余命2ヶ月の侯爵令嬢は初恋の竜魔導師に溺愛される

みあはら

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1-死の呪い

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「_______非常に申し上げにくいことですが…………シャーロットお嬢様には、黒竜の呪いがかけられています」
 
 医者の声は低かった。
 私が噴水に躓いて手を擦りむいた時よりも、階段から滑り落ちて体を打った時よりも、40度の熱を出して寝込んだ時よりも、うんと。


 黒竜の呪い。
 かけられたものの命を、じわじわと蝕む死の呪い。
 誰にかけられたのかすら検討もつかない呪いを、私は身に受けたらしかった。


 きっかけは、咳が多く出るようになり、ついにそれと一緒に血が出たこと。
 突然のことで手で受け皿を作る暇もなく、淡いピンクのドレスが血に染まって、滅多に表情を変えない侍女が青ざめたのを覚えている。
 駆け付けた父が専属医を家に呼び、その診断が下された。


「余命は、もって1年、早ければ______2ヶ月です」


 その言葉を聞いた両親が、言葉を失う。
 私は、自分事と思えないほど冷静だった。
 何故ならば、私は知っていたから。私が黒竜の呪いを受けること、そして今から2ヶ月後に本当に死んでしまうことも。
 誰からかけられたかはわからないけど、それ以外のことはある程度わかる。

 何故ならばこの人生は、私にとって2回目だから_____。


 前回1度目の人生で何者かに黒竜の呪いをかけられた私は、医師に診てもらった2ヶ月後に死んだ。
 苦しみながら人生を終えた私を見て、家族は泣いていた。

 私に呪いをかけた人物は、最後まで分からなかった。
 そして目が覚めたら、私は、血を吐く1になっていた。恐らくその頃に、黒竜の呪いに関係することが私の身に起きたのだろう。
 前回の通り過ごすのなら、タイムリミットはあと2ヶ月。
 黒竜の呪いは、1度かけられたら術者が死ぬまで解けないと言われている。2ヶ月の間に、相手を見つけ出すことができるだろうか。

(けど……そんなことに時間を使うなら)

 私には前回の人生で、ひとつ思い残したことがある。また死んで、また戻れる保証はない。
 だったら思い残すことがないよう、最善を尽くすのが1番だ。

(私の心残り、それは_____)


 幼い頃から秘かに慕い続けていた、に想いを伝えられなかったこと。


 幼い頃一度顔を合わせてから、ずっと想い続けてきた相手が私にはいるのだ。
 18にもなる侯爵令嬢なのに、未だに縁談を良しとしていなかった理由のひとつもそれだ。
 いつかは家のために結婚をしなくなるとしても、今はまだ、あと少しだけ彼のことを想っていたかった。その気持ちの整理をつけようとしているところだった。
 けれどどの道あと2ヶ月しか持たない命ならば、両親も縁談を持ってくることは無いはず。
 となれば、最後の最後まで彼との時間に全力を注ぐことが出来るのである。


「一生のお願いだから、どうかもう一度でそのお姿を見ることが叶いますように」




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