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53、けしからん格好です!〈泉水目線〉

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 シャワーの音が途絶えた。

 泉水はごくりと固唾を飲み、ベッドの上に正座したまま、ぎぎぎぎと首を動かしてドアの方をガン見する。

 ごそごそとタオルを使うような音がする。そして、微かな衣擦れの音も。

 きっと今、まさに今、一季があの魅惑の空色ユニフォームに着替えているに違いない。夢にまで見た一季のユニフォーム姿が、手を伸ばせば届く場所にある。心臓の音がやたらとうるさく、目が乾く。そういえば、瞬きするのを忘れていた。


 そして数秒後、カチャ……と微かな音とともにドアが開いた。隙間から、一季が顔を覗かせている。


「お待たせ、しました……」
「あっ……は、はいっ……!!」

 だが、一季がなかなか出てこない。チラリと見えている顔は真っ赤だし、何だかすごく恥ずかしそうだ。
 そうして隠されてしまうと、早く見たくなるのが人情というものである。泉水はふらりと立ち上がり、一季の佇んでいる場所まで近づいた。

「あの、何で隠れてはるんですか?」
「い、いえあの。シャワーを浴びてるうちに、何だか冷静になってきてしまって……」
と、言い残し、一季はサッとドアの向こうに消えてしまった。「えっ、そんな!」と叫んだ泉水は、慌ててドアノブを掴み、ぐいとドアを開け放つ。


 すると、まだドアノブを掴んでいた一季がつんのめり、「わっ!」と声をあげながら、泉水の方へと倒れこんで来た。


 ——お、おおお…………ほんまに、着てくれてはる……!!


 抱きとめた一季の肉体には、あの爽やかスポーティなユニフォームが着用されていた。触れた肩先の、さらりとした布地の感触が新鮮で、泉水はしげしげと一季の全身を見回した。すると一季はかぁぁぁと顔を真っ赤にして、気恥ずかしげに顔を俯かせるのである。

「な、なんか、恥ずかしくなってきちゃって。いい歳して、わざわざ家でこんな格好するとか、正気の沙汰とは思えないっていうか」
「そ、そんなことないですやん!! だ、だって、だってこんなん、素晴らしすぎますから……!!」
「え、そ、そうですか? ほんとに引いてません?」
「引いてへん、引いてへん! ちょっと、全身ちゃんと見たいんですけど……」
「うぅ……」

 泉水は壁際に一季を立たせ、じりじりと自分だけ後退する。するとベッドにぶつかってしまったため、泉水はそのまますとんとマットレスに腰を落とした。


 白い壁をバックに、爽やかなユニフォームを身に纏った一季が佇んでいる。

こうして立ち姿をじっくり眺めるのは初めてであるため、
 思った通り、素晴らしいフィット感がたまらない。しなやかで美しいボディラインを引き立てるスポーティなデザインは、一季のスリムな身体にものすごくよく似合っている。

 半袖にハイネック、というところが禁欲的でまた最高だ。一季はすらりとした綺麗な首筋をしているのだが、そこがむき出しになっていないというところに、妙なくすぐったさを感じてしまう。

 そして、さらに目を引くのはむき出しの太ももである。
 普段はスラックスなどにすっぽりと覆われ、隠されているそこが、今やほぼ全て晒されているのだ。太ももと股座のギリギリラインを攻めるショートパンツは、なかなかどうして魅惑的だ。一季の脚の長さが際立つし、ほっそりと締まった脚線美がとにもかくにも美しい。

 しかも嬉しいことに、きちんとくるぶし丈ソックスまで履いていてくれる丁寧さ。その白いソックスがあることで、いつぞや魅了されてしまった尖ったくるぶしや、アキレス腱のシャープなラインが、さらに美しく強調されているように思える。


 ——あ、ああ……なんという美しさや……。一季くん、めっちゃスタイルええから、ユニフォーム姿めっちゃ麗しいで……。ほんっまに、どこもかしこも綺麗すぎて目ぇ離せへん。いつまででも眺めていたい……。


 褒めることも忘れて一季の全身をガン見する泉水の目線に耐えかねたのか、一季はサッと両手で両腕を抱きかかえ、横を向いてしまった。


「そっ……そんな、そんな真剣な目で見ないでくださいよ……っ。引いてるんですよね!? 引いてるなら僕、すぐ脱ぎますから……!!」
「脱ぐ!? い、いやいやいやいや!! そんなんあきませんよ! 脱いだらあかん!」
「えっ、だって、無言でそんな風に見つめられると、恥ずかしくて恥ずかしくて……もう、穴があったら飛び込みたい気分です」
「恥ずかしいやなんて……」

 泉水はすっと立ち上がり、一季のほうへ近づいた。
 そして壁に両手をつき、一季を腕の中に囲い込む。

「めっちゃくちゃ、きれいで、かっこよくて……惚れ惚れしてしもて。つい、黙り込んでしまいました」
「あ……ありがとうございます」
「でも、なんかめっっちゃ複雑な気分っていうか」
「え?」

 腕の中に囲い込んだまま、泉水は上から一季の着衣を見下ろした。そして片腕をゆっくりとおろしてゆき、頼りないショートパンツに隠された一季の尻を、手のひらで柔らかく包み込む。

「あっ……」
「やっぱ、布地が少なすぎませんか? こんな格好で走ったり、ハイジャンしたりしとったんかと思うと……なんや妙に悔しいような気持ちになって」
「ぁ、っ……うぅ」

 ショートパンツの裾から指を忍ばせてみると、すぐに一季の尻たぶに触れた。
 ……なにやら、布が一枚足りないような気がするのだが……。


 ——え………………? パンツ……どこ?


「…………あの」
「えっ?」
「あ、あの……パンツとか、履かへんのですか……? 陸上って……の、ノーパンで……???」
「あっ!? え、えっと……ち、違うんですよ!! 競技中は履きます!! あの、それ専用のスパッツとかあるんで!! そういうのがちゃんとあるんですけど!! でも今は、あの、このショートパンツの中に履くと見えちゃうタイプのしか家になくって、あのっ……!!」
「で、でも今は…………履いておられない……?」
「…………は、はい……」
「ふぉぉぉ……」

 ノーパンでショートパンツという事実に、泉水の脳内で何かが大きくぐらついた。
 ショートパンツの中に潜ませていた指先をさらに奥に潜らせてみると、ふにふにっとした尻たぶの感触が直に伝わってくる。なんということだろう。もはや一季の大事なところは、この薄く頼りない布地でしか、守られていないということではないか。

 泉水はさらに手を伸ばし、ショートパンツの裾にぐっと手を入れてみた。狭いパンツの中で手のひらに触れるのは、一季の白桃のごとき双丘である。

「ちょっ……いずみさん、そんなとこ、手、入れないで……」


 一季が身じろぎすると、さらっとした肌ともちっとした感触が手のひらに押し付けられ……思いがけず生尻に触れているという現実に、ビキィィィ……ッ!! と、泉水のペニスが一瞬にして硬度を増した。


「こ、こんなけしからん格好で、部活してはったんですか!? もし仮に下履いとったとしても、パンツ、見えてまうやないですか……!」
「だ、だって……ユニフォームだからっ……ァ、あんっ、もまないでくださいっ……」
「あぁ……あかん。絶対、絶っ対、一季くんの尻とか脚とか見て、ムラムラしてたやつおったと思いますよ? 気づかへんかったん?」
「い、いません!! そんな人……っ!」
「いいや、絶対おったはずや。だってこんな……こんなきれいな肌、目の前にチラつかされるんですよ? 絶対みんな、一季くんをエロい目で見てたと思いますけど」
「そんなこと、ありませんっ……ぁあ、っ」

 ぎゅうっと小さな尻を掴んでみると、一季はビクビクっと身体を震わせ、泉水に縋りついてきた。抱きつかれながらも尻をしつこく弄び、耳元でこんなことを尋ねてみる。

「着替えとか、どうしてはったんですか?」
「きっ……きがえ? ふ、ふつうに……更衣室とか、試合の時は、外で、とか……っ……」
「そ、そそっ、外!!?? ま、まさか、青空の下でこの脚線美とエロ可愛いお尻を晒して……!!??」
「い、いいえ!! た、タオルとか、みんな、巻いて……っ、その下で……」
「タオルでって……無防備すぎちゃいますか!? 見えてまうやん、一季くんのエロい身体……! そんなん許されへんで……!」
「ひゃぁん」

 衝撃と嫉妬と羨望と妄想がごっちゃになり、泉水は思わず一季の尻たぶを荒っぽく掴んでしまった。すると一季がぎゅうっと泉水の背中にしがみつき、その拍子に、下半身が密着する。


 そして泉水は気づいてしまった。
 一季の屹立が、くっきりと形を成していることを。


「一季くん……めっちゃ勃ってはる」
「だ、だって……泉水さんが、おしり、いやらしく触るから……。それに、」
「……それに?」

 ふ、と一季が顔を上げる。いつの間にか、一季はすっかり涙目になってしまっているではないか。とろんととろけたいやらしい表情に、泉水の股間もぎゅんと滾った。

「いずみさんて、言葉責め……好きなんですか?」
「こ、ことばぜめ?」
「僕のこと……言葉で追い詰めて、恥ずかしがらせて……っ……ハァっ……」
「お、俺、そんなことしてます!?」

 一季はふぅっと色っぽいため息をつきながら、恨めしそうに泉水を見上げた。しかしその物言いたげな眼差しがこれまたセクシーで、泉水の心臓はばくばくと暴れっぱなしである。

「無意識なんですか……? もう……」
「ご、ごめんなさい。嫌ですよね、やいやい色んなこと言われんの……」
「ううん。全然……いやじゃない」
「え? ほんま?」
「うん……。すっごく、燃えるっていうか……」
「ふぉぉぉ……???」

 太ももに感じている一季の屹立が、すり……と動いた。一季が腰を動かして、泉水にペニスをすり寄せているのである。先をねだるような淫靡な動きに、泉水はごくりと息を呑む。


 すると一季は、興奮の滲む掠れた声で、泉水にこう囁いた。


「こういうの、大好きです。……もっと、いじめてもらえませんか?」
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