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十八、昔の客
しおりを挟むその日、清之介は平三とともに店先の掃除を熱心にしていた。もうすぐ年の瀬ということもあり、家の中の物全てを通りに出して埃をはたいているものの姿も目立ってきた。
新しい年を迎えるにあたって、浮き足立ったような、どこかふわふわと人々の心が高揚するこの季節を、清之介は初めて少し楽しいと思った。
「清ちゃん、この後、お使いに行くように言われてるんだけど、清ちゃんも一緒に行くかい?」
箒で店先に溜まった落ち葉をかき集める手を休めて、平三がそう尋ねる。眼鏡の奥からちんまりとした目で自分の方を見ていることに気づき、清之介は軒下の埃を落とす手を休めて、平三に向き直り小首を傾げた。
「どこへ行くの?」
「御番所だよ。渥美さま……あの、旦那さまが小さい頃からお世話になってる人がいてね、繕い物を届けに行くんだけど」
「そっかぁ、その方面なら行ってもいいかな。俺、吉原の方にはあんまり近づくなって言われてるから……」
「あ、そうだよね。うん、方向は逆だし、いいんじゃないかなぁ。でも一応、旦那さまに聞いてみようか」
「うん、そうする」
平三はいつでも、清之介に対して穏やかな態度を変えずにいる。大人たちの中には、吉原あがりの清之介のことを、悪気がないにしろあるにしろ、多少はからかってくる者もいる。しかし平三は、貴雪から言いつかっている清之介の指南役というお役目を、律儀に大切にしているようだった。
清之介は、それがとても嬉しかった。
口元を覆っていた手ぬぐいをずらし、清之介は平三に笑顔を見せた。
「ここが終わったら、俺聞いてくるから」
「あ、うん。分かったよ」
清之介の笑顔を見て、平三はちょっとばかし頬を赤らめる。もう一度箒を握り直して仕事に戻った平三を見て、清之介は再び手ぬぐいを耳の後ろでくくり直そうとした。
しかしその手首を、乱暴にぐいと掴まれた。驚いて振り返った清之介の顔がさぁっと青ざめるのを、そばにいた平三ははっきりと見て取った。
「これはこれは、こんなところで埃にまみれているとは、驚きだねぇ。あの艶やかなおべべはどうしたんだ?」
「あ……」
でっぷりとした身体を、高級な着物に窮屈そうに収めた大柄な男が、清之介の腕を掴んでにやにやと卑しい笑いを浮かべている。
ぷうんと酒の匂いが鼻をつき、どろんとした目つきから、相当酔っている様子が窺える。清之介が青ざめ怯えた表情でその男を見上げているところを見れば、誰の目にもこれがただごとではないことは分かった。
「あの後何度お前を呼んでも、もう居ないの一点張りだ。何でこんな所にいるんだ?」
「……お、俺……もうあそこは辞めたから……」
「辞めた? 誰か借金の形代わりをしてくれる奴がいたのかな? 言ってくれれば、俺がお前を買い取ってやっても良かったのになぁ」
「……」
清之介の唇がわなわなと震える。そんな二人の姿が、街ゆく人々の目を引き始めた。
平三はあたふたとあたりを見回して、店の中へ助けを求めに行こうと思ったが、その男の陰鬱な目に射竦められて足を止めた。
「胡屋……ふうん、ここがお前の奉公先か。ここの旦那に、気に入られたってわけか」
男は、平三の身につけた藍色に白抜きの前掛けを見てそう言った。その時、おずおずと男のそばに控えていた痩せぎすの小男が声を発する。
「旦那、そろそろ行かれませんと。こんな往来で騒ぎになっては困りますよ」
「五月蝿い!! この俺に指図するな! 斬られたいのか!」
「はっ……申し訳ありませぬ」
男の怒声に、清之介はびくっと身体を縮める。男はもう一度清之介を見下ろして、にいと意地汚く笑った。
「俺はお前を気に入っていたのだ。お前を買ったここの旦那より、もっといい値段を払ってやる。さぁ、ついて来い」
「いや……いやです。離してください……!」
清之介の腕を掴んだまま歩き出そうとする男に、清之介はようやくそう言って抗議した。しかし震える小さな声は男には届いていないのか、半ば引きずられるようにして、清之介は二三歩よろけた。
「さぁ来い!! ぐずぐずするな!」
「いや……です! やめてください……!」
「お前みたいな餓鬼に高い金を払って、何度も可愛がってやっていた恩ってもんがあるだろうが。しかもこれからは一生可愛がってやろうって言ってるんだ」
「いやだ……! 行きたくありません……! 俺は、ここで……」
「こんなしみったれた店で一生終えるのか。俺はもうすぐ任期も終わる。お前も国へ連れて行ってやるぞ。何でも食わせてやるし、きれいな着物も着せてやる。そして毎晩、泣き喚くほど可愛がってやる。どうだ、いい話だろうが!」
「い……や、やです……!! は、離せ!!」
渾身の力を振り絞って、清之介は男の手を振りほどいた。その反動で、どさりと尻餅をついた清之介を、男はまるで汚いものを見るかのような目つきで見下ろした。
「……この、生意気な糞餓鬼が……! お前みたいな薄汚れた陰間が、まっとうに生きていけるわけないだろう!!」
「……っ」
清之介の目が見開かれる。男は全身に不満と苛立ちを顕にして舌打ちをすると、帯刀していた日本刀に手を掛けた。
「旦那さま!! おやめください!」
「お前は黙っていろ! 役立たずのうすのろめ!」
その小男に向かって、男は刀を抜いた。そこに銀色の抜き身が閃いたせいで、往来の人々の脚が止まり、悲鳴が上がる。
「おい、餓鬼。俺の言う通りにしないのなら、ここで死ね」
「あ……ぁ……」
がたがたと全身を震わせながら刀を見上げている清之介の顔から、更に血の気が引いて真っ白になっていくのを、平三はどうすることも出来ずに見ていることしか出来なかった。平三の膝もぶるぶると震え、動くこともままならない。
「何をしているんですか」
絶望的な気分に足を竦ませているところに、落ち着いた声が割って入ってきた。
暖簾をくぐり、貴雪が姿を現す。
貴雪は尻餅をついている清之介と、刀を抜いて真っ赤な顔をしている男を見比べると、次にまっすぐ平三を見た。
「……あ」
貴雪の落ち着いた目つきに力が抜けると共に、平三はその目で訴えられている言葉を直感的に読み取った。貴雪は静かに一度まばたきをすると、もう一度平三を見て、そして清之介を背に庇うようにして男に向き直る。
「私の店の前で、一体何をしているのかと聞いています」
「……誰だ、お前。この店のもんか」
男は振り上げた刀を構えたまま、更に目つきを険しくして貴雪を睨みつける。
「ここの店主、笹田貴雪と申します。して、貴方はどこの誰で、一体何をしておられる。うちの奉公人にそんな物騒なものを向けて、どういうおつもりですか」
「店主、だと。貴様のような若造がか!? ……ということは、その餓鬼を買ったのもお前か」
「餓鬼?」
「貴様の後ろにいる薄汚い陰間のことだ!」
「……さて、そのようなものはここにはおりません。この子は、知識と能力を買って私がここに雇い入れた少年です。貴方がどなたかは存じませんが、人違いでしょう」
「ふんっ、綺麗事を言って、どうせお前もその餓鬼に誑かされた客の一人だろう。いくらでそいつを買ったんだ? その倍を出そう、俺に譲れ」
どこまでも冷静な態度を崩さない貴雪に、更に苛立った様子の男は、ずいと切っ先を貴雪の鼻先に向けた。回りで見ていた者たちの、息を呑む音が響く。店の中から顔を出した他の奉公人も、真っ青になってその場にへたり込む始末だ。
「いくらだとか、譲る譲らないとか、人を商品のように扱うのは感心しません。お引取りください」
貴雪の目つきがやや険しくなる。ぴしりとした口調に、男の青筋がまたひとつ増える。
「生意気な……どいつもこいつも、糞生意気なやつらめが!!」
「……だ、旦那」
今にも斬りかかってきそうな男に、更に怯えた清之介が、貴雪の着物の裾を引っ張る。
「お前は黙っていなさい」
「ふん、かっこつけやがって。商売しかしたことのねぇ生っちょろい若旦那がよぉ。いいからそこをどけぇ!!」
人々の悲鳴が湧く。
刀を振り下ろした男の満足気な笑みと、貴雪の足元にぽたぽたと滴った赤い血を見た清之介の目が、更に見開かれる。
「……貴雪……!?」
「お前は動くんじゃない!」
「……な……!」
左の鎖骨のあたりから胸にかけて浅く斬られた貴雪は、少しばかり顔をしかめる。それでも尚、冷ややかな目線を男に注ぎ続けるその姿に、男は数歩、よろよろと後ずさった。
「お帰りください」
「てめぇ……! もういい、もういい!! ぶっ殺してやる!!」
「いやだ!! やめろよ!!」
再び斬りかかってくる男から貴雪を庇おうとしたのか、清之介はその脚にすがりついて貴雪を引き倒した。
ぶんと大きく空を切った刀が、がりりっと地面を抉り、そばにいた従者の小男が恐怖のあまり腰を抜かす。
「てめぇ何やってんだ! ひっ捕らえろ!!」
静まり返って緊迫していたその場面に、ばたばたと賑やかな足音が割り込んできた。数人の岡っ引きが一斉に男に跳びかかり、刀を取り上げ、地面に引き倒して腕を後ろに捩じ上げる。
「離せ!! 離せぇ!! 俺を誰だと思っている!!」
地面に叩き伏せられた格好になっている男が、無様にじたばたと暴れる。その男の眼前に、同心の渥美与三郎が現れた。
「これはこれは、大外藩主の貫田どのではございませぬか。こんな昼間から酔っ払ってこの狼藉、一体どう始末をつけてくださるのやら」
「くそっ……! 離せといっておろうが!!」
「町人相手に抜刀し、怪我まで負わせるなど言語道断。とりあえず番所まで来てもらいましょうか。おら、連れて行け」
へい、と岡っ引きたちはでっぷりとした大外藩主を立ち上がらせると、家畜でも引きずるようにしてその場を去っていった。尚も口汚く見物人や貴雪を罵りながら、貫田という男は騒動の場から引き離されていく。
渥美は清之介にすがられて共に尻餅をついている貴雪の前に来ると、大きな手を差し出して笑った。
「お前さんがこんなにも勇敢だとは思いもしなかったぜ」
「……渥美さま。平三が?」
「あぁ、真っ青になって駆けて来るから。慌てて来てみりゃこの騒ぎだ。傷、大丈夫かい?」
「少しかすっただけですから」
「その子は? 怪我はねぇか」
清之介は呆然としたまま渥美を見上げ、こっくりと頷いた。そして、地面に滴った赤い血の跡を見て、無事だった貴雪の右腕にすがる。
「旦那……ぁ。ごめん、ごめんよぉ……」
「何でお前が謝るんだ」
「だって……あいつは……」
「もういいんだよ。それに、あの男が言うような子どもはここにはいない。お前は薄汚い餓鬼なんかじゃないんだから」
「……旦那。うぅっ……うっ……」
しゃっくり上げて声を漏らしながら泣き始めた清之介を見て、貴雪は笑った。頭を撫で、右手だけで軽く清之介を抱いて宥めながら、渥美を見上げる。
「怪我はないようです。まったく、よりにもよって、紋吉がいない日にこんな騒動が起こるとは」
「そうか、用心棒は不在だったのか」
「ええ。……とりあえず、中に入ろう。清之介、もう大丈夫だから」
