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番外編
人生、それぞれ〈彩人目線〉・後
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「ただいま……って、あれ」
帰宅して、まずは自室のドアを開けてみる。まずは壱成と空の寝顔をそれぞれ見て、ほっこりしてからシャワーを浴びるのが常なのだが、今日は彩人の部屋に壱成がいない。
——え、ってことは……。
つまり、壱成は二階で眠っていると言うことなのだろう。普段、彩人のベッドで眠っている壱成が、二階にいる。つまりそれは、そういうことをしたくて彩人の帰りを待っているということ……。
「あ、そっか……明日は日曜か」
つまり明日は休みだ。壱成はこの間、『続きを楽しみにしている』と言っていた——それを思い出し、彩人はすぐさまバスルームへと向かう。
——壱成、待っててくれてんのかな……。
いそいそとシャワーを浴びて二階へ行き、壱成のドアをノックする。だが返事はなく、彩人はそっと部屋の中を覗き込んだ。
部屋は暗く、パソコンデスクのライトだけが灯っていた。
彩人の帰宅を待ちきれなかったのか、壱成はベッドに入って寝息を立てている。机にはラップトップが開かれたままで、何やら仕事を片付けていた最中だったようだ。一週間の疲れで、力尽きたのかもしれない。
「ま……そりゃそうだよな。壱成、昼間バリバリ働いてんだし」
若干……いや、かなり残念な気持ちを抱えつつも、彩人は壱成を起こさないように、そっとベッドに腰掛ける。珍しくうつ伏せになって眠っている壱成の黒髪に指を通し、さらりとした感触をしばし味わう。
そしてふと、マッサの横顔を思い出す。
彩人はこうして今、喜びや苦労を分け合える相手と出会うことができた。一方的な感情ではなく、幸運なことに互いの想いが通じ合っている。しかも、壱成と彩人は同性同士——これは、ある意味奇跡に近いことなのかもしれない。
「……良かった。壱成、俺のこと好きになってくれて」
ぽろりと口からこぼれ落ちた呟きが届いたのか、壱成が微かに身動ぎした。彩人は微笑み、形のいい耳に軽くキスをして、そのまま壱成から離れようとした。
だが、ぎゅっとハーフパンツを握られて、彩人はちょっと面食らう。寝ぼけ眼の壱成が、じっと彩人を見上げていた。
「……おかえり」
「あ……うん。ただいま」
「待ってようと思ったんだけど……ごめん、寝てた」
「ううん、寝てろよ。疲れてんだろ」
「……疲れてない」
壱成の手が、彩人の太腿に触れる。どきどきしつつ壱成を見つめ、その手にそっと掌を重ねた。
「……ほんとに?」
「ほんと。……だから」
「だから……? 何?」
壱成の言葉を待つつもりで口にしたセリフだが、欲望の方がついていかない。
彩人は身を屈めて、壱成にキスをした。壱成もすぐにそれに応えて、口を開き舌を差し出す。絡め合い、とろけあう舌の感触はゾクゾクするほどに淫らで、あっという間に彩人の身体に火をつけた。
「ん、……んっ」
布団をめくって、うつ伏せの壱成の上に跨ると、シャツを捲り上げながら耳や首筋を唇で愛撫した。ちゅ、ちゅっ……とリップ音をたてながら壱成の肌に触れるたび、彩人の理性にぴし、ぴしと亀裂が入ってゆくのが分かる。
「壱成……いいの? しても」
「いい、よ……俺も、したかった、から」
「ほんと? すげぇ嬉しい」
「ぁ、はァっ……」
壱成のしなやかな背筋に舌を這わせながら、急く思いのままにハーフパンツに手をかけた。ふるりと露わになるなめらかな双丘にも唇を触れ、しっとりとした肌の弾力を味わってゆく。
ほっそりとした腰や、無防備に晒された尻たぶにキスをされるたび、壱成は「ぁ、あ」と小さく声を漏らして肌を震わせる。そんなことをしているうちに、彩人はふと気づいてしまった。
壱成のそこにはすでにジェルのとろみがまとわりついて、準備万端の状態になっているということに——
「……壱成、自分で慣らしたの?」
「っ……ええと」
「ほら……もう、こんな。なんで?」
「あっ! ァっ……ん」
トロリと濡れた窄まりに指を這わせると、壱成はビクンと震えて口を押さえる。
彩人の帰りを待ちながら、自分で下準備をしている壱成の姿を想像すると、急激に性欲が高まってしまう。
壱成が淫らに脚を開いて、自らの指であそこを馴らす姿だ。彩人の名前を呼びながら、くちゅくちゅといやらしい音を立てて、彩人を受け入れるために……。
「わっ、あやと……っ」
そんなにも健気な姿を妄想してしまえば、彩人も我慢ができなくなってしまうというものだ。壱成の下を脱がせて四つ這いにさせると、自らのシャツを脱ぎ捨てズボンを下げる。そして、昂り勃ちあがったペニスに、手早くゴムをつけた。
壱成の上に覆いかぶさり、ローションを纏わせた怒張を壱成の太腿にすり寄せながら、耳たぶを噛む。そして半ば勃ち上がった壱成の先端を指先でくるりとなぞってみた。
鈴口から溢れたとろみのある体液が指先に触れるのを感じ、彩人の欲はさらに猛った。
「壱成、勃ってんじゃん」
「ん……さわんなって、そこ……っ」
「ごめんな、待たせて。そんなに欲しかった?」
「ァっ……ぁ、あんんっ……!」
返事を待たず、トロリと濡れてひくつく壱成のソコに、切っ先を埋めていく。すると、とっくに熱く熟れていた壱成の内壁が、きゅうきゅうと彩人の性器に絡みついてくる。その心地よさに、彩人は思わず息を漏らしていた。
「は、ァ……壱成……」
「あやとっ……ぁ、ん……っ、ン」
「ねぇ、なんで、こんな熱いの? 壱成、自分の指でイっちゃったりしたわけ?」
ゆっくり時間をかけながら、壱成の中を味わうように、奥までじっくりと嵌めてゆく。そうでもしなければ、彩人のほうも快楽に負けて、手荒いことをしてしまいそうになる。それくらい、壱成とひとつに繋がる瞬間は気持ちが良く、幸せなのだ。
「壱成……どーなの?」
「いって、な……ぃ……っ」
「ほんとに?」
「だって、イけ、ねーもん……あやとのじゃ、ないと……っ」
「へ……なにそれ。壱成、今のすんげかわいいんだけど」
ぎゅうっとシーツを握りしめながら壱成がゆるゆると顔を上げ、涙目をこちらに向けた。その横顔はすでに快楽にとろけ、たまらないほどの色香を放っている。
始めはなかなか挿入にまで至れなかった二人だが、今や壱成の後孔は彩人の形と味を覚えて、喰らいつくかのように締め付ける。壱成の腰を少し引き寄せ、彩人はさらに深くまで奥を暴いた。
「ぁあ、あっ! ん……ふかい……っ」
「動いていい……?」
「……っ……いい、いいよ」
まだ挿入したばかりだというのに、ついピストンが速くなる。一週間ぶりのセックスなのだから優しくしたいと思っていたのに、身体の方は裏腹だ。壱成のほっそりとした腰を両手で掴み、ぱんぱんぱんっと無遠慮に腰を叩きつけていた。
「ぁ! ァん、ぁ、はぁっ! ……ぁ、ぁっ!」
「壱成……はぁ……っ、はっ……」
「あやとぉ……っ、ン、ぁ、だめ、おれ、もうイキそ……ぁあ、あ」
「へ、もう……?」
「だって、だって……っ、ァん、きもちいい、ナカ、きもちいい……っ」
シーツを握りしめながら彩人に揺さぶられている壱成が、どさりと枕に倒れ込む。それでも彩人を貪る腰は高く突き出したまま、横顔でこっちを見上げているのだ。
快楽に酔いしれた壱成の涙目はめちゃくちゃにエロく、快感とあいまって、頭がどうかなってしまいそうなほどに愛おしい。絶頂が近いのか、びく、びくっと震える壱成の最奥に深く腰を埋めながら、彩人は壱成を背中からきつく抱きしめた。
「いく……っ、イクッ……ぁ、ン、んんっ……!!」
ぶる、ぶるっ……と痙攣する壱成を抱きしめながらも、彩人はさらに壱成を攻め続けた。すると壱成は腕の中でいやいやをするように首を振りながら、「あ、まって、らめ、まだっ……ぁ、あんっ……!!」と身悶えている。
達したせいか、壱成の内壁はさらに熱を増し、汗が浮かびはじめた壱成の肌は吸い付くようないやらしさだ。腰を打ちつけながら壱成からシャツを抜き、彩人はがぶりと壱成の肩口に甘噛みした。
「ひあっ……! ァ、あやと、ン、ぁ、あっ……」
「壱成……すき、好きだよ。ハァっ……かわいい、すき」
「ァん、ん、ぁ、あっ……!」
バックのままもう二、三回壱成をイかせたあと、彩人は一旦壱成からペニスを抜いた。たっぷりとした白濁を溜め込んだコンドームを外し、すぐに新しいものを身に着ける。
そんな彩人の様子を、とろんとした表情で見上げる壱成は、自らゆっくりと仰向けになり、ゆるゆると脚を開いた。
「彩人、もっと……」
「はは、今度はこっちがイイんだ?」
「キスしたい……なぁ、はやく」
「いいよ、いくらでも」
いつになく甘てくれる壱成が、かわいくてかわいくて仕方がない。濡れそぼった壱成のそこにゆっくりとペニスを沈めながら、彩人は壱成の唇にキスをした。
「ん、んン、ぅっ……」
「は……すげぇ、イイ。……ハァ……」
「あやと、舌、いれて。エロいキス、してよ」
「ははっ……壱成、そんなことも言ってくれんの?」
と、余裕ぶってみるものの、腰の動きは止まらない。壱成の膝を掴んでひとしきり腰を振った後、身をくねらせて喘いでいる壱成の髪を撫でた。
「あ、ぁ! ぁん、ッ、はぁっ……」
「壱成、舌、出して」
「へ……っ」
「ほら、出して。エロいキス、しよ?」
「ん、ぁっ……あ!」
ずん、とひときわ奥へとペニスを穿ち、そのまま上下に腰を揺すってみる。彩人の屹立を根元まで受け入れながら揺さぶられている壱成の内壁が、またいっそうきゅうんと締まった。
壱成は彩人を見上げ、おずおずと舌を伸ばす。彩人はうっそりと微笑んで、かぷりと壱成の舌を口内に迎え入れた。
「ん、んっ……ふっ……ン、ん」
しっかりと壱成を抱きしめながらディープキスを交わし、腰だけを使って深く深く突き上げる。
彩人から与えられる快楽に、壱成が夢中になっているのが伝わってくる。壱成もまた全身で彩人を抱きしめ、淫らに腰を揺らして、さらに彩人を貪るのだ。
「壱成……エロいね。腰、こんな振ってさ、すげぇスケベじゃん」
「ん、だって……、あやとの、きもちいい、きもちいいから……っ」
「ほんと……? すげー嬉しい。ほら聞こえる? エロい音してんの」
「ぁ、あっ……ァ!」
最奥を抉るように腰を蠢かせると、くちゅう……と淫らな水音が響いた。汗か涙か、しっとりと濡れた壱成の目元を指先で拭うと、壱成の手が彩人の指を握り、ふたりの指が絡まった。
「あ……、ぁ、イク、またいく、っ……ぁやと、ハァっ……」
「俺もイキそ……はぁ……はっ……ごめん、ちょっと激しくしていい?」
「いい、いいからっ……ァ、はぁっ、あやとも、イって、おれんナカで、イって……っ」
「っ……」
そんなことを言われてしまってはたまらない。彩人は湧き上がってくる欲望に身を任せ、壱成の腰をぐいと引き寄せた。
大きく脚を開かされ、結合部も露わに甘く犯され、声高に喘ぐ壱成に酔い痴れながら、彩人もまた、壱成の中で絶頂して——
+
そうしてひとしきりセックスに溺れていると、徐々に空が白んできた。夏の朝は早いのだ。
腹の上で、肩で息をしている壱成の太腿をそっと撫で、彩人は満ち足りたため息をついた。
「壱成……シャワー、いこっか」
「ん……も、立てねぇ、俺……」
彩人の傍に腕をつき、ゆっくりと身体を起こした壱成と、間近で目が合う。
壱成のまつ毛はコシがあり、ゆるく上向きにカールしている。眠たげなその目元が妙に色っぽく、彩人はまた性懲りもなくムラッとしてしまうのだが……。
——いやいや……さすがにもうダメだろ。性欲どーなってんだよ、やべーな俺……。
彩人はひとつ深呼吸をして、あえて軽い口調でこう言った。
「なら、また抱っこしてやろっか?」
「はっ? なめんなよ、大丈夫だっつーの」
「本当かぁ?」
「本当だって……うわっ」
彩人の上からするりと降りて立ち上がろうとした壱成が、ふらついてベッドに腰を落とす。彩人も慌てて起き上がり、壱成の腕を支えた。
「……ていうか彩人。寝てないくせになにあれ、どんな体力してんだよお前は……」
「いや、さすがに眠いっちゃ眠いけどな」
「俺……今日空くんと一緒に昼寝しそう」
ふぁーと大あくびをしながら、壱成は落ちていたTシャツを拾い上げ、するりと身に付けた。
それは奇しくも彩人のシャツ。思いがけず、『事後の彼シャツ姿』というセクシーな壱成を目の当たりにしてしまうことになり——
「はぁ~~…………もうだめだめ。俺、ほんとだめ」
「? どーしたんだよ彩人」
「何でもない……。壱成、先シャワーしてて。俺、シーツとか取り替えるし」
「あ……うん。ごめん、サンキュ」
自身の放ったものなどで濡れたシーツを見て、壱成はややバツが悪そうだ。だが、もう体力も残っていないのだろう。壱成はフラフラしながら一階へと降りてゆく。
ひとりになった彩人は、ため息をついた。
「……はぁ、とりあえず落ち着け俺。シーツ換えてシャワーしてちょっと寝て……」
壱成の残していったTシャツはきつすぎるので、とりあえずハーフパンツだけを身に付ける。やや盛り上がりかけている身体を何とかなだめすかしながら、彩人はすっくと立ち上がった。
窓を開けてみれば、清々しい早朝の風がふわりと吹き込んでくる。
清涼な空気を胸いっぱいに吸い込んでみると、際限なく湧いてくる煩悩が少し落ち着く——ような気がした。
彩人はひとつ息を吐いて気を取り直し、せっせとベッドメイクにいそしむのだった。
『人生、それぞれ』 おしまい
帰宅して、まずは自室のドアを開けてみる。まずは壱成と空の寝顔をそれぞれ見て、ほっこりしてからシャワーを浴びるのが常なのだが、今日は彩人の部屋に壱成がいない。
——え、ってことは……。
つまり、壱成は二階で眠っていると言うことなのだろう。普段、彩人のベッドで眠っている壱成が、二階にいる。つまりそれは、そういうことをしたくて彩人の帰りを待っているということ……。
「あ、そっか……明日は日曜か」
つまり明日は休みだ。壱成はこの間、『続きを楽しみにしている』と言っていた——それを思い出し、彩人はすぐさまバスルームへと向かう。
——壱成、待っててくれてんのかな……。
いそいそとシャワーを浴びて二階へ行き、壱成のドアをノックする。だが返事はなく、彩人はそっと部屋の中を覗き込んだ。
部屋は暗く、パソコンデスクのライトだけが灯っていた。
彩人の帰宅を待ちきれなかったのか、壱成はベッドに入って寝息を立てている。机にはラップトップが開かれたままで、何やら仕事を片付けていた最中だったようだ。一週間の疲れで、力尽きたのかもしれない。
「ま……そりゃそうだよな。壱成、昼間バリバリ働いてんだし」
若干……いや、かなり残念な気持ちを抱えつつも、彩人は壱成を起こさないように、そっとベッドに腰掛ける。珍しくうつ伏せになって眠っている壱成の黒髪に指を通し、さらりとした感触をしばし味わう。
そしてふと、マッサの横顔を思い出す。
彩人はこうして今、喜びや苦労を分け合える相手と出会うことができた。一方的な感情ではなく、幸運なことに互いの想いが通じ合っている。しかも、壱成と彩人は同性同士——これは、ある意味奇跡に近いことなのかもしれない。
「……良かった。壱成、俺のこと好きになってくれて」
ぽろりと口からこぼれ落ちた呟きが届いたのか、壱成が微かに身動ぎした。彩人は微笑み、形のいい耳に軽くキスをして、そのまま壱成から離れようとした。
だが、ぎゅっとハーフパンツを握られて、彩人はちょっと面食らう。寝ぼけ眼の壱成が、じっと彩人を見上げていた。
「……おかえり」
「あ……うん。ただいま」
「待ってようと思ったんだけど……ごめん、寝てた」
「ううん、寝てろよ。疲れてんだろ」
「……疲れてない」
壱成の手が、彩人の太腿に触れる。どきどきしつつ壱成を見つめ、その手にそっと掌を重ねた。
「……ほんとに?」
「ほんと。……だから」
「だから……? 何?」
壱成の言葉を待つつもりで口にしたセリフだが、欲望の方がついていかない。
彩人は身を屈めて、壱成にキスをした。壱成もすぐにそれに応えて、口を開き舌を差し出す。絡め合い、とろけあう舌の感触はゾクゾクするほどに淫らで、あっという間に彩人の身体に火をつけた。
「ん、……んっ」
布団をめくって、うつ伏せの壱成の上に跨ると、シャツを捲り上げながら耳や首筋を唇で愛撫した。ちゅ、ちゅっ……とリップ音をたてながら壱成の肌に触れるたび、彩人の理性にぴし、ぴしと亀裂が入ってゆくのが分かる。
「壱成……いいの? しても」
「いい、よ……俺も、したかった、から」
「ほんと? すげぇ嬉しい」
「ぁ、はァっ……」
壱成のしなやかな背筋に舌を這わせながら、急く思いのままにハーフパンツに手をかけた。ふるりと露わになるなめらかな双丘にも唇を触れ、しっとりとした肌の弾力を味わってゆく。
ほっそりとした腰や、無防備に晒された尻たぶにキスをされるたび、壱成は「ぁ、あ」と小さく声を漏らして肌を震わせる。そんなことをしているうちに、彩人はふと気づいてしまった。
壱成のそこにはすでにジェルのとろみがまとわりついて、準備万端の状態になっているということに——
「……壱成、自分で慣らしたの?」
「っ……ええと」
「ほら……もう、こんな。なんで?」
「あっ! ァっ……ん」
トロリと濡れた窄まりに指を這わせると、壱成はビクンと震えて口を押さえる。
彩人の帰りを待ちながら、自分で下準備をしている壱成の姿を想像すると、急激に性欲が高まってしまう。
壱成が淫らに脚を開いて、自らの指であそこを馴らす姿だ。彩人の名前を呼びながら、くちゅくちゅといやらしい音を立てて、彩人を受け入れるために……。
「わっ、あやと……っ」
そんなにも健気な姿を妄想してしまえば、彩人も我慢ができなくなってしまうというものだ。壱成の下を脱がせて四つ這いにさせると、自らのシャツを脱ぎ捨てズボンを下げる。そして、昂り勃ちあがったペニスに、手早くゴムをつけた。
壱成の上に覆いかぶさり、ローションを纏わせた怒張を壱成の太腿にすり寄せながら、耳たぶを噛む。そして半ば勃ち上がった壱成の先端を指先でくるりとなぞってみた。
鈴口から溢れたとろみのある体液が指先に触れるのを感じ、彩人の欲はさらに猛った。
「壱成、勃ってんじゃん」
「ん……さわんなって、そこ……っ」
「ごめんな、待たせて。そんなに欲しかった?」
「ァっ……ぁ、あんんっ……!」
返事を待たず、トロリと濡れてひくつく壱成のソコに、切っ先を埋めていく。すると、とっくに熱く熟れていた壱成の内壁が、きゅうきゅうと彩人の性器に絡みついてくる。その心地よさに、彩人は思わず息を漏らしていた。
「は、ァ……壱成……」
「あやとっ……ぁ、ん……っ、ン」
「ねぇ、なんで、こんな熱いの? 壱成、自分の指でイっちゃったりしたわけ?」
ゆっくり時間をかけながら、壱成の中を味わうように、奥までじっくりと嵌めてゆく。そうでもしなければ、彩人のほうも快楽に負けて、手荒いことをしてしまいそうになる。それくらい、壱成とひとつに繋がる瞬間は気持ちが良く、幸せなのだ。
