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9話

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「おはよう」
「お、おはようございます。昨日も遅かったのに早いですね」
「まぁ、スキルのおかげで回復が早いからね」
「とりあえず、ご飯を食べてから出ますか?」
「いや、今日は先に迎えに行くよ。それと、全員で5人分、作ってもらうけど大丈夫?」
「…はい、お任せ下さい!」
「よし、それじゃあ着いてきて。あ、念の為に…これ、持っておいて」
「これは…ナイフ、ですか?」
「というより、短剣だけどね。怖くても、危なくなったらそれで敵を刺して。それで倒せるかは分からないけど…少なくとも、無駄死にするよりかはマシでしょ?」
「は、はい…」

命を狩る武器、それを握るだけでも相当な恐怖だ。しかし、こんな世界である以上、いつかはしなければいけないこと…スライムだけを狩るのは、いずれできなくなる。そうなる前に、人型…それが出来なくとも、狼や兎をという行為を覚えなければいけない…

「最後にもう一度確認するけど…この先、着いてくるというのは、この世界に適応すると同時に、魔物であると言え、命を奪う人生になる。
それでも、着いてくる?」
「…昨晩、あの後少し考えていました。本当にそれが正しいのか…私にできることなのか…
地球に居た時にも、私は何も考えずにお肉を食べていたし、命を奪うなんて、とても考えたことがなかった。
けれど…自分が死ぬのはもちろん、誰かを失うのを見たくない。
覚悟は決めました。ご迷惑をお掛けする自覚はあります。
しかし…私に、命を奪う術を教えて下さい」

少し、呆気にとられた。最初にこの階に登ってきた時、彼女からは絶望と、少しの希望を感じていた。
絶望は、仲間と思っていた学校の生徒たちに捨てられたこと、そしていつ魔物に命を奪われてもおかしくないということ…
対して、希望はここに入ること。
それでも、絶望が強く、直ぐに死んでしまうような、そんな人間だった。
だけど…だけど…

「…わかった。覚悟を決めた人間は、歓迎するよ」

少なくとも、あの時の彼女はもう居ない。殻を破り、覚悟という名の理性を持った真っ当な人間なのだ。

「ついてきて、非常口を降りた瞬間、全方位が危険に溢れかえる。常に短剣を持てるように、意識を少しかたむけながら降りるよ」
「はい!」

その返事を聞き、静かに私は頷いた。そして、私が先陣を切り、少しずつできるだけ音を立てずに1階まで降りていった。

「…とりあえず、ここら辺に敵は居ないから、直ぐに体育館の方に移るよ。
できるだけ遮蔽物を影にして、敵の目に映らないように移動、ok?」
「ふぅぅ…はい、行きましょう」

校舎裏から少しづつ回り、体育館へ通じる道へ向かった。

「ストップ。ここから先は、グラウンドからも見えるから、少しづつ進むよ」
「注意するのはグラウンドの方向ですか?」
「そうだね。後ろは柵があるから、とりあえずはそっち方向だけど…はぐれたゴブリンが居るかもしれない。もしかしたら後ろから来るかもね」
「うぅ…」
「大丈夫?まだ行けそう?」
「だ、大丈夫です」
「じゃ、合図したら、あそこの調理室裏まで走るよ」
「はい!」
「…まだこっち見てるね。もう少し、もう少し…よし、今!」
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