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王女と公爵令嬢とエルフからの救援要請

謁見……?

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 王都に着いた、のは良いんだけど。
 今、凄いことになっております。 

 どういうことかというと、


「王女様ー!お帰りなさいー!」
「お帰りを待ってましたー!」
「ルーシャ様ー!素敵です!」
「お疲れ様です!」
「僕を蔑んで下さいー!」


 はい、王都民に囲まれております。


 そりゃそうだよな。こんな派手で豪華な馬車が通れば一発で誰が乗っているかなんて分かるよね。
 
 王女様は皆からとても人気があるらしく物凄い数の歓声を受けている。また、行きの時にルーシャが同行していることを知ったのかルーシャに対する歓声も多い。 

 アリスとルーシャは手を振り素晴らしい笑顔を振りまいて王都民へと応える。これだけで歓声が倍近くになるんだから大したものだ。


 え?歓声の最後に変な言葉が聞こえた?ははは、何を言っているんだ。俺にはそんな言葉は聞こえなかったぞ?きっと君達の幻聴さ。蔑んでくれなんて変な言葉は無かった、いいね?


 なんてどうでもいい感想を抱いていると愛花が感心した様子で話しかけてくる。


「凄い人気ね」


「これだけ容姿も良い上に性格も良いんだから当然じゃないか?」


 おまけに王女と公爵令嬢という箔もある。人気がでない方がおかしい。


「それでも凄いわよ」


 まあ、日本で考えると天皇陛下即位式典の時レベルの人の集まり方だしな。一介の冒険者である俺達が乗っているなんてバレたらどうなることやら。


 普通に生きていれば味わうことのないような体験をして無事王城へ着いた。


「ふう。毎度の事とはいえ、やはり疲れるものは疲れますわね」


「そうですね。こればっかりは体力勝負ですものね」


「やっぱりさっきまでのは疲れるのか?」


 客観的には全然問題無さそうだったけど。


「それはそうですわ。門から城までの数十分、ずっと笑顔を振りまいて民に応えなければなりませんの。流石に疲れるというものです。もっとも、外面に出すようなことは致しませんが」


 なるほど、疲れてはいるが体裁を保つために抑え込んでいるということか。
 
 よくもまあそんな面倒なことを続けられるな。それが仕事だと割りきっていたとしてもなかなか出来るものではない。 

 いややりたくてもやれるわけではないが。


 そんなことはさておき門番さんが近付いてきた。俺達は引っ込んでいた方がいいのかな?


「お待ちしておりました王女様、及びルーシャ様」


「只今戻りましたわ」


「只今戻りました」


「視察のほどご苦労様です。して、同席している方々は?」 

 
 引っ込んでいようとしたがそうはいかなかった。
 流石にスルーはされなかったか。 

 ここは名乗った方がいいのかな?


 ……いや、ルーシャの合図を見る限り黙っていた方が良いらしい。


「こちらの方々は道中にてお知り合いになりましたわ。危険な方々ではございませんので悪しからず」


「……分かりました。王女様がそう仰るのなら問題ないものと致します」


「ええ、お願いしますわ」


 どうやら王女権限で俺達はノーチェックになったようだ。王女強い。


 門から城内部にいくまで少し距離があり、その間にルーシャから話があった。
 曰く、
 ・城へ入ったら応接室に案内するから待っていて欲しい
 ・自分達が着替え終わったら直ぐ様謁見になるはずだから心の準備をしていて欲しい
 ・軽くでいいから服装を整えていて欲しい
 とのこと。
 
 時間として一時間くらいかかるらしいのでその間は休憩させてもらうことにしよう。


・~・~・~・


 時間がたち案内されたのは謁見するには似合わない小部屋だった。


 ねえ、俺の知識だと謁見って大広間でやるはずなんだけど。
 なんでこんな小部屋に案内されたの?
 ここで俺殺されるの?密室だよ?俺達を消すことなんて簡単だよ?


「待たせたな」


 そんなこと考えていたら王様らしき人が来ちゃったよ! 

 白髪に黒の瞳で身長は170センチメートルくらい。
 年齢は七十後半といった感じでカッコいいおじさんだった。
 頭には金の冠を被っていて赤、青、黄の三色で出来たローブを来ている。
 The・王様って感じだ。 

 あれ、アリスとルーシャが来ない?なんかあったのかな? 

 まあいいや、取り敢えず挨拶が先だ。
 


 立ち上がって礼をする。


「お初にお目にかかります、陛下。冒険者の海斗と申します」 

「同じく、愛花と申します」 

「サ、サーシャです」 

「ミーシャです」


 挨拶のマナーってこれであってたっけ?
 大丈夫なはず。たぶん。


「ここは非公式の場だ。堅苦しいのはよい」


 とは言われても普通に敬語くらいは使っちゃうかな。


「失礼します」


 一言断ってから椅子に座る。
 ここらへんは日本で身につけた癖だ。


「うむ、その敬語も気にせんでよい。堅っ苦しいのは嫌いなもんでな」


「……分かった。これでいいか?」


 ここまで言われて後で敬語を続けるのは相手に失礼となる。ここは素直に普段の口調で行くとしよう。


「ああ、それでいい。さて、いきなりだが本題へ入るぞ」


 ホントにいきなりだな!?


「はい」


 だがここで動じる俺じゃな~い!
 しっかりと話して見せようではないか!


「娘から話しは聞いた。なんでも、矢で打たれて死にかけていたところ、君達が助けてくれたと聞く。なんとも信じがたいがそれは本当なのか?」


 なんか試されているような気がするが気にしな~い。


「ああ、本当のことだ。腹を矢で打たれていたぞ」


「ふむ、そうか。なら儂は君達に感謝しなければならないな」


「いやいやそんな、感謝なんて良いですよ。助けられる人がいたから助けただけです。ちょーっとお金が貰えればそれで」


 残念だったな、俺は悪人なので無償というわけには行かないのだ!ふはははっ!
 王様の目が変わった気がするが俺は知らな~い。


 え?地雷踏んだとかじゃないよね?


「それは勿論だ。お礼は後で渡す。今は気持ちだけでも受け取ってくれればよい」


 気持ち?何の?


「此度の件、娘の命を救ってくれて大変感謝している。ありがとう」


 そういって頭を下げる王様。


 


 頭を下げる王様!?
 いくら俺でもこれには動じる。 

 いやだって相手は一国の王だぞ!?こんな簡単に頭を下げてもいいのかよ!?


「ちょ、ちょちょちょ!頭を上げてください!それやられるとこっちが困惑しますから!」


「む、そうか。だが本当に感謝しているぞ」


 それは分かったから!頭下げなくていいから!


「ねえ、本当に感謝しているんなら名前の一つでも名乗ったらどうなの?」


 氷のような冷たい声が部屋に響く。





 ……………………え?愛花さん?マジですか?王様相手にそんなことしちゃうの?


「海斗も海斗よ。何興奮して舞い上がってるの。少しは落ち着きなさい」


 ブリザードを思わせるような目で睨まれ俺はさっきまでの気持ちを思い返す。


 ……うん、平常じゃなかったね。気付かない内に舞い上がっていたようだ。気を付けなければ。
 深呼吸して気持ちを落ち着ける。 

 
 


 ん?これは……?
  

 ……なるほど、愛花の機嫌が悪かったのはそういうことか。冷静になったおかげで気付いたことがある。


 だが今はその話じゃない。


「おお、そうじゃった。まだ名乗っておらんかったな。儂はアレックス・フォン・ルーズ・ローエイ。知っての通りこのローエイ王国の国王じゃ」


 ファーストネーム以外が同じということはアリスのお父さんか。


 ん?お父さん?祖父じゃね?いくらなんでも年が離れすぎてるだろ。十四の娘と七十後半の父とか聞いたことない。 

 考え込んでいる俺の表情をみたのかアレックスが説明をしてくれる。


「アリスは儂の孫じゃ。儂の息子はジルと言う。今、旅に出て修行を積んでおる。もう後二、三年で帰ってくるじゃはずじゃ。帰ってきたらジルに国王を継がせる予定じゃ」


 やっぱり孫か。これで娘とか言ったら驚きで叫んでいた自信がある。


「ふーん、そっか。ねえ国王様。そんなことよりこんな茶番は終わりにして欲しいんだけど」


 あ、もうその話しいくのか。


「茶番?何をいっている?」


 あくまで何もないように振る舞うアレックス。
 だが相手が悪かったな。愛花が敵になった時点で勝負は決している。


「惚けないでいいから。傍にいるんでしょ?アリスちゃんとかルーシャちゃんとか、その他の重要人物が」


「……バレておったか。仕方ない、入れ」


 アレックスが合図するとゾロゾロと人が入ってくる。その中にはアリスとルーシャの姿もあった。


 ーそう。つまり俺達はアレックス達に試されていた。
 俺達がどんな人物かを。




 
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