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なんでも欲しがる義妹に婚約者を寝取られた私ですが、大商人になった幼馴染が迎えにきてくれて幸せです
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「ヴィクトリア、お前との婚約を破棄する」
そう唐突に告げたのは私の婚約者――アイクだ。
まぁ、今日で婚約者ではなくなるみたいだけど。
私はアイクの隣に立つ女に視線を向けた。
私の物をなんでも欲しがるクズの義妹――マリアだ。言うまでもなく、嫌いである。
まったく、卑しい笑みを向けられるこっちの気持ちにもなってほしいものだ。
正直言って、気持ちが悪い。鳥肌が立ちすぎて、今にも飛び立ってしまいそうだ。
「アイク様、見てくださいお義姉様の顔。足りない頭では、今の状況が理解できないようですわ」
「そう言ってやるな、マリア。突然このようなことを言われては、誰だってそうなる」
「アイク様ったら、やーさーしーいっ!」
「…………」
状況は婚約を破棄される以前から理解していた。
バカでアホで無能すぎる二人は、そんなこと知ったこっちゃないことだと思うけど。
だからこそ、すでに感づかれていることに二人は気づくことができない。
私の演技が上手くいっているということもあるだろう。
この日のために表情を作る練習をしてきたのだから、当然と言えば当然だ。
……どうして気づかれていないと思っているのか、とても不思議ではあるけど。
あれだけ私が隣の部屋で寝ているにも関わらず、ベッドの上で『あんあん』、『ぱんぱん』とやることやっていたら普通に気づくでしょ。
アホな二人は私にバレていないと思っていたのか、徐々にヒートアップしていったけど。
まぁ、別にそれでよかった。愛情なんて元々お互い向けあっていたわけでもないし。
だからこそ、こうやって演技しているわけで。
この二人には、私が悲しんでいると盛大に勘違いしてほしいのだ。
どうせ、この二人はあとあと泣きついてくるはずだから、そのときに私から振ってやるために。
「……そんなっ」
「ぷぷぷ。今さら状況を理解しても遅いから。残念、あたしがお義姉様の婚約者、寝取っちゃった」
「そういうわけだから、出て行ってくれ。ここは俺とマリアの愛の巣なんだ」
「……そう、ですか。わかりました……」
私は悲しみの表情を浮かべながら、荷物をまとめて屋敷を出た。
内心では、ニッコニコだったけど。
数ヶ月後。私は身分違いで結婚できずにいた幼馴染だった男性と幸せに暮らしていた。
そんなある日のこと。
「ヴィクトリア! 俺が悪かった! もう一度やり直してくれないか!」
「お義姉様! なんでお義姉様が大商人のジャック様と婚約しているの! アイクは返すから交換して!」
どこから聞きつけてきたのか、クズでお似合いの二人が私たちの愛の巣で騒ぎ始めた。
そんな騒ぎの中、
「ははは。話では聞いていたけど、本当に愉快な人たちだね、ヴィクトリア」
と、ジャックは楽しそうに笑っていた。
「やめてよ、ジャック。本当、あの二人には迷惑かけられっぱなしなんだから……」
「でも、あの二人のおかげで僕は君とこうして一緒にいられるんだ」
「ジャック……」
確かに、ジャックの言うとおりだ。
マリアがアイクを寝取ってくれなければ、こんな幸せな日常を送ることはできなかった。
だから、お礼として盛大に振ってやろう。
「ヴィクトリア、僕も一緒にいいかい?」
「いいに決まってるでしょ? ジャックはもう当事者なんだから、盛大に振ってあげてよ」
そう話しながら、玄関を開け、そして――
「「私(僕)、あなたたちのことが死ぬほど大嫌いなので早く帰ってください!」」
私たちは同じタイミングで、同じ言葉を愚かな二人に言ってやるのだった。
【終わり】
そう唐突に告げたのは私の婚約者――アイクだ。
まぁ、今日で婚約者ではなくなるみたいだけど。
私はアイクの隣に立つ女に視線を向けた。
私の物をなんでも欲しがるクズの義妹――マリアだ。言うまでもなく、嫌いである。
まったく、卑しい笑みを向けられるこっちの気持ちにもなってほしいものだ。
正直言って、気持ちが悪い。鳥肌が立ちすぎて、今にも飛び立ってしまいそうだ。
「アイク様、見てくださいお義姉様の顔。足りない頭では、今の状況が理解できないようですわ」
「そう言ってやるな、マリア。突然このようなことを言われては、誰だってそうなる」
「アイク様ったら、やーさーしーいっ!」
「…………」
状況は婚約を破棄される以前から理解していた。
バカでアホで無能すぎる二人は、そんなこと知ったこっちゃないことだと思うけど。
だからこそ、すでに感づかれていることに二人は気づくことができない。
私の演技が上手くいっているということもあるだろう。
この日のために表情を作る練習をしてきたのだから、当然と言えば当然だ。
……どうして気づかれていないと思っているのか、とても不思議ではあるけど。
あれだけ私が隣の部屋で寝ているにも関わらず、ベッドの上で『あんあん』、『ぱんぱん』とやることやっていたら普通に気づくでしょ。
アホな二人は私にバレていないと思っていたのか、徐々にヒートアップしていったけど。
まぁ、別にそれでよかった。愛情なんて元々お互い向けあっていたわけでもないし。
だからこそ、こうやって演技しているわけで。
この二人には、私が悲しんでいると盛大に勘違いしてほしいのだ。
どうせ、この二人はあとあと泣きついてくるはずだから、そのときに私から振ってやるために。
「……そんなっ」
「ぷぷぷ。今さら状況を理解しても遅いから。残念、あたしがお義姉様の婚約者、寝取っちゃった」
「そういうわけだから、出て行ってくれ。ここは俺とマリアの愛の巣なんだ」
「……そう、ですか。わかりました……」
私は悲しみの表情を浮かべながら、荷物をまとめて屋敷を出た。
内心では、ニッコニコだったけど。
数ヶ月後。私は身分違いで結婚できずにいた幼馴染だった男性と幸せに暮らしていた。
そんなある日のこと。
「ヴィクトリア! 俺が悪かった! もう一度やり直してくれないか!」
「お義姉様! なんでお義姉様が大商人のジャック様と婚約しているの! アイクは返すから交換して!」
どこから聞きつけてきたのか、クズでお似合いの二人が私たちの愛の巣で騒ぎ始めた。
そんな騒ぎの中、
「ははは。話では聞いていたけど、本当に愉快な人たちだね、ヴィクトリア」
と、ジャックは楽しそうに笑っていた。
「やめてよ、ジャック。本当、あの二人には迷惑かけられっぱなしなんだから……」
「でも、あの二人のおかげで僕は君とこうして一緒にいられるんだ」
「ジャック……」
確かに、ジャックの言うとおりだ。
マリアがアイクを寝取ってくれなければ、こんな幸せな日常を送ることはできなかった。
だから、お礼として盛大に振ってやろう。
「ヴィクトリア、僕も一緒にいいかい?」
「いいに決まってるでしょ? ジャックはもう当事者なんだから、盛大に振ってあげてよ」
そう話しながら、玄関を開け、そして――
「「私(僕)、あなたたちのことが死ぬほど大嫌いなので早く帰ってください!」」
私たちは同じタイミングで、同じ言葉を愚かな二人に言ってやるのだった。
【終わり】
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