上 下
43 / 80

第43話【レイバーとイザベルの過去】

しおりを挟む

 突如として姿を消したイザベルの捜索を開始して数十分。
 長らく続いていた沈黙をそこでレイバーが打ち破った。

「……俺とレイバーはな、小さな頃からずっと一緒だったんだ。」

 フレイラを歩き、イザベルを探しながら俺とレイバーで横に並んであるいていると、そこでレイバーがそう言ってくる。

 なんだ?2人の昔話の始まりか?正直、こうずっと沈黙だと気まずくなってくるし、それにその話には少し興味があった。

 なぜなら、初めて冒険者ギルド内にて2人と話した時、最初に抱いた印象が「かけ離れたタイプの2人」だったからだ。

 だってよ?考えてみてくれ。普通ゴリゴリマッチョのスキンヘッド男と物静かで無口の女の子が一緒に居るか?

 だから俺はそのレイバーの独り言にも取れるセリフから会話を広げる為に、

「小さい頃?そういやイザベルの両親はサンボイルに住んでいるって言ってたが、イザベルは昔からフレイラに住んでいたのか?」
「いや、お前の言う通りイザベルはずっとサンボイルに住んでたぜ。フレイラこっちに引っ越してきたのは冒険者を始めるとなった時だったな。」

 なるほど、やっぱりイザベルはフレイラ出身じゃないのか。

「じゃあ、2人は小さい頃にどうやって出会ったんだよ?フレイラとサンボイルはとても遊びで行ける距離じゃないとは思うぞ?」
「あぁ。実は俺の死んだ父も冒険者をしてたんだが、ある時サンボイルへ遠征に行く事になってな。それが長期間になりそうだったから家族全員で行ったんだ。」

 なるほど、レイバーの父親も冒険者だったのか(まぁなんとなくレイバーの家は代々受け継がれてきた冒険者一家って感じがしてたが)
 それに、長期間の遠征って、実は結構強い冒険者だったんだろうか?

「家族全員で、か。それでサンボイルに行ってイザベルと出会ったって訳だな?」
「あぁ、そういう事だ。」
「ふぅ~ん、なるほどな。」

 ……でも、それでもあんまり「そうだったのかッ!!納得!!」とはならんが。
 だってよ?今の話だけ聞いてもやっぱりさっき言ったみたいにこれだけかけ離れている2人がずっと一緒に居るなんて中々無いだろ。

 だから、俺はそこで質問をしてみる事にした。

「……ちなみにだが」
「ん?どうした?」
「その、お前とイザベルが仲良くなった出来事とかってあったのか……?」

「あっ!?いや!!2人がお似合いじゃないとかタイプが全然違うとかって意味で聞いた訳じゃ無いからな!?」質問の後すぐにそれが失礼な様な気がした俺はすぐにそう言い訳を並べる。

 が、対してレイバーはそれに怒ることもなく、ガハハと笑うと、

「ガハハハハッ!!まぁそうだよな。俺とイザベルは見た目もタイプも全然違うしな。――実はな、俺とイザベルの距離が一気に縮んだある出来事があったんだ。」
「ある出来事?」
「あぁ。その日はサンボイルだと言うのにやけに嫌な雨の日だった。」

 レイバーの話によると、サンボイルはフレイラよりも規模が大きな街だったという事もあり、来てしばらくは色んなところに探検と称した散歩に行っていたのだそうだ。

 そして、その雨の日も少年期レイバーにとっては遊びに行けない日なんかでは無かった。
 家の中でする事が無くなったレイバーは、傘もささずに外へ遊びに行ったのだそうだ。

 ――そして、外へ出てしばらく。
 考えれば当然だが、雨の中生身の身体で外へ出るとすぐにびしょ濡れになる。

 くしゃみも出てきそうになって来たレイバーはすぐに引き返そうとした。――が、そこで発見したのだ、建物と建物の間。ジメジメとしたその隙間に座り込むびしょ濡れの少女を。

 そう、それこそがイザベルだったらしい。そしてこれが2人のファーストコンタクトでもあったのだそう。
 これを聞いた時びっくりしたぜ。てっきり2人の親が互いに冒険者で、そこが仲良くなって子供同士もって流れだと思ってたからな。

「――で、そこでイザベルを見つけた後どうしたんだ?」
「あぁ、話そうとしてもずっと「寒い、寒い」とか「ごめんなさい」とかをボソボソ言うだけだったからとりあえず無理やりおんぶして家まで連れて行ったぜ。後から聞いたらどうやらあの時は両親と喧嘩をしていて家出中だったらしいな。」
「家までいきなり連れて帰ったのか!?少年期から流石の行動力だな。」
「ガハハ、当たり前だろ?困っていたりピンチになっていたりする人を無理やりにでも助ける。それが俺だ。」

 流石だ、きっとこういう人が本当に冒険者になるべき人間なんだろうな。

「それで?それからどうなったんだ?」
「それからは家でお風呂に入らせて服を着替えさせて、俺の両親がイザベルに住所を聞いてそこまで帰して。みたいなそんな感じだぜ。――それでその事がきっかけでちょくちょく遊ぶ様になって、気が付けば毎日ずっと一緒に居るような距離感になったって訳だ。」
「へぇ、そこからは早かったんだな。」
「あぁ全くだ。やっぱりイザベルには俺がついていないとな。」

 レイバーは微笑をしながらそう言う。しかしその横顔はどこか寂しい顔をしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

処理中です...