上 下
35 / 98
第一章[ミリゴ編]

作戦

しおりを挟む

「確かに死ぬほど怖いさ、今すぐ家に帰りたいくらいだ。」
 ハチマキを巻いた冒険者はそう言いながらも、
 「でもな、ここに居る冒険者は兄ちゃん達を見て気付いたんだよ。勝てる勝てないじゃなくて、この街を守りたいって気持ちが大切だってな。」
 確かにそう言った。

 更にこう続ける。
「兄ちゃん達がサラマンダーと戦うと決めた時、俺たちは絶対に勝てないと思ってた。
 無駄死にだと、でもそうじゃなかった。
 だから俺たちは決めたんだ、たとえ負けるかもしれない相手でも、絶対に逃げないと!そうだろ?お前ら!」
 そう言い、ハチマキを巻いた冒険者が後ろを向いた瞬間、

「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
 周りに居た冒険者達はそう雄叫びを上げた。
 そして、それを確認すると、
「大丈夫、俺たちなら勝てる。一緒にゴブリン共をぶっ飛ばそうぜ。」
 そう言い、俺の方に拳を突き出してきた。

 なんだ、コイツらめちゃくちゃ成長してるじゃねぇか。
 俺の心配は必要無かったって訳だな。
「あぁ、当たり前だ。」
 俺はミリゴの冒険者がもう大丈夫な事を知るとそう言い、
 ハチマキを巻いた冒険者が突き出してきた拳に拳を合わせる。
 こうして、俺たちミリゴの冒険者と、ゴブリンキング率いるゴブリン軍団の戦いが始まったのだった。

 すると冒険者ギルドの中から村長が出て来て、
「皆さん、集まってくれてありがとうございます。時間が無いので早速説明をしていきます。」
 そう言い、作戦を話し始めた。

「ゴブリンキング率いるゴブリン軍団は、スライムの森の更に奥にある洞窟からこちらへと進んできます。」
 スライムの森の更に奥!?あんな初心者だらけの森の奥にそんな危険な奴らがいたなんて......この街怖ぇ……

「ですから、ここに居る冒険者のうち、前半分はスライムの森へと入り、進んでくるゴブリンを倒して下さい。
 残りの冒険者は、ここに残り、街に流れ込んでくるゴブリンを倒して下さい。」
 
 ん?ちょっと待てよ?ここに居る冒険者は30人くらいだ。
 それの半分だろ?15人で街に来るゴブリンを守るのはともかく、15人で森に入ってゴブリンキング率いるゴブリン軍団を迎え撃つのか!?
 それって大丈夫なのか……?
 まぁ確かにミリゴの人間がゴブリンに襲われる事が一番ダメだから、それだけ街の防衛に人数を割る意味も分からんでもないが……

 俺がそう頭の中で思考を巡らせていると、
「以上が作戦になります。」
 村長がそう言い、直ぐに、
「作戦開始ッ!!」
 開戦を意味するセリフを吐いた。

 ちょ!?もう作戦内容終わり!?
 俺はそういきなりの展開に戸惑うが、
 周りの冒険者達は、
「よし!じゃあ俺たちはスライムの森に行くぞ!」「ゴブリン共を返り討ちにしてやる!」「俺たちならやれるぞ!」
 そう言い、作戦通り前半分に居た冒険者達がスライムの森へと走って行く。

 コイツらはさっきの説明で分かったのかよ!?
 はぁ……ま、まぁ良い。
 確かに一刻も早くゴブリン共を止めに行かないと行けないからな。
 俺は何とかそう頭の中で結論を出すと、セリヤとローズオーラに、声を掛ける事にした。

 すると声を掛けようとしたその時、
「すいません、テツヤさん、セリヤさん、ローズオーラさん、こちらへ来て貰えますか?」
 村長からそう声が掛かった。

 ん?なんだ?
 俺は呼ばれた意味が分からず、
「なんだ?」
 首を傾げながらそう返す。

 すると村長は、
「貴方達はミリゴの冒険者の中で一番の力を持っています。ですから、ゴブリンキングの討伐をお願いしたい。」
 俺たちにそうゴブリンキングの討伐役を頼んできた。
 なるほど、まぁ言われなくても俺たちはそうするつもりだったけどな。

「良いよなお前ら?」
 俺は後ろにいるセリヤとローズオーラの方を見ながらそう言う。二人はもちろん、
「えぇ、もちろんよ。」「当たり前だ!」
 そう言った。
 まぁ分かってたけどな。

「そう言う事だ。」
 俺は顔を村長の方に向けてそう言う。
 すると村長は、
「ありがとうございます!では、貴方立て三人は、私の横にいる冒険者達と一緒に、スライムの森の入り口から道通りに進んで下さい。」
 そう言う。

 そこに居たのは、俺が先程話した頭に赤いハチマキを巻いた冒険者率いる数人の冒険者だった。
 コイツらと行動するのか。これも何かの縁なのかもな。
「分かった。」
 俺は一緒に行動する冒険者達を確認するとそう言うと、少し遅れながらもスライムの森へと走り出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...