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同期に告白された残業の夜
しおりを挟むたとえ長年付き合いがある人間だとしても、知らない一面というものは必ずしもあるものだ。
私も誰にも話してない秘密はあるし、逆に秘密がないという人の方が稀有だ。むしろあり得ないと思っている。
相手をすべて知り尽くしていると驕ることなかれ。
私は大学のときから六年間付き合っていた彼氏が、最近会社のふわっふわの綿菓子みたいな可愛らしい女の子に夢中だったなんてことも知らなかったのだから。
それが元でつい三か月前に別れたが、学んだのは人間を見るときは多方面から見るべし、ということ。
だって、ずっと私みたいなタイプが好みだと思っていた。
自分で言うのも何だが、どちらかというと世話好きで、はっきりものをいうタイプ。
甘えるより男性を甘えさせるようなタイプ。
だが、実際は違ったらしい。
彼は『俺、気付いたんだ。甘えるより甘えられたい!』と捨て台詞を残して私の元を去った。
何だそれ。
じゃあ、そう思うなら私を甘えさせろよ。
会えば遠慮など一切なく全力で私に甘えてきていただろうが。
口では私は悪くないと言いつつも何となく私をこき下ろして捨てていくのやめろよ。
喉まで出かかった文句を、彼に投げつけられなかったことだけが心残りだ。
そんな感じでやさぐれた気持ちを抱えたまま晩秋を迎えた11月中旬。
空虚となったプライベートの穴を埋めるように仕事に埋没していた私は、その日も残業していた。
こうなったら時間はいっぱい余っているから顧客に最高のプランをお届けだ! と気合を入れながらパソコンを打っていた夜の八時頃。
営業部には私と、同期の外崎とのさき譲ゆずるが残っていた。
外崎とは同期で席が隣で気が合って。
顔を合わせれば話題が尽きないほどに仲が良かった。
だから残業中も仕事の相談とか雑談とかしながらやっていたんだけど、ふいに沈黙が流れるときがあって、外崎は仕事に集中し始めたんだなと思って私も負けていられないと手を動かした。
けれども、どうやら外崎は仕事に集中していたわけではなかった。
ただ黙ってどう切り出すのかを考えていたらしい。
ようやく口を開いた彼が言った言葉は、随分と考え込んだ割にはどうかと思うが、それでも私の度肝を抜くには十分だった。
「なぁ……そろそろお前を口説こうと思うんだけど、大丈夫か? まだ前の男を引きずってるとかあるのか?」
「…………はぁ?」
正直、外崎の口から『口説く』という言葉が出てくるとは思いもしていなかった。
外崎という男はいつの間にかしれっと彼女をつくり、いつの間にかしれっと彼女と別れているような男だ。しかも彼女の存在を匂わせもせず、彼女がいるのか聞けばようやく分かるというタイプ。『聞かれなかったから』と自分からも彼女の存在も女性遍歴も言い触らしもしない。
女性関係も仕事もストイックで、不言実行。
仕事に関してはめちゃくちゃ優秀で、成績はトップだ。
欠点はないのかと本人に聞いたところ、難しい顔で考えて『人参が食べられないところ?』と真顔で答えるような、俗にいうイケているメンなのだ。
それが今、私を口説くって言った?
は? 本気?
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