「壱成……どーなの?」
「いって、な……ぃ……っ」
「ほんとに?」
「だって、イけ、ねーもん……あやとのじゃ、ないと……っ」
「へ……なにそれ。壱成、今のすんげかわいいんだけど」
ぎゅうっとシーツを握りしめながら壱成がゆるゆると顔を上げ、涙目をこちらに向けた。その横顔はすでに快楽にとろけ、たまらないほどの色香を放っている。
始めはなかなか挿入にまで至れなかった二人だが、今や壱成の後孔は彩人の形と味を覚えて、喰らいつくかのように締め付ける。壱成の腰を少し引き寄せ、彩人はさらに深くまで奥を暴いた。
「ぁあ、あっ! ん……ふかい……っ」
「動いていい……?」
「……っ……いい、いいよ」
まだ挿入したばかりだというのに、ついピストンが速くなる。一週間ぶりのセックスなのだから優しくしたいと思っていたのに、身体の方は裏腹だ。壱成のほっそりとした腰を両手で掴み、ぱんぱんぱんっと無遠慮に腰を叩きつけていた。
「ぁ! ァん、ぁ、はぁっ! ……ぁ、ぁっ!」
「壱成……はぁ……っ、はっ……」
「あやとぉ……っ、ン、ぁ、だめ、おれ、もうイキそ……ぁあ、あ」
「へ、もう……?」
「だって、だって……っ、ァん、きもちいい、ナカ、きもちいい……っ」
シーツを握りしめながら彩人に揺さぶられている壱成が、どさりと枕に倒れ込む。それでも彩人を貪る腰は高く突き出したまま、横顔でこっちを見上げているのだ。
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「いく……っ、イクッ……ぁ、ン、んんっ……!!」
ぶる、ぶるっ……と痙攣する壱成を抱きしめながらも、彩人はさらに壱成を攻め続けた。すると壱成は腕の中でいやいやをするように首を振りながら、「あ、まって、らめ、まだっ……ぁ、あんっ……!!」と身悶えている。
達したせいか、壱成の内壁はさらに熱を増し、汗が浮かびはじめた壱成の肌は吸い付くようないやらしさだ。腰を打ちつけながら壱成からシャツを抜き、彩人はがぶりと壱成の肩口に甘噛みした。
「ひあっ……! ァ、あやと、ン、ぁ、あっ……」
「壱成……すき、好きだよ。ハァっ……かわいい、すき」
「ァん、ん、ぁ、あっ……!」
バックのままもう二、三回壱成をイかせたあと、彩人は一旦壱成からペニスを抜いた。たっぷりとした白濁を溜め込んだコンドームを外し、すぐに新しいものを身に着ける。
そんな彩人の様子を、とろんとした表情で見上げる壱成は、自らゆっくりと仰向けになり、ゆるゆると脚を開いた。
「彩人、もっと……」
「はは、今度はこっちがイイんだ?」
「キスしたい……なぁ、はやく」
「いいよ、いくらでも」
いつになく甘てくれる壱成が、かわいくてかわいくて仕方がない。濡れそぼった壱成のそこにゆっくりとペニスを沈めながら、彩人は壱成の唇にキスをした。
「ん、んン、ぅっ……」
「は……すげぇ、イイ。……ハァ……」
「あやと、舌、いれて。エロいキス、してよ」
「ははっ……壱成、そんなことも言ってくれんの?」
と、余裕ぶってみるものの、腰の動きは止まらない。壱成の膝を掴んでひとしきり腰を振った後、身をくねらせて喘いでいる壱成の髪を撫でた。
「あ、ぁ! ぁん、ッ、はぁっ……」
「壱成、舌、出して」
「へ……っ」
「ほら、出して。エロいキス、しよ?」
「ん、ぁっ……あ!」
ずん、とひときわ奥へとペニスを穿ち、そのまま上下に腰を揺すってみる。彩人の屹立を根元まで受け入れながら揺さぶられている壱成の内壁が、またいっそうきゅうんと締まった。
壱成は彩人を見上げ、おずおずと舌を伸ばす。彩人はうっそりと微笑んで、かぷりと壱成の舌を口内に迎え入れた。
「ん、んっ……ふっ……ン、ん」
しっかりと壱成を抱きしめながらディープキスを交わし、腰だけを使って深く深く突き上げる。
