55 / 80
第55話【簡易冒険者登録】
しおりを挟む4月5日。水の都ナビレスへ到着した俺たちとウェイリスさんは早速ゴブリンの住む洞窟への道のりの詳細を教えてもらう為、冒険者ギルドへ向かった。(勝手にゴブリンを狩る訳にもいかないしな)
「着いたわ。ここがナビレスの冒険者ギルドよ。」
「へぇっ!フレイラとは違って外壁が水色なんだ!他の建物も全体的に青いからマッチしてて綺麗だねっ!」
「その場所に合わせて見た目も変わる。という事ですね。」
「だな、すごく綺麗だ。」
目の前に建つ冒険者ギルドを見上げながら俺はケティたちの言葉に続けてそう呟く。
前ナビレスに来た時は焼け焦げていたせいで壁が黒く変色してしまっていたが、こんなに綺麗だったんだな。
「じゃあ、早速中に入って簡易冒険者登録を済ませましょう。」
「簡易冒険者――なんだそれ?」
「貴方たちまだ冒険者を始めたばかりだからそりゃ知らないわよね。」
うーん、俺に関しては始めたばかりでは無いんだが……そう言えばフレイラ以外でちゃんとした形で依頼を受けた事は無かったからそういう知識は無かったぜ。
「簡易冒険者登録って言うのは、他の街で冒険者をしている人間がその街でも冒険者として依頼を受けられる様にする為に踏む手順って感じね。これは通常の冒険者登録とは違って名前、等級、パーティーメンバー、どの街の冒険者か。の記入のみで登録する事が出来るわ。」
「ふーん、まぁとにかく。それをする必要があるって事だな。」
「えぇ。じゃあそれをしに入りましょう。」
まぁ要するに、俺たちが前の世界で初めてサンボイルへ行った時しようとしてた遠征者用の冒険者登録の正式名称って事だな。
そうして俺たちは冒険者ギルドへと入った。
それから言っていた通り簡易冒険者登録を俺たちは終わらせる。
「――では、これにて登録は完了ですので依頼を受けることが出来ますよ。」
フレイラの受け付けよりも明るい雰囲気のお姉さんが太陽の様な笑顔でそう言う。
「じゃあ」そこで俺は早速ゴブリンの生息している洞窟の場所を教えて貰うことにした。
「ナビレスの近くにあるゴブリンが生息している洞窟の場所を教えて欲しいんだが。」
「ゴブリンですか?この街の近くになら1箇所、ありますよ。」
おぉ……!!1箇所だけなのか。それなら手間が省けるぜ。
仮にこれで何箇所もあったとしたなら、そのうちどの場所のゴブリンがゴブリン・ロードを起こすか分からないから全部討伐する必要があったからな。
だが、1箇所ならそこを潰しておけば心配は無いだろう。良かった良かった。
「なら、その場所を教えてくれ。」
「はい。――ええと、皆様はちなみにどの街から来ましたか?」
「?フレイラだが。」
「フレイラでしたら、方向的にナビレスの正面入り口から入ってきた訳ですね。ですから、一度来た道を戻って下さい。すると、右側に木々や草が切り開かれた砂利道があるので、そこを真っ直ぐ行って貰えばその洞窟に着きますよ。」
お、分かりやすい説明。
だからどの街から来たのかを聞いた訳か。
「なるほどな。ありがとう。――――と、あとひとつ良いか?」
「なんでしょう?」
そこで最後に俺はもうひとつ、追加の質問をする。
「ちなみになんだが、その洞窟に住むゴブリンたちがゴブリン・ロードを起こしそうな雰囲気とか、あったりするか?」
すると、それを聞いた受け付けのお姉さんは「ゴブリン・ロード、ですか」難しそうな顔をすると少々黙り込み、そして、
「すいません、最近その様な報告はありませんね。」
「……ッ、そうか。」
まぁでも、予想通りではあった。
だって、本当に誰も気付いて無かったからこそ、あれだけの大惨事になったんだろう。
「ほら、だから言ったじゃない。こんな時期にゴブリン・ロードなんてほんと有り得ない事なのよ?全く、ウェイリスちゃんと王国に行ってたら結構報酬もらってたのにな~」
そこで黙って俺と受け付けのお姉さんの会話を聞いていたウェイリスさんが口を挟んできた。
頬をプクっと膨らませると、俺の事をじっとりと見つめてくる。
なんだよその表情は……まるで「王国への遠征分の報酬を払え」と言われてるみたいじゃないか。
「すまんすまん。もしこれで本当にゴブリン・ロードの心配が無かった場合はちゃんと払うから。」
「えっ!?ちょっとハヤト!!私たちそんなお金どこにも――」
「ケティ、大丈夫だ。それにセリエラも。そうなった時はちゃんと2人に迷惑かけないようにするからよ。」
「――でも、その代わりウェイリスさん。俺の言う通りゴブリン・ロードが行われそうな雰囲気だったなら、その報酬の話は無しにして欲しい。」
「えぇ、分かってるわ。まぁ、ハヤトの話に乗って遠征をキャンセルしたのもウェイリス自身だもの。今のはあくまでこれが無駄足だった時の場合よ。」
「それなら良かった。」
「――じゃあ、早速そのゴブリンたちの討伐を許可してもらいたいんだが。」
そうして俺は再び視線を受け付けのお姉さんへと向けるとそう言う。
するとお姉さんは申し訳なさそうに、
「はい、討伐の許可は問題ないですが――現在そこのゴブリン討伐関連の依頼が出ていないので、報酬は出せない可能性が――」
「あぁ、別にそれは無くて良い。だろ?」
「もうハヤトの好きにしてよ」「私はハヤトさんに従いますよ。」「まぁ、ゴブリンの討伐報酬なんてたかが知れてるしね。」
呆れながらも笑うケティ、いつも通りに微笑をするセリエラ、ピンクのツインテールをたなびかせながら笑うウェイリスさん。
みんな――本当にこんな俺のわがままじみた事に付き合ってくれてありがとうな……!!
「では、ゴブリン討伐を許可致しますね。」
こうして俺たちはゴブリン討伐へ向かう事となった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる