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第二章[グーネウム帝国編]
久しぶりの再会
しおりを挟む「テツヤ!セリヤ!久しぶりだな!」
がたいのいい冒険者に連れられていた冒険者たちの中から、ひとりの少女か見覚えのある仕草をしながら俺とセリヤにそう声を掛けてきた。――って!?
「「ローズオーラ!?」」
俺とセリヤの声が綺麗にハモる。
そう、なんとその少女は、元レグル山賊リーダーにして、俺たち3人でゴブリンキングを倒したローズオーラだったのだ。
俺たちの叫びを聞いたローズオーラは、笑顔でこっちへ走って来る。そして――
「とうッ!!」
勢いよくセリヤに飛び付いてきた。
「うお!」
後ろに倒れるセリヤ。
しかし、セリヤは全く怒らずに、
「……久しぶりね。」
ローズオーラの小さな頭を撫でながらそう言った。
「ほんとに!早く帰って来いよな!」
「ごめんごめん」
尊いな……って今はそれじゃねぇ!!
「なぁ、オーラ、再開出来たのはめちゃくちゃ嬉しいんだが――なんでお前が今グーネウム帝国に来たんだ?」
そう、俺が気になっていたのはそこだった。
さすがにいきなり過ぎだし、よりにもよってリッチゾーンの城を攻める実行日に来るとはな……いや、嬉しいのは本当なんだからな?
すると、ローズオーラは、「分からないのか?」とでも言いたげな顔をしながら、
「ミリゴのヤツらと一緒にお前らを助けに来たんだぞ?」
がたいのいい冒険者の後ろにいる冒険者たちを指さしながらそう言った。
「助けに来た?」
俺はすぐにローズオーラの指さす方を見る。
すると、そこにいたのはよく見ると知っている顔ぶればかりだった。
「ようテツヤ、久しぶりだな。」
そう言いながら手を上げる頭にハチマキを巻いた片腕の無い冒険者。
「テツヤ、隣のお嬢ちゃん。俺の事覚えてるかぁ?」
笑顔でそう言ってくるムキムキの漢。
「ギル!ジェイド!」
そう、そこにいた冒険者たちは全員、ミリゴの冒険者だった。
「久しぶりだな!」
ミリゴの冒険者たちが全員冒険者ギルドの前まで来ると、俺はギルの方へ近づいて行き、そう言いながら片手を突き出す。
「おう!」
対してギルは、俺とセリヤがミリゴから離れる前、最後に交わした握手の時と同じような笑顔でそう言いながら俺の手を掴んだ。
懐かしいな……こいつ、死の道の時は一緒に行動したんだっけ。
あの頃はまだ俺も未熟だった。思い返して見れば、ミリゴでの経験が無かったら、今の俺は無かったのかもな。――っと、懐かしむのはこれくらいにしておこう。
とにかく、今はなんでみんながグーネウム帝国に来たのかを聞かないとな。
「なぁギル。本当は今からミリゴでの思い出でも語り合いたいところなんだが――それは一旦置いといて、なんでお前らがグーネウム帝国に来たのかを聞かせてくれ。」
俺はギルの手を離すと、早速そう本題に入る。
するとギルは、
「決まってるだろ?ミリゴの冒険者全員で、お前らを助けに来たんだよ。」
先程のローズオーラと同じようなことを言った。
やっぱりこいつらは俺たちを助けに来たのか――ん?待てよ?ってことはリッチゾーンの城を攻めること、知ってるって事か!?なんでだ!?情報なんて漏らして無いはずだが――
俺はそう頭をフル回転させる。しかし、やはり情報が漏れる様なことをした覚えは無かった。
ん?ミリゴのヤツらなら別に知られても良いだろって?いや、ミリゴのヤツらなら良いんだが、部外者に知られているイコールリッチゾーンのヤツらにも知られている可能性があるじゃん?だから焦ってるんだよ。
すると、そう焦って色々考えている俺を見兼ねたのか、ギルが、
「テツヤあれだろ?なんで関係ないミリゴのヤツらが作戦実行日の日丁度に助けにきたんだ!?なんて考えてるだろ?」
俺の心を見透かしているかのようにそう言って来た。
「そう!そうなんだよ!」
一瞬でそのセリフに食いつく俺。
するとそれに対しては近くで会話を聞いていたであろうジェイドがこっちへ近づいてきながらこう言った。
「あいつに死ぬ程頼まれたんだよ、手伝ってくれってな。」
「あいつ?」
俺はあるひとりの冒険者の方を見ているジェイドの視線を追う。
するとそこには、がたいのいい冒険者が居た。
え?あいつ……?確かに昨日の作戦会議にもいなかったし、頼めるとしたらあいつくらいしか居ないだろうが――
「ありえない」俺の頭の中はその単語でいっぱいだった。
だってあいつ、ミリゴの冒険者のこと嫌いだって言ってたじゃねぇか。初対面の時も、散々バカにしてたからな。
しかし、ジェイドの言ったことは本当の様だった。
「別に違うからな……俺はこのままじゃ戦力不足だから仕方なく頼んだだけだ。」
俺に見られていることに気づいたがたいのいい冒険者は、頬を赤らめて、恥ずかしそうにそう言う。
しかしそれに対してジェイドは、
「お前、嘘つくなよな!なぁテツヤ?あいつ俺に会ってそうそうなんて言ったと思う?「昔のことは本当に悪かった、頼む!街がピンチなんだ!」だぜ?」
がたいのいい冒険者を煽るようにそう言う。
「おい!お前!それは言うなよ!」
「へっ!昔のやり返しだ!」
……なるほど、そう言う事か。
がたいのいい冒険者も居ない間に頑張ってたみたいだな。
普通、ずっとバカにしていた相手に頭を下げて頼みごとをするなんて出来ないはずなのにな。
まぁでも、すごいのはこいつだけじゃない。
「――それにしても、よくあんなミリゴをバカにしている様なやつのお願いを聞いたよな。」
俺は横で一緒にジェイドとがたいのいい冒険者の言い合いを見ていたギルの方を向いてそう言う。
そう、すごいのはがたいのいい冒険者だけじゃない。
このお願いを聞いて、ここまで駆けつけたこいつらもすごいからな。
するとギルは、
「もちろん、最初は手伝う気なんて全く無かったさ。知ったこっちゃねぇって感じだった。でもよ――」
「でも?」
「お前が居るって聞いたから、手伝おうって決めたんだ。」
「……ッ!」
こいつ……いくらなんでも俺のこと気にしすぎだろ。まさか好きなのか?
「なんで……なんで俺がいるから手伝おうって思ったんだよ?」
俺はギルにそう聞く。
するとギルは、「忘れたのか?」そう口にしてから、こう言った。
「言っただろ?「俺たちミリゴの住人はお前たちの味方だ」って。」
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