琥珀に眠る記憶

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第6幕 スキルアップと、親睦を深めるための研修旅行

35、年上の彼氏

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 二人の仲を取り持つという大役を終えた珠生は、亜樹を連れて、いつも北崎悠一郎と使っている喫茶店にやって来た。

 珠生が女連れで顔を出したので、マスターは苦味の走った顔に更に苦味を走らせ、驚いている。

 ボックス席に落ち着くと、ホットコーヒーを二つ注文した。亜樹は、珠生の行きつけだというその店をきょろきょろと見回している。

「えらい渋い店が行きつけやねんな」
「うん、カメラマンの悠さんとよくここに来て打ち合わせとかするからさ」
「ああ、あの人……」
「そう、最近会ってないから寂しいよ」
「忙しそうやで、北崎くんも。ほれ、これはサービスや」
と、コーヒーと共にクッキーの乗った小さな皿を出して、マスターはきりりとした目線を亜樹に向ける。

「わぁ、ありがとうございます」
と、亜樹が礼を言うと、マスターは珠生をちらりと見て、すたすたとカウンターの向こうに去っていった。

「渋いおじさんやな」
と、亜樹。
「別に怒ってるわけじゃないからね」
「ふうん」
「やれやれ、それにしても、疲れた」
と、珠生はどさりとソファに沈み込んだ。
「双子のああいう場面とか見せられても、照れくさいし困っちゃうんだけどな」
「そらそうやろうな。しかも同じ顔やし」
「まぁね」
「あんたと舜兄は……けんかとかすんの?」

 意外なことに、亜樹からそんな質問が飛んで来た。珠生はちょっと意外そうに目を瞬き、亜樹を見つめた。

「……えっ?」
「えっ!? い、いや、だって、だってあんたら、付き合ってるんちゃうん!? え? ちゃうん?」
「付き合ってるっていうか……うん、まぁ……そんな感じかな……」
「そっ、そうなんや……やっぱそうなんや!」
「ってか天道さん声でかい」
「あっ……ごめん」

 亜樹は珍しく素直に謝ると、ソファ席に小さくなってコーヒーを飲み始めた。

「俺のこと……気持ち悪い?」
「は、はぁ!? なんでやねん!」
「だから声でかいって」
「あっ……。ってか思わへんよ。な、なんで気持ち悪いとか思うと思ったん」
「だって、男同士だしさ……そういうの、嫌な人もいるだろうし」
「い、いやちゃうし! 全然大丈夫やで!」
「あ、そうなんだ……。ありがとう」

 珠生はほっとしたように微笑んで、上品な仕草でカップを持ち上げ、口に運んだ。亜樹は、珠生のそんな行動を見ているだけで、妙に落ち着かない気分になった。

 以前から、珠生はこんなにも艶っぽい仕草をする少年だったのだろうか。それとも、舜平との関係性を知ったが故に、そう見えるのだろうか……と、亜樹は珠生をしげしげと観察しながら考えた。
 何か特別なフィルターごしに珠生を見ているような、そんな気分だ。


 カップに寄せられた、男にしては赤い唇。その唇で、舜平と……。


「なに?」
「へっ!? ……えっ!? 何が!? はぁっ!?」
「なんで怒ってんだよ。今日の天道さん、なんか変だよ?」
「別に!? べっっつになんもないけど!? ……てか、コーヒーめっちゃ美味しい! めっちゃ最高!!」
「だろだろ?美味しいんだよマスターのコーヒー」


 ——あかんあかんあかん!! なにを考えてんねんうち!! おかしいやん!! おかしいやんんん!! うちはいつからこんないやらしい目で沖野のこと見るようになってん!? 変態やん!? まるで変態やでぇぇ!!


 亜樹は引きつった笑みを浮かべつつ、「マスターの料理も最高なんだよね~」とにこにこしながら話す珠生に相槌を打った。


 正直、コーヒーの味など感じる余裕もなかったのである。



 +


「ふーん、ほな、亜樹ちゃんも知ってるってことか」
「うん……言ってよかった?」
「おう、全然かまへんよ。てか、珠生がそうやって誰かに俺らのこと報告してくれるってことが……なんか、嬉しいっていうか」
「えっ!? な、なんだよそれ。俺は別に……」
「俺と付き合ってるって思ってくれてるんやな。……それがめっちゃ幸せ」
「……だ、だって、そ……そうじゃん」

