上 下
16 / 80

第16話【父の死因】

しおりを挟む

「クレプスキュールって、ツバメさんの……!?!?」

 今朝、ギルド内で出会ったこの町唯一の上級冒険者、ウェイリスさんに出会い、俺たち3人が自己紹介をすると、何故かウェイリスさんは俺の名前を聞いた途端、余程驚いたのか目を見開きながらそう呟いた。

「ツバメって、確かハヤトのお父さんの――」
「やっぱりそうなの!?」
「ん?あぁ、確かに俺の父はツバメって名前だが」

 もしかして知ってるのか?まぁ確かに見た感じウェイリスさんはまだ若い感じだし(もちろん俺に比べれば歳上だが)父はずっと冒険者をしてたし顔見知りだったりしたのかもな。
 でも、それでもこれだけ驚く理由がよく分からんが、

「なんだ?俺の父はウェイリスさんの師匠でもしてたのか?」

 そこで俺はなにか理由があるという訳でもなく、何となくで冗談交じりにそう呟く。
 すると、なんとウェイリスさんはそれに激しく反応した。

「そう!!そうだったのよ!!ツバメさんはウェイリスが冒険者を初めてすぐの頃に剣術を教えてもらってたの!!」
「ま、マジかよ!?」

 いや、なんだよ俺の父さんそんな事してたのかよ!?
 まぁでも、それだと何となく「ウェイリスの髪色はピンクだから分かりやすい」なんて軽く呟く理由が分かる気はするが――まさか師弟関係だったとは……

「懐かしいわね……!!あ、その剣!ツバメさんもその形のを使ってたのよ!!」
「あ、あぁ、それは聞い――」
「あぁ~……!!ツバメさんって等級こそは中級止まりだったけど、当時はフレイラでも相当存在感のある人だったのよ!!」
「そ、そうなん――」
「それでね!!」

 な、なんなんだよ……!?父の話が始まった瞬間なんかめちゃくちゃ楽しそうに話し始めたぞ!?

「う、ウェイリスさんってハヤトのお父さんの事大好きなんだね、、」
「あ、あぁ」

「でも確か、ハヤトさんのお父様はもう亡くなっているんじゃなかったですか?」

 そこでセリエラがそう呟く。
 すると、その言葉を聞いたウェイリスさんはそれまでの笑顔は無くなり、どこか寂しそうに微笑しながら、

「だから、ツバメさんが亡くなられたと知った時は本当に悲しかったわ。なんであんなに素晴らしい冒険者がのよ、」
「……えっ?」

 その言葉で俺の頭の中が急に真っ白になった。
 いや、今冒険者に殺されたって……俺は依頼の途中にモンスターに殺されたと母からは聞いていたが……?

「まさか知らなかったの?」
「あ、あぁ……」
「私も知らなかったよ、てっきりモンスターにやられちゃったのかと……」

「……なぁ、その話、少し詳しく聞かせてくれないか……?」
「まぁ、ツバメさんの息子なら、良いわよ。ウェイリスもその場に居たって訳じゃないからこの話はその場に居た冒険者から聞いた情報だけど。」

 それから俺は父の最期に居合わせていた冒険者から聞いた話を話してくれた。

 その冒険者が言うには、その日は少し遠くの火山に現れたドラゴンを数十人で討伐するという大規模な物に父も参加していたらしく、その討伐自体は無事に終わったらしい。

 だが、事件は帰り道に起きた。
 夜、空に浮かぶ星だけが歩く道を示してくれる様な暗闇の中で、いきなりひとりの冒険者が悲鳴を上げたのだそうだ。
 そして、当然その冒険者が居た場所に周りの冒険者たちも集まってくる。
 するとそこには、背中を短剣で刺され、血を流し倒れている冒険者――父が居た。


「……以上が、ウェイリスが知っている限りのツバメさんの最期よ。」
「……そうだったのか。」

 まさか俺の父が冒険者に刺されて死んでいたなんてな、
 確かに適当な人間ではあったし、父親として正解の形では無かったのかもしれない。だが、それでも友情、人情には厚い人間だったし、周りに恨まれる様な行為をするとも思えない。それは今日のウェイリスさんの父に対する反応で改めてよく分かった。
 ……じゃあ一体なぜ……?

「ちなみに、その父を刺した冒険者って言うのは誰か分かってるのか?」

 俺はそう尋ねるがウェイリスさんは首を横に振る。

「ウェイリスが聞いた人の言う話では、最初に気がついた冒険者が悲鳴を上げた時にはもうその場には居なかったと思うって言ってたわ。それに、誰か分かっていたらとっくにウェイリスが殺してるわよ。」

 それもそれでどうかとは思うが……まぁ気持ちは分かるが。
 その時が夜で周りが見えない暗闇だったこともあって本当に分からなかったんだろうな。

「まぁ、ありがとう。本当の事を知れて嬉しい。」
「そう?それなら良かったけど――あ……!!」

 するとそこで急に何かを思いついたのか、ウェイリスさんは表情を明るくすると、

「そうだ!これもきっとなにかの縁よ。これから3人をウェイリスの家に招待するわ!!」
「「えぇっ!?」」

「い、いや、今日は依頼を受けようと――」
「依頼?貴方たちまだ下級でしょ?そんなの今日の報酬の分くらいあげるから安心しなさい。」

 いや、それはありがたいが、そうじゃなくて今日はケティのリハビリを兼ねた依頼だったんだが、
 でもまぁ、絶対に今日しないといけないという訳でも無いし、良いか。

「まぁ、俺は良いが――ケティ、セリエラ。お前らは良いか?」
「私は全然いーよっ!」
「まぁ、別に今日ケティさんがリハビリをしないといけないという事も無いですしね」

「リハビリ?ケティって言ったかしら、休んでたの?」
「はっ、はい!実はワーウルフに足をやられちゃって、」
「そうだったの。じゃあちょうどいいわ。ウェイリスが稽古を付けてあげる。」
「えっ!?本当に良いのか!?」
「ウェイリスに任せなさいっ!!」

 マジかよ……!!上級冒険者に稽古を付けてもらえるなんて――こんなの中々ない機会だぞ……ッ!!
 こうして俺たちはウェイリスの家に行く事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ@10シリーズ書籍化
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...