余命2ヶ月の侯爵令嬢は初恋の竜魔導師に溺愛される

みあはら

文字の大きさ
上 下
9 / 14

9- 結婚

しおりを挟む
 あれから1週間、あれよあれよという間に、婚礼の儀を迎えている。
 私の体調を気遣って、準備はほとんどリアム様と公爵夫人がすすめてくれた。
 ドレスも色々な形のものを試してみたけれど、最終的に苦しくなりすぎないものを選んでくれたようで、そんな心配りがあたたかかった。
 教会の控え室で化粧をしてもらっていると、コンコンと扉を叩く音が鳴る。

「どうぞ」

「シャル、僕だよ。……あぁ、すごく綺麗だね」

 私の姿を見るなり、リアム様は嬉しそうに微笑んだ。そんな彼を見て、なんだか恥ずかしくなって頬が熱を持つ。

「リアム様もとっても素敵です」

「ありがとう。もうすぐランドルフ家のみんなも着くみたいだよ」

 お母様にお父様、それにペルシカ!
 まだ家を出て少ししか経ってないはずなのに、とても懐かしい気持ちになった。
 早く会いたいな。花嫁姿わたしを見てどんな反応をしてくれるだろうか。
 
「ペルシカったら、私に手紙のひとつもくれないんですよ。私は毎日出してると言うのに」

「おや、そうだったの?僕のところには何度か届いたけど……」

「ええ!?」

 私が眉を下げながら驚くと、リアム様は面白そうに笑う。

「大丈夫、ペルシカは誰よりも君の身を案じているよ」

 私の髪の毛が崩れないように優しく頭に手を乗せて、ふわりと撫でる。
 この手を、愛おしいと思える日が来るなんて夢にも思わなかった。
 
 式は、私の体調を考慮して、両家のみのささやかなものとなった。
 いつ血を吐くか分からないような状態で、人を招くのも心苦しかったから。
 両親もドラヴィス公爵たちも、その気持ちを察してか、認めてくれた。
 本来であれば公爵家の一人息子の結婚式なんて、大々的に執り行うのだろう。

(……お義母様もお義父様も、私の事をすごく気遣ってくれる)

 感謝の気持ちこそあるが、どこか申し訳なく思ってしまうのも事実だった。

 ぼーっと一点を見つめていると、リアム様が心配そうに名前を呼ぶ。すぐに視線を彼に戻し、笑って見せた。

「ごめんなさい、ちょっと考え事を」

「……シャル、実は……」

 コンコンコン!

 リアム様が何か言いかけた瞬間、けたたましいノックが鳴り響く。
 まさか、ペルシカではあるまいな。

「どうぞ」

「姉さん!リ………義兄さん!おめでとう!」

 やはり。

「ペルシカ、ありがとう。なんだかすごく元気みたいね」

「あなたに久々に会えたのが嬉しいのよ」

 お母様の声だ。ペルシカの後ろから、両親も姿を現す。

「2人とも、今日はおめでとう」

「ありがとうございます」

 両親に見て、とドレス姿を見せると、2人とも嬉しそうに微笑んでいた。

「まさかあなたのドレス姿が見れるなんてね」

「姉さんは一生結婚できないと思ってたよ、どっかの誰か以外とは」

「ペルシカ」

 私が縁談を渋り続けていたのを知っている家族たちからしたら、そう思うのもわからなくもないけど。。。何もリアム様の前で言うことないじゃない!

 そうこうしている内に、ドラヴィス公爵と夫人も教会に着いたようだった。

「リアム、シャーロットさん、おめでとう」

「ありがとうございます」

 公爵がそう声をかけると、今度は私の両親がドラヴィス公爵たちに声をかけ、話し始めた。
 リアム様と顔を見合せて、笑みがこぼれる。今日私は本当に結婚するんだ。ここに来てやっと、実感が湧いてきた。
 ……と、同時に、嫌なものも込み上げてくる。
 こんな日くらい、忘れさせて欲しかったのに。
 表情に出ないように、気合いでなんとかするしかない。せっかくのドレスも、汚してしまっては嫌だもの。

 式は1時間程度。それまで我慢すれば大丈夫だから。

「シャル?」

「どうかしましたか?」

「…………いや」

 今日くらいは、普通の女の子として、最後まで過ごさせて。お願い、黒竜___。

 式の準備が整い、いよいよ両家の両親は控え室を去る。

「新郎新婦のお2人も、こちらへお願いします」

 司祭様について行こうと椅子を立ち上がろうとした瞬間、ふらりと倒れそうになる。

「シャル!」

 リアム様が支えてくれたおかげで、幸いドレスに支障はなかった。

「ごめんなさい、ずっと座ってたから、立ちくらみかも」

「無理しないで」

「大丈夫です、行きましょう」

 精一杯の笑顔でそう言うと、リアム様は心配そうに眉をひそめながらも、私の手を引いてくれた。

「それでは、新郎新婦のご入場です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

婚約解消をしたら、隣国で素敵な出会いがありました。

しあ
恋愛
「私との婚約を解消して欲しい」 婚約者のエーリッヒ様からそう言われたので、あっさり承諾をした。 あまりにもあっさり承諾したので、困惑するエーリッヒ様を置いて、私は家族と隣国へ旅行へ出かけた。 幼い頃から第1王子の婚約者という事で暇なく過ごしていたので、家族旅行なんて楽しみだ。 それに、いった旅行先で以前会った男性とも再会できた。 その方が観光案内をして下さると言うので、お願いしようと思います。

処理中です...