「うぇええ……ごめんよぉ……」
「何を謝ってるんだ。ほら、立てるかい」
「……うん」
渥美の手も借りて二人は立ち上がると、尚もぽろぽろと涙を流す清之介の頭に手を置いて、店の中に入った。
ようやく騒動が収まり、町中はざわつきつつもいつもの賑やかさを取り戻しつつあった。
店の中座敷に清之介を連れていき、平三を呼ぶ。渥美は物珍しそうに清之介を見ていた。
「平三、ありがとうな」
私は平三の頭もくりくりと撫でて心底から礼を言った。平三はまた真っ赤になりながら俯き、こくりと頷く。
「よく分かったね、私の言わんとしたことが」
「渥美さまのところには……お使いに行くっていう用事もあったし……なんとなく、誰か呼ばなきゃって思ったもので……」
「ありがとう、お陰で助かったよ」
「いえ、とんでもねぇ……。清ちゃん、怪我しなくって良かった」
しゃっくり上げていた清之介が、泣き腫らした顔を上げて平三を見る。清之介は平三に向き直って正座をし、膝の上で拳を握りしめたまま頭を下げた。
「……本当に、ありがとう」
「いや、そんな……。俺、お茶を淹れてきます」
皆に礼を言われて照れてしまったのか、平三はそそくさと奥へ消えていってしまった。すでに茶は他の者が淹れたものが手元にあったものだから、渥美は楽しげに笑う。
「うぶな子だねぇ」
「……いい子ですよ、本当に」
「時に、貴雪さん。一応事情は聞いとかなきゃなんねぇ。医者が来るまで、ちょっといいか」
「ええ、どうぞ」
私は晒しで傷を押さえたまま、頷く。渥美はようやく泣き止んで目をこすっている清之介を見て、窺うように訊ねた。
「あの男とは、どういう知り合いかね」
「……それは」
清之介は、私を不安げに見上げた。私は少しばかり微笑んで、代わりにこう答えた。
「渥美さまには、いずれお話しようと思っていましたが、こういう形になるとは」
「というと」
「この清之介は、新吉原で陰間をやっておりました。縁あって、こうしてここで働かせる事になった次第で。ここへ来てふた月になります」
「……ははぁ」
私の口から出てくるとは思ってもみなかった内容だったのだろう、渥美は一瞬ぽかんとして懐手をする。
今までの出来事をかいつまんで渥美に説明をしていると、ようやく少しずつ得心がいったのか、渥美は何度も頷いた。清之介はずっと、私の隣で居心地悪そうに俯いて、拳を見下ろしている。
「なるほどね、昔の客か……。お前さんに振られて、激昂したってわけだね」
顔を上げた清之介に、渥美は安心させるように微笑む。
「大丈夫だ、もう二度とこの店には近づかないようにさせるからな。それに、こんな騒ぎを起こしては、もう江戸にはいられまいよ」
「……そうでしょうか」
「ああ、大丈夫さ。せっかく平和に暮らしてたってのに、迷惑なやつだよなぁ」
少しおどけたような口調に、清之介もようやく少しずつ表情を緩めていく。私もほっとした。
「それにしても医者が遅いな。ちょっとそこいらまで迎えに行ってくらぁ」
「いや、大丈夫ですよ」
「なぁに、疲れたろ。少し休んで待ってろ」
渥美は快活に笑うと、のしのしと中座敷を出て行く。
二人になってようやく、清之介ははぁと大きくため息をついた。
「……旦那。すまねぇ」
「だから、お前が謝ることじゃないって言ってるだろ」
「怪我……させちまったもん」
「かすり傷だって、もう血も止まってるだろ?」
「旦那が死んだらどうしようって……もう怖くて怖くて。俺、黙って連れて行かれときゃ良かったって、思って」
「馬鹿なことを言うな」
弱気な清之介の言葉に、私は思わず語気を強めていた。清之介はびくっと肩を揺らして、私をまっすぐに見る。
