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ゾンビパニックで火力マシマシ

上手く行く保障はなかった

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「ここは………ちょっと難しいな」
 リーダーが建物に入ってから上がっていたテンションが下がったようだ。
「どうしたんですか?」
「ココに備蓄してあった物がなくなってる……」
「そんな!」
 他の人が慌てて中に入るとそのまま立ち尽くす。
「……ない」
 自分も中をのぞいてみるとがらんどうで雨風を凌ぐためだけの小屋に思えた、これではゾンビをやり過ごす事はできてもしばらく滞在する事はできそうにない。

「…………仕方ない、今日はココで一晩だけ過ごそう」
 リーダーがああでもないこうでもないと考えた結果ひとまずこの何も無い小屋で一晩だけ過ごす事にしたようだ。


「ところでよリーダー」
 荷物を広げて腰を落ち着けた頃にそういえばと誰かが声を上げた。
「なんだよ」
「もうとっくに爆発的なとか聞こえてきてもいい頃じゃないか」
「…確かにそうだな」
 全員で来た方向を向くが特に変わった様子はない。
「もしかして設計ミスか………」
「かもしれん」
 誰かが呟く、リーダーも認めないといけないので弱弱しく肯定する。
「じゃあココにいるよりも戻った方がいいじゃない、ちょっと見てきなさいな」
「……わかった」
 もしかすると臨界点に達する時間だけミスって戻る事に巻き込まれる可能性があるが、おそらく失敗した可能性の方が高い、リーダーとしてもがらんどうの小屋で一晩明かすのは勘弁したいので軽装にしてすぐ逃げられるようにして街に戻ろうとする。
「あそうだ、キミはついて来てほしい」
「自分ですか?」
「あぁ、ココならゾンビは回避できるだろうが自分はできないんでね、護衛としてついてきてもらうよ」
「わかりました」
 自分だけなら最悪でも端末の緊急脱出が作動して帰還できるだろうから問題ないだろう、他の人達はゾンビに対抗できる手段を失うのは嫌だろうが、それでも安全を確認して戻って来てもらう方がマシと考えて少し表情に出すだけに留める。


「街は………、無事っぽいな」
「ですね」
 戻ってみると街はつい先ほどの様子のままで何か起こった様子もない。
「っ……、下にいくぞ……」
 意を決したようで地下に降りていく、その途中でも特に何か起こった様子はない。

「ついたぞ」
 ついに何事もなく動力炉のある区画の前に到着した、流石にここまでくれば否が応でも緊張が高まってくる、リーダーも手が震えており、時折お腹を押さえている。
「………入るぞ」
 勢いをつけて中に入るとその中では動力炉が順当に稼働していたが特に問題は起こっている様子はない。
「……………なんだこれ」
 特に問題がなかったのか全身の力が抜けたようでおぼつかない足取りで操作版とにらめっこする。
「はっ、はははぁ……安全装置がしっかりと機能しているよ」
「なんとも……」
 どうやら失敗したようだ。
「とりあえずみんなを呼び戻そう」
「そうですね」
 せっかく全員で準備をしたにも関わらず無駄に街と離れた拠点を往復すうだけになってしまった。
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