上 下
54 / 61
王女と公爵令嬢とエルフからの救援要請

予想

しおりを挟む



 世界樹について国王様とお話しをしました。
 そしたら突然『"頂の乙女達と波動の合う者"が"未知の意識と邂逅した時"、解は出る』と本に書いてあったと言われました。それが俺達を示しているとも。


 いやいやいやいや、ワケわかんないから……。
 なんなのその痛いフレーズ。頂の乙女ってなんだし。波動の合う者ってなんだし。未知の意識ってなんだし。ツッコミどころ満載なんだが。 

 えっ、それとも異世界って本当にこういう伝説が普通なの?てっきり俺は地球人の妄想だと思っていたんだけど?


 ……まあ、それはまた暇なときの話題にでもしようかな。 

 今はとりあえず意味を聞いてみるか。


「その伝説ってどういう意味があるんだ?」


「分からん」


「………………は?」


 今、何て言った?


「だから、分からん」


「…………………………は?」


 ーーちょっと待てい!自分から言っときながら意味分からないのかよ!何、俺達どういう反応すればいいの!?マ○クラの村人の如くハァン?とか言ってればいいのか!?


「言ったじゃろう。昔のことすぎて儂らでも理解出来ていない部分があると」


 ーーああー、そういえばそんなこと言われてたな……。
 
 すっかり忘れてた。


「いやでも、だったら余計に俺達しか頼れないっておかしくないか?意味が分かってないのになんで……」


「まあ待て、そう焦るな。儂らとて確信は出来んでも予想を立てることぐらいはできる」


 予想ねぇ。


「その予想の結果が俺達ってことか?」


「速い話がそうなるな」


「……詳しく説明してもらっても?」


 ここまで言うのならその予想とやらを聞かせてもらおうじゃないか。
 ここで直感とか言ったらキレるぞ俺?


「半分は勘でもう半分はアリスとルーシャの反応じゃな」 

 一瞬キレかけたが半分の理由だったので我慢した。俺、偉い。
 
 いやそんなことはどうでもいい。問題はもう半分の理由の方だ。


「二人の反応ってどういうことだ?なんでここであの二人が出てくるんだ?」


 さっきまで話に全く出てこなかった二人が何故ここでいきなり出てくるのだろうか?


「そうじゃな……。順を追って説明しよう。まず一つ目。儂らは"頂の乙女達"という部分に注目した」


「ほう」


「ここで言う頂とはこの国における地位の上位に立つ者ではないかと思っている」


 ふむ。確かに頂と聞いてすぐに思い付くのは何かの頂点に立つ人。今回はその書物が王城にあったことで身分が上位の者と考えたのだろう。


「なるほどな。だけどなんでアリスとルーシャの二人なんだ?しかも頂点という意味ではアリス一人だと思うんだけど?」


 百歩譲って乙女"達"という部分で複数人と判断したのはいい。だがアリスはともかくルーシャは公爵令嬢だ。身分としては王女よりも一つ下になるはず。そうなると頂という条件を満たせない。


「問題はそこなんじゃ。頂という条件を満たそうとすれば人数が足りず、人数という条件を満たそうとすれば頂点には届かない。どうしたものか」


 国王側はここで悩んでいるらしい。 

 俺はと言えば、少し気になることが。


「……なあ、少し気になったんだが仮にルーシャも条件を満たす人物として数えるなら、もう一つの家の方はどうなんだ?たしかもう一つ公爵家がいただろ」


 この前アリスかルーシャが公爵家は二家あるといっていたはずだ。そちら側はどうなっているのか。


「ああ、あの家は令嬢ではなく令息だ。性別が既に合わないから除外している」


「なんだ、令息だったのか」


 俺のなかではすっかり公爵家=ルーシャだからな……。
 そもそも令息という可能性を考えていなかった。


「今後、縁があったら会うことになるだろう」


「縁があれば、ね……」


 いつ会えることになるのやら。


「と、まあ初めはこんなところだ」


「……俺個人としては結構ありえそう考えだと思うぞ?」


 解決できていない問題もたくさんあるけど。


「だが、あくまでこれは予測。真実は全く別の意味かもしれん」


「その可能性も十分あるな」


 なんならそっちの可能性の方が高い気がする。


「この後に続く言葉もある程度予想をつけている。聞いていってくれ」


「わかった」


 聞かせてもらえるというのなら喜んで聞いていきましょう!


・~・~・~・


 ……ふう。これで一先ず伝えるべきことは伝えた。
 あとは娘達と彼らを信じるばかりだ。


 それにしても、ワルーノの奴め。また問題をおこしおって。彼らの奴隷達には迷惑をかけてしまったな。
 だが、あの怯え様は異常だ。
 ルーシャからの報告で不審に思ったが、これは一度大きな調査を入れる必要があるかもしれん。


「それと、この本か……」


 この本は誰が何のために作ったのかさえ判明していない。今回はたまたまそのページに世界樹らしき絵が描いてあったために世界樹関係の話だと理解できた。
 だがそれ以外となると全くもって意味が分からない しかも所々破れているせいでまともに読めやしない。
 他に読める文章は、『水の人は揺れる』『宙は宙である』等と意味が分からないものばかりだ。


 こんな時、偉人のタカツカサ殿ならどうしたであろうか……。





 いや、国王アレックスよ。一国を統べる王が弱みを見せてはならん。
 儂は余計なことを考えるのではなく、もうあと数日後に出発するアリスとルーシャ、それからあの冒険者達の応援をする。それが今の儂がやるべきことじゃ。


・~・~・~・


 この時は誰も知らなかった。
 この『頂の乙女達と波動の合う者が未知の意識と邂逅した時、解は出る』という言葉がこれからの運命に深く関わっていくということをーー。







 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...