「あぁ」

 俺たちはウェイリスさんの屋敷へと近付いて行く。


 そうして屋敷の扉の前まで来たところで、ウェイリスさんの姿が見えた。

「待ってたわよ。全く、いきなり襲われたからびっくりしたわ。」
「大丈夫だったか?」

 ため息をつきながらそう言うウェイリスさんに俺は問う。
 というか、俺はなんで襲われたばかりなのにこんなにウェイリスさんがケロッとしてるのかが謎で仕方ないんだが……

「えぇ、怪我はしてないから大丈夫よ。とりあえず、そいつを縛ってひとつの部屋に入れてるわ。とにかく、入りましょ。」
「相変わらず怖いやつだな、なんかこうあるだろ?怖かった~とかよ。」
「怖かったですって?このウェイリスがそんな事言う訳ないでしょう?レイバーもしっかりしなさい。ほら、ちゃんと着いてきてよね。」

「なぁハヤト、やっぱりウェイリスはおかしいよな?」
「あぁ、今回だけはレイバーの意見に同意だ。」

 そんなこんなで、改めてウェイリスさんの精神の図太さを確認した俺たちは屋敷の中へ案内してもらった。


「ウェイリスを襲った冒険者はこの部屋の中よ。」

 それからしばらく歩くと、そこでウェイリスさんはある部屋の前で歩みを止めた。

「……」

 ゴクリ、俺は喉につっかえていた唾を飲み込む。
 この先に……ウェイリスさんを襲った冒険者が……!!

 そうしてウェイリスさんは扉を開ける。

 するとそこには――両手両足を縄できつく縛り付けられ、地面に転がるひとりの男の姿があった。

「……ッ!?こ、こいつがウェイリスさんを……」
「えぇそうよ。ウェイリスが屋敷の中に入ろうと門の前で立っていたところを、いきなり剣で斬りかかって来たの。」

「まぁ、殺気がバレバレだったからすぐに分かったけれど」そう付け加えるウェイリスさん。

 話している間にも男は黙ってこちらを睨んでくる。

 そこでレイバーはそんな男に近づくと、

「お前か、ウェイリスを襲ったのは。率直に聞かせてもらう。なぜそんな事をした?」

 レイバーには珍しく、落ち着いた口調だ。本当に疑問なのだろうな。
 そして、その気持ちは俺にも共感出来た。
 仮に他の街から来たウェイリスさんの存在を知らない冒険者だとしても、わざわざでかい屋敷の前に立っている様な人間を襲うか?

 すると、それを聞いた男はこう返した。

「ファブリス様の命令だからだ!!それ以外にはなにもない!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~

北きつね
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。  ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。  一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。  ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。  おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。  女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...