新米魔術師の私が手違いで腹黒な王子様を隷属させてしまいました（でも何故か王子はノリノリで私に命令してと言ってきます）

２７．「キス」

　だが、シリルの言う通り混乱し嘆くのではなく、原因を究明しなければ。

　眦に浮かんだ涙を拭いて、強く頷いた。



「これは、使役獣が命令に背いた場合に隷属印が罰を与えている状態です」

「俺、ユニの命令に背いたことないなぁ」

「そうですよね。そうなるとあと考えられるのは……使役に抗おうとしている、とか？　身体の中で使役魔法自体を拒絶しているということはありませんか？」

「ユニに使役されたいってずっと言っているのに？」

「そ、そうですよね。でも、そうとしか考えられないです。殿下が、私の魔力の干渉を断とうとして、使役魔法が印を維持できなくなるのを防ぐために罰を与えて……」

「つまり、俺はユニの魔法を拒絶していないけれど、現状ユニの魔力が干渉できなくなってきているということ？」

「あり得ます。通常は私の魔力が自動的に印に流れ込み、魔法を維持しようとするのですが、今回は術式が変わっているので……そこが上手く作用していない？」



　自信はないが、そう考えるのが妥当かもしれない。



「なら、試しにユニの魔力を俺に与えてみて」

「はい！」



　シリルの胸に手を当てて魔力を送り込む。

　ありったけの魔力を送り込もうとしているのだが、皮膚同士の触れ合いではやはり効率が悪いようだ。

　上手くシリルの中に溶け込んでいかない。



「これでは足りないようだね」

「すみません……」

「じゃあ、ユニ、もう少し直接的な触れ合いにしよう」

「つ、つまりは……」

「キス」



　そうなりますよね、とユニはごくりと息を呑んだ。