54 / 80
第54話【いざ、水の都ナビレスへ】
しおりを挟む「じゃあ改めて。近々、水の都ナビレスをゴブリン・ロードが襲う。」
よく食事をしていた部屋へ招かれ、椅子に座ったところで俺は再びウェイリスさんにそのセリフを吐いた。
「それが100パーセント起こるっていう根拠はあるの?」
「……いや、無い。」
「でしょうね。だって貴方の話はまだ起きていない未来の話なんですから。」
「……ッ!、それでも、お願いだ信じてくれ。俺たちと一緒にナビレスの近くに位置する洞窟内のゴブリンを討伐してくれれば――それだけで良いんだ……!!」
すると、それを聞いたウェイリスさんは困った表情で腕を組み黙り込む。
「……どっちにしろ、ウェイリスはもうすぐで近くの王国へ遠征に行くの。それが終わってからになるわよ?」
「それは大体何日くらいなんだ?」
「今日が4月2日だから、う~んそうね――早くても15日から20日。それ以降になるわね。」
15日から20日だと……?それなら前の世界でウェイリスさんと出会った時とほとんど変わらないじゃないか……!!
それはまずい……!!
「いや、それじゃ遅すぎる……!お願いだ、何とかすぐに行けないか……?」
「いや、そもそもウェイリスまだ行くとも言ってないんだけど。」
俺はテーブルに頭を付けると、何度も何度もお願いをする。
無理な事を言っているのは重々承知。恐らくケティとセリエラの目に俺は今わがままでめんどくさい人間に写っているだろう。
だが、対してウェイリスさんはそんな俺に何も言わない。
(やっぱりダメか……?最悪、無理だったら俺たちだけでゴブリン討伐を――いや、でもそれだとその間にまたウェイリスさんがおかしくなる可能性もあるから出来れば一緒に行動したかったんだが――)
そんな事を考え出していた――その時、
「はぁ……まぁでも、話によると貴方はツバメさんの息子なんでしょ?――ツバメさんが私に嘘をついたことは一度も無かったわ。それに、あの人はいつも私が少しでも成長出来るようにとアドバイスをくれたりもしていた。」
「なら、息子の貴方も無意味な嘘はつかない。ウェイリスはそう思ったわ。」
「……ぇ?って事は――」
「遠征取り消しの手順、結構めんどくさいんだから、せめて4月5日までは待ってよね。」
「……ッ!!!ありがとう……!本当にありがとう!!」
もう無理だと思ったが、本当に良かった……!!
ウェイリスさんの優しさと、父に感謝だ……!!
「全く、ほら、ウェイリスはこれから忙しいんだから、早く帰りなさいよね。」
「あ、あぁ……!」
「――あと、」
「あと?」
「一緒に着いてきてくれてたその2人。なにも分かってないでしょうからちゃんと全部説明してあげなさいよね。」
「あ」
そこで俺は横を見る。するとそこにはなにがなんだか分からなすぎて石像の様に無表情で固まっている2人の姿があった。
「す、すまん2人とも……後から全部説明する!!」
そんな2人に俺は手を合わせて言い訳じみた声色でそう言う。
「もぅ、ちゃんと説明してよねっ!」
「説明、お願いしますね。」
「あ、あぁ」
「全く、リーダーならもう少しちゃんとしなさい。」
「すまん、ウェイリスさん。――――って、今、リーダーって言ったか?」
あれ……?俺この世界のウェイリスさんに俺がリーダーだって説明したか?それに、今の段階じゃまだその概念自体も決まってない気がするんだが。
「あれ?おかしいわね……今ウェイリスはなんで不意にハヤトがリーダーだって思ったのかしら……?なんだが変だわ。最初会った時も、『前も会った事がある気がする』なんて思ったりもしたのよ?」
「……ッ!?」
笑いながらそう言うウェイリスさんだが、俺はその言葉を聞いて固まってしまった。
まさか……覚えてるのか……?デジャブというやつだろうか。
……まぁ、今はとりあえずは良いか。
「じゃ、じゃあな。また4月5日、ここに来るぞ。」
「えぇ、じゃあね。」
こうして俺たちは屋敷を後にした。
(その後、長時間をかけて2人には何とか話の流れを納得してもらった。)
♦♦♦♦♦
そしてそれからなにがあるという訳でも無く、4月5日。
俺たちは予定通りウェイリスさんと共に水の都ナビレスへと向かった。(4月5日までになにか別の事が起こっても困るから依頼は受けてない。)
「ほら、着いたわよ。」
「おぉ……!!」「すごい綺麗な街だねっ!!」「綺麗です。」
それで今は、数時間馬車を走らせてナビレスへ到着したところ。――――なんだが、俺は青を基調とした建物が綺麗に並んだこのナビレスの街並みを見て、感動にも似た感情を抱いていた。
初めて来た時は、色んなところから黒煙が立って、建物は全て焼け焦げいたるところで人が倒れている様な地獄絵図だったのに――本来は、こんなに綺麗な街だったんだな……!!
「……ッ!!、」
「あれ?なにぼけ~っと立ってるのよ。ほら、ケティとセリエラも来てるんだから貴方も早くしなさい。」
「……ッ!、す、すまん!すぐ行く!」
そうして俺は数メートル先まで移動していた3人の元へ駆け足で寄って行く。
よし……!!今の時点ではまだ救える……!!絶対、救ってやる……!!
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる