セックスなしでもいいですか？

54、消える語彙力〈泉水目線〉

　
　一季のそのセリフに、ズギャァァン！！　と全身を雷いかづちで撃たれたかのような衝撃を受けた。


　気づけば泉水は、一季を横抱きしてベッドに運んで横たえさせ、その上に四つ這いになっていた。目を丸くして泉水を見上げる愛らしい表情を堪能するのもそこそこに、泉水は一季の唇に食らいつく。

　すると一季もまたすぐに呼吸を合わせて、泉水のキスに応じてくれた。互いの屹立を擦り合わせるように腰を動かしつつ、ねっとりと舌を絡めているうちに、一季の呼吸がはぁ、はぁ……と弾み始めた。

「どうして、そんな可愛いことばっか言うんですか……？」
「…………へ？」
「そんなん言われたら、めちゃくちゃにいじめたくなってまいますやん。……もう、ほんっまに、あかんで」
「んんっ……」

　キスを止め、改めて上から一季を見下ろす。
　やや乱れたシーツの上で、一季がうっとりと泉水のことを見上げている。物欲しげに開かれた唇は熟れた果実のように赤く、唾液で濡れ、むしゃぶりつきたくなるほどにいやらしい。

　しかも今は、スポーティなユニフォーム姿である。
　本来ならば、青空の下を爽やかに躍動する場面にこそ似合う衣装だ。だというのに、今のいやらしさときたら何だろう。艶な表情を浮かべ、情欲に濡れた肉体をくねらせる一季の姿を、より一層色っぽい姿へと引き立てている。

　上半身にフィットした布地の上に、指先を這わせる。すると一季は、ぴくんっと肌を震わせて泉水を見上げた。

「……見てくださいよ。乳首、もうこんなにして」
「あっ……ン」
「一季くんの乳首はすぐ勃ってまうから、ユニフォームじゃ隠せませんね。部活の最中も、こんなふうになってたんちゃいますか？」
「あっ……そんなこと、ないっ……」
「ほら、どんどん硬くなってる。……気持ちいいんでしょ？」
「あ、あ……っ……」

　ユニフォームをつんと押し上げる一季の乳首を、指先でくりくりと弄ってやると、一季はそのたびにぴく、ぴく、と身体を震わせ、ぎゅっと目を閉じて快楽を堪えるような顔をした。そういう顔もまた殊更にいやらしく、泉水の内に眠る猛々しいものを、否応無く刺激した。

「みんな、見てたんちゃいますか？　一季くんのいやらしいココ……」
「みっ……みてないっ……」
「だってほら、こんなに美味しそうに尖ってるんですよ？　こうやって触ったり、しゃぶりついてみたいって思ってたやつ、絶対たくさんおると思うけど」
「ぁ、あんっ……ぁ、」

　舌を伸ばして、舌先でつんと突いてみると、一季は「ひゃっ……」と甘い声を漏らしてかぶりを振った。泉水の肩を押し返し、「ま、まって、ください……っ」と心にもなさそうことを言っている。

　泉水は一季の両手をひとまとめにして、枕の上に縫いとめてみた。すると一季が、うるうると濡れた瞳で泉水を見上げる。

　やや不安げでありながら、その先に待つ愛撫を待ち望んでいるようにも見える妖艶な眼差しに、泉水は全身がゾクゾクと昂ぶるのを感じていた。

「ぁ！　ぁ、ぁう……！」

　ユニフォームの上から、一季の胸の尖りに食らいつく。たっぷり濡れた舌と唇でむしゃぶりつき、舐め回し、きつく吸い上げてみると、一季は泣き出しそうな声で「や、やだっ……！　いずみさん、ふァっ……ぁん！」と喘ぎ、泉水の下で身をくねらせた。

「はぁ……はぁっ……一季くん。めっちゃ、エロ……」
「ユニの、上からとかっ……ァ、あん、や、やだっ……やぁっ……」
「いや？　ほんまに、いや？　こんなに、気持ちよさそうに腰振ってるのに？」
「へっ……そ、それは……」
「いややったら、やめます。……ほんまは、どうなん？」

　そう言って、素直に乳首責めをやめてみる。すると一季はふるふると首を振り、泉水を見上げてこう訴えてきた。

「や、やだ！　やめたら、いや……です……。やめないで……っ……」
「……ほ、ほんまに？」
「きもちいい、です……。すごくエッチで……きもちいい……」
「ウっ…………」

　眉をハの字にして目を潤ませ、甘い声音でそんなことを言われてしまっては、泉水の興奮も最高潮に煽られるというものである。乳首の上だけ布地の色が濃くなったそこを、今度は指でくりくりと捏ねくり回し、ほったらかしだったもう片方の乳首の方にも舌を伸ばす。両方の性感帯を思う様いじられて、一季はさっきよりも声高に啼いた。

「ぁ！　ぁ、あん、ちくび、ァっ……きもちいい、ぁ、ぁっ……！」
「ちょっと舐められたくらいでこんなにして……。ようこんな薄い服で部活なんて、できましたね？」
「ちょっと、じゃなっ……いずみさんが、いっぱい、なめるからぁっ……！　ぁ、んあっ……！」

　執拗なまでに一季の胸をいじめた後、泉水はゆっくりと身体を起こした。
　一季はぐったりと脱力して、はぁ、はぁと荒ぶる吐息を整えているようだ。白い肌は薄桃色に火照り、しっとりと汗ばんで濡れている。艶めいた肌を覆うのは、そこここに染みの浮かんだユニフォームだ。泉水の愛撫の痕跡が、濡れた形でくっきりと残っている。

　そしてショートパンツの股座のあたりも、今やねっとりと濡れている。こらえきれずに溢れ出す一季の体液が、清々しい空色を濃いものにしているのである。


　——あ～～～～～～…………もう、あかん。あかんでコレは……。挿れたい。はよう挿れたい……ふぅ……どないしたらええんや、この興奮……っ。


「一季くん……」
「ん……はい……あ、あっ！」

　くり……とショートパンツごしに、一季の先端を親指で擦ってみる。生地を巻き込むほどに、そこはとろりと濡れていた。

「ん、っ……み、見ないでくださいっ……ァっ、んっ」
「めっちゃ濡れたはりますね。イキたいですか？」
「ん、ンっ……」

　布の上から、一季のペニスをすりすりと愛撫する。一季は唇を引き結んで声を殺そうとしているようだが、鼻を抜けるため息さえもいやらしく、とにもかくにもフェロモンがすごい。

「いきたい、けど……っ……いずみさんので、イきたい……」
「えっ……」
「もう、ほしいです……ハァっ……。ナカでいかせてもらうの、すごく、きもちいいから……」


　雷、再び。
　脳天が痺れるほどの喜びに、泉水は激しいめまいを感じた。


　——はぁ～～～～～！！！！　あぁ、もう～～～～～！！！　ほんっまに、どんだけかわいいねん……！！　も～～～～～！！！　ウァ～～～～～！！！


　語彙の方もそろそろおかしくなってきてしまっている。それほどまでに、泉水のほうも限界だということだ。一季の色香にやられつつも、泉水はすーーーーーはーーーーーと深い深い深呼吸を繰り返し、こっくりと頷いた。

「俺ももう、そろそろ我慢の限界でした……」
「ほんとですか……？　僕ばっかり、楽しんでません……？」
「へ？　楽しんでくれてはるんですか？」
「あっ、いや、楽しいっていうと、へんかな……？　でも、なんて言うか……泉水さんにエッチなことされるの、すごく、好きなんです」
「……ほっ、ほんまに？」
「はい」

　快楽に蕩けた表情で、天使のように笑う一季に、愛おしさが大爆発だ。泉水は一季をぎゅっと抱きしめ、一季の頭を撫でながら、何度も優しいキスをした。

「めっちゃ、うれしい……。一季くん……もう、ほんっまに、好きやで」
「ん……僕も、大好きですよ」
「はぁ…………もうあかん、今日はもう、ほんまにあかんわ」
「え？」

　泉水は身体を起こしてするりとシャツを脱ぎ捨てると、ゴムとローションを準備した。すると一季が、もじもじしながらこんなことを言う。

「……あの、さっきシャワーしながら慣らしたので……。すぐ、挿れても大丈夫ですよ？」
「えっ？　そ、そこまでしてくれはったんですか……？」
「だって、僕も……すぐにセックスしたかったから」
「ふぐぅ………………」

　思わずぐらりとよろめきそうになったが、何とか持ちこたえた。

　泉水はゆっくりと頷いて、「ほな、遠慮なく…………」と言い、はちきれんばかりに雄々しくそそり勃つ己の肉棒を、ジーパンの中から解放してやった。