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番外編
おとまりほいくのよる〈累目線〉
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今日は待ちに待った園外保育の日。
累は父親をせかして朝一番に登園し、空の到着を今か今かと待ち構えていた。
するとほどなくして、『かっこいいほうのおにいさん』と手を繋ぎ、空が『ほしぞら』へとやってきた。窓に張りついていた累は一目散に園庭へと駆け出してゆく。
「そらくん!! おはよー!!」
「あ、るいだぁ。おはよう~」
朝の清々しい空気の中、累を見つけてにこっと笑う空の愛らしさに、胸がどきどきと高鳴っている。だがここで突っ走って抱きしめたりしてはいけない。累は一歩手前で踏みとどまり、彩人を見上げて礼儀正しくおじぎをした。
「おはようございます、そらくんのおにいさん」
「おう、おはよ、累くん。今日も早いなぁ」
「はい! おとまりほいくがたのしみだったから、はやおきしたんです」
「ははっ、そっか。でっかいバスで遠足だもんな、楽しんでこいよ」
「はーい」
『おともだち(とくにそらくん)にやさしくする』という目標を守り続けた結果、ここ最近、彩人の笑顔もすっかり優しい。去年、空に怪我をさせてしまったあと、彩人からの視線がやや怖かったものだけれど、今は親しげに頭を撫でてもらえるようになったのだ。
あいこ先生が彩人に気づいて近づいてきたのを見計らい、累は空の手を握った。
「いこ! そらくん!」
「うん! じゃーね、にぃちゃん。いってきまーす」
「おう、おねしょすんなよー」
「しないよぉ!」
追いかけてくる声に振り向きながら、彩人に向かってほっぺたをふくらませている空もまたかわいい。空はようやく夜のおむつを卒業したばかりで、夜が少し不安であるらしいのだ。
なぜそんなプライベートなことを知っているのかというと、昨日、空本人がこっそり教えてくれたからである。
午前中の自由遊びの時間、空は少し元気がなかった。明日のお泊まり保育が不安なのかと思い、累は空の向かいでちょうちょの絵を描きながら、さりげなくこう問いかけてみたのだ。
「そらくん、どうしたの? あしたのおとまり、なにかしんぱいなの?」
「えと……うん……。だれにもないしょなんだけどね……」
「なぁに?」
空はそう前置きをして、すすっと累の隣にやってきた。空に近づいてきてもらえるというだけで嬉しくてたまらない累だ。ぎゅうっとしたくなる気持ちをグッと堪えて、空の方へ耳を近づける。
「おれ、よる、といれひとりでいけるかなって……」
「トイレ?」
「おうちなら、ひとりでもいけるんだけど。……でも、はじめておとまりするところだし、くらかったり、とおかったりしたら……おもらししちゃわないかなって……」
「ああ……」
もじもじしながら眉を下げ、不安げな口調でそう語る空の姿があまりにもいじらしく、累の心臓はドキドキドキドキと大騒ぎだ。誰にも言えないことを、他ならぬ自分にだけ教えてくれるという特別感もたまらない。累はこみあげてくる幸福感をじっくりと噛み締めながら、ぽんと空の肩に手を置いた。
「だいじょうぶだよ。ぼくがついていくから」
「……ほんと? でも、ねてるのにおきなきゃいけないよ? くらいといれ、きっとこわいよ……?」
「そらくんのためならへいきだよ! それにぼく、くらいのこわくないから」
「ほんと……?」
「ほんとだよ! ぜんぜんだいじょうぶだから、おしっこにいきたくなったら、すぐにぼくのことおこしてね?」
「う、うん……」
「ぼく、ぜったいとなりでねてるから。こっそりおこしてくれたら、きっとだれにもきづかれないよ」
「うん。ありがと、るい」
累が微笑むと、空もようやく笑顔を見せてくれた。
なんとしてでもこの笑顔を守らねばならない……!! 累はそう心に誓ったのである。
+
大きなバスに揺られて到着した場所は、自然に囲まれた広い広い公園だった。
そこで午前中はめいっぱい走り回り、お昼は皆でお弁当を食べた。そして午後は大きな建物の中にある陶芸工房で粘土をこね、創作活動をしたのである。
今日ここで作ったものは焼き上げられ、後日『ほしぞら』に届けられるという。累は実用的な皿を作ったが、空は雪だるまのような形をした、小さな人形を三つ作っているところだ。すると、園児たちのもとを順番に回っていたあいこ先生が、累と空のテーブルにもやってきた。
「わぁ、累くんうまいね~! さすが器用だわ……すぐにでも使えそうなお皿だね」
「ありがとうございます。もういちまいつくるよ」
「ふふ、ペア皿だね。空くんは……雪だるま? 大きさがそれぞれ違うね」
「へへー、これねぇ、いっせーなの」
そう言って、空は中くらいの大きさの雪だるま型の人形を手のひらに乗せ、得意げに笑って見せた。泥だらけになった小さな手に乗った人形には、ニコちゃんマークのような顔が描かれている。
「あっ、ああ~~~!! 霜山さん……もう一人のお兄さんね! となるとこっちは」
「うん、いちばんでっかいのがねぇ、にーちゃん。それでこれが、おれー」
「そっかそっか。家族みんなのお人形を作ったんだね」
「うん!」
空の言葉に、笑顔のあいこ先生の頬がツヤツヤと輝きはじめている。そのようすを見守りつつ、家族ではないはずなのに人形を作ってもらえた壱成のことを、累は心の底から羨しく思っていた。
すると空は粘土をもうひとかたまりこね始め、今度は累を見てにっこり笑った。
「それでねぇ、これからるいをつくるよ!」
「えっ…………!? ぼ、ぼく?」
空はこくんと頷いて、鼻歌を歌いながら小さな球体を作っている。そして、爪楊枝で大きな丸い目と、きりりとした上がり眉を描いた。
「あとは、からだね。るいはいっせいよりちいさくて、おれよりおおきいからー……」
「そ、そらくん……」
感激のあまり、累は泣きそうになった。空の大切な世界の中に、自分も存在を許されたのだ。
今すぐ空を抱きしめて頬擦りしたい気持ちでいっぱいだったが、累はぐっっっと我慢した。そして何気なくあいこ先生のほうを見ると……どういうわけだろう、あいこ先生の瞳も、累と負けず劣らずうるうると潤み、頬はピンク色でつやつやだ。累と目が合うと、あいこ先生はゲフフフンと変な咳払いをした。
「あ! あとねぇ、あいこせんせいもつくるね」
「わっ……わたしまで……!? い、いいのよ空くん! そんな尊き世界にわたしなんぞを加えてくれなくても……!!」
「とうとき? え、なんて?」
「うっ、ううん!! うれしい!! 先生嬉しいな!! ほんっと空くんてば天使……」
「てんし……」
あいこ先生の言葉を聞いて初めて、累は『天使』がこの世に実在することを知った。
+
そして夜になった。
空が隣にいるだけで、皆でおこなう夕飯のクッキングや、水着を着て露天風呂に入るというイベントが、とてもとても楽しかった。
だが、普段とは違う環境での活動ということもあり、さすがの累も少しくたびれた。小柄はな空はもっと眠たげだ。寝る前のトイレタイムが終わる頃には、すでに自分の布団の上に丸くなって、すうすうと寝息を立てている。累はそっと空に毛布をかけ、自分もとなりに寝転んだ。
——かわいい……そらくんのねがお、すっごくかわいい。……ああ、ずーっとみつめていたいなぁ……。
丸い頬に、伏せられた栗色のまつ毛。薄く開いた唇からくうくうと寝息をたてながら熟睡している空の姿を、累はしっかりと目に焼き付けることにした。壱成が迎えにくるようになってからこっち、こうして一緒に眠れる時間は貴重なのだ。
なので、「あ、そらくんもーねてるー!」と大声を出す女の子たちに向かって、累は唇に人差し指を立てた。空の寝姿にメロメロかつ骨抜きの累だ、「しー。さわいだらだめだよ?」と注意する声も、自然と優しくなっている。
すると、普段は口調のきつい女の子たちもほんのりと頬を染め、いそいそと寝床に入っていくのである。
いつまででも眺めていたい空の寝顔だが、眠気には勝つことができなかった。累もとうとう眠りの世界に誘われてゆき、しばらくは心地よい夢の中を揺蕩っていたのだが……。
「るい、……るい」
「……ん……」
軽く身体を揺さぶられ、累はゆっくりと目を開いた。そしてすぐはっとして、ガバリと身体を起こす。一秒前まで熟睡していたというのに超反応で覚醒した累に面食らったのか、暗がりの中で空が目を丸くしている。
「そらくん、といれ?」
「う、うん……。ねてたのに、ごめんね」
「ううん! ぜんぜんいいよ、いこ」
先生たちが交代で起きてるからね~、と寝る前に聞いた気がしたのだが、皆が眠る畳の部屋は、しんとした静けさに満ちていた。太ももをもじもじさせている空の手をとって、累はそっと布団から抜け出した。
「ごめんね、るい……」
「なにいってるんだよ、やくそくしたもん。それに、ぼくもおといれいきたいなっておもってたから」
「うん……」
なおも申し訳なさそうな空の手をぎゅっと握って、暗い廊下をゆっくりと進む。ほんのりと電気がついている場所もあるため、あたりは真っ暗というわけではない。
だが、明るい時間帯とはまるで表情の異なる仄暗い空間は、さすがに不気味だ。昼間よりもずっと、トイレが遠い場所にあるような気がする。
その雰囲気に呑まれてしまっているのだろう、空はいつになく累にぴったりと身を寄せて、震える声でこう言うのだ。
「うっ……うう、くらいよぉ……」
「だいじょうぶ。ぼくがついてるから」
「うん、うん……て、はなさないでね?」
「もちろんだよ!」
心細げな空がくっついて頼ってくれる、空からしっかりと手を握りしめてくれる、縋るような眼差しで見つめてくれる——……怯えている空には悪いが、累にとっては素晴らしく喜ばしい状況だ。目をぱっちりと開き、意気揚々と歩くうち、トイレへと無事到着した。
ここは消灯されず明るいままだ。だが、真夜中ののっぺりとした静寂がのせいか、その明るさが逆に異質なものに見え、そこはかとなく不気味な気がする。
空もそれを感じ取っているのか、トイレに到着しても累の手を離さない。
「……ねぇるい、ずっとうしろにいて? そらがおしっこするまで、ずっとここにいて?」
「えっ……い、いていいの……?」
「うん、いいよぉ。なんかこわいもん……」
「う、うん! わかった!」
どこまでも不安げな表情には哀れを誘うが、一身に累を頼ってくれる空の存在が愛おしくてたまらない。
累は目をキラキラさせながら空の真後ろに立ち、不慣れな調子で男児用のトイレで用を足す空のそばにくっついていた。
足首のあたりにもたついたパジャマズボンとパンツ、そこから露わになっている空の小さな丸いお尻が見える。すごく、かわいい。ふにふにで小さくて、丸くて、すごく柔らかそうな白い肌……。
ここ最近、空とのお風呂タイムもごぶさただ。今日は水着を着てのお風呂だったこともあり、どちらかというと水遊びに近い感覚だったので、がっかりしていたところである。
だがこうして、思いがけず空のお尻を見てしまったせいか、どきどきと胸が高鳴って落ち着かない。
ずっと見ていたいし、触りたい。空にとっての大切な場所、誰にも触らせてはいけない場所だと分かっている。触りたいし、もっと色んなところを見てみたい……けど、やはり見てはいけない気がして、累は、不自然にあっちこっちへと視線を彷徨わせ、必死で気を紛らわせていた。
「おわったよぉ! るい、ありがとね!」
無事にトイレを済ませたことでホッとしたのか、空がいつもどおりの笑顔で振り返る。累はどぎまぎしながら「う、うんぜんぜんいいよ」と早口に答えた。
「るい? どーしたの? ほっぺたがあかいよ?」
「うっ……ううん、なんでもない……」
「どっちからきたんだっけー。こっちかなぁ? いこ、るい」
「うん……」
またしても、空に対して、抱いてはいけない不届きな感情に支配されそうになったとあって、累は罪悪感を抱えていた。だが、累の感情などつゆ知らず、空は無邪気に累の手を引き、すたすたと当てずっぽうに歩き始めるのである。
心の中で何度も空に謝りつつ、手を引かれるままに施設内を歩くうち、いつしかふたりは玄関ロビーへ出てきていた。そこは天井が高く、大きなガラス窓に囲まれた、がらんとした空間だ。
寝床ではないところへ迷い込んでしまった。てっきり空は不安がるかと思っていたが、暗い窓の外を見上げた空が、歓声をあげている。
「ねぇ!! ねぇるいみて! おそら、すっごくきれいだよぉ!」
「え? ……わぁ」
都会の空よりもずっと、ずっと深い黒。
そこにきらきらと繊細にまたたく、小さな光の粒。数え切れないほどの星が夜空を埋め尽くす様はあまりにも美しく、まるで別世界に放り込まれてしまったかのような気分になった。
慣れ親しんだ街から離れた、不慣れな場所で。あたりは真っ暗闇で、二人を包むのは広大な星空だけ——
もしここにひとりで取り残されたとしたら、きっと、恐ろしくてしかたがなかっただろう。でも、累の手を握るあたたかな空の手がそこにあるだけで、こんなにも心強く、こんなにもしあわせだ。
空とふたりでいられるなら、どんな場所でもきっと、自分は強くいられるにちがいない——と、累は思った。
ぎゅっと指に力を込めて、キラキラした星空を映す栗色の瞳を、累は見つめた。
「そらくん、すき」
「え?」
「ぼくはそらくんが、だいすきだよ」
もはや空の耳にはタコができているだろう、何度となく伝えてきた愛の言葉だ。
空の反応はいつもまちまちだ。軽い口調で「えへへー、おれもだよー」とか、「うん、ありがとー」「しってるよー」と、無邪気な笑顔で言葉を返してくれる。
だが今日の空は、じっと累の瞳を覗き込み、しばらくのあいだ無言だった。累の言葉の意味を探っているのか、はたまたただ単に眠いのか……空はゆっくりと目を瞬き、にっこりと笑った。
「おれも、るいがすきだよ」
「……あっ……」
気のせいかもしれないけれど、いつもは一方通行に感じていた感情が、その瞬間だけはしっかりと結び合っているような感覚があった。累はなぜだか急に泣きたいような気持ちになり、ぎゅっと唇を噛み締める。
すると空は笑顔のまま目をこすり、ふにゃりとしたあくびをひとつ。眠気が戻ってきたのだろう。
「るい……」
「ふふ……。そらくん、おふとんにもどろっか」
「うん……うん」
「こっちだよ、おいで」
ふらふらしはじめた空に寄り添い、累はしっかりとした足取りで来た道を戻り始めた。なおもぎゅっと繋いだままの手と手の温度が、ほんのりとあたたかさを増していく。
すると、おぼつかない足取りで歩きながら、空がぽつりと呟いた。
「……るいのて、おっきくてあんしんする……」
「へっ……」
「ねむいねぇ……」
「う、うん……」
どきどき、どきどき……と、累の胸の高鳴りは収まらない。
布団に戻ったとたん、空はすとんと眠りに落ちていったようすだ。だが累は空の髪の毛を柔らかく撫でながら、しばらくのあいだ空の寝顔を見つめていた。
なんだか胸がいっぱいで、とても眠れる気がしなかった。
+
「あ、どうも霜山さん! いつも累がお世話になってます~!」
「高比良さん、こんにちは。あれ、累くん寝てるんですか……?」
そして次の日の昼すぎ、お迎えの時刻になった。
昨晩はほとんど眠ることができなかったため、累は大柄な父親の腕に抱かれて熟睡中である。壱成は物珍しげに累の寝顔を覗き込み、笑みを浮かべた。
「かわいいですね、ぐっすりだ」
「ふふ、よっぽど楽しいことがあったんですかねぇ。あいこ先生に聞いたんだけど、累も珍しくけっこうはしゃいでたみたいなんですよ」
「そっかそっか、楽しかったんですね」
壱成の手を握る空も、どことなく眠たげだ。壱成は膝を折って空と目線を合わせると、頭を撫でながら問いかける。
「空くんも楽しかったかー?」
「うん……でもねぇ、そらもねむいの」
「ははっ、そっか。慣れない場所だったし、あんまり寝れなかったのかな」
「いっせー……だっこ……」
「しょーがないなぁ」
と言いつつも、目をこする空を抱き上げる壱成の表情はどこまでも優しい。うつらうつらしつつも、空は累の顔をじっと見つめて「ばいばい、るい」と言った。
その声が聞こえたのだろうか。夢の中を揺蕩う累の唇に、ほんのりと笑みが浮かんでいる。
『おとまりほいくのよる〈累目線〉』 おしまい♡
累は父親をせかして朝一番に登園し、空の到着を今か今かと待ち構えていた。
するとほどなくして、『かっこいいほうのおにいさん』と手を繋ぎ、空が『ほしぞら』へとやってきた。窓に張りついていた累は一目散に園庭へと駆け出してゆく。
「そらくん!! おはよー!!」
「あ、るいだぁ。おはよう~」
朝の清々しい空気の中、累を見つけてにこっと笑う空の愛らしさに、胸がどきどきと高鳴っている。だがここで突っ走って抱きしめたりしてはいけない。累は一歩手前で踏みとどまり、彩人を見上げて礼儀正しくおじぎをした。
「おはようございます、そらくんのおにいさん」
「おう、おはよ、累くん。今日も早いなぁ」
「はい! おとまりほいくがたのしみだったから、はやおきしたんです」
「ははっ、そっか。でっかいバスで遠足だもんな、楽しんでこいよ」
「はーい」
『おともだち(とくにそらくん)にやさしくする』という目標を守り続けた結果、ここ最近、彩人の笑顔もすっかり優しい。去年、空に怪我をさせてしまったあと、彩人からの視線がやや怖かったものだけれど、今は親しげに頭を撫でてもらえるようになったのだ。
あいこ先生が彩人に気づいて近づいてきたのを見計らい、累は空の手を握った。
「いこ! そらくん!」
「うん! じゃーね、にぃちゃん。いってきまーす」
「おう、おねしょすんなよー」
「しないよぉ!」
追いかけてくる声に振り向きながら、彩人に向かってほっぺたをふくらませている空もまたかわいい。空はようやく夜のおむつを卒業したばかりで、夜が少し不安であるらしいのだ。
なぜそんなプライベートなことを知っているのかというと、昨日、空本人がこっそり教えてくれたからである。
午前中の自由遊びの時間、空は少し元気がなかった。明日のお泊まり保育が不安なのかと思い、累は空の向かいでちょうちょの絵を描きながら、さりげなくこう問いかけてみたのだ。
「そらくん、どうしたの? あしたのおとまり、なにかしんぱいなの?」
「えと……うん……。だれにもないしょなんだけどね……」
「なぁに?」
空はそう前置きをして、すすっと累の隣にやってきた。空に近づいてきてもらえるというだけで嬉しくてたまらない累だ。ぎゅうっとしたくなる気持ちをグッと堪えて、空の方へ耳を近づける。
「おれ、よる、といれひとりでいけるかなって……」
「トイレ?」
「おうちなら、ひとりでもいけるんだけど。……でも、はじめておとまりするところだし、くらかったり、とおかったりしたら……おもらししちゃわないかなって……」
「ああ……」
もじもじしながら眉を下げ、不安げな口調でそう語る空の姿があまりにもいじらしく、累の心臓はドキドキドキドキと大騒ぎだ。誰にも言えないことを、他ならぬ自分にだけ教えてくれるという特別感もたまらない。累はこみあげてくる幸福感をじっくりと噛み締めながら、ぽんと空の肩に手を置いた。
「だいじょうぶだよ。ぼくがついていくから」
「……ほんと? でも、ねてるのにおきなきゃいけないよ? くらいといれ、きっとこわいよ……?」
「そらくんのためならへいきだよ! それにぼく、くらいのこわくないから」
「ほんと……?」
「ほんとだよ! ぜんぜんだいじょうぶだから、おしっこにいきたくなったら、すぐにぼくのことおこしてね?」
「う、うん……」
「ぼく、ぜったいとなりでねてるから。こっそりおこしてくれたら、きっとだれにもきづかれないよ」
「うん。ありがと、るい」
累が微笑むと、空もようやく笑顔を見せてくれた。
なんとしてでもこの笑顔を守らねばならない……!! 累はそう心に誓ったのである。
+
大きなバスに揺られて到着した場所は、自然に囲まれた広い広い公園だった。
そこで午前中はめいっぱい走り回り、お昼は皆でお弁当を食べた。そして午後は大きな建物の中にある陶芸工房で粘土をこね、創作活動をしたのである。
今日ここで作ったものは焼き上げられ、後日『ほしぞら』に届けられるという。累は実用的な皿を作ったが、空は雪だるまのような形をした、小さな人形を三つ作っているところだ。すると、園児たちのもとを順番に回っていたあいこ先生が、累と空のテーブルにもやってきた。
「わぁ、累くんうまいね~! さすが器用だわ……すぐにでも使えそうなお皿だね」
「ありがとうございます。もういちまいつくるよ」
「ふふ、ペア皿だね。空くんは……雪だるま? 大きさがそれぞれ違うね」
「へへー、これねぇ、いっせーなの」
そう言って、空は中くらいの大きさの雪だるま型の人形を手のひらに乗せ、得意げに笑って見せた。泥だらけになった小さな手に乗った人形には、ニコちゃんマークのような顔が描かれている。
「あっ、ああ~~~!! 霜山さん……もう一人のお兄さんね! となるとこっちは」
「うん、いちばんでっかいのがねぇ、にーちゃん。それでこれが、おれー」
「そっかそっか。家族みんなのお人形を作ったんだね」
「うん!」
空の言葉に、笑顔のあいこ先生の頬がツヤツヤと輝きはじめている。そのようすを見守りつつ、家族ではないはずなのに人形を作ってもらえた壱成のことを、累は心の底から羨しく思っていた。
すると空は粘土をもうひとかたまりこね始め、今度は累を見てにっこり笑った。
「それでねぇ、これからるいをつくるよ!」
「えっ…………!? ぼ、ぼく?」
空はこくんと頷いて、鼻歌を歌いながら小さな球体を作っている。そして、爪楊枝で大きな丸い目と、きりりとした上がり眉を描いた。
「あとは、からだね。るいはいっせいよりちいさくて、おれよりおおきいからー……」
「そ、そらくん……」
感激のあまり、累は泣きそうになった。空の大切な世界の中に、自分も存在を許されたのだ。
今すぐ空を抱きしめて頬擦りしたい気持ちでいっぱいだったが、累はぐっっっと我慢した。そして何気なくあいこ先生のほうを見ると……どういうわけだろう、あいこ先生の瞳も、累と負けず劣らずうるうると潤み、頬はピンク色でつやつやだ。累と目が合うと、あいこ先生はゲフフフンと変な咳払いをした。
「あ! あとねぇ、あいこせんせいもつくるね」
「わっ……わたしまで……!? い、いいのよ空くん! そんな尊き世界にわたしなんぞを加えてくれなくても……!!」
「とうとき? え、なんて?」
「うっ、ううん!! うれしい!! 先生嬉しいな!! ほんっと空くんてば天使……」
「てんし……」
あいこ先生の言葉を聞いて初めて、累は『天使』がこの世に実在することを知った。
+
そして夜になった。
空が隣にいるだけで、皆でおこなう夕飯のクッキングや、水着を着て露天風呂に入るというイベントが、とてもとても楽しかった。
だが、普段とは違う環境での活動ということもあり、さすがの累も少しくたびれた。小柄はな空はもっと眠たげだ。寝る前のトイレタイムが終わる頃には、すでに自分の布団の上に丸くなって、すうすうと寝息を立てている。累はそっと空に毛布をかけ、自分もとなりに寝転んだ。
——かわいい……そらくんのねがお、すっごくかわいい。……ああ、ずーっとみつめていたいなぁ……。
丸い頬に、伏せられた栗色のまつ毛。薄く開いた唇からくうくうと寝息をたてながら熟睡している空の姿を、累はしっかりと目に焼き付けることにした。壱成が迎えにくるようになってからこっち、こうして一緒に眠れる時間は貴重なのだ。
なので、「あ、そらくんもーねてるー!」と大声を出す女の子たちに向かって、累は唇に人差し指を立てた。空の寝姿にメロメロかつ骨抜きの累だ、「しー。さわいだらだめだよ?」と注意する声も、自然と優しくなっている。
すると、普段は口調のきつい女の子たちもほんのりと頬を染め、いそいそと寝床に入っていくのである。
いつまででも眺めていたい空の寝顔だが、眠気には勝つことができなかった。累もとうとう眠りの世界に誘われてゆき、しばらくは心地よい夢の中を揺蕩っていたのだが……。
「るい、……るい」
「……ん……」
軽く身体を揺さぶられ、累はゆっくりと目を開いた。そしてすぐはっとして、ガバリと身体を起こす。一秒前まで熟睡していたというのに超反応で覚醒した累に面食らったのか、暗がりの中で空が目を丸くしている。
「そらくん、といれ?」
「う、うん……。ねてたのに、ごめんね」
「ううん! ぜんぜんいいよ、いこ」
先生たちが交代で起きてるからね~、と寝る前に聞いた気がしたのだが、皆が眠る畳の部屋は、しんとした静けさに満ちていた。太ももをもじもじさせている空の手をとって、累はそっと布団から抜け出した。
「ごめんね、るい……」
「なにいってるんだよ、やくそくしたもん。それに、ぼくもおといれいきたいなっておもってたから」
「うん……」
なおも申し訳なさそうな空の手をぎゅっと握って、暗い廊下をゆっくりと進む。ほんのりと電気がついている場所もあるため、あたりは真っ暗というわけではない。
だが、明るい時間帯とはまるで表情の異なる仄暗い空間は、さすがに不気味だ。昼間よりもずっと、トイレが遠い場所にあるような気がする。
その雰囲気に呑まれてしまっているのだろう、空はいつになく累にぴったりと身を寄せて、震える声でこう言うのだ。
「うっ……うう、くらいよぉ……」
「だいじょうぶ。ぼくがついてるから」
「うん、うん……て、はなさないでね?」
「もちろんだよ!」
心細げな空がくっついて頼ってくれる、空からしっかりと手を握りしめてくれる、縋るような眼差しで見つめてくれる——……怯えている空には悪いが、累にとっては素晴らしく喜ばしい状況だ。目をぱっちりと開き、意気揚々と歩くうち、トイレへと無事到着した。
ここは消灯されず明るいままだ。だが、真夜中ののっぺりとした静寂がのせいか、その明るさが逆に異質なものに見え、そこはかとなく不気味な気がする。
空もそれを感じ取っているのか、トイレに到着しても累の手を離さない。
「……ねぇるい、ずっとうしろにいて? そらがおしっこするまで、ずっとここにいて?」
「えっ……い、いていいの……?」
「うん、いいよぉ。なんかこわいもん……」
「う、うん! わかった!」
どこまでも不安げな表情には哀れを誘うが、一身に累を頼ってくれる空の存在が愛おしくてたまらない。
累は目をキラキラさせながら空の真後ろに立ち、不慣れな調子で男児用のトイレで用を足す空のそばにくっついていた。
足首のあたりにもたついたパジャマズボンとパンツ、そこから露わになっている空の小さな丸いお尻が見える。すごく、かわいい。ふにふにで小さくて、丸くて、すごく柔らかそうな白い肌……。
ここ最近、空とのお風呂タイムもごぶさただ。今日は水着を着てのお風呂だったこともあり、どちらかというと水遊びに近い感覚だったので、がっかりしていたところである。
だがこうして、思いがけず空のお尻を見てしまったせいか、どきどきと胸が高鳴って落ち着かない。
ずっと見ていたいし、触りたい。空にとっての大切な場所、誰にも触らせてはいけない場所だと分かっている。触りたいし、もっと色んなところを見てみたい……けど、やはり見てはいけない気がして、累は、不自然にあっちこっちへと視線を彷徨わせ、必死で気を紛らわせていた。
「おわったよぉ! るい、ありがとね!」
無事にトイレを済ませたことでホッとしたのか、空がいつもどおりの笑顔で振り返る。累はどぎまぎしながら「う、うんぜんぜんいいよ」と早口に答えた。
「るい? どーしたの? ほっぺたがあかいよ?」
「うっ……ううん、なんでもない……」
「どっちからきたんだっけー。こっちかなぁ? いこ、るい」
「うん……」
またしても、空に対して、抱いてはいけない不届きな感情に支配されそうになったとあって、累は罪悪感を抱えていた。だが、累の感情などつゆ知らず、空は無邪気に累の手を引き、すたすたと当てずっぽうに歩き始めるのである。
心の中で何度も空に謝りつつ、手を引かれるままに施設内を歩くうち、いつしかふたりは玄関ロビーへ出てきていた。そこは天井が高く、大きなガラス窓に囲まれた、がらんとした空間だ。
寝床ではないところへ迷い込んでしまった。てっきり空は不安がるかと思っていたが、暗い窓の外を見上げた空が、歓声をあげている。
