64 / 80
第64話【お願いごとひとつ】
しおりを挟む「痛ッ!?」
レイバーとの模擬戦にて、積極的な攻めを見せるレイバーに対して、防御を続ける俺。しかしそれはただ攻撃が出来なかった訳では無く、チャンスを伺っていた。
そして、そのチャンスはやってくる。
俺はレイバーが大振りな攻撃をしようとした瞬間、身体強化を使い、懐に潜り込むとがら空きの腹部に横一線をくらわせた。
「……どうだ。」
「……」
俺は後ろを振り向くとレイバーの方を見る。
するとレイバーは一瞬俺をすごく悔しそうに睨んだ後――「はぁ、参ったぜ。ガハハ」呆れた表情をしながら笑った。
その表情はこんな方法で勝った俺に向けてのものなのか、負けてしまった自分に向けたものなのかを知るよしは無い。
「強いじゃねぇか。ハヤト。」
「まぁな。それでもまだまだだが。」
「おいおい、それを負けた俺の真横で言うのは喧嘩を売ってるって意味か?」
「はっ!?ち、違う!!すまんッ!!」
そこでバッと頭を下げる俺。
これは悪い事をしたな。
――でも、実際自分はまだまだなんだ。自分ひとりじゃ何も出来ない。
あの時だって、あの時だって、俺は誰1人助けることが出来なかった。
救いを求められても、それに振り向くことが出来なかった。
だから、まだまだ強くならなければいけないんだ。
すると、そこでそう頭を下げる俺に対してレイバーはガハハと雑に笑うと、俺の頭を大きな手で撫でながらこう言う。
「大丈夫だ。分かってる。自分の中ではまだ自分の実力に満足してないんだろ?そこに関しては人にどうこう言われるじゃなくて自分自身の問題だからな。だからよ、強くなれば良いじゃねぇか。」
「……ッ!!あぁ、分かってる。」
言われなくとも、俺はみんなを守れる人間になってやるさ――いや、ならなくちゃいけない。
過去へ記憶を保持しながら飛べる能力を持つ者として。
この悲惨な世界を変えられるのは俺だけだ。
「――じゃあ、約束通り今日依頼で稼げていたであろう金を渡すぜ。後、言うことをひとつ聞く、だったよな?仕方ねぇ、なんでも言ってくれ。」
覚悟を決めた表情で腕を組むと、ドンと来いという感じのレイバー。
俺はケティとセリエラの方を一瞬見るが「ハヤトに任せるよ」と言った感じだ。
それなら、
「じゃあ、その事については明日の朝、ギルド前に来た時に話す。」
「……へ?」
「ん?なんだ?」
「いや、てっきりもっと金をよこせとかそんな感じだと思ってたから」
なんだよそれ。レイバーにとって今日会った俺はそんな印象がついてるのか?
……それに、金だけで解決出来る事なんてな、意外に少なかったりもするんだぜ?
「ダメか?」
「いや、全然ダメじゃないけどよ。明日の朝ギルドの前に居れば良いんだな?」
「あぁ」
そうして俺たちは別れる。
その後、同じ様に明日の朝、ギルド前に来てくれとウェイリスさんにも言うと、その日はそれで終わった。
♦♦♦♦♦
翌日、俺はギルド前へ行くとそこには約束通りウェイリスさん、レイバー、イザベルの姿があった。
「――あ、おいハヤトッ!!なんでウェイリスが居るんだよ!?」
俺の姿を見つけたレイバーはすぐにそう言ってくる。
あぁ、確かレイバーはウェイリスさんを一方的にライバル視してるんだっけか。
「おはよう。あれ?ダメだったか?今回の話にはウェイリスさんも居た方がありがたいから呼んだんだが。」
――それにしても昨日はあんなにすんなりウェイリスさんに「話があるから明日の朝ギルド前に来てくれ」と言って了承をもらえるとは思って無かったぜ。
もしかしたらナビレスでのゴブリン・ロードの件である程度信用してもらえる様になったのかもな。
「居た方が助かる……!?まさかハヤト、俺とウェイリスに禁断の決闘をさせて、どちらがこの町最強かを決めたいって事じゃないだろうな……!?」
「最強?何を言ってるの貴方。貴方がウェイリスに勝てる訳ないでしょう。って言うか貴方誰?」
「おい!?ウェイリス!?お前がギルドにいる時は俺たちもほとんど居るだろ!?ならイザベル!?」
「……(コクリ)」
「ほら!?」
なんだ……?レイバーがネタキャラに見えてきたぞ……
「冗談よレイバー。安心して、忘れてないわ。――で、ハヤト。今日はどういう要件で私たちを呼んだのかしら?」
「詳しい事は明日。そう言っていたわよね?」腕を組み、そう聞いてくるウェイリスさん。
「あぁ。分かってる。ちゃんと説明するさ。――だが、それは家に行ってからにしよう。」
「ハヤトの家か?」
「あぁ。ケティとセリエラにはもう集まってもらっている。」
昨日、「明日は俺の家に来てくれ」と言っておいたのだ。
「なんだか結構話が大きくなってきたな。なんの事か分からんが。」
「まぁ、とにかく着いてきてくれ。」
「おう」
「……(コクリ)」
「分かったわ」
こうして俺はレイバー、イザベル、ウェイリスさんを連れて自宅へと向かった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~
北きつね
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。
ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。
一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。
ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。
おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。
女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる