上 下
22 / 80

第22話【変わり果てた街】

しおりを挟む

「いや、なんかね?町の色んなところからが出てるの。」
「……ッ!?」

 黒い煙だと……!?それって、、
 本当に、起きたってのか……?

「すまん、俺にも見せてくれ」
「う、うん、」

 俺は馬車の荷台から中腰で立ち上がると3人が覗いてある窓の方に寄る。
 そして覗いてみると――そこにはフレイラよりも栄えている町のいたるところから黒煙が上がっているという地獄の様な景色が広がっていた。

 おい……普通ゴブリン・ロードでここまでなるのか……?
 とにかく、絶対に急いだ方が良いだろこれ。

「お、おいウェイリスさん。馬車の速度を上げ――」
「分かってるッ!!!」
「「……ッ!?」」

 数日間一緒に生活してきたが、その間に見せたことも無かった表情で叫び、馬車の速度を魔法で上げるウェイリスさん。

「お母様、お父様……!!」

 当たり前だよな、自分の両親がにいるんだ、心配になるに決まってる。
 とにかく、今はひとりでも多くの人が無事という事を願うしか無さそうだな。

 そう思った時、これまでずっと身体を鍛えてきたがそれでも自分は無力だという事を身に染みて実感した。

 ♦♦♦♦♦

 それから数分後、水の都ナビレスの正面出入り口に到着した。のだが、

「なんだ……これ」
「こんなのって、……っ」
「これは、、酷いですね」

 俺たちは馬車から降りると出入り口から続く街並みを見るが――全ての建物から炎と黒煙が上がり、古い建物は崩れ、そこらじゅうで人間たちが血を流しながら倒れる、まるでこの世のものとは思えない地獄絵図がそこには広がっていた。

 今日は雲ひとつ無い快晴だったというのに、ナビレスの上空だけは灰色の雲か霧かが覆っている。

「貴方たち、これから冒険者ギルドに行くわ。それで状況を確かめましょう。」

 しかし、そんな状態でもウェイリスさんだけは取り乱さずに冷静だった。
 きっと先程の叫びで気持ちを切り替えたんだろう。
 さすが上級冒険者だな、実力だけじゃなくて精神も強いのか。

「ウェイリス何度かこの街に来た事があるからギルドの場所は分かるわ。着いてきて。」
「あ、あぁ。行くぞケティ、セリエラ」
「う、うん、」「了解です。」

 こうして俺たちは焦げ焼けた匂いの漂う大通り道を歩いて行った。


 それからしばらく焼け焦げた街並みを見ながら歩いていると、ひとつだけ崩れていない建物を見つける。

「ウェイリスさん、あの建物って」
「えぇ、あれがナビレスの冒険者ギルドよ。本来なら水の都に合わせて水色の外壁で綺麗なんだけれど。」

 そう言いながら眺めるギルドの壁は焦げて黒くなっている。
 だがきっと中に防御魔法レジスト系の魔法を使える冒険者がいたんだろう、周りの建物がこれだけぐちゃぐちゃになっている中で倒壊していないのは流石だ。

 もしかしたらこの中になら生き残った人たちが居るかもしれない……!!

「よし、入るぞ……!」
「そうね、入りましょう。」「うん……っ」「はい。」

 そうして俺たちは焼け焦げて倒れている入り口の扉を踏み、そのまま中へ入る。

 すると、意外にも中は綺麗で、机や椅子が多少倒れてはいるがそれくらいだ。
 中には冒険者が数人と逃げ込んできたのであろう人たちが数十人ギルドの真ん中に固まるようにして座っていた。

 そこで、俺たちに気がついたひとりの冒険者がこちらへ近寄ってくる。

「討伐組の人間か……?ゴブリン共はもう全滅したのか……?」

 ゴブリン共……?……ッ!!やっぱりゴブリン・ロードが……それに討伐組ってのはなんだ……?

「いや、違う。俺たちはフレイラからナビレスへ来た冒険者だ。――――一体何が起こった?」

 俺は近寄って来た冒険者にそう尋ねる。

「ゴブリン共が……急に街へ押し寄せてきたんだ……それも怒り狂った状態で、」
「要するに、ゴブリン・ロードが起きたという事か……?」
「いや、正直有り得ないが、、あぁ、」

 こうして、今回もデスティニーレコードの通りになった。

「……クッ、」

 俺は下唇を噛み立ち尽くす。
 すると、そこでウェイリスさんが会話へ入った来た。

「そんな事はもう起きてしまった後の今言ってもどうにもならないでしょ。それよりも他の冒険者たちは?ナビレスは冒険者の数が多かったはずよ。」
「あぁ、他の奴らは全員ゴブリンたちと戦う為に外へ出ている、ここに残ってる俺たちはこの逃げてきた人たちを守る為、そしてゴブリン共と戦うには実力が足りないから残されたんだ……」

 そう言い、「下級」を意味する銅の板が付いたネックレスを見せてくる冒険者。

 確かに、ゴブリンは単体だと弱いが群れになると頭が良い為一気に厄介になる。それも中級モンスターを相手にするのと変わらないくらいには。
 確かに、下級冒険者などが戦いに混じったところでかえって邪魔になるだけか、
 
「という事は、ここに居る人たちが生き残りって事?」
「あぁ、他はほとんど殺された……ゴブリン共、街に火を放ちやがったんだ……」

 まてまてまてまて。本当に言っているのか?ナビレスだぞ?何千人も住人の居るナビレスで生き残りがこの数十人……?

「他にも冒険者ギルドがあってそこに逃げ込んでるとかは、、無いのか……?」
「えぇ、ナビレスに冒険者ギルドはここの1箇所だけよ。」
「……ッ、」
 
 嘘、だろ……?
 

「――――はぁ、はぁ……」
「……ッ!!誰だ?」
 
 するとそこでひとりの冒険者がギルドに入ってきた。
 身体中から血を流して今にも倒れそうに荒く息を吐いている。

「って、!?大丈夫かお前!?」

 俺はすぐに近寄り、身体を支えようと手を差し伸べる――が、血だらけの冒険者はそれを断り、「そんな事よりも」と喉を詰まらせながらこう言った。

「端的に、告げ、る……はぁ、はぁ……俺たち、討伐組は……全滅、した……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...