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9- 結婚
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あれから1週間、あれよあれよという間に、婚礼の儀を迎えている。
私の体調を気遣って、準備はほとんどリアム様と公爵夫人がすすめてくれた。
ドレスも色々な形のものを試してみたけれど、最終的に苦しくなりすぎないものを選んでくれたようで、そんな心配りがあたたかかった。
教会の控え室で化粧をしてもらっていると、コンコンと扉を叩く音が鳴る。
「どうぞ」
「シャル、僕だよ。……あぁ、すごく綺麗だね」
私の姿を見るなり、リアム様は嬉しそうに微笑んだ。そんな彼を見て、なんだか恥ずかしくなって頬が熱を持つ。
「リアム様もとっても素敵です」
「ありがとう。もうすぐランドルフ家のみんなも着くみたいだよ」
お母様にお父様、それにペルシカ!
まだ家を出て少ししか経ってないはずなのに、とても懐かしい気持ちになった。
早く会いたいな。花嫁姿を見てどんな反応をしてくれるだろうか。
「ペルシカったら、私に手紙のひとつもくれないんですよ。私は毎日出してると言うのに」
「おや、そうだったの?僕のところには何度か届いたけど……」
「ええ!?」
私が眉を下げながら驚くと、リアム様は面白そうに笑う。
「大丈夫、ペルシカは誰よりも君の身を案じているよ」
私の髪の毛が崩れないように優しく頭に手を乗せて、ふわりと撫でる。
この手を、愛おしいと思える日が来るなんて夢にも思わなかった。
式は、私の体調を考慮して、両家のみのささやかなものとなった。
いつ血を吐くか分からないような状態で、人を招くのも心苦しかったから。
両親もドラヴィス公爵たちも、その気持ちを察してか、認めてくれた。
本来であれば公爵家の一人息子の結婚式なんて、大々的に執り行うのだろう。
(……お義母様もお義父様も、私の事をすごく気遣ってくれる)
感謝の気持ちこそあるが、どこか申し訳なく思ってしまうのも事実だった。
ぼーっと一点を見つめていると、リアム様が心配そうに名前を呼ぶ。すぐに視線を彼に戻し、笑って見せた。
「ごめんなさい、ちょっと考え事を」
「……シャル、実は……」
コンコンコン!
リアム様が何か言いかけた瞬間、けたたましいノックが鳴り響く。
まさか、ペルシカではあるまいな。
「どうぞ」
「姉さん!リ………義兄さん!おめでとう!」
やはり。
「ペルシカ、ありがとう。なんだかすごく元気みたいね」
「あなたに久々に会えたのが嬉しいのよ」
お母様の声だ。ペルシカの後ろから、両親も姿を現す。
「2人とも、今日はおめでとう」
「ありがとうございます」
両親に見て、とドレス姿を見せると、2人とも嬉しそうに微笑んでいた。
「まさかあなたのドレス姿が見れるなんてね」
「姉さんは一生結婚できないと思ってたよ、どっかの誰か以外とは」
「ペルシカ」
私が縁談を渋り続けていたのを知っている家族たちからしたら、そう思うのもわからなくもないけど。。。何もリアム様の前で言うことないじゃない!
そうこうしている内に、ドラヴィス公爵と夫人も教会に着いたようだった。
「リアム、シャーロットさん、おめでとう」
「ありがとうございます」
公爵がそう声をかけると、今度は私の両親がドラヴィス公爵たちに声をかけ、話し始めた。
リアム様と顔を見合せて、笑みがこぼれる。今日私は本当に結婚するんだ。ここに来てやっと、実感が湧いてきた。
……と、同時に、嫌なものも込み上げてくる。
こんな日くらい、忘れさせて欲しかったのに。
表情に出ないように、気合いでなんとかするしかない。せっかくのドレスも、汚してしまっては嫌だもの。
式は1時間程度。それまで我慢すれば大丈夫だから。
「シャル?」
「どうかしましたか?」
「…………いや」
今日くらいは、普通の女の子として、最後まで過ごさせて。お願い、黒竜___。
式の準備が整い、いよいよ両家の両親は控え室を去る。
「新郎新婦のお2人も、こちらへお願いします」
司祭様について行こうと椅子を立ち上がろうとした瞬間、ふらりと倒れそうになる。
「シャル!」
リアム様が支えてくれたおかげで、幸いドレスに支障はなかった。
「ごめんなさい、ずっと座ってたから、立ちくらみかも」
「無理しないで」
「大丈夫です、行きましょう」
精一杯の笑顔でそう言うと、リアム様は心配そうに眉をひそめながらも、私の手を引いてくれた。
「それでは、新郎新婦のご入場です」
私の体調を気遣って、準備はほとんどリアム様と公爵夫人がすすめてくれた。
ドレスも色々な形のものを試してみたけれど、最終的に苦しくなりすぎないものを選んでくれたようで、そんな心配りがあたたかかった。
教会の控え室で化粧をしてもらっていると、コンコンと扉を叩く音が鳴る。
「どうぞ」
「シャル、僕だよ。……あぁ、すごく綺麗だね」
私の姿を見るなり、リアム様は嬉しそうに微笑んだ。そんな彼を見て、なんだか恥ずかしくなって頬が熱を持つ。
「リアム様もとっても素敵です」
「ありがとう。もうすぐランドルフ家のみんなも着くみたいだよ」
お母様にお父様、それにペルシカ!
まだ家を出て少ししか経ってないはずなのに、とても懐かしい気持ちになった。
早く会いたいな。花嫁姿を見てどんな反応をしてくれるだろうか。
「ペルシカったら、私に手紙のひとつもくれないんですよ。私は毎日出してると言うのに」
「おや、そうだったの?僕のところには何度か届いたけど……」
「ええ!?」
私が眉を下げながら驚くと、リアム様は面白そうに笑う。
「大丈夫、ペルシカは誰よりも君の身を案じているよ」
私の髪の毛が崩れないように優しく頭に手を乗せて、ふわりと撫でる。
この手を、愛おしいと思える日が来るなんて夢にも思わなかった。
式は、私の体調を考慮して、両家のみのささやかなものとなった。
いつ血を吐くか分からないような状態で、人を招くのも心苦しかったから。
両親もドラヴィス公爵たちも、その気持ちを察してか、認めてくれた。
本来であれば公爵家の一人息子の結婚式なんて、大々的に執り行うのだろう。
(……お義母様もお義父様も、私の事をすごく気遣ってくれる)
感謝の気持ちこそあるが、どこか申し訳なく思ってしまうのも事実だった。
ぼーっと一点を見つめていると、リアム様が心配そうに名前を呼ぶ。すぐに視線を彼に戻し、笑って見せた。
「ごめんなさい、ちょっと考え事を」
「……シャル、実は……」
コンコンコン!
リアム様が何か言いかけた瞬間、けたたましいノックが鳴り響く。
まさか、ペルシカではあるまいな。
「どうぞ」
「姉さん!リ………義兄さん!おめでとう!」
やはり。
「ペルシカ、ありがとう。なんだかすごく元気みたいね」
「あなたに久々に会えたのが嬉しいのよ」
お母様の声だ。ペルシカの後ろから、両親も姿を現す。
「2人とも、今日はおめでとう」
「ありがとうございます」
両親に見て、とドレス姿を見せると、2人とも嬉しそうに微笑んでいた。
「まさかあなたのドレス姿が見れるなんてね」
「姉さんは一生結婚できないと思ってたよ、どっかの誰か以外とは」
「ペルシカ」
私が縁談を渋り続けていたのを知っている家族たちからしたら、そう思うのもわからなくもないけど。。。何もリアム様の前で言うことないじゃない!
そうこうしている内に、ドラヴィス公爵と夫人も教会に着いたようだった。
「リアム、シャーロットさん、おめでとう」
「ありがとうございます」
公爵がそう声をかけると、今度は私の両親がドラヴィス公爵たちに声をかけ、話し始めた。
リアム様と顔を見合せて、笑みがこぼれる。今日私は本当に結婚するんだ。ここに来てやっと、実感が湧いてきた。
……と、同時に、嫌なものも込み上げてくる。
こんな日くらい、忘れさせて欲しかったのに。
表情に出ないように、気合いでなんとかするしかない。せっかくのドレスも、汚してしまっては嫌だもの。
式は1時間程度。それまで我慢すれば大丈夫だから。
「シャル?」
「どうかしましたか?」
「…………いや」
今日くらいは、普通の女の子として、最後まで過ごさせて。お願い、黒竜___。
式の準備が整い、いよいよ両家の両親は控え室を去る。
「新郎新婦のお2人も、こちらへお願いします」
司祭様について行こうと椅子を立ち上がろうとした瞬間、ふらりと倒れそうになる。
「シャル!」
リアム様が支えてくれたおかげで、幸いドレスに支障はなかった。
「ごめんなさい、ずっと座ってたから、立ちくらみかも」
「無理しないで」
「大丈夫です、行きましょう」
精一杯の笑顔でそう言うと、リアム様は心配そうに眉をひそめながらも、私の手を引いてくれた。
「それでは、新郎新婦のご入場です」
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