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第64話【お願いごとひとつ】
しおりを挟む「痛ッ!?」
レイバーとの模擬戦にて、積極的な攻めを見せるレイバーに対して、防御を続ける俺。しかしそれはただ攻撃が出来なかった訳では無く、チャンスを伺っていた。
そして、そのチャンスはやってくる。
俺はレイバーが大振りな攻撃をしようとした瞬間、身体強化を使い、懐に潜り込むとがら空きの腹部に横一線をくらわせた。
「……どうだ。」
「……」
俺は後ろを振り向くとレイバーの方を見る。
するとレイバーは一瞬俺をすごく悔しそうに睨んだ後――「はぁ、参ったぜ。ガハハ」呆れた表情をしながら笑った。
その表情はこんな方法で勝った俺に向けてのものなのか、負けてしまった自分に向けたものなのかを知るよしは無い。
「強いじゃねぇか。ハヤト。」
「まぁな。それでもまだまだだが。」
「おいおい、それを負けた俺の真横で言うのは喧嘩を売ってるって意味か?」
「はっ!?ち、違う!!すまんッ!!」
そこでバッと頭を下げる俺。
これは悪い事をしたな。
――でも、実際自分はまだまだなんだ。自分ひとりじゃ何も出来ない。
あの時だって、あの時だって、俺は誰1人助けることが出来なかった。
救いを求められても、それに振り向くことが出来なかった。
だから、まだまだ強くならなければいけないんだ。
すると、そこでそう頭を下げる俺に対してレイバーはガハハと雑に笑うと、俺の頭を大きな手で撫でながらこう言う。
「大丈夫だ。分かってる。自分の中ではまだ自分の実力に満足してないんだろ?そこに関しては人にどうこう言われるじゃなくて自分自身の問題だからな。だからよ、強くなれば良いじゃねぇか。」
「……ッ!!あぁ、分かってる。」
言われなくとも、俺はみんなを守れる人間になってやるさ――いや、ならなくちゃいけない。
過去へ記憶を保持しながら飛べる能力を持つ者として。
この悲惨な世界を変えられるのは俺だけだ。
「――じゃあ、約束通り今日依頼で稼げていたであろう金を渡すぜ。後、言うことをひとつ聞く、だったよな?仕方ねぇ、なんでも言ってくれ。」
覚悟を決めた表情で腕を組むと、ドンと来いという感じのレイバー。
俺はケティとセリエラの方を一瞬見るが「ハヤトに任せるよ」と言った感じだ。
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「じゃあ、その事については明日の朝、ギルド前に来た時に話す。」
「……へ?」
「ん?なんだ?」
「いや、てっきりもっと金をよこせとかそんな感じだと思ってたから」
なんだよそれ。レイバーにとって今日会った俺はそんな印象がついてるのか?
……それに、金だけで解決出来る事なんてな、意外に少なかったりもするんだぜ?
「ダメか?」
「いや、全然ダメじゃないけどよ。明日の朝ギルドの前に居れば良いんだな?」
「あぁ」
そうして俺たちは別れる。
その後、同じ様に明日の朝、ギルド前に来てくれとウェイリスさんにも言うと、その日はそれで終わった。
♦♦♦♦♦
翌日、俺はギルド前へ行くとそこには約束通りウェイリスさん、レイバー、イザベルの姿があった。
「――あ、おいハヤトッ!!なんでウェイリスが居るんだよ!?」
俺の姿を見つけたレイバーはすぐにそう言ってくる。
あぁ、確かレイバーはウェイリスさんを一方的にライバル視してるんだっけか。
「おはよう。あれ?ダメだったか?今回の話にはウェイリスさんも居た方がありがたいから呼んだんだが。」
――それにしても昨日はあんなにすんなりウェイリスさんに「話があるから明日の朝ギルド前に来てくれ」と言って了承をもらえるとは思って無かったぜ。
もしかしたらナビレスでのゴブリン・ロードの件である程度信用してもらえる様になったのかもな。
「居た方が助かる……!?まさかハヤト、俺とウェイリスに禁断の決闘をさせて、どちらがこの町最強かを決めたいって事じゃないだろうな……!?」
「最強?何を言ってるの貴方。貴方がウェイリスに勝てる訳ないでしょう。って言うか貴方誰?」
「おい!?ウェイリス!?お前がギルドにいる時は俺たちもほとんど居るだろ!?ならイザベル!?」
「……(コクリ)」
「ほら!?」
なんだ……?レイバーがネタキャラに見えてきたぞ……
「冗談よレイバー。安心して、忘れてないわ。――で、ハヤト。今日はどういう要件で私たちを呼んだのかしら?」
「詳しい事は明日。そう言っていたわよね?」腕を組み、そう聞いてくるウェイリスさん。
「あぁ。分かってる。ちゃんと説明するさ。――だが、それは家に行ってからにしよう。」
「ハヤトの家か?」
「あぁ。ケティとセリエラにはもう集まってもらっている。」
昨日、「明日は俺の家に来てくれ」と言っておいたのだ。
「なんだか結構話が大きくなってきたな。なんの事か分からんが。」
「まぁ、とにかく着いてきてくれ。」
「おう」
「……(コクリ)」
「分かったわ」
こうして俺はレイバー、イザベル、ウェイリスさんを連れて自宅へと向かった。
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