2 / 80
第2話【予告された出会い】
しおりを挟む「よし、良い買い物が出来て良かった」
剣を買った後、俺は武器屋の前でそう呟く。
――それにしても、
「この本、本当になんなんだろう?」
デスティニーレコード。武器屋の中でホコリを被っていた本。俺はなんでこんな物がどうしても欲しくなったんだ?
というか、何が書いてるんだよ。
そこで俺は近くのベンチに座ると1ページ開いてみた。
――が、なんと古びて黄ばんだ紙には二行しか文字が書かれておらず、更に残りのページも全てが白紙だったのだ。
しかも、その二行に書かれた文章は、
「4月1日:ケティ、セリエラと仲間になる。、4月2日:初依頼でスライムを討伐。――って。なんだ?これ。」
4月1日。それは今日の事だ。そして4月2日にスライム討伐って……誰かの日記か何かか?
俺は一瞬そう考える。が、次の瞬間それは違うという事に気付いた。
それは最初の4月1日の方。ケティ、セリエラと仲間になる。
セリエラという人間は知らないが、ケティというのは俺の幼なじみの名前だった。
そういえばあいつも冒険者試験を受けるとか前会った時言っていたよな……?
女の子なんだから無理するなと注意はしたんだけどな――まぁそういうところも可愛いが。――って!今はそんな事どうでもいいだろう!!
なぜ、この本に俺の幼なじみの名前が書いているんだ!?しかも日にちだってタイミング良く今日だし。
この時、『まるで俺が今日この本を手にする』と決められていたかのように思え、俺は背中に悪寒を感じた。
「どうする……?この本捨てるか……?」
正直、こんな不気味な物持っていたくない。
だけと……自ら貰った物だしな。
「はぁ」とため息ひとつ吐くと、俺は再び冒険者ギルドの方へ歩き出した。
実は冒険者登録の中に「主な使用武器」という物があり、それを記入するとその武器に合った仲間の構成や依頼を教えてくれるらしい。
♦♦♦♦♦
それから俺は剣を担いでデスティニーレコードを手に持ったまま(いちいち家に帰るのは遠いし疲れる)冒険者ギルドへと入った。
「あ、武器を買ってきたんですねハヤト様」
中に入ると、入り口のすぐ正面にある受け付けのお姉さんがそう話しかけてきた。
「あぁ、冒険者として自分の武器持って無かったからな。だから使う武器も冒険者情報に登録してもらおうと思ったんだよ」
「なるほど、そうすれば相性の良い冒険者の方も見つけやすいですしね」
「あぁ、そうだ」
――まぁ、このデスティニーレコードに書いてる通りに行くと今日ケティとセリエラと仲間になるらしいが。
「では、使用武器は――その背中に背負っている剣と、その手に持った本は――」
「あぁ!?ち、違う!!この本は魔導書とかじゃない!!だから登録しなくて大丈夫だ!!」
「そ、そうですか。では使用武器は剣と登録しておきますね」
「あぁ、頼む、」
はぁはぁ、こんな意味の分からない本を持ってるなんてバレたら絶対ヤバいやつに見られるよな、、とりあえず帰ったら外には絶対出さないようにしよう、、
「――はい、登録が完了しました。ハヤト様の剣は通常よりリーチが長い代わり、重量の重いタイプです。ですので遠距離から攻撃出来て相手にスキを作る事の出来る冒険者の方を仲間にするのがおすすめですよ。」
そうして冒険者情報に使用武器を追加し終わると、お姉さんは俺の名前や身長体重、使用武器などが書かれた紙を見せながらそう説明してくる。
なるほど、確か俺の父のパーティーも魔法使いや弓使いがいたような……
よし、少し探してみるか。
「ありがとう、じゃあこれを参考に探してみるよ」
「はい、他にも困った事があればなんでも」
そうして受け付けから離れると、俺は一度ギルド内を見渡した。
そこには俺と同じく今日晴れて冒険者になったであろう人間たちが、パーティーを組むためにそれぞれが数人の塊になって話している。
俺も、この中の誰かに入るのか。
そんな事を考えていた時だ――
「――あ!ハヤトーーっ!!」
「ん?」
急に後ろから名前を叫ばれる。小さな頃から聞いた事のある声色で。
ま、まさかな……?
そうして俺は恐る恐る振り向く――と、そこには、
「やっぱりハヤトだ!!合格したんだね!?私もだよ~!」
「ケティさん、あの人が先程言っていた?」
「うんっ!幼なじみのハヤト!」
「ま、マジか……」
ケティともうひとり、クールな顔立ちの女性が立っていた。
♦♦♦♦♦
「お、お前……ケティだよな?」
「え?そうだよ~?まさか少し会わない間に忘れちゃったかな~?」
ケティは長いブロンズヘアをたなびかせ、優しい水色の瞳でこちらを見つめながらそう言ってくる。
「い、いやそういう事じゃ……そっちの人は?」
そこで俺はケティの横でこちらを緑色の鋭い瞳で見てきているもうひとりの白髪ショートの女性に視線を向けた。
「この人はね~さっき私にパーティー組もうって声を掛けてくれたセリエラちゃん!」
「セ、セリ――そ、そうか。」
「うんっ!この子エルフ族なんだって!!」
い、いや……エルフだというのは髪色や耳の長さを見れば大体分かるが……そんな事よりも今は「デスティニーレコードに出てきた名前の人間が都合良く目の前に現れた」という事実で俺の頭の中はいっぱいだった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる