34 / 80
第34話【締め付けられる心】
しおりを挟む「よし、じゃあ小生がハヤトたちの魔法の腕を見てやろう!!」
魔法の話を始めてしばらく、そこで急にマーニがそう言った。
「いや、なんでいきなりそうなるんだよ」
「そんなの小生が色々な魔法を使えるからに決まっているからだ!!」
「あー確か時間逆行だったか?」
「小生の持つ特別な魔法に名前は無いが、そう読んでおこう。そうそれだ。」
確か時間逆行は過去に飛ぶことの出来る魔法だってさっきマーニが言ってたよな。
すると、そこでケティが
「ねぇねぇマーニちゃんっ!じゃあ試しに私を過去に飛ばしてみてよっ」
明るい声でそう言った。――って、!?
「お、おい何言ってんだよケティ!?」
「え?いや、試しに言ってみただけだけど。」
「それなら良いが、」
もし仮に、今ここでケティが本当に過去へ飛んだらこの世界はどうなるんだ?ケティは目の前から消えるのか?それとも意識だけが飛ぶのか?
俺にはイマイチ理解が出来なかった。
――が、そんな俺とはうらはらにマーニは両手を腰に当てて笑うと、
「別に飛ばしてやっても良いが、ケティは飛んでもその事自体に気が付かないと思うぞ?」
ん?どういう事だ?
「どういう事ですか?普通に考えて過去に飛べば周りの状況などで過去に飛んだと理解出来るはずです。」
俺の思った事を代弁してくれるセリエラ。
しかし、対してマーニは首を横に振ると、
「いや、それがな。普通の人間では過去に飛ぶとその時までに経験した記憶が完全に消えるのだ。」
「完全に……消える……?」
「あぁ。だからこの小生の力は普通の人間に使っても意味が無い。」
なんだよそれ。どうせそういう理由を作り出して「だから使えない」的な感じに言い張ってるだけだろ。
「――まぁ、その話は良いだろう。とにかく、これから小生が3人の魔法の実力を見てやるから、中庭に移動だ!!」
「……お前の家にもあるのかよ」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なんでもない。」
こうして俺たちは椅子から立ち上がり、マーニに「あの扉の向こうにある」と説明された扉の方へと向かう。――――が、ケティとセリエラが中庭に出て、後は俺とマーニだと言う時に「ちょっと待て」そうマーニに止められた。
「なんだ?早く俺たちも中庭に出ようぜ。実力を見てくれるんだろ?」
「あぁ、それもそうだが。ひとつ確認を取っておきたくてな。」
「確認?」
するとそこでマーニは先程までのわざとらしいドヤ顔では無く、真面目に、
「ハヤト、本当に小生の事を覚えていないか?」
「あぁその事。って覚えてる訳ないだろ?」
というか、まず今日が初対面じゃないのか?――でも、こいつ初めに話しかけてきた時も俺の名前を知ってたしな。まさか本当にどこかで会った事があるのだろうか。
すると、俺の反応に「やっぱりか」と言わんばかりにガックリと肩を落とすと、どこか寂しそうな顔で微笑するマーニ。
そして一言、こう言った。
「ハヤトが覚えていてもいなくても。小生は味方だからな。」
「……?あ、あぁ。」
♦♦♦♦♦
それから言っていた通りマーニに魔法の実力を見てもらい、各自アドバイスを貰ったのだが、案の定と言っては可哀想だが見た目の通りマーニ自身が魔法を全然使えず、結構すぐ部屋の中に戻る事になった。
「もーマーニちゃん?見栄を張るのは私良くないと思うよ?」
「う、うぅ……で、でも!!小生は過去へ戻る魔法をだな――」
「それも実は使えないんじゃないの~?」
「つ、使えるぞ!!」
魔法が使えなかったマーニを軽くからかって遊ぶケティ。
こういうケティは普段中々見ないから普通なら「お、ケティもやるようになったな」なんて言いながら笑う場面だろう。
「……はぁ」
だが、今の俺にはとてもそんな気分にはなれそうに無かった。というか、今日の朝からずっとこうだ。
原因はもちろんデスティニーレコードに記されていたあの文章。
セリエラが……死ぬ?そんなのありえない。やっぱりありえない。
――が、今まであれに記されてきた出来事は全てが事実へと変わっている。
「……ッ、」
俺はどうすれば良いんだよ……
すると、そこで隣に座っていたセリエラが心配そうに声をかけてきた。
「どうしたんですかハヤトさん。今日の朝からずっと顔色が悪いですよ?それに何かを思い詰めてる様な――」
「あ、あぁ大丈夫だ。気にしないでくれ。」
俺は笑顔を作ってそう返すが、
「大丈夫じゃないです。本当に何かあったんですか?私で良ければなんでも聞きますし相談に乗りますから。確かに私はケティさんの様にハヤトさんの幼なじみでもなければ昔からずっと居た訳でも無いですが――」
「それでも今は同じパーティー。仲間なんですから。」
「……ッ、――ありがとうな。でも、本当に大丈夫なんだ。」
そう優しくされたら、余計に胸が苦しくなるじゃないか……
「そう、ですか。それなら良いですけど。」
「…………なぁ、?セリエラ」
「なんですか?」
「もし、自分が依頼の途中に死ぬとしたら、どうする……?」
って、な、何を聞いてるんだ俺は……!?
口から漏れてしまった言葉に後悔をしながらも、俺は恐る恐るセリエラの言葉に耳を傾ける。
「なんですかそれ、私は死にませんよ。」
「……ッ、そ、そうだよな。はは、」
しかし、その質問で得られたのは更に心を締め付ける鎖だけだった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる