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第43話【レイバーとイザベルの過去】
しおりを挟む突如として姿を消したイザベルの捜索を開始して数十分。
長らく続いていた沈黙をそこでレイバーが打ち破った。
「……俺とレイバーはな、小さな頃からずっと一緒だったんだ。」
フレイラを歩き、イザベルを探しながら俺とレイバーで横に並んであるいていると、そこでレイバーがそう言ってくる。
なんだ?2人の昔話の始まりか?正直、こうずっと沈黙だと気まずくなってくるし、それにその話には少し興味があった。
なぜなら、初めて冒険者ギルド内にて2人と話した時、最初に抱いた印象が「かけ離れたタイプの2人」だったからだ。
だってよ?考えてみてくれ。普通ゴリゴリマッチョのスキンヘッド男と物静かで無口の女の子が一緒に居るか?
だから俺はそのレイバーの独り言にも取れるセリフから会話を広げる為に、
「小さい頃?そういやイザベルの両親はサンボイルに住んでいるって言ってたが、イザベルは昔からフレイラに住んでいたのか?」
「いや、お前の言う通りイザベルはずっとサンボイルに住んでたぜ。フレイラに引っ越してきたのは冒険者を始めるとなった時だったな。」
なるほど、やっぱりイザベルはフレイラ出身じゃないのか。
「じゃあ、2人は小さい頃にどうやって出会ったんだよ?フレイラとサンボイルはとても遊びで行ける距離じゃないとは思うぞ?」
「あぁ。実は俺の死んだ父も冒険者をしてたんだが、ある時サンボイルへ遠征に行く事になってな。それが長期間になりそうだったから家族全員で行ったんだ。」
なるほど、レイバーの父親も冒険者だったのか(まぁなんとなくレイバーの家は代々受け継がれてきた冒険者一家って感じがしてたが)
それに、長期間の遠征って、実は結構強い冒険者だったんだろうか?
「家族全員で、か。それでサンボイルに行ってイザベルと出会ったって訳だな?」
「あぁ、そういう事だ。」
「ふぅ~ん、なるほどな。」
……でも、それでもあんまり「そうだったのかッ!!納得!!」とはならんが。
だってよ?今の話だけ聞いてもやっぱりさっき言ったみたいにこれだけかけ離れている2人がずっと一緒に居るなんて中々無いだろ。
だから、俺はそこで質問をしてみる事にした。
「……ちなみにだが」
「ん?どうした?」
「その、お前とイザベルが仲良くなった出来事とかってあったのか……?」
「あっ!?いや!!2人がお似合いじゃないとかタイプが全然違うとかって意味で聞いた訳じゃ無いからな!?」質問の後すぐにそれが失礼な様な気がした俺はすぐにそう言い訳を並べる。
が、対してレイバーはそれに怒ることもなく、ガハハと笑うと、
「ガハハハハッ!!まぁそうだよな。俺とイザベルは見た目もタイプも全然違うしな。――実はな、俺とイザベルの距離が一気に縮んだある出来事があったんだ。」
「ある出来事?」
「あぁ。その日はサンボイルだと言うのにやけに嫌な雨の日だった。」
レイバーの話によると、サンボイルはフレイラよりも規模が大きな街だったという事もあり、来てしばらくは色んなところに探検と称した散歩に行っていたのだそうだ。
そして、その雨の日も少年期レイバーにとっては遊びに行けない日なんかでは無かった。
家の中でする事が無くなったレイバーは、傘もささずに外へ遊びに行ったのだそうだ。
――そして、外へ出てしばらく。
考えれば当然だが、雨の中生身の身体で外へ出るとすぐにびしょ濡れになる。
くしゃみも出てきそうになって来たレイバーはすぐに引き返そうとした。――が、そこで発見したのだ、建物と建物の間。ジメジメとしたその隙間に座り込むびしょ濡れの少女を。
そう、それこそがイザベルだったらしい。そしてこれが2人のファーストコンタクトでもあったのだそう。
これを聞いた時びっくりしたぜ。てっきり2人の親が互いに冒険者で、そこが仲良くなって子供同士もって流れだと思ってたからな。
「――で、そこでイザベルを見つけた後どうしたんだ?」
「あぁ、話そうとしてもずっと「寒い、寒い」とか「ごめんなさい」とかをボソボソ言うだけだったからとりあえず無理やりおんぶして家まで連れて行ったぜ。後から聞いたらどうやらあの時は両親と喧嘩をしていて家出中だったらしいな。」
「家までいきなり連れて帰ったのか!?少年期から流石の行動力だな。」
「ガハハ、当たり前だろ?困っていたりピンチになっていたりする人を無理やりにでも助ける。それが俺だ。」
流石だ、きっとこういう人が本当に冒険者になるべき人間なんだろうな。
「それで?それからどうなったんだ?」
「それからは家でお風呂に入らせて服を着替えさせて、俺の両親がイザベルに住所を聞いてそこまで帰して。みたいなそんな感じだぜ。――それでその事がきっかけでちょくちょく遊ぶ様になって、気が付けば毎日ずっと一緒に居るような距離感になったって訳だ。」
「へぇ、そこからは早かったんだな。」
「あぁ全くだ。やっぱりイザベルには俺がついていないとな。」
レイバーは微笑をしながらそう言う。しかしその横顔はどこか寂しい顔をしていた。
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