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1.「はぁ……もう無理……」
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目の前でつまらなそうにあくびをする魔物を見つめながら、ユニは泣き言を漏らした。
もう何度目になるか分からない失敗に、心が挫けて今にも投げ出してしまいそうな気持ちをどうにか押し留めている。
逃げてはダメだと分かりながらも、いい加減自分の才能のなさに嫌気がさしていた。
ユニはこの国の魔術師だ。
と言っても新米なので、師と仰ぐ魔術師団の副団長のもとで修業をしている身でもある。
実力はそれなり。
中級程度のものであれば難なく出せるし、魔術師の一番重要な任務である国防という面では役立てるほどの実力がある。
ところが、この上を目指すとなると使役獣が必要になってくるのだ。
魔物、もしくは魔族を従わせて使役することができれば、強大な力を得られる。
使役獣はいわば、魔術師の一種のステータスでもあった。
ところが、ユニは使役魔法を上手く使いこなせない。
捕縛魔法で魔物を捕らえられても、そこから魔法で隷属させることができないのだ。
師のミリウス曰く、実力は兼ね備えているがこの性格が災いしているのだという。
ユニの押しに弱く優しい気質が、本来は獰猛な魔のものたちを従わせることにどこか迷いを持っているのだと、厳しい指摘を受けた。
たしかに使役魔法をかけるときに躊躇いを持ってしまうのだ。
――従わせるなんて可哀想。
そういう、ミリウスの言うところの甘い考えがどうしても頭を過ぎる。
今もそうだ。
結局、ユニはこんな低級魔法しか使えない小さな魔物も従えることもできずに、使役魔法を跳ね返されて失敗に終わってしまった。
捕縛魔法の陣の中で、魔物が小馬鹿にした顔でこちらを見ている。
悔しいが、実際に使役できないのは事実。
だが、ユニにも諦めきれない事情がある。
三日前、ミリウスはユニに課題を出した。
――十日ほど他の町に仕事をしに行くので、留守の間に小物一匹でもいいので使役すること。
どんな手を使ってもいい、使役するということを経験しなさい。
ミリウスはそう言い残して発った。
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