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第32話【サンボイルでの出会い】

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 翌日。朝早くから俺たちは再び馬車を動かし始める。
 そしてそれから数時間後、昼になったかというくらいの時間にやっとサンボイルへ到着した。

「やっと着いたねっ!!いやぁ疲れたよ!!」
「ですね。」

 左側の山と右側の砂漠。このふたつに挟まれているのがサンボイルという街だ。
 俺たち3人は遠征者用の馬車を停める場所に馬車を停め、サンボイルの入り口前に立つ。

 ケティはもちろんの事、いつもは表情を顔に出さないセリエラもここまで時間がかかったからというのもあってだろう、目が輝いている。

 ――しかし、俺だけはとてもそんな気分になる事は出来なかった。
 原因はもちろん、昨日の夜寝る前に見たデスティニーレコードに新たに記された文章だ。

 5月4日:依頼中にセリエラが死亡

 今日は5月3日だ。という事は明日、デスティニーレコードの通りに行けば本当にセリエラが、死ぬ……?
 なんで……?なんでそうなる……?

 まさかサンボイルに前のナビレスで体験した様な出来事が……?いや、でもそれだときっとその出来事の事も別にデスティニーレコードに記されるはずだ。あれから色々考えていたせいで全く眠れず凄く寝不足なんだが、それでもあのセリエラが依頼中に死ぬなんて……ありえない。俺はずっとそう考えていた。

 すると、そこで俺からずっと見られていると気がついたセリエラが、

「……?どうしたんですか?ハヤトさん。さっきからずっと私の事を見ている様ですが。」

「それに、顔色もすごく悪いですよ?」心配の口調でそう言ってくる。

「……ッ、す、すまん。実は昨日の夜は外だったからか全然寝れなくてなーはは」

 だが、俺はそう誤魔化す。
 いくらデスティニーレコードに書かれていた事があれほどの事とは言え、さすがにそれをケティやセリエラに言うのは違う。2人を巻き込みたくはなかった。

「そう、ですか。なら早くサンボイルの冒険者ギルドに向かいましょう。遠征者の冒険者登録もしないとですし。」
「そうだよ~っ早くいこっ!」
「あ、あぁ。そうだな。」

 そうして俺は結局ひとり抱えたままサンボイルへ入って行った。

 ♦♦♦♦♦

 それからサンボイルに入り街を見ながら冒険者ギルドを探していると早速フレイラとは違う点がいくつか見つかった。
 まず、これは当たり前だが人数の数が全然違う。

 ナビレスの時はもう既に街が崩壊していたから本来の姿を見ることが出来なかったが、これが栄えた街というやつなのだろう。(冒険者らしき人たちもそこら中に居るしな)

 そして2つ目、これは建物の外見の話になるのだが、サンボイルの家々は俺たちの住んでいるフレイラとは違い、壁が石で出来ている物がほとんどだった。(それに石と言っても砂漠の砂の色っぽい石で表面がザラザラしている感じの)

 後はそれ繋がりだと建物の大きさや間隔などもフレイラとは違うが、今ちょうど冒険者ギルドらしき建物が見えてきたからこのくらいにしておくか。

「ねぇ!!サンボイルの冒険者ギルドってあれじゃないかなっ!!」

 俺が見つけたところでケティもそれに気づき、指をさしながらぴょんぴょん跳ねる。
 はは、本来ならここで「可愛い、癒される」なんて呑気に思っているんだろうが、今はとてもそんな気分にはなれないな。

「おいおい、あんまりはしゃぐと他の人とぶつかるぞ。ここはフレイラみたいにスカスカの町じゃないんだからな。」
「気をつけて下さいね」
 
 俺とセリエラはまるで親の様に注意をしながら小走りでケティを追いかけ、冒険者ギルドの前へ行く。

「――って、おぉ。これがサンボイルの冒険者ギルドか。」

 そしてギルド前に着くと、俺はその建物を見上げる。やはり外見も違えば大きさもフレイラとは違って大きく、一目で「賑わっているんだろうな」そう分かる外観だった。

 そうして早速中へ入ろうとする俺たち。しかし、それをいきなり横から声をかけてきたひとりの少女に止められた。
 
「やっと来たかハヤトよ。小生はずっと待っていたぞ。久しいな。」

 腰に手を当て、誇らしげな表情でそう言ってくる、まるで砂漠の砂の様な色の金髪ロングに白いワンピースを着た少女。突き出す胸に膨らみは無い。
 なんだ?この子?

「まさかハヤトに子供が居たなんてね……私びっくりしちゃったよ、」
「おいおい!?なんでそうなるんだよ子供なんていねぇよ!?」
「じゃあなぜハヤトさんの名前を?」
「いや、分からん。てか君誰なんだ?お母さんとはぐれたのか?」

「な、!?ハヤト!!今小生をバカにしたな!?小生はもう18だ立派な大人だ!!」
「分かる分かる。意地を貼りたくなるんだよな。」
「違うっ!?!?」

 どうやらこの子供は本当に18歳らしい。とてもそうには見えんが。

「――で?冗談はやめにしてどうして俺の名前を?」
「はぁ、ハヤトは本当に小生の事を様だな。まぁ本当に小さな時に会って以来だから仕方ないが。」

「なら、そこの2人への挨拶も兼ねて改めて自己紹介をする。小生の名前はマーニ・トワイライト。早速だが、3人とも腹は減っていないか?家でご馳走するぞ。」

 そうして俺たちはサンボイルで出会った謎の多い少女、マーニの家に行く事になった。(そういやデスティニーレコードに記されてあった5月3日:マーニと出会うってこいつの事か)
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