異聞白鬼譚

餡玉

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第三章 過去と今

二、金平糖をくれた人

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「……ゆ、き、だ」



もうすぐ春だというのに。


この恐ろしい灰色の雲は、まだまだ雪を隠し持っているそうで。


チラチラが、パラパラと音を変えて私の上に降り注いできた。


睫毛に雪の結晶が乗る。


それでなくとも焦点が合わないのに。


最近の私は地に頬を貼り付けてばかりだ。
なんて無様な格好。



だけど、体が動かないの。






シンシン。

耳をすましてみると、雪は本当にそんな音を鳴らして落ちてくるのが分かる。


ああ、お迎えかしら。


こんな最期って。
私はフランダースの何とやらか。




「……痛い」




胃が。


ん……いや、これ胃じゃないや。

肺だ。肺が痛いんだ。


それに気付くと、ゆっくりと目を閉じた。



嫌だ。痛い。怖い。


とても怖い。


怖くて目を開けられない。


怖くて窒息してしまいそう。


病院、行きたくないな。


嫌だ。入院したくない。


いやだ。
いたい。
いたい。
いたい。
会いたい。


ボロボロと涙は溢れ、頬に落ちた雪を溶かした。





——ザシュ、ザシュ




誰かがみぞれの中を歩いてくる音がした。


薄っすら目を開けてみた。


曇ったレンズの向こうに


靴が見えた。




黒い革靴が、私の目の前で立ち止まった。


 


 
 
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