54 / 98
1章 稀代の商人
五十四、それぞれの想い(1)
しおりを挟む
「…少し、一人にしてくれ」
「主…」
「ドイル、命令だ」
深く沈んだような顔をした主の顔を見て、私はすぐにその場を去った。
…やはり、私では主の救いにはなれない…
ガラハドさん、早く戻ってきてください。彼には、あなたが必要です…
「ビクッ…はい」
分かっているさ、あいつの言うこと…
それに、この人生は神が与えてくれたきっかけであり、俺自身が俺自身として生きられるような人生だった。
赤ん坊の時から、ガラハドはずっと俺の味方をしてくれたし、親としても、兄としても…そして、護衛としても、相棒としてもあいつが好きだったし、本当なら手放したくはない…だが…だからこそ…
「…俺のせいで死なせるなんて出来ねぇよ…
俺が生きられているのはあいつがずっと助けてくれるからだ。
あいつがずっと俺の隣で、間違えば正して、協力もずっとしてくれる…
あいつは俺の人生の中で、一生の恩を感じた恩人なんだ…
そんな恩人を、俺の手で殺すことになるんだぞ…
ああそうさ、怖いに決まってる…
俺なんかが大切な人を殺してしまうなんて、想像もしたくないんだよ…
だからこそ、あいつには幸せに…俺なんかの為に命を捨てず、 幸せに生きてほしいんだよ…」
「…ガラハドよ、なぜ戻ってきた?」
「…主に、任を解かれ、ました…」
「…ガラハドよ、友としてお前に問う。
お前が初めて我らの騎士となった時、お前は周りの反対を押し切って騎士になったな」
「…」
「その時、言った言葉はなんだったか。
「俺が俺の意思でその人生を生きることを誓った。
俺は自分の未来を誰にも委ねず、後悔しても良いから俺がしたいことをする」
…ガラハド!あの時の威勢はどうした!
お前の騎士としての、男としての意地はその程度で崩れるものなのか!」
俺は叫んだ。とにかく、あいつの心に響かせるように叫び続けた。
「昔のお前も、最近までのお前も全盛期のように、とても幸せな顔をしていた!
何故か?お前が自分で選んだ道だからだ!
お前がその道を正しいと信じて、その日常が幸せと感じていたからだ!
だったらお前のすることは1つしかないだろうが!
ユーグからすれば…あいつの親は、俺じゃなくお前だ!
俺が王としてあいつに接することはできても、生まれた時から信じて生きてきたお前の方が親として、相棒としてあいつを支えられるんだ!
分かったら…とっととユーグの元へ走れ!
あいつは…あいつは、お前と過ごしている日常の中では幸せな笑顔が溢れていた…お前しか居ないんだ…あいつを、生者として生かせるのは…
お前だって、初めて会った時に分かっただろ…
あいつは、生まれた時から既に周りが信じられず、まるで死人のような顔つきだった…
それを変えたのは、お前だけなんだ…今、助けられるのはお前だけなんだよ…」
「…分かってるさ…だが、あいつは俺の手を必要としていない!」
「違う!本当に必要だからこそお前を死なせたくないからこそ、お前を離すことを選んだんだ!
お前もあいつも、なぜそんなに生き方が下手なんだ…」
「…男とはそういうものではないでしょうか」
その声が聞こえた方を、咄嗟に2人は見上げた。
「主…」
「ドイル、命令だ」
深く沈んだような顔をした主の顔を見て、私はすぐにその場を去った。
…やはり、私では主の救いにはなれない…
ガラハドさん、早く戻ってきてください。彼には、あなたが必要です…
「ビクッ…はい」
分かっているさ、あいつの言うこと…
それに、この人生は神が与えてくれたきっかけであり、俺自身が俺自身として生きられるような人生だった。
赤ん坊の時から、ガラハドはずっと俺の味方をしてくれたし、親としても、兄としても…そして、護衛としても、相棒としてもあいつが好きだったし、本当なら手放したくはない…だが…だからこそ…
「…俺のせいで死なせるなんて出来ねぇよ…
俺が生きられているのはあいつがずっと助けてくれるからだ。
あいつがずっと俺の隣で、間違えば正して、協力もずっとしてくれる…
あいつは俺の人生の中で、一生の恩を感じた恩人なんだ…
そんな恩人を、俺の手で殺すことになるんだぞ…
ああそうさ、怖いに決まってる…
俺なんかが大切な人を殺してしまうなんて、想像もしたくないんだよ…
だからこそ、あいつには幸せに…俺なんかの為に命を捨てず、 幸せに生きてほしいんだよ…」
「…ガラハドよ、なぜ戻ってきた?」
「…主に、任を解かれ、ました…」
「…ガラハドよ、友としてお前に問う。
お前が初めて我らの騎士となった時、お前は周りの反対を押し切って騎士になったな」
「…」
「その時、言った言葉はなんだったか。
「俺が俺の意思でその人生を生きることを誓った。
俺は自分の未来を誰にも委ねず、後悔しても良いから俺がしたいことをする」
…ガラハド!あの時の威勢はどうした!
お前の騎士としての、男としての意地はその程度で崩れるものなのか!」
俺は叫んだ。とにかく、あいつの心に響かせるように叫び続けた。
「昔のお前も、最近までのお前も全盛期のように、とても幸せな顔をしていた!
何故か?お前が自分で選んだ道だからだ!
お前がその道を正しいと信じて、その日常が幸せと感じていたからだ!
だったらお前のすることは1つしかないだろうが!
ユーグからすれば…あいつの親は、俺じゃなくお前だ!
俺が王としてあいつに接することはできても、生まれた時から信じて生きてきたお前の方が親として、相棒としてあいつを支えられるんだ!
分かったら…とっととユーグの元へ走れ!
あいつは…あいつは、お前と過ごしている日常の中では幸せな笑顔が溢れていた…お前しか居ないんだ…あいつを、生者として生かせるのは…
お前だって、初めて会った時に分かっただろ…
あいつは、生まれた時から既に周りが信じられず、まるで死人のような顔つきだった…
それを変えたのは、お前だけなんだ…今、助けられるのはお前だけなんだよ…」
「…分かってるさ…だが、あいつは俺の手を必要としていない!」
「違う!本当に必要だからこそお前を死なせたくないからこそ、お前を離すことを選んだんだ!
お前もあいつも、なぜそんなに生き方が下手なんだ…」
「…男とはそういうものではないでしょうか」
その声が聞こえた方を、咄嗟に2人は見上げた。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう
サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」
万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。
地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。
これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。
彼女なしの独身に平凡な年収。
これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。
2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。
「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」
誕生日を迎えた夜。
突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。
「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」
女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。
しかし、降り立って彼はすぐに気づく。
女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。
これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる