余命2ヶ月の侯爵令嬢は初恋の竜魔導師に溺愛される

みあはら

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13- 新しい選択

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 リアム様に真意を確かめるため、早速私は手紙を書くことにした。バルクスに急ぎ駆けつけることはできないし、留学中の彼を煩わせるのは気が引けるが、今は何よりも彼の本心が知りたかった。

 私が目を覚ます前に、一体何があったんだろう。
 どうして彼は____。

__________________

リアム様へ

 この手紙をお読みいただく頃、バルクスでの生活も順調に進んでいることと存じます。ご多忙のところ、お手を煩わせることをお許しください。

 突然のお話で申し訳ありません。私は、リアム様との結婚を心から喜ぶべきなのかどうか、迷っています。今回の婚約が本当にリアム様の望んでいることなのかどうか、不安で仕方ありません。

 もしこの婚約が、リアム様の気持ちを蔑ろにして取り付けられたものであるならば、無理に進めるべきではないと考えています。私は、あなたが心から望むことを尊重したい。そして私自身も、納得のいく形で人生を歩みたいと思っています。

どうか、リアム様の本心を教えていただけたら。

シャーロット・ランドルフ

__________________


 
 手紙を書き終えると、エリズに託し、バルクスへ届けてもらった。
 返事が届くまでの数日間、私は落ち着かない日々を過ごした。何度も自問自答を繰り返し、考えれば考えるほど不安が募る。 
 しかし、リアム様の返事が来るまではどうにもできない。

 そして1週間後、リアム様からの手紙が届いた。エリズから手渡された封筒には、ドラヴィスの印籠と私の名前が記されていた。心臓が激しく脈打ち、緊張で手が震える。

 封を開け、手紙を広げる。そこには、簡潔でありながらも明確な言葉が綴られていた。

__________________

 親愛なるシャーロット

 君の手紙を受け取り、僕も驚いた。君が僕との婚約を喜んでくれるかどうか、不安がなかったと言えば嘘になる。けれど、君までもがそんな不安を抱いてたなんて。この婚約は謀略でも間違いでもない。僕が君を花嫁に迎えたくてしたことだ。
 君が望むのであれば、君の傍で共に歩んでいきたいと思っているよ。

リアム

__________________


 リアム様が本当に、心の底から私を選んでくれたことは、それは夢のような話だった。けれど、何故こんなにも、今までなかった流れで物事が進んでいるのか。
 2回目の人生では、私が行動を起こしたからリアム様と婚約できたはずだ。今回の私は、目を覚ます前に何か違う出来事を起こしていたのかしら……?
 自分のことなのに、理解が追いつかないこの状況に、焦りを感じる。
 手紙を読んだ限り、彼の気持ちは真剣だった。彼の願いを尊重し、このまま婚約を続けるべきなのか。

(それに____『大切な方』とリアム様は、まだ出会ってないのかしら)

 考えれば考えるほど、答えが見つからない。まるで蟻地獄に吸い込まれていくようで、怖くなる。
 しかし、同時に私は新たな可能性も見つめ始めていた。バルクスへの留学だ。
 リアム様が学ぶことを選んだ場所で、私もまた新しい何かを見つけることができるかもしれない。それにサリーヌからの手紙には、もう1つ大切な情報が記されていた。

 ___バルクスに行けば、竜について何か分かるかもしれない。

 呪いに関係があるかまでは定かでは無いと書いてあったものの、彼女はバルクスが何らかの形で竜と関わっていることを知ったようだった。

「......エリズ、お父様の今日のご予定は?」

「本日は1日お屋敷におられます。今は執務室ではないでしょうか」

「......ありがとう!」

 あのお父様が笑顔で快諾してくれるなんて思ってもいないけど、思い立ったが吉日というやつだ。
 私は自室を飛び出し、一目散に父の執務室へ向かう。3回ノックをして、父の返事を待った。

「誰だ」

「お父様、シャーロットです。お話があります」

「シャルか、入りなさい」

 父に促され扉を開けると、書類の山とにらめっこをする父の姿がそこにはあった。

「お忙しいところごめんなさい。実はリアム様からお手紙のお返事があって......どうやら私の杞憂で、リアム様は私のことをとても愛してくださっているようなのです!早くリアム様のお傍に行きたいので、私もバルクスに留学させてもらえませんか?」

 まくしたてるようにそう言うと、父は大きく口を開けたまま固まった。ごめんなさいお父様、1週間前と言ってることが180度違うものね。

「バッ......りゅっ......なっ、何を言ってるんだ!結論を急ぐ必要は無いと伝えたはずだぞ!?」

「ええ、ですが、リアム様から熱烈なお手紙をいただいて、気分が変わってしまいました。一日でも早くお傍にいて差し上げたいのです」

 頬に手を添え、うっとりとした表情で、はあとわざとらしくため息をつく。
 リアム様に心酔して、追いかけるおバカな娘だと思ってくれて構わない。ここまで流れが変わってしまったなら、黒竜の呪いにかかる時期だって今までと同じか分からないのだ。のんびり時間を無駄にしている場合ではない。

「それにバルクスは隣国とはいえ閉鎖的な国だ。お前の留学を受け入れるかどうか......」

「私は留学が許可されたリアム様の婚約者ですのに、ご一緒することが許されないことがありますでしょうか」

「............」

 父は眉間に皺を寄せこめかみを押さえる。頭痛の種になってしまったらしい。

「......ドラヴィス家と相談するから、少し待ちなさい」

 父には申し訳ないが、回り回って父のためでもあるのだ。可愛い娘の命が助かる可能性を、探しに行くわけだから。

 留学の決意が固まるまでの数日間、私は胸に小さな不安を抱えつつも、気分は晴れやかだった。
 もし、結末を変えることができるのだとしたら、今回の人生では、弟の結婚も、両親の人生も見届けたい。
 かすかに芽生え始めた希望を胸に、私は新たな一歩を踏み出そうとしていた。
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