「言ったろう、お前はもう、ここの人間なんだよ」
「……うん」
「勝手なことをするのは許さない。いいね、これからもそうだ」
「……はい」
「お前がここにいたいと思うのなら、すがりついてでもここにいるんだ。私のそばに」
「……はい」
「お前に怪我がなくて、本当に良かった。怖かったな、清之介」
ぽん、と清之介の頭をもう一度撫でる。強張った清之介に笑顔を見せると、ようやく清之介も少しだけ笑おうとした。ぽろ、とまた一筋涙が流れていく。
「泣き虫だね、お前は」
「……そんなことねぇよ」
「今夜は、私のところにおいで」
「え?」
「怖い夢を見たらいけない、一緒に寝よう」
「……うん」
清之介のはにかんだような、嬉しそうな笑顔は、なんとも言えず可愛らしい。そのまま抱きしめてしまいたいと思ったが、ここは店だということを思い出して、何とか踏みとどまる。
清之介は何も言わず、私の着物の袖をぎゅっと掴む。しばらく黙りこんでそのままでいると、ようやく店先から医者の到着が知らされた。
✿ ✿
汗ばんだ清之介の肩を抱き、私は天井を見上げていた。心地の良い疲れが満ちた私の部屋の中で、清之介の小さな寝息が聞こえてくる。
こうして清之介を抱くのは、久方ぶりだった。お土岐の教育を受け初め、そして店に出るようになってからというもの、私は清之介にも部屋を与えて距離を保っていたからだ。
清之介の寝顔を見ていると、心が満たされる。
身体が冷えぬように布団を引っ張りあげて自分たちの身体を覆うと、清之介はふと目を開いた。
「……貴雪」
「起こしてしまったか」
「ううん……」
清之介はもぞもぞと肘をついて上半身を起こすと、私の肩口の傷に貼ってある晒しをそっと撫でる。
「……刀を向けられて、怖くなかったのかぃ?俺、怖くて怖くて」
「怖いというより……なんだかあの男の姿を見た途端腹が立ってね」
「貴雪もそういう感情あるんだな。怒ったり、しなさそうなのに。……でも、何でだ?」
「あんな男が、お前を抱いていたのかと思うと……なんとなく」
「え?」
「金に肥えたお大尽というのが、私はどうしても嫌いでね。しかもお前をあの扱いだ。……なんか、こう、悔しいというかなんというか」
私はもごもごとそんなことを言った。
要するに、あんなでっぷりとした成金の醜男に、大事な清之介がいいようにされていたという事実がまざまざとつきつけられた気がして、我慢がならなかったのだ。
「……まぁ、簡単にいえばやきもちさ」
「えぇ?」
目を丸くした清之介を、私は気恥ずかしくなってもう一度抱き寄せる。無事だった方の肩口に頭を載せた清之介の髪の毛を指で梳いていると、清之介は少し笑ったようだった。
「……ありがとな」
「何が」
「俺を大事にしてくれる」
「……別に、普通じゃないか」
「ふふ」
清之介のくすぐったそうな笑い声が心地いい。
私は身を起こして、もう一度清之介に唇を寄せた。潤んだ瞳が私を見上げて微笑む。
頬を撫で、額や耳元にも唇を這わせる度、清之介は嬉しそうに笑う。私もつられて笑みを見せると、清之介は赤く形の良い唇で私を誘った。
「……舌、入れて……」
「え」
「貴雪……もう一回したいよ」
「……」
こんな顔でそのようなことを言われ、どきどきと私の心臓は高鳴る。誘われるまま舌を絡めて、私は清之介の上に再び覆いかぶさるのだ。
「かわいいね、お前は」
「……そうか?」
「うん……たまらなくかわいい」
清之介が微笑む。
なめらかで柔らかな白い肌に指を滑らせると、清之介は目を閉じて、甘い息を漏らした。
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