 ちょうど風呂から上がった頃に、舜平は珠生の家にやって来た。そして二人は寄り添ってソファに座り、ホットココアを飲みながら、のんびりとそんな話をしているのである。

 舜平は珠生の手からマグカップを取ると、センターテーブルにコトンと置いた。そしてすっと身を乗り出し、珠生の方へ顔を寄せる。

「な、なんだよいきなり……」
「言うたやろ。帰ったらめっちゃ抱くって」
「う……うん」
「楽しみやった?」
「べ、別に……ん、」

 唐突にキスをされ、珠生はぴくんと身体を震わせた。舜平はソファの背もたれに手をついて、ゆったりとした甘いキスを降らせてくる。

「ん……まってよ、ここで……?」
「いやか?」
「やじゃ、ないけど……ぁ、ん」
「あっ。先生、帰ってこーへんよな? ……ん? 千秋ちゃんがこっちにおるってことは、先生と奥さん二人きりってことか?」
「あ、ほんとだね。お気の毒」
「てか、千秋ちゃんがいきなり帰ってきたりしーひんよな!?」
「なに慌ててんだよ。千秋は、正也のおばあちゃんちに泊まるんだって」
「……あ、そう」
「舜平さんと、せいぜいラブラブな夜を過ごしなさいよ、だってさ」
「……なんや恥ずかしいな、それ……」

 舜平は気恥ずかしそうに頬を赤らめて眉根を寄せると、身体を起こして頬を掻いた。ついさっきまで勢いづいていたくせに、急に我を取り戻して恥ずかしがっている舜平が可愛くて、珠生はちょっと笑ってしまった。

 珠生は舜平の首に腕を回し、ぴったりと身体を密着させて抱きついた。そのまま舜平の膝の上に乗り、尖った鼻先にキスをする。

「……ねぇ、しないの?」
「す、する。めっちゃしたい」
「ははっ、舜平さんて照れ屋だよね。面白いな」
「やかましい」

 舜平はむすっとした顔をしつつも、膝の上に乗る珠生のシャツの中に手を挿し入れてきた。腰や背中をゆったりと撫で上げられて、珠生は思わず淡い嘆息を漏らす。

「……は……」
「お前なぁ、湊に甘えすぎ。あいつにもこんなことしとったんやで」
「……ん…………えっ!? う、うそ!?」
「ほんま。湊やからなんも起こらへんかったけど、他の男があんなんされたら、速攻でお前の色気で人生狂わされてしまうで」
「うう、うそだ……うそだ……」
「嘘ちゃうし。また酔っ払ってあんなおいたしてみろ、俺、ほんまに許さへんからな」
「……んっ……」

 ぐいっと強く尻たぶを掴まれて、珠生は痛みと快楽がないまぜになった甘い刺激に、腰をしならせた。舜平は食らいつくようなキスを珠生の首筋に浴びせて来ては、時折きつくその肌を吸った。

「ァっ……ちょ、そんな見えるとこ……っ」
「俺はお前のもんやって、分かるようにしとかなあかんな」
「ん、やぁっ……痛いよ……」
「酔っ払って、あんな可愛い顔みんなに見せて……俺がどんな気分やったか、分かるか」
「ぁ……っ、あんっ……!」

 シャツの中で、舜平の指が珠生の乳首を捉えた。強引な手つきでまさぐられ、珠生は思わず腰を跳ね上げて身悶える。舜平は珠生の首筋や耳たぶをしつこくいじめながら、珠生の胸の尖りをくりくりともてあそぶ。

「ぁ、あ、ンっ……ん、」
「ほっといたら、他の男にもそのかわいい声、聞かせてたんやろ」
「きかせ、ないよぉ……っ……ン、」
「うそつけ。物欲しそうな顔して、男を煽って、いやらしいやつや、お前は」
「してないっ……ぁん、ん、っ……」
「もうせぇへんか。あんなこと」
「しなっ……い、しないよぉ……!」

 気づけばソファの上に押し倒されて、ゆるい部屋着のコットンパンツを抜き取られていた。そして抵抗する間も無く足首を取られ、片足を背もたれに引っ掛けさせられる。明るいリビングであられもない格好をさせられて、珠生は羞恥のあまり顔を真っ赤にした。

「ちょっ……ここじゃ、やだよ……」
「ごめんなさいは?」
「え?」
「他の男を誘惑してごめんなさいって、言えへんのか?」
「だから誘惑なんて、し、してないってば!! ……ぁあ、あっ……」
「このエロい身体は誰のもんや。教えて、珠生」
「……ァん……っ……!」

 硬く反り上がったペニスの先端に、舜平の舌がつうっと伝う。透明な体液の溢れる鈴口を、舜平は舌を伸ばしていやらしく舐めるのだ。珠生はふるふると震えながらも、恍惚とした眼差しで舜平の口淫を見つめていた。

「や……っ……ぁん」
「上手に言えたら、もっと気持ちよくしてやる」
「あぁ……っ……ん、そんなのっ……」
「ほら、言えへんの?」

 ぺろ、ぺろ……と先端だけをやわやわと舐められることに珠生はすっかり焦れてしまい、涙目になりながら舜平を見下ろした。

「もっと、もっと舐めて……っ……」
「上手に言えたらな」
「ぁんっ……、んッ……」

 舜平を受け入れるあの場所に、舜平の指が触れた。ただ淡く撫でられているだけだというのに、舜平から与えられる激しい快楽をよく知る珠生の肉体は、それだけで浅ましくひくつき始めてしまう。

「……は……ぁ……っ……足りない……」
「もっとエロいことして欲しいんやな。どんどん溢れてくる」
「ぁ、あっ……も、やだよぉ、ごめんなさい……っ、ごめんなさい……!」
「ん? なにがや?」

 舜平はほんの少し深く珠生のそれを口に含み、ゆっくりゆっくり、見せつけるように口から抜いた。珠生は「ひぅっ……」と愛らしい鳴き声をあげながらぎゅっと目を閉じ、ようやく舜平の求める台詞を口にした。

「舜平さん、いがいの……っ、男を……誘惑して……ごめ、なさい……っ」
「ん、上手。けど、他にもまだ言うことあるやろ」
「ぁああっ……!」

 じゅうっときつく吸われ、珠生は思わず口を押さえて声を殺した。すっかり焦れてしまった珠生の肌はしっとりと汗に濡れ、匂い立つような色気が溢れ出している。

 責めている舜平の体の方も、もうそろそろ限界だ。珠生の全てを味わい尽くしたいと肉体が叫び、理性がぐらぐらと揺さぶられる。

「おれの……いやらしい身体は……っ、ん、……しゅん、ぺいさんだけの……ものだから……!」
「だから、何?」
「いっぱい、気持ちよくなって……。俺のこと好きなだけ、犯してください……」
「……はい、合格」

 舜平は珠生のそそり立つものを根元まで口内に迎え入れ、喉の奥をきゅっと締めてやった。珠生は「ぁ、ああ……舜平、さん……っ」とか細い声で悲鳴をあげ、前後もなく乱れている。

「ぁ、あん、あ、あっ……きもちいいよぉ……っ」

 舌を絡ませながら上下に扱いてやれば、その度に珠生のそれは熱を増す。あまりにも珠生がかわいくよがってくれるものだから、舜平のほうもだんだん加減を忘れてしまう。

「いっちゃう……いっちゃう……っ……やだ、やぁ……っ」

 しかし、珠生が絶頂の予感を訴え始めると、舜平はぬるんと珠生のペニスを口から離した。珠生はほとんど半泣き状態で、のろのろと舜平を見上げる。

「上手に言えたから、挿れてやる」
「……ぁ」
「欲しいやろ? コレ」

 舜平はするりと上を脱ぎ、美しく引き締まった裸体を珠生に見せつけた。そしてジーパンのジッパーをゆっくりと下ろし、妖艶な笑みを浮かべた。

「ふぁ……ほしい……舜平さん、早く……」
「今のお前が、どんだけエロい顔してんのか、鏡で見せてやりたいわ。……絶対、誰にも見せられへん」
「……そ、そんなひどい顔してんの? 俺……」
「いーや。めっちゃくちゃエロくて、死ぬほどかわいい」
「ぁぁっ……ん」

 ジーパンの中で窮屈そうに張り詰めていた怒張を後孔に充てがわれ、珠生はびくんと腰を震わせた。

「……ま、これからもっともっと、エロい顔になんねんけどな」
「はやく……挿れて、おねがい……だから」
「焦れ過ぎ。……ほんま、かわいいやつ」

 舜平はそう言って微笑むと、ゆっくりと珠生の中に侵入しはじめた。
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