異聞白鬼譚

餡玉

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第二幕 ー呪怨の首飾りー

終 願い

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 日が昇り、光政は読んでいた書物から目を上げた。
 そして奥の座敷に敷いてある布団の方に目をやる。


 すっかり鬼の姿に戻った千珠が、そこでぐっすりと眠り込んでいた。昨夜、泣きつかれて眠ってしまったのだった。


 千珠の側に歩み寄ると、光政はそこに座り込んだ。
 朝日を受けた千珠の姿は、いつ見ても美しい。陽の光を吸い込んで染まる銀色の髪、紅い耳飾りと唇。

 顔にかかった髪の毛を払ってやるが、千珠はぴくりとも動かず眠っている。昨日泣いたせいか、目元が少し赤らんでいる。光政は優しい気持ちで微笑み、そっとその目元を撫でた。

 もう見ることができぬかもしれない千珠の寝顔を、光政はずっと見つめていた。


 そして身を屈めると、そっと千珠の唇に自らの唇を重ねる。触れるか触れないかの、微かな口づけを。


 すぐに身体を起こし、千珠の頭をもう一度撫でた。


 この心優しき鬼の子が、もう何も思い悩むことがないように、もう迷い苦しむことがないように……そう、祈りながら。









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