18 / 80
第18話【魔法の力】
しおりを挟むウェイリスさんの背中を追いかけながらワンドール家の屋敷内にある長い長い廊下をしばらく歩いていると、時々扉はあったのだがその中でも特段大きな扉の前で止まり、
「今開けるわね」
ウェイリスさんはそう言うとトントンと軽く2回ノックをした。
なんだ?中にメイドでもいるのだろうか。(まぁいくら屋敷と言ってもこんな小さな町だ、さすがに無いだろうが。)
しかし、そんな俺の予想を良い意味で裏切る。
門同様に紫の魔法陣が扉の中心に現れると、まるでウェイリスさんの指示に従うかのようにゆっくりと開いた。
「こんなところにも魔法を使っているのか……!!」
「えぇ、入り口からウェイリスたち以外の人間は見ていないでしょう?この屋敷全体には様々な魔法がかけられていて全ての事を魔法でしてもらえるのよ。」
確かに、こんなにも大きな屋敷にしてはやけに静かだとは思ってはいたが、本当に誰も居ないんだな。――――って、ん?待てよ?
そこで俺はひとつの事に気が付く。
じゃあウェイリスさんの両親はどこにいるんだ?
「なぁ、ちなみにだがウェイリスさんの両親は今はこの屋敷には居ないのか?」
「ん?あぁ、そういえば言ってなかったわね。さっきウェイリスの家系はずっと冒険者一筋って言ったじゃない?」
「言ってたな」
「それでウェイリスのお父様もお母様も冒険者をしているのだけれど、2人はこの町でしているという訳じゃなくて、色々な町を回って依頼を受けたりしてるのよ。」
へ~そうなのか。まぁでも考えてみたらそりゃそうだよな。この付近の森や洞窟に出現するモンスターはどれだけいってもオーガクラスが最大だ。そんなところに上級レベルの冒険者が居る方がおかしいんだよ。
「ちなみに2人は強いのか?」
「えぇ、まぁウェイリスに比べればあれだけど、普通に魔法の扱いにたけていてお父様もお母様も強いわ。」
「なるほどな」
やっぱりワンドール家の中でもウェイリスさんは強い方なのか。
すると、そこでウェイリスさんは手をパンパンと注目を集める様に二度叩く。
「さぁ、こんなところで立ち話をしていてもしょうがないでしょう?扉も空いてるんだし入りましょ」
「あ、そうだったな。」
「もーそうだよぉ」「ハヤトさんとウェイリスさんが話している時はそこにひとつの世界が出来ているようで会話に入りにくいんですよね、」
「すまんすまん、」
そうして俺たち3人はウェイリスさんの後に続いて部屋へ入る。
するとそこはどうやら招き入れた客人たちと食事をする部屋らしく、真ん中に豪華な長テーブルと椅子が設置されていた。
この部屋にも相変わらずシャンデリアや誰が描いたのかは分からないがとりあえずめちゃくちゃ上手い絵などが飾られている。
「凄いな、ここだけ見れば本当に城だぞ。」
「そうかしら?ウェイリスはこういうのより酒場とかのガヤガヤした感じの方が好きだけれど。まぁ良いわ。適当なところに座って頂戴。」
それはずっとこんなところで暮らしてきたから慣れてるだけじゃないのか……?俺は羨ましくて仕方ないぞ……
「あ、あぁ。じゃあ座るか。」
「うんっ」「はい」
そうして俺たち3人は並ぶようにして座る。すると、ウェイリスさんはその正面に座った。
位置を簡単に言うと、左からケティ、俺、セリエラの順番で座っていて、ウェイリスさんは俺の真ん前だ。
「実は屋敷に入った時に料理を作る様指示しておいたから、もうそろそろ運ばれて来るはずよ。」
ウェイリスさんはそう言う。
「指示?指示って誰にするんだ?」
そんなここに来るまでに誰かと話している場面は無かった気がするが……というか、この屋敷には俺たち以外人間が居ないって言ってたのはウェイリスさん自身だっただろ。
しかし、その質問に対してウェイリスさんはきょとんとすると、それが当たり前かのように、
「誰って、屋敷に決まってるじゃない。」
「へ、?や、屋敷に指示をしたってのか……?まぁ確かにさっき全ての事を魔法でしてもらえるとは言っていたが、料理まで?」
「掃除に洗濯に料理。何から何まで全部魔法よ。――あ、ほら来たわ。」
そういうとウェイリスさんは扉の方に視線を向ける。
俺たちも直ぐにそれを追いかける様に振り返ると、そこには皿に乗った数々の料理が独りでに宙を浮遊しながらこちらへ向かって来るという意味の分からない光景が広がっていた。って、!?なんだよこりゃ、!?
「マジで言ってんのか……!?」
「マジもなにも大マジよ。これは浮遊魔法を少し応用した物ね。この様な感じで、屋敷自体と契約魔法を結んでいるからどんな事もこうして魔法でしてくれるの。」
「ほんとに凄いな……」
「これらは全部、クレプスキュール家の人が教えてくれた物なのよ?だから凄いのはハヤトのご先祖さまね。」
「そう、なのか。」
やっぱりクレプスキュールと言ったら俺や父みたいに魔力の扱いにたけていない人間を思い浮かべてしまうからいくら先祖が凄いと知っても中々実感は湧かないな。
「さ、運び込まれてきた事だし、冷めないうちに食べましょ!」
全ての食べ物が運び込まれて来たところでウェイリスさんはパンと手を叩くと笑顔でそう言う。
そこにはピザやローストビーフにロブスターと美味しそうな料理が並んでいる。
「まぁ、そうだな……!!」
「だねっ!」
「ですね、食べられる時に食べましょう。」
おいおいセリエラよ、落ち着いた口調でそう言ってても口からヨダレが垂れてるぞ。正直に美味しそうだから早く食べたいと言えば良いのに。
それに、俺も実はさっきから結構お腹も空いてるしな……!!
「「いただきますっ!!」」
こうして俺たちは食事の時間を楽しんだ。
ちなみにめちゃくちゃ美味かった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!
勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~
北きつね
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。
ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。
一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。
ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。
おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。
女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界転移二児の母になる
ユミル
ファンタジー
牧野悠里(まきのゆうり)が一度目は勇者として召喚されて命を落とすがラウムにより転移で女性になる。
そこで出会った人達と仲良くしていく話です。
前作同様不慣れなところが多いですが、出来るだけ読みやすい様に頑張りたいと思います。
一応完結まで書く事ができました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
今後は番外編等を書いていくのでよろしくお願いします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる