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17、呼吸をするように

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「るいっ……ン、ぁ、っ……」
「空、逃げないで。こっちむいて」
「んっ……ん、ァっ……」

 ベッドの上で覆いかぶさってきた累は、すぐさま空にディープキスを与えてきた。いつになく遠慮のない累のキスは、これまでよりもずっとずっと色っぽく、そしてひどくいやらしかった。空と舌を深く絡めながら喰らいつき、同時にシャツの中に手を差し込んでくるのだ。口内を淫らに愛撫されながら脇腹を撫で上げられ、そしてとうとう、胸の尖にまで指先が伸びてきた。

「ひっ……! ァっ……るいっ……そこ」
「乳首、もうこんなに ツンてしてる。……ねぇ、舐めてもいい?」
「ひぇっ!? な、なめっ……」
「ずっと、ずっと触りたかったんだ。空のここも、ここも……全部」
「んっ……ぁ、あっ」

 累の硬い指先で、カリッと先端を擦られて、自分でもびっくりの甘い声が漏れてしまった。空が思わず口を覆うと、累は妖艶きわまりない眼差しで空を見つめながら、器用にシャツのボタンを開いていく。徐々に露わにされてしまう身体が恥ずかしく、空は身をよじろうとした。だが、累はそれを許してはくれない。

「だめだよ、逃げたら」
「だっ……だって、恥ずかしいよ……っ」
「恥ずかしがってる空も、すごくえっちだね」
「っ……えっち、とかいう……」

 シャツをはだけられたかと思うと、累はしげしげと空の肌を見下ろして、「はぁ……」と色っぽいため息をついている。微かに震える指先で空の心臓の上あたりに指を触れ、「すごく、きれいだ」と囁いた。

 そして、ぺろりとひとつ舌舐めずりをした累が、そっと空の胸に唇を寄せた。

「あっ、ぁッ……! るい……っ」
「ハァ……そら」
「ンっ……ぁ、やっ……なにこれっ……」

 ちゅ、ちゅく……っとリップ音を響かせながら、空の胸に濡れたキスをしていたかと思うと、硬く尖らせた舌先で弄られる。初めて触れられる敏感な場所に様々な刺激が与えられ、空は腰をくねらせて身悶えた。

 もう片方の尖にも、累の指先が伸びてくる。弾かれ、指先で擦られるたび、空の全身にぴりぴりとした甘い刺激が駆け巡った。それらの熱は徐々に空の屹立を熱く滾らせ、累の愛撫を受けるたびに腰が揺れてしまう。
 徐々に形をなしてゆくのは静的な快感だ。空は累の背中をギュッと掴んで、その快楽に酔い痴れていた。

「んっ……ぁ、っ……はぁっ」
「エロい声、すごくかわいいな。……そんなに気持ちいい?」
「ンっ……きもち、いい……っ……」
「そっか……ふふ、嬉しい。ハァ……どうしよう」

 ちゅ、ちゅっ……と胸元から下へとキスが降りてゆき、柔らかな腹やへそにまで濡れた舌が滑り降りてゆく。そのたびにぴく、びくっと小さく跳ねる空の腰に累の手がかかり、余裕のない手つきでベルトが抜かれた。そしてするりとズボンと下着を抜かれてしまい、下はスニーカーソックスだけというあられもない格好にされてしまう。

「る、るいっ……」
「すごく勃ってる、空のこれ」
「そっ、そんなじっくりみないでよっ!!」
「ねぇ、右手、使えないんでしょ? どうやって抜いてるの?」
「ぬ、抜く……」
「ねぇ、教えてよ。どうやってオナニーしてるの?」
「お、なにー……とかいう」

 背後にきらめく大輪のバラがちらつくほどに、美しく妖艶な表情でそんなことを言ってのける累に、空はただただ大混乱だ。それに、脱がされた上に見つめられているだけという果てしもなく恥ずかしい状況にいたたまれなくなり、空は思わず両手で顔を覆ってしまった。

「ひ、ひだりてで……」
「左手で、抜くの?」
「っ……そ、そうだよ!! うまくできなくて、時間かかるけど……っ」
「へぇ、そうなんだ」
「……って!! なに言わせんだよ累のバカ!! バカ累!!!」
「ふふっ……ごめん」

 くわっと涙目で怒る空を宥めるように、またしても累の甘いキスが降り注ぐ。唇を何度か吸われ、啄まれ、熱く濡れた舌で内壁を愛撫されてしまえば、空の怒気もあっさりとろけて消えてしまう。

 そうしてキスであやされているうち、累の手が空のペニスに伸びてきた。そして、ゆっくりと上下に扱かれる。

「あぁ、っ……!! ァっ……ん」
「すごく硬い。溜まってるのかな」
「っ……だから、もう、そういうこと言わないでよ!!!!」
「ごめんごめん。だって空の反応、すごくかわいくて、たまらないよ」
「ん、ァっ……」

 くちゅぅ……と鈴口を指先で強く擦られ、空は思わず甘い悲鳴を上げて累にしがみついていた。それだけでイってしまいそうだし、心底楽しそうに空をいじめる累のサディスティックな表情がたまらなく淫らで、熱がどんどん上がってゆく。

「ハァ……。もう限界……僕のも触ってくれる?」
「へっ……う、うん……、いいよ」

 そういえば、こういうことをするとき、累はいつもきちんと服を着たままだった。ようやく累の肌を晒してもらえるのかと思うと嬉しくて、制服を寛げてゆく累の姿をまじまじと見上げた。

 ネクタイを抜いてシャツを脱ぎ捨てた累の上半身は、幼い頃からは想像できないほどに、見事に引き締まっていた。ヴァイオリニストには、筋力と体力が必要だと言っていたことを思い出す。

 しなやかな首から、きれいに浮いた鎖骨が色っぽい。同じ十五歳とは思えないほどにしっかりと筋肉のついた腕も、うっすらと盛り上がる胸筋も、六つに割れた腹筋もあまりに見事で美しく、まるで芸術品のように端正だ。

 ——累……すごい。なんてかっこいい身体なんだろ……。

 と、うっとりするのも束の間。ベルトを抜いてズボンを少し下げた累の股間に、空の目線は釘付けである。

「はっ? でかっ……でかくない……?」

 あまりにも色気のない空の台詞に、累が苦笑している。小さい頃から大きかった記憶はあるが、まさかここまで立派なものに成長していたのかと、空は感動にも似た衝撃を受けていた。

「……ごめん、怖い?」
「こっ……こわくはない、けど……。こんなのはいるのかな……」
「へぇ、もう挿れる想像とかしてくれるんだ。嬉しいな」
「あっ……いや! そういうことじゃなくて!!」

 身をかがめた累の唇が、空の首筋に柔らかく触れた。舌でゆったりと耳を辿られ、耳たぶを淡く吸われながら、再びペニスを扱かれる。先走りでとろりと濡れているせいか、さっきよりも感覚が鋭敏だ。ぬち、ぬちと濡れた音さえ響き始めていることが恥ずかしく、空は、唇を引結んで声を抑えた。

「んっ……ン」
「だめだよ空。声、聞かせてよ」
「ハァ……っ……みみもとで、しゃべんないでよっ……!」
「ふふっ、耳も弱いんだね。ねぇそら……左手、貸して?」
「あ……」

 空が震える左手を持ち上げると、累がその手をきゅっと掴んで……そして、あの隆々とした屹立に触れさせられる。導かれるままそれを手の中に握り込むと、累のそれもすでにとろりとした体液で濡れていることに気づき、空は何故だか嬉しくなった。

「おっき……すごい……」
「ハァ……そらが、僕のを触ってくれてる……」
「累のも、濡れてるんだね。こ……こうしたらいい?」
「っ……うん……」

 先走りを塗り広げるように、手で柔らかく包み込みながら、ゆっくりと扱いてみた。すると、さっきまで余裕たっぷりだった累の表情から笑みが消え、眉を寄せて熱い息を吐いている。

「そら……っ……すごい、そらがぼくの……」
「うわ……すごい。もっと硬くなった」
「あ、ァっ……はぁ……。イイ、すごく……」
「ほんと?」

 空の肩口に顔を埋めて、累は「あ、ハァっ……」と心底気持ちよさそうな吐息を漏らす。そうして空の愛撫を感じている累がかわいくてかわいくて、空は包帯の右腕できゅっと累の背を抱いた。
 するとすぐに、累の手も空の屹立を包み込み、互いのそれを愛撫し合う。

 すると、ちり……とした痛みが首筋に刺さる。累が空の柔らかな首筋をきつく吸ったのだ。

「るいっ……ン、ん……」
「そら、そらっ……。ハァ……はやく、挿れたい……」
「ン、っ……ぁ、あん……まだ、むりだよぉ……っ」
「はやく抱きたい。めちゃくちゃにしたいよ……ハァっ……好き、大好きなんだ、そら……」
「ァっ……ぁ、あんっ……ン」

 空のペニスを包む累の手の動きが早くなるにつれ、つられるように空の動きも激しくなる。気持ち良くて気持ち良くて、いつしか声を堪えることさえ忘れていた。徐々に汗ばみ始めた肌と肌が密着し、どちらがどちらの昂りを慰めているのか分からなくなってくる。

 さらには累が再び空の胸をいやらしく舐めくすぐり、さらなる甘い快感で空は声を上げてしまった。

「ぁッ……!! あンっ……そこ、されたらっ……!」
「空、ぁ……ハァっ……すき、すきなんだ。……そら」
「ん、ンっ……も……っいっちゃう、るい、ァっ……ぁっ……!!」
「イって、そら。ぼくももう、イキそう……きもちいい、すごく」
「ァっ……ぁ、あっ……イク、だめ、いっちゃうよ……っ!」

 かすれた声で空がそう訴えると、ことさらに深く濃密な累のキスで、呼吸ごと奪われる。びく、びくっ……!! と汗ばんだ肌を震わせながら空が達していると、累もまた空の腹に「んっ……ハァっ…………!」と熱を吐き出す。

 吐精後の余韻にしびれた頭でぼんやりと目を開くと、累の部屋の天井が見える。そして、空を抱きしめる累の金色の髪も、すぐそこに。

「るい……」
「ハァっ……はぁっ……そら」
「ん……」

 ゆるゆると顔を上げた累の頬に触れ、空から控えめなキスをする。すると、重たげに上下する金色の睫毛が微かに震え、累がちょっと面食らったように瞬きをした。

「そら……」
「すき、だよ」
「へ?」

 呼吸のように、自然と溢れ出た言葉。累の青い瞳が、うるりと揺れた。

「俺だって……好きだよ。累のこと……」
「空……」
「好き」
「ハァ…………もう、ほんっとに」

 一度口にしてしまうと、これまでなにを恥ずかしがっていたのかと思えてしまう。ちょっと呆気にとられたような累の顔が可愛くて、空はふふっと笑ってしまった。

「空……そんなこと言われたら、もう我慢できないんだけど」
「へ? いや、それってどういう……」
「うう~セックスしたい。ずっと、ずーーーーーっと我慢してたんだ」
「い、いやいや……いきなりはちょっと……」
「わかってる。……分かってるよ。でも……ハァ…………しんどい」
「しんどい」

 よくそんな単語を知っていたなと思うと可笑しくて、空はついつい笑ってしまった。すると累もどこか拍子抜けしたように目を瞬き、笑った。

「それにほら、累、まだ凱旋公演も終わってないんだしさ」
「え? それ終わったら、セックスしてもいいってこと?」
「はっ!? いやあの、それはのあの、なんていうかその……」
「いや、うん、わかってる。いきなり挿れたりはしないけど、空もその気になってくてれるってこと?」
「……えと……うん、まぁ……そういうこと」
「えっ!? ほんと!?」

 途端にキラキラと光り輝く累の瞳だ。その分かりやすい変化もまた可愛くて、空は「ううっ……」と密かに呻いた。

「そっか……よかった。それだけでも嬉しい。僕、空を気持ち良くできるように頑張るから」
「い、いやいや……そんながんばんないでも、そこはお互いの努力というか……」
「ねぇ空、フェラしていい? もっと気持ち良くなってほしいな」
「……。だからさぁ、その顔でふぇら(小声)とかいうのやめてくんないかな……」
「ん?」
「い、いや……なんでもないです」

 きゅるんとした可愛い笑顔を見せられては、空ももうなにも言えない。

 幸せそうに微笑む累にキスをされ、身体中を気持ち良く撫で回されながらとろけるような口淫に喘がされ……その日は、試験勉強などせずに終わってしまった。
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