異世界に行って転生者を助ける仕事に就きました

海洋の底へ

大きなサメが来ていた

「お前ら、武器は無いか？！」
　遺跡を出ると女性の慌てた声が聞こえてきた。
「そんなの持ってないですよ」
「そうだよなぁ、おい通信至急援護および武器の射出、急げ！」
　女性が全体に向けて叫ぶ、大きな声で耳を塞ぎたいがそのためにはヘルメットを外さなければならないがそんな事はできない。
「全員、１回はスーツが耐えてくれると思うから頑張って生き残ってくれ」
「何からですか、アレか……」
　叫んでいる女性が向いている方向を見ると、大きなサメがこちらに向かっていた。
「いや無理でしょ」
　ロボットに乗っている訳でもないので戦えると思えない、しかしこの世界に来る前に水中戦があるのを聞いたような事を思い出したので戦ってみることにする。
　いつでも魔法が使えるように構える、しかしサメはこちらではなく別の方へ向かっていった。

　サメは大きな口を開けたまま誰かに食らいつきそのまま何処かへいってしまった。
「彼の事は一旦忘れろ、一度船に戻って船で追いかけるぞ」
　今慌てたところで何もできないので心を落ち着かせて船に戻る。

　全員がヘルメットを外して誰がサメにさらわれたか確認する。
「ではさっそく追跡を開始する」
　船に戻るなり女性が近くの機器を操作しはじめる。
「生体反応はまだある、急いで行けばまだ可能性がある、船を全速力で向かわせる、君たちもスーツを脱いで後は私たちが責任をもってあの子を回収します」
　今までで一番真面目な顔をしてこちらを見ている、遺跡発見で上がっていたテンションを元に戻したのだろう、まるで別人のようにも見える、とにかくここから先は本業の人たちに任せて自分達は待機しておこう。

　大きなモニターに移動する赤い点が表示された。
「まだそんなに遠くないな、この付近なら海流もそう強くなかったハズだ、急げ」
　深海でついさっき会ったばかりで行方不明になった人のためにそこまで必死になって動けるなんて、さすがまとめ役の人だと感心していると。
「あのスーツ型落ちだけど高いんだよ、まだまだ使えるんだよ……」
　人ではなくスーツの方の心配をしていた、最悪人が死んだとしてもスーツさえ回収できれば良いという考えらしい。

「見つけた！」
　船の性能が良かったのか、すぐに発見できた、モニターに表示されると巨大なサメがひっくり返っていた、その横には無傷と思われるスーツが漂っていた。
　まぁ、サヨならなんとかなると思ってそこまで慌てていなかった訳だが……、しかし無事とわかるとやはり安心する。