上 下
38 / 98
第一章[ミリゴ編]

紡がれた想い

しおりを挟む

「行くぞセリヤ、オーラ。」
 俺はハチマキを巻いた冒険者の言う通り、先に続く道の方へ歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って!アイツらは大丈夫なの?」
セリヤがゴブリンを倒しながら聞いてくる。

 しかし俺は、
「アイツらは俺たちに託してくれたんだ。だから今は進むぞ。俺たちが討つべき敵はもうすぐそこだ。」
 そう言った。
 俺は今まで頼られる様な人間じゃなかったが、やっとみんなを守れる存在になれたんだ。
 だから俺たちはここでいつまでもゴブリンを倒している場合じゃない。
 早くゴブリン達のリーダーであるゴブリンキングを倒さないと、ミリゴの人達がゴブリンに襲われてしまう。

 すると、俺のセリフを聞いたセリヤは、
「......分かったわ。」
 そう言い、ずっと黙って聞いていたローズオーラも、
 「よし、じゃあ行くか!」
 そう言ってくれた。

 よし、じゃあまずは奥の道を塞いでいるゴブリン達を吹き飛ばすとするか。
 俺は道を塞いでいるゴブリン達の方に杖を向けると、
「俺がアイツらの目を眩ませる。だからセリヤとローズオーラは、その隙にゴブリン達を蹴散らしてくれ。」
 二人にそう言い、
「光を放て!シャイニングボール!!」
 ゴブリン達の頭上に向けてシャイニングボールを放った。

 それに合わせてセリヤとローズオーラは前に出る。
 そしてシャイニングボールがゴブリン達の頭上で爆発し、光を放って目を眩ませた瞬間、
「はぁぁぁ!」「たぁぁぁ!」
 セリヤとローズオーラが同時攻撃。
 奥の道を塞いでいたゴブリン達を蹴散らした。
 よし!この隙に……!

 俺は杖の構えを解くと、直ぐにセリヤとローズオーラの方へ走った。
「テツヤ!ゴブリン達が追いかけて来るわ!急ぎましょ!」
 俺にそう言うセリヤ。

 んなこと分かってるよ!
 俺は急いで奥で待っているセリヤとローズオーラの所まで行くと、
 最後に後ろに振り返り、ゴブリンに囲まれながらも必死に剣を振るうハチマキを巻いた冒険者に、
「お前ら!死ぬなよ!!」
 そう叫んだ。

 すると、ハチマキを巻いた冒険者は頭から血を流しながら笑い、
「ゴブリンキングが死んだ事を知るまでは死ねるかよ!!」
そう言った。
 たく……アイツらは違う意味で俺たちより強ぇよ。よし!俺たちも頑張らねぇとな!
 俺はアイツらの気合いに感心すると、そう自分に喝を入れ直し、
「よし!じゃあ行くぞ!ゴブリンキングはすぐそこだ!」
 セリヤとローズオーラにそう言った。


「はぁはぁ......」
 ハチマキを巻いた冒険者と別れて3分位が経ったが、さっきの場所とは大違いで、ゴブリンキングどころかゴブリン達の気配さえ無かった。
 本当にこの先にゴブリンキングが居るのか?
 俺は走った事による疲労で息を荒くしながらそう思っているとそこでふと、ゴブリンキングがどんな奴なのかに疑問を持った。

 キングって付いてるくらいだから王様みたいに豪華な感じなのか?
 俺は頭の中で考えてみるが、やはり想像が出来なかった。
 いや、だってゴブリンって小汚い卑怯な奴らってイメージじゃん?だからそんな奴が豪華って想像つかなかったんだよ。
 
 「なぁセリヤ、ゴブリンキングってどんな奴なんだ?」
 俺はそう前を走るセリヤにそう聞く。
 200年生きている(多分)ローズオーラなら見た事がある可能性が高いからそっちに聞いても良かったのだが、なんか信用ならないんだよな。
 この気持ち、ここまでずっとこの物語を読んでるやつなら分かってくれるか?

 すると俺の質問を聞いたセリヤは、
「私もこの目で見た事が無いからよくわからないけど、全身に鎧を纏っていて、王冠を被っているとは聞いた事があるわ。」
 そう答えた。
 なるほど、鎧を纏っていて王冠を被っている。かぁ、本当に王様みたいな奴だな。

「なるほどな、教えてくれてありがとよ。」
 俺はゴブリンキングの特徴を教えてくれたセリヤにそう礼を言った。
 その時、
「おい、テツヤ!セリヤ!前見ろ!」
 いきなりローズオーラがそう声を上げた。

「ん?」
 たく、いきなりどうしたってんだよ。
 俺は直ぐにローズオーラの言う通り前を見る。
 するとそこには、
「ギャギャギャァァァ!!」
大量のゴブリン達が、こっちに走って来ている光景があった。

「な!?」
 やっと現れやがったな……!
 たく、さっきまで気配すら無かったのに。
 コイツらは隠れ身の術でも持ってるのかよ!
 俺はいきなりの事に少し戸惑ったが、直ぐに走る足を止め、ゴブリンの方へ杖を向けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜

平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。 都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。 ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。 さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。 こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。

処理中です...