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第一章[ミリゴ編]
村長のお礼
しおりを挟む「本当にここで合ってるのか?」
そこは、村長の家とは到底思えない、ボロっちい家だった。
「とりあえずノックしてみましょ」
セリヤがそう言う。
「そうだな」
俺はセリヤが言った通り、見るからに壊れそうな扉をノックした。
すると、しばらくして扉が開き、老人が出てきた。
この人が村長か、優しそうな人だな。
村長は、俺達の姿を見ると、
「おお待ちしておりました。どうぞ入って下さい」
笑顔で俺達を迎え入れた。
中に入ると直ぐにリビングがあり、奥に台所、左側にトイレ、右側には恐らく寝室であろう部屋がある。という間取りだった。
やっぱり外見通り全体的にボロっちいな。
俺がそう思っていると、村長は優しい声で、
「飲み物を出しますので椅子に座って下さい」
そう言い、リビングの真ん中に置いてある椅子を引いた。
「あぁ、わざわざ悪いな」
「いえいえ」
俺とセリヤは言われた通りに椅子に座った、セリヤと隣同士でだ。
俺は椅子に座ると、「ふぅ」と息を整え、ふと家全体を見渡す。今は村長しか居ないみたいだな。
昨日助けた少年Bは、遊びにでも行ってるのか。元気なのはいい事だな。
そんな事を考えていると、村長が飲み物を運んできて俺達の椅子に座った。
「どうぞ、飲んで下さい」
村長がそう俺達に飲み物を渡すと、セリヤは直ぐに、
「ありがとうございます!」
元気よくそう言い、コップいっぱいに入った飲み物をガブ飲みした。
コイツそんなに喉乾いてたのか。確かにケーキワンホールを飲み物無しで食べてたもんな。
俺もそんなセリヤを見ながら飲み物を飲んだ。
お、これお茶か!異世界に来てから飲む機会が無かったから、てっきりこの世界には無いのかと思っていたが、あったんだな。うん、やっぱり美味いぜ。
俺が久しぶりに飲んだお茶に感心していると、村長が、本題を切り出してきた。
「では早速話に入りたいのですが、まずちゃんとお礼を言わせて欲しい。本当にありがとう」
そう言って頭を下げる村長。
それに対してセリヤは、
「全然大丈夫よ、私達は冒険者、人を助ける事が仕事なんだから」
笑顔で村長にこう返した。
これに関しては俺も同感だ。力が無い人たちの事は、力のある冒険者が守らないといけないと思う。まぁ、何でもかんでもするって訳じゃないがな。
セリヤのセリフに感動した村長は感動した様に、
「貴方達はすごく優しい冒険者だ、お礼と言ってはなんだが受け取って下さい」
そう言い、机に一つの袋を置いた。
「これは何が入ってるの?」
セリヤが袋の中身を聞く。すると村長は、
「少ないですが20ゴールド程入れています。これで美味しい物でも食べてください。」
そう言った。
え?マジで!20ゴールドだぞ?20ゴールド!これでいい装備とか買えるじゃねぇか!
俺は笑顔でセリヤの方を見た。
しかしセリヤは手を前に突き出して横にブンブン振り、
「いやいや、ゴールドなんて悪いわよ」
そう言い、渡された袋を村長の方に移動させた。
え、なんでぇ?こういうのは貰った方が良いだろ!変な所で真面目だなコイツ。
俺は何とかセリヤにゴールドを受け取らせる為に、
「このゴールドは村長さんの気持ちなんだし、貰っとこうぜ?」紳士のような声でそう言う。
ん?なんだ?ゴールドが欲しいだけだろって?いや、誰だってゴールドは欲しいだろ!
すると、俺のセリフに押されたのか、セリヤは少し申し訳なさそうな顔をしながらも、
「まぁ、それもそうね、じゃあ貰っておくわ」
そう言い、村長の方に手を伸ばした。
それに対して村長は、
「はい、改めて息子を助けて頂き、ありがとございました」
そう、俺達に改めて感謝を述べ、セリヤの手にゴールドの入った袋を渡した。
「ありがとう」
そう言ってゴールドの袋を受け取るセリヤ、俺はそれを見て、机の下で小さくガッツポーズをした。
よっしゃ!ゴールドゲットだぜ!、よし!今日はクエストするのやーめた!
俺がそんな風に喜んでいると、俺達二人を交互に見てから村長が、
「お礼をする事が出来て良かった。これからどうしますか?まだ居てくれても構いませんが」
そう俺達に聞いてきた。
「どうする?テツヤ」
俺の方を向いてそう聞いてくるセリヤ。
まぁ、正直ずっとここに居てもやることも無いしな。
あと早く今日貰ったゴールドを使いたいし。
だから俺は、
「ここに居てもやる事無いし、帰るか」
セリヤにこう言った。
「じゃあ帰りましょうか」
セリヤもそう俺の意見に賛成する。
コイツ本当にどっちでも良かったんだな。
俺は、椅子から立ち上がり、最後に
「ありがとうな村長、この街の人間はみんな親切で良い奴だな。」
そうお礼を言った、これは嘘でもなんでもない、心の底から思っていた事だった。
「いえいえとんでもないです、ではお気おつけてお帰り下さい。」
村長はそう俺に対して優しい笑顔でそう言った。
そして俺達を見送る為に椅子から立ち上がろうとした――その時、いきなり玄関の扉がノックされ、返事を聞く間もなく扉が開いた。
そして扉から若い男性が身を乗り出す様に入ってきて、
「村長はいますか!」
荒い呼吸をしながらそう言った。
はぁ……またなんか始まるよこれ……
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