「ねぇ!! ねぇるいみて! おそら、すっごくきれいだよぉ!」
「え? ……わぁ」
都会の空よりもずっと、ずっと深い黒。
そこにきらきらと繊細にまたたく、小さな光の粒。数え切れないほどの星が夜空を埋め尽くす様はあまりにも美しく、まるで別世界に放り込まれてしまったかのような気分になった。
慣れ親しんだ街から離れた、不慣れな場所で。あたりは真っ暗闇で、二人を包むのは広大な星空だけ——
もしここにひとりで取り残されたとしたら、きっと、恐ろしくてしかたがなかっただろう。でも、累の手を握るあたたかな空の手がそこにあるだけで、こんなにも心強く、こんなにもしあわせだ。
空とふたりでいられるなら、どんな場所でもきっと、自分は強くいられるにちがいない——と、累は思った。
ぎゅっと指に力を込めて、キラキラした星空を映す栗色の瞳を、累は見つめた。
「そらくん、すき」
「え?」
「ぼくはそらくんが、だいすきだよ」
もはや空の耳にはタコができているだろう、何度となく伝えてきた愛の言葉だ。
空の反応はいつもまちまちだ。軽い口調で「えへへー、おれもだよー」とか、「うん、ありがとー」「しってるよー」と、無邪気な笑顔で言葉を返してくれる。
だが今日の空は、じっと累の瞳を覗き込み、しばらくのあいだ無言だった。累の言葉の意味を探っているのか、はたまたただ単に眠いのか……空はゆっくりと目を瞬き、にっこりと笑った。
「おれも、るいがすきだよ」
「……あっ……」
気のせいかもしれないけれど、いつもは一方通行に感じていた感情が、その瞬間だけはしっかりと結び合っているような感覚があった。累はなぜだか急に泣きたいような気持ちになり、ぎゅっと唇を噛み締める。
すると空は笑顔のまま目をこすり、ふにゃりとしたあくびをひとつ。眠気が戻ってきたのだろう。
「るい……」
「ふふ……。そらくん、おふとんにもどろっか」
「うん……うん」
「こっちだよ、おいで」
ふらふらしはじめた空に寄り添い、累はしっかりとした足取りで来た道を戻り始めた。なおもぎゅっと繋いだままの手と手の温度が、ほんのりとあたたかさを増していく。
すると、おぼつかない足取りで歩きながら、空がぽつりと呟いた。
「……るいのて、おっきくてあんしんする……」
「へっ……」
「ねむいねぇ……」
「う、うん……」
どきどき、どきどき……と、累の胸の高鳴りは収まらない。
布団に戻ったとたん、空はすとんと眠りに落ちていったようすだ。だが累は空の髪の毛を柔らかく撫でながら、しばらくのあいだ空の寝顔を見つめていた。
なんだか胸がいっぱいで、とても眠れる気がしなかった。
+
「あ、どうも霜山さん! いつも累がお世話になってます~!」
「高比良さん、こんにちは。あれ、累くん寝てるんですか……?」
そして次の日の昼すぎ、お迎えの時刻になった。
昨晩はほとんど眠ることができなかったため、累は大柄な父親の腕に抱かれて熟睡中である。壱成は物珍しげに累の寝顔を覗き込み、笑みを浮かべた。
「かわいいですね、ぐっすりだ」
「ふふ、よっぽど楽しいことがあったんですかねぇ。あいこ先生に聞いたんだけど、累も珍しくけっこうはしゃいでたみたいなんですよ」
「そっかそっか、楽しかったんですね」
壱成の手を握る空も、どことなく眠たげだ。壱成は膝を折って空と目線を合わせると、頭を撫でながら問いかける。
「空くんも楽しかったかー?」
「うん……でもねぇ、そらもねむいの」
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「いっせー……だっこ……」
「しょーがないなぁ」
と言いつつも、目をこする空を抱き上げる壱成の表情はどこまでも優しい。うつらうつらしつつも、空は累の顔をじっと見つめて「ばいばい、るい」と言った。
その声が聞こえたのだろうか。夢の中を揺蕩う累の唇に、ほんのりと笑みが浮かんでいる。
『おとまりほいくのよる〈累目線〉』 おしまい♡
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