新米魔術師の私が手違いで腹黒な王子様を隷属させてしまいました（でも何故か王子はノリノリで私に命令してと言ってきます）

７．「――絶望的」

「殿下、少しじっとしていてください」



　とりあえず落ち着きを取り戻したユニは、シリルに向かって解除魔法を唱えた。

　早く彼をこの可哀想な状況から解放してあげなければと、必死に集中する。



「……あれ？　何で？」



　だが、解除魔法は効かずに、シリルの胸にある隷属印も消えない。

　もう一度、もう一度、と何度挑戦しても、紋様は薄くなるどころか何一つ変化が起きない。



「解けないね」



　ユニはそのシリルの言葉に頭を抱えて、地面に伏せた。

　もうどうしていいか分からない。



「あぁ……どうしようどうしよう……どうしたらいいの？　どうやったら解除できるの……？」



　混乱して、今にも泣き叫びたい気分だ。

　使役魔法がシリルに作用した理由は理解できたものの、肝心の解除ができないだなんて。

　ミリウスに教わった通りにやっているし、間違いないはずなのに。



　ユニの魔力が足りないのか、それとも何か他の理由があるのか。



「……あっ、一回弾き飛ばされた、から？」



　一度他の魔物に発動しかけたものが無理に弾き飛ばされて、シリルに襲い掛かった。そのときに、術式が変化して解けなくなったということもあり得るかもしれない。



　予測不能な事態が重なって、特別な術式ができ上がってしまい、それが解除を阻んでいるのだとしたら、おそらくユニにはこれを解くことはできないだろう。



　きっと解けるのは、ミリウスくらいの力の持ち主。



「――絶望的」



　ユニはようやく状況を呑み込んで、また深く絶望した。



「それで、どうする？　君ではこれを解除できないんだろう？」



　ブツブツと呟きながら地面に臥せるユニを抱き起し、自分の方へと向かせたシリルは、何一つ慌てた様子もなく聞いてくる。