彩人から与えられる快楽に、壱成が夢中になっているのが伝わってくる。壱成もまた全身で彩人を抱きしめ、淫らに腰を揺らして、さらに彩人を貪るのだ。
「壱成……エロいね。腰、こんな振ってさ、すげぇスケベじゃん」
「ん、だって……、あやとの、きもちいい、きもちいいから……っ」
「ほんと……? すげー嬉しい。ほら聞こえる? エロい音してんの」
「ぁ、あっ……ァ!」
最奥を抉るように腰を蠢かせると、くちゅう……と淫らな水音が響いた。汗か涙か、しっとりと濡れた壱成の目元を指先で拭うと、壱成の手が彩人の指を握り、ふたりの指が絡まった。
「あ……、ぁ、イク、またいく、っ……ぁやと、ハァっ……」
「俺もイキそ……はぁ……はっ……ごめん、ちょっと激しくしていい?」
「いい、いいからっ……ァ、はぁっ、あやとも、イって、おれんナカで、イって……っ」
「っ……」
そんなことを言われてしまってはたまらない。彩人は湧き上がってくる欲望に身を任せ、壱成の腰をぐいと引き寄せた。
大きく脚を開かされ、結合部も露わに甘く犯され、声高に喘ぐ壱成に酔い痴れながら、彩人もまた、壱成の中で絶頂して——
+
そうしてひとしきりセックスに溺れていると、徐々に空が白んできた。夏の朝は早いのだ。
腹の上で、肩で息をしている壱成の太腿をそっと撫で、彩人は満ち足りたため息をついた。
「壱成……シャワー、いこっか」
「ん……も、立てねぇ、俺……」
彩人の傍に腕をつき、ゆっくりと身体を起こした壱成と、間近で目が合う。
壱成のまつ毛はコシがあり、ゆるく上向きにカールしている。眠たげなその目元が妙に色っぽく、彩人はまた性懲りもなくムラッとしてしまうのだが……。
——いやいや……さすがにもうダメだろ。性欲どーなってんだよ、やべーな俺……。
彩人はひとつ深呼吸をして、あえて軽い口調でこう言った。
「なら、また抱っこしてやろっか?」
「はっ? なめんなよ、大丈夫だっつーの」
「本当かぁ?」
「本当だって……うわっ」
彩人の上からするりと降りて立ち上がろうとした壱成が、ふらついてベッドに腰を落とす。彩人も慌てて起き上がり、壱成の腕を支えた。
「……ていうか彩人。寝てないくせになにあれ、どんな体力してんだよお前は……」
「いや、さすがに眠いっちゃ眠いけどな」
「俺……今日空くんと一緒に昼寝しそう」
ふぁーと大あくびをしながら、壱成は落ちていたTシャツを拾い上げ、するりと身に付けた。
それは奇しくも彩人のシャツ。思いがけず、『事後の彼シャツ姿』というセクシーな壱成を目の当たりにしてしまうことになり——
「はぁ~~…………もうだめだめ。俺、ほんとだめ」
「? どーしたんだよ彩人」
「何でもない……。壱成、先シャワーしてて。俺、シーツとか取り替えるし」
「あ……うん。ごめん、サンキュ」
自身の放ったものなどで濡れたシーツを見て、壱成はややバツが悪そうだ。だが、もう体力も残っていないのだろう。壱成はフラフラしながら一階へと降りてゆく。
ひとりになった彩人は、ため息をついた。
「……はぁ、とりあえず落ち着け俺。シーツ換えてシャワーしてちょっと寝て……」
壱成の残していったTシャツはきつすぎるので、とりあえずハーフパンツだけを身に付ける。やや盛り上がりかけている身体を何とかなだめすかしながら、彩人はすっくと立ち上がった。
窓を開けてみれば、清々しい早朝の風がふわりと吹き込んでくる。
清涼な空気を胸いっぱいに吸い込んでみると、際限なく湧いてくる煩悩が少し落ち着く——ような気がした。
彩人はひとつ息を吐いて気を取り直し、せっせとベッドメイクにいそしむのだった。
『人生、それぞれ』 おしまい
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