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第39話【フレイラへ来た理由】
しおりを挟む「って、!?マーニ……!?どうしたんだよいきなり!?」
早朝にドンドンと叩かれた扉を開けるとそこに立っていたのはマーニだった。
マーニはここまで急いで来たのか、肩を激しく上下させている。
「サンボイルが……サンボイルが……」そして、そんな事をブツブツと呟いていた。
なんだなんだ……?本当に意味が分からないぞ。
というか、まずマーニがフレイラに居るという事自体に意味不明なのだが。
「サンボイルが、どうかしたのか?とりあえず落ち着けよ、話は聞くし。」
「あ、あぁ。すまんなハヤト、」
そうして俺はマーニを招き入れた。
「で、いきなりどうしたの?マーニちゃん?」
「あぁ、なにがあったのかを聞かせてくれ。」
それからまずは話を聞くためにマーニを椅子に座らせると、俺は飲み物を目の前に置いてそう尋ねる。
すると、マーニはぽつりぽつりと今回ここへ来た理由を話し始めた。
「まず、これから小生の話す話を信じて欲しい。全て小生が見た光景なのだ。」
「分かった。」
俺に続いてケティ、セリエラも頷く。
するとマーニは「ありがとう」そう言い、次の瞬間、驚くべきセリフを言い放った。
「実はお前たちがサンボイルを出てすぐ、ひとりの冒険者をきっかけとした冒険者同士の大規模な殺し合いの騒動があってな。」
「……は?」
「それが市民も巻き込まれるまでのレベルに膨れ上がってきたから小生は巻き込まれない為にフレイラまで逃げて来たんだ。」マーニはその時の光景を思い出したのか身体をプルプルと震わせながらそう言った。――って、
「ちょ、ちょっと待ってくれ。それって、死者も出てるのか?」
「あぁ、小生が見ただけでも数人は仲間同士で刺し殺しあっていた、」
「……ッ!、」
その瞬間、脳裏に焼き付けられていた後ろから男に刺殺されるセリエラの光景が浮かぶ。
「……大丈夫ですか?ハヤトさん、なんだか体調が悪そうですよ。」
「ん?あ、あぁ。大丈夫だセリエラ。」
「そうですか。――でも、それにしてもマーニさん。それはなんで起こったか理由などは分からないのですか?」
「理由、か。先程言った様に原因はひとりの冒険者だという事は知っているが、そいつの詳細も知らなければ、それが起こった詳しい背景はよく分からないな。」
「ひとりの冒険者か。」
そんなの、どう考えてもあの――セリエラを刺し殺したあの男以外ありえないだろ、(この世界の出来事じゃないからみんなに言うことは出来ないが)
「でもさ、なんでわざわざフレイラまで来たの?」
するとそこでケティがそう質問をした。
確かに、それは俺も薄々思っている事でもある。だって、サンボイルからしたらフレイラは決して近い町じゃないんだぜ?それに周りの街に比べてもなんにもない田舎だしよ。
すると、それに対してマーニは微笑しながら、
「そんなの、ハヤトがこの町に居るからに決まっている」
「……へ?」
「きゃ~っモテモテじゃんハヤトっ!」ケティがヒューヒューと声を上げ、セリエラが無表情のまま頬をほんのり赤らめ
こちらを見つめてくる。
い、いやいやっ!?なんなんだよこれっ!?まっまさかマーニのやつ、俺の事す、好きなのか!?
「ちょ、ちょっと落ち着けマーニ。俺には心に決めた人がだな――」
「何言ってるんだ?確かに来た理由はお前が居るからだが、恋愛的に見れば全く興味は無いぞ。」
「分かる分かる、俺の事をそんなに好きなのは分かるが――――え?きょ、興味は、無い……?」
「興味が無い、というかハヤト。お前男として全然魅力的じゃない気がするが。まだこの町の冒険者ギルド前に居た鎧を纏ってバトルアックスを持っている冒険者の方が全然かっこ良かったぞ?」
それレイバーじゃねぇかぁぁっ!?!?んだよこれ!?もうやめてくれよ!?
すると今度はニヤニヤしながらケティが話に割り込んでくる。
「で?じゃあさっき言ってた「心に決めた人」って誰の事なのかな?かなぁっ?」
「う、うるさいッ!!!」
もうなんなんだよ……これじゃめちゃくちゃ俺が自意識過剰なやつじゃねぇかよぉ……!?
「も~ほら、話を戻すぞ。――で、マーニ。じゃあ俺になにか用があるのか?」
「あぁ、どの町に逃げるか考えている時にお前らが頭に浮かんでな。それでフレイラへ逃げると決めたんだが、その後にハヤトに少し尋ねたい事が出来たんだ。」
「尋ねたい事……?」
「あぁ、だがその話は出来れば2人でしたいんだ。良いか?ケティ、セリエラ。」
そうしてマーニはケティとセリエラの方を向く。
「私は全然大丈夫だよ?――あ!じゃあ2人が話してる間に私とセリエラちゃんでマーニちゃんの「フレイラに来ました歓迎パーティー」の準備をしてるよっ!どう?セリエラちゃん?」
「私はなんでも大丈夫ですよ。」
なんだよそのパーティー。
まぁだが、席を外してくれるのはマーニからすれば良いらしいから俺は大丈夫ではあるけどよ。
「――らしいが、それでも大丈夫か?マーニ。」
「あぁ、ありがとう。ケティ、セリエラ。」
「うんっ」「全然構いませんよ。」
「じゃあ行こっか!セリエラちゃん!」
「はい」
そうしてケティとセリエラは扉から出て行く。
そして家の中には俺とマーニだけが残った。
「で、話ってなんだよ?」
俺は軽くそう聞く。
するとそこでマーニは真剣な表情になると一言こう言った。
「ハヤト、お前小生の時間逆行を使って過去へ戻っただろ?」
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