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第16話【父の死因】
しおりを挟む「クレプスキュールって、ツバメさんの……!?!?」
今朝、ギルド内で出会ったこの町唯一の上級冒険者、ウェイリスさんに出会い、俺たち3人が自己紹介をすると、何故かウェイリスさんは俺の名前を聞いた途端、余程驚いたのか目を見開きながらそう呟いた。
「ツバメって、確かハヤトのお父さんの――」
「やっぱりそうなの!?」
「ん?あぁ、確かに俺の父はツバメって名前だが」
もしかして知ってるのか?まぁ確かに見た感じウェイリスさんはまだ若い感じだし(もちろん俺に比べれば歳上だが)父はずっと冒険者をしてたし顔見知りだったりしたのかもな。
でも、それでもこれだけ驚く理由がよく分からんが、
「なんだ?俺の父はウェイリスさんの師匠でもしてたのか?」
そこで俺はなにか理由があるという訳でもなく、何となくで冗談交じりにそう呟く。
すると、なんとウェイリスさんはそれに激しく反応した。
「そう!!そうだったのよ!!ツバメさんはウェイリスが冒険者を初めてすぐの頃に剣術を教えてもらってたの!!」
「ま、マジかよ!?」
いや、なんだよ俺の父さんそんな事してたのかよ!?
まぁでも、それだと何となく「ウェイリスの髪色はピンクだから分かりやすい」なんて軽く呟く理由が分かる気はするが――まさか師弟関係だったとは……
「懐かしいわね……!!あ、その剣!ツバメさんもその形のを使ってたのよ!!」
「あ、あぁ、それは聞い――」
「あぁ~……!!ツバメさんって等級こそは中級止まりだったけど、当時はフレイラでも相当存在感のある人だったのよ!!」
「そ、そうなん――」
「それでね!!」
な、なんなんだよ……!?父の話が始まった瞬間なんかめちゃくちゃ楽しそうに話し始めたぞ!?
「う、ウェイリスさんってハヤトのお父さんの事大好きなんだね、、」
「あ、あぁ」
「でも確か、ハヤトさんのお父様はもう亡くなっているんじゃなかったですか?」
そこでセリエラがそう呟く。
すると、その言葉を聞いたウェイリスさんはそれまでの笑顔は無くなり、どこか寂しそうに微笑しながら、
「だから、ツバメさんが亡くなられたと知った時は本当に悲しかったわ。なんであんなに素晴らしい冒険者が同じ冒険者に殺されるのよ、」
「……えっ?」
その言葉で俺の頭の中が急に真っ白になった。
いや、今冒険者に殺されたって……俺は依頼の途中にモンスターに殺されたと母からは聞いていたが……?
「まさか知らなかったの?」
「あ、あぁ……」
「私も知らなかったよ、てっきりモンスターにやられちゃったのかと……」
「……なぁ、その話、少し詳しく聞かせてくれないか……?」
「まぁ、ツバメさんの息子なら、良いわよ。ウェイリスもその場に居たって訳じゃないからこの話はその場に居た冒険者から聞いた情報だけど。」
それから俺は父の最期に居合わせていた冒険者から聞いた話を話してくれた。
その冒険者が言うには、その日は少し遠くの火山に現れたドラゴンを数十人で討伐するという大規模な物に父も参加していたらしく、その討伐自体は無事に終わったらしい。
だが、事件は帰り道に起きた。
夜、空に浮かぶ星だけが歩く道を示してくれる様な暗闇の中で、いきなりひとりの冒険者が悲鳴を上げたのだそうだ。
そして、当然その冒険者が居た場所に周りの冒険者たちも集まってくる。
するとそこには、背中を短剣で刺され、血を流し倒れている冒険者――父が居た。
「……以上が、ウェイリスが知っている限りのツバメさんの最期よ。」
「……そうだったのか。」
まさか俺の父が冒険者に刺されて死んでいたなんてな、
確かに適当な人間ではあったし、父親として正解の形では無かったのかもしれない。だが、それでも友情、人情には厚い人間だったし、周りに恨まれる様な行為をするとも思えない。それは今日のウェイリスさんの父に対する反応で改めてよく分かった。
……じゃあ一体なぜ……?
「ちなみに、その父を刺した冒険者って言うのは誰か分かってるのか?」
俺はそう尋ねるがウェイリスさんは首を横に振る。
「ウェイリスが聞いた人の言う話では、最初に気がついた冒険者が悲鳴を上げた時にはもうその場には居なかったと思うって言ってたわ。それに、誰か分かっていたらとっくにウェイリスが殺してるわよ。」
それもそれでどうかとは思うが……まぁ気持ちは分かるが。
その時が夜で周りが見えない暗闇だったこともあって本当に分からなかったんだろうな。
「まぁ、ありがとう。本当の事を知れて嬉しい。」
「そう?それなら良かったけど――あ……!!」
するとそこで急に何かを思いついたのか、ウェイリスさんは表情を明るくすると、
「そうだ!これもきっとなにかの縁よ。これから3人をウェイリスの家に招待するわ!!」
「「えぇっ!?」」
「い、いや、今日は依頼を受けようと――」
「依頼?貴方たちまだ下級でしょ?そんなの今日の報酬の分くらいあげるから安心しなさい。」
いや、それはありがたいが、そうじゃなくて今日はケティのリハビリを兼ねた依頼だったんだが、
でもまぁ、絶対に今日しないといけないという訳でも無いし、良いか。
「まぁ、俺は良いが――ケティ、セリエラ。お前らは良いか?」
「私は全然いーよっ!」
「まぁ、別に今日ケティさんがリハビリをしないといけないという事も無いですしね」
「リハビリ?ケティって言ったかしら、休んでたの?」
「はっ、はい!実はワーウルフに足をやられちゃって、」
「そうだったの。じゃあちょうどいいわ。ウェイリスが稽古を付けてあげる。」
「えっ!?本当に良いのか!?」
「ウェイリスに任せなさいっ!!」
マジかよ……!!上級冒険者に稽古を付けてもらえるなんて――こんなの中々ない機会だぞ……ッ!!
こうして俺たちはウェイリスの家に行く事になった。
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