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第27話【レイバーの力】

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「イザベル、お前はこいつら3人に絶対オーガや俺の攻撃が当たらない様にしろ、良いな。」
「はい、レイバー様。」

 ウェーグル森にて遂にオーガを見つけるが、俺たちはレイバーに「戦う必要は無い」と言われる。
 しかし、いくら中級冒険者でこのウェーグル森を主戦場にしていると言っても、あんなに大きなモンスターをひとりで相手にするのは……

 だから俺は戦いが始まる前に再度レイバーに確認をしようとするが、
 
「お、おい……本当に俺たちは戦わなくて――」
「ハヤトさん、もうレイバー様は私たちの声を聞いていませんよ。」

 それをレイバーと組んでいる中級上位冒険者イザベルが右手を俺の前に出して静止した。

「――それに、レイバー様なら大丈夫です。」
「……ッ!!」

 お前のその自信はどこから出てくるんだよ……?俺たちがあれだけ大きなモンスターと対峙するのは初めてというのもあるかもしれんが……

 
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「「……ッ!?」」

 すると、そこで木が倒れて出来た道の向こうからこちらへゆっくりと歩いて来ていたオーガが木を使って身を隠す俺たちとは反対に、分かりやすく身体を出していたレイバーを目視で発見し、その途端手に持っている木を振り上げて叫び声を上げながら走って来た。

 お、おいっ!?あいつあんなにデカいのにめちゃくちゃ早く動けるじゃねぇかっ!?

「はっハヤト……!!」
「……ッ!?」

 そんないきなりのオーガの動きにケティは目尻に涙を浮かべながら俺の腕に抱きついてくる。
 更にはいつも冷静なセリエラでさえも手先が震えていた。
 当たり前だよな、こんなの俺も怖すぎる――――が、

「ガハハ、来やがれオーガ。俺との力比べで勝てると思うなよッ!!!」

 レイバーは背中から自身の身体以上に大きなバトルアックスを片手で掴むと、

「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
「ふんッ!!」

 なんとオーガが走る勢いのままに振り下ろした自身の巨大な手に持つ木をいとも簡単に受け止めた。

 う、嘘だろ……?あれって普通にそこらに生えてる木と何ら変わりは無いんだぞ……?(ウェーグル森の木だから普通よりももしかするとデカいかも)
 なんでそれをあんなに簡単に受け止められるんだよ

 しかし、そんな光景を見てもまるでそれが当然であるかのように表情ひとつ変えずに見守るイザベル。


「ガハハ!おいおい……こんな程度かオーガッ!!!」
「うぉぉぉっ!?」

 すると、そこでオーガの木の攻撃を自身のバトルアックスで受け止めていたレイバーは歯をむき出しにして笑うと、なんと力任せにオーガを押し返し、相手をよろけさせた。

 しかもそれでは終わらない。そのまま間髪入れずにレイバーはこう叫ぶ。

身体強化ブーストッ!!!」
「……ッ!!レイバーも使うのか……!!」

「おらぁぁぁぁッッ!!!」

 そして身体強化ブーストにより力を上げたレイバーはバトルアックスを構え、重心を深く沈ませると、その力を一気に放出。
 大柄な身体にも関わらず俺よりも何倍ものスピードでオーガの方へ突進する。

 対して、レイバーに押し返された事によりよろめき受け止める体制にも入れていないオーガは当然、

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」

 そのまま腹をレイバーに深くえぐり斬られた。――って、!!!

 す、すげぇ……!?
 なんだよ秒殺じゃないか!!

「うぉぉぉ、、ぉ、、」

 ドスン。オーガが地面に倒れた事により大地が揺れる。
 そしてそのまま巨大な身体が蒸発して行った。
 なんとレイバーはオーガを一撃で倒したのだ。

「ふぅ、やっぱりこんなレベルだったか!!ガハハハハ!!まぁこのレイバーにかかればオーガなんて一撃で当然だがな!!」

 オーガが死んだ事を確認したレイバーは背中にバトルアックスをしまうと両手を腰に当ててガハハと笑う。

 こ、これが中級冒険者の力だってのか……?正直レベルが違い過ぎる気がするんだが……
「すげぇじゃねぇか!!」俺はそうレイバーに言う為に口を開こうとする。

 が、何故か次の瞬間俺がそうする直前に急にレイバーが真顔に戻る。

「イザベル」

 そしてすぐに相棒の名前を口にした。

「はい」
 
 そしてそれに反応する様にすぐさま腰から細長い剣を抜くイザベル。

 って、おいいきなりなんだよ……!!もうオーガは倒し終わったじゃねぇか!!

「おいイザベル、なんでいきなり剣を抜いたんだ、?」
「ねぇ、さっきから色々起きすぎて訳が分からないよ……」

 しかし、「私から絶対に離れないで下さい。レイバー様も早くこちらへ」イザベルはそう呟くと目を瞑り何も話さなくなった。

「な……っ、おいレイバー……!どうなってるんだよ!」

 俺は代わりにこちらへ歩いてくるレイバーに聞く。
 するとレイバーは

「少々厄介な事になりそうだったからイザベルにを使って貰おうと思ってな。」
「力……?」
「あぁ。まぁお前らふたりは訳が分からんかもしれんが、セリエラ。お前はもう分かってるんじゃないのか?」

 え……?セリエラはもう分かってる……?

「なぁセリエラ、これから何が起ころうとしてるんだよ」

 するとセリエラは頬から汗をたらしながら、

「分かりません……が、なにかの大群が周りからこちらへ近付いて来ている音がします。」
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