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第一章[ミリゴ編]

守るべきもの

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「お前ら!ミリゴ大収穫祭は一旦中止だ!ゴブリン達が洞窟から出てきた!死の道デスロードが来るぞ!」
 森の入り口の方から走って来たその人は、必死の形相でそう言った。

 死の道デスロードだと!?それってだいぶ前にセリヤが言ってた......
 そこで俺は自分の顔が真っ青になっていくのを感じた。

 俺の周りにいた冒険者たちも、死の道デスロードという単語を聞いた途端、さっきまでの笑顔からは想像も出来ない顔になり、
「おい!お前ら、武器を取りに行くぞ!」「急げぇぇぇぇ!!」「早くしないとミリゴが終わるぞ!」
 そう叫びながら冒険者ギルドの方へと走って行った。

 俺たちもここで突っ立ってる場合じゃないな。
 俺はポケットに薬草の入った入れ物をねじ込むと、
「おい、セリヤ、オーラ!俺たちも行くぞ!」
 俺の横でいきなりの出来事に固まっていたセリヤと、どうすればいいか分かっていなさそうなローズオーラにそう言う。

 するとセリヤは、俺のそのセリフで我に返ると、
「えぇ、分かってるわ!」
 そう言い、ローズオーラはいつもの様に両手を腰に当てると、
「仕方ない、我も協力してやる!」
 そう言った。
 こうして俺たちも他の冒険者と同じ様に森の入り口の方へと走って行ったのだった。

 薬草の森を出た後、俺たちは、他の冒険者の様に冒険者ギルドへは行かず、セリヤの家の方へと走っていた。
 まさか今日こんな事が起きるなんて想像もしてなかったから、武器は家に置いて行っちゃってたんだよ。
 
「よし、早く武器の用意をするぞ!」
 俺はセリヤ家のドアを開けるとそう言い、直ぐに杖を置いてある寝室へと走る。
 あ、一応説明すると寝室は玄関から見て左側、風呂場の横にあるんだぜ?って今は説明してる場合では無い!
 俺は寝室に入ると、壁に立てかけてあった杖を掴み、直ぐに玄関の方へと走る。

 すると、ちょうどセリヤも武器を取った所だった様で、寝室を出た途端、ぶつかりかけた。
「おっと!すまねぇ!」
 俺は勢いのままにそう謝る。
 セリヤも、
「えぇ、こっちこそごめん!」
 急ぎ気味にそう謝った。

 するとそこで、俺はセリヤが手に持っていた剣が目に入る。
 その剣は、出会った時に使っていたシンプルな剣でも無ければ、サラマンダーを倒した時に使っていたグリップの部分がピンク色の剣でも無い、セリヤの身体にしては大きめの、大剣だった。

 ん?こんな剣この家にあったっけ?
 俺はその剣の事をセリヤに聞こうとする。
 しかしその瞬間、準備するものが無いから玄関の前で待っていたローズオーラが、
「テツヤ、セリヤ!早くしろ!」
 そう言った。

 確かに今そんな事してる場合じゃないよな。
 俺はローズオーラに、
「すまん!すぐ行く!」
 そう言うと、玄関の方へと走って行った。

 そうしてセリヤ家を出た俺たちは、直ぐに冒険者ギルドへと走り始めた。
 はぁはぁ……こんな連続で走ってたら、戦う前から体力がきれちまうよ……
 俺はそこで、改めて自分の体力の無さを痛感した。

 あ、そう言えばセリヤの剣の事を聞いてなかったな。
 お前らも気になってただろ?
 俺は前を走るセリヤに、
「そういえば、その剣って使った事無いよな?」
 そう聞く。

 するとセリヤは、
「あぁ」
 そう言い、
 手に持っている剣の詳細を話し始めた。
「この剣は、私のお父さんが冒険者だった頃に使ってた剣で、死の道デスロードが来た時の為に置いていたのよ。」

 そうだったのか。
 そう言えばセリヤの両親は、死の道デスロードで死んだって言ってたもんな。今使いたくなる理由もよく分かるぜ。
「そうだったんだな。教えてくれてありがとな。」
 俺はセリヤにそう礼を言うと、
「よし!急ぐぞ!」
 セリヤとローズオーラにそう言い、走る足を早めた。

 それからしばらく走り続けて、俺たちはやっと冒険者ギルドの前まで来る事が出来た。
 はぁはぁ……こうなるんなら冒険者ギルドに武器を置いておくべきだったぜ。
 俺は肩で息をしながら、そう後悔する。
 するとそこで、俺は冒険者ギルドの前に大勢の冒険者が集まっていた事に気付いた。

 そこで俺は改めて、「コイツら全員冒険者なんだな」そう思った。
 ん?そんなの当たり前だろって?
まぁ確かにそうなんだが、今までコイツらがこうやって武装している所をあまり見てなかったからさ。
サラマンダーの時だってビビり散らかしてたから冒険者ってより平民に近かったからな。
 でもこうやってコイツらはミリゴをゴブリンから守ろうとしてる。
ん?待てよ?サラマンダーの時みたいに怖くないのか?俺はふとそう思った。

 いや、確かに冒険者達に対して凄く失礼な疑問だ。
 でもさ、サラマンダーの時はあんなにビビってたのに今回は、こんなにやる気満々ってちょっとおかしくないか?
少なくとも俺はそう思う。

 だから俺は、
冒険者ギルドの前に集まっていたうちの一人である、頭に赤いハチマキを巻いた冒険者に、「お前ら、サラマンダーの時はあんなに戦いたく無さそうだったのに......大丈夫なのか?」
 そう言った。

 するとその冒険者は、
「確かに死ぬほど怖いさ、今すぐ家に帰りたいくらいだ。」
苦笑いしながらそう言った。
 ほらな、やっぱり怖いんだ。
コイツ大丈夫なのか?

 俺は早くも仲間に心配な気持ちが浮かんでくる。
「でもな、」
 ん?でも?
「ここに居る冒険者は兄ちゃん達を見て気付いたんだよ。勝てる勝てないじゃなくて、この街を守りたいって気持ちが大切だってな。」
 ハチマキを巻いた冒険者は、確かにそう言った。
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