新米魔術師の私が手違いで腹黒な王子様を隷属させてしまいました（でも何故か王子はノリノリで私に命令してと言ってきます）

２０．「どうして見つからないの……」

　こんな姿、他の人には見せられない。



　いくつか命令をして本を取ってもらったあと、テーブルに置いてもらうと本を読み始める。

　その隣で、シリルも調べるのを手伝ってくれた。



　しばし静寂が流れ、ユニは集中しながら本に目を通す。

　シリルはユニの倍以上の速さで本を読んでいき、あっという間に本の山が崩されていく。

　それでも目当ての情報が見つからず、結局無駄骨に終わった。



「どうして見つからないの……」



　悔しさを滲ませ、テーブルに突っ伏す。

　欲しい答えが見つからない悔しさやもどかしさは、本当に嫌なものだ。



「ずっと俺はこのままでいいって言っているのに。ユニは真面目だね」



　シリルもテーブルに頬をつけて、こちらを見つめてくる。



「真面目と言うか、良心の呵責に耐えかねてというのが本当のところです。この状況を作り出した責任と、それを解消できない情けなさで押し潰されそうなんです……」

「だから真面目だって言うんだよ。俺の言葉に甘えようともしない。本当、ミリウスが言っていた通りだ」

「ミリウス様が？　私の話を？」

「うん、よくしているよ」



　意外だ。

　あのミリウスが「よく」と言われるほどに他人にユニの話をしているとは。

　いつも淡々としていて感情の起伏に乏しい人なので、自分のことはただの弟子でそれ以上でも以下でもない存在だと思っていた。



「会うたびに君の話をするから、きっと君が思っているより俺は君に詳しいと思うよ」

「私のいないところで私の情報を共有するのやめてください……」



　いったい、どんな話をされているのか。

　恥ずかしい話をされていないか心配だ。



「けれど、本物の君は俺が思った以上だった。いつも挨拶だけで終わるのは、寂しいと思っていた。だから、こうやって話せる機会を得たのは嬉しい」

「それは……あ、ありがとうございます」