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ミケルはどすどすと大股で歩く。
荒々しい足音と触れ合う肌から伝わる鼓動から、かなり余裕がないことがわかる。
ベッドに放り出されるくらいはあるかも、と思っていたが予想に反して慎重にゆったりとシーツへ下ろされた。
すぐさま彼が覆い被さってくる。
そのまま唇を重ねられ、食むようにキスが降る。
可愛らしい触れるだけの口付けは、すぐに喰らうように貪る荒々しいものに変わった。
ミケルのふとももに足を割られ、タオル越しに秘処を圧迫される。
わずかに揺すられた刺激が蕾に伝わって腰がもどかしくなってくる。
無意識に内ももで彼の足を挟み擦ってしまう。
少しミケルが笑った気配がした。
薄く目を開けると、キスをしたまま視線がかち合う。
嬉しそうに目を細めている。
喜ぶ彼の表情、最後に見たのはいつだっただろうか。
見惚れていると熱い舌が押し込まれた。
絡め取られて、すり寄る表面のざらざらした感触さえも甘く蕩けるような錯覚に陥る。
呼吸もままならない激しさで、苦しいはずなのにどこか陶酔感がある。
荒々しくねぶられ、彼から必死で求められている感覚が嬉しくて心地いい。
切なげに吐息を零しながら熱いキスが続く。
熱烈な口付けからサリエラへの情欲や恋慕が伝わってくる。
浮気などと彼を疑っていた自分が馬鹿らしくなる。
愛おしさが込み上げ彼の髪を撫でた。
さらさらと指の間を滑っていく手触りが気持ちいい。
気付いたミケルが唇を離す。
「……なに」
頭を撫でられることが気恥ずかしいのか、不機嫌なようなむくれた顔をしている。
そんな彼がまた愛おしくて、両手で髪を掻き乱す。
「好きだなあって」
ミケルの瞳が驚きで見開かれる。
すぐに視線を逸らされた。
「……っ」
なにか言いたげにもごもごしている。
口下手な彼なりに懸命に言葉にしようとしてくれているのがわかる。
待っていたら言葉ではなく抱擁が帰ってきた。
彼の両腕が背とシーツの間に滑り込み、ほんの少しだけ彼の重みを体に感じる。
タオル越しにもわかるほど彼の心臓が速い。
「好き、だ……俺の方が」
耳元でぽそりと呟かれる。
滅多に聞けない睦言に、一気に自身の体温が上がったのがわかった。
きゅうっと心臓が締め付けられて苦しい。
咄嗟に言葉が出ず、真横にある彼の頭に自身の頬をすり寄せた。
媚び過ぎたかと急に恥ずかしくなる。
「っん」
耳に濡れた感触が走った。
ミケルに耳朶を食まれている。
上下の唇で咥えやわやわと挟まれる。
時折熱い舌が肌を濡らし、ぞくりと甘い痺れが生まれた。
輪郭をゆったりなぞり、唇で耳の形を辿っていく。
先程の口付けと打って変わって、優しい愛撫が切なくて心地いい。
丁寧に唇を寄せられて慈しまれていく。
ひとつひとつのキスから恋慕を伝えてくるよう。
心が満たされじんわり温かくなる。
彼にも愛しさを伝えたくてうなじから背中を優しく撫でた。
ミケルがわずかに体をよじり甘く息を零す。
良い反応に嬉しくなって背から脇腹、肩など夢中で指先を滑らせていく。
「っ、……ちょっと待て、ッ」
熱っぽい声と共に、彼の体を堪能していた両手は呆気なく拘束された。
軽々頭上でまとめられる。
ミケルの手にたいして力は入っていないので痛くはない。
抜け出してみようと少し力を込めたが彼も同じく力を込める。
逃がしてはもらえないらしい。
悟って体の力を抜くと、彼の唇が額に触れた。
目尻、頬、顎を辿って首筋へキスが落とされる。
しっとり吸い付く唇は柔らかく心地いい。
かすめるわずかな吐息さえ心地よく感じられ、次第に肌が敏感になっていくのがわかった。
ミケルが甘く吸いつくたびにぴくりと小さく震え反応する。
すでに期待し始めているサリエラの体を焦らすように、唇での愛撫はゆったり進んでいく。
耳元から首筋を下がって鎖骨へ辿り着いた。
薄い皮膚に柔らかな唇が押し付けられていく。
ちりっとしたわずかな痛みを感じた。
彼が鎖骨の下に跡を付けていた。
襟で隠れる部分ではあるが、少し屈むと見えてしまいそうな位置。
「跡、見えちゃう」
「見せつけてろ」
赤くなった肌の上に舌が這わされぞくりと甘く疼く。
濡れたざらつきが熱くて情欲を煽る。
そのままキスをしながらいくつも跡を残された。
白い肌に赤い花が咲く。
完全に衣服で見えない場所なのに、彼の執着を見せつけられているようでむず痒い。
恥ずかしいけど嬉しい。
「綺麗だな」
自分の残した跡をじっくり見つめてミケルがつぶやく。
吐息すら感じる距離。
タオルが取り去られる。
肌を堪能していた彼の唇がふくらみの先端に触れた。
すでに主張を始めていたそこは穏やかなキスにさえ反応する。
口に含み軽く吸われれば、ぞくぞくと背筋が愉悦で震える。
丁寧に舐め上げ唇と舌でしごかれる。
片側は指で挟まれ、擦られ、異なるふたつの刺激が体の熱を高めていく。
無意識に零れる吐息が色を帯び、小さく喘ぎが洩れた。
ゆったりとした愛撫は快感ともどかしさを生み腰を震えさせる。
腕を拘束していた彼の手が緩んだ。
手首から肘をなぞり、二の腕の柔らかい皮膚を撫でながらふくらみへ辿り着く。
そのまま背中に触れ背骨に添って指が滑る。
くすぐったさと小さな悦に背が反る。
さっきの仕返しをされたのだと悟り視線で抗議してみる。
見上げたミケルと目が合う。
少し笑っている。
してやったりという顔。
ちょっと悔しくてむくれていると、さらに彼が破顔する。
「なにが可笑しいのよ」
悔しくなってわざとらしく不機嫌な顔をしてみる。
「いや、可愛いなって」
「はっ? ……んっ」
今までの寡黙な性質はどこに行ったのか。
随分と甘やかな言葉を滑らかに紡がれる。
慣れない素直な睦言に、サリエラの方が言葉を詰まらせた。
彼女が反論を探し出す前に唇が重ねられた。
触れるだけのキス。
甘やかで柔らかくて心地いい。
言葉も行動も甘すぎる。
「……いつもと違いすぎ」
咄嗟に可愛くない言葉が出た。
「本当はいつもしたかった」
親指で頬をなぞられる。
「ぐずぐずに甘やかして気持ち良くして、俺のこと以外考えられなくしてしまいたい」
まっすぐな瞳に射抜かれ心臓が高鳴る。
真剣な言葉と表情にどきどきする。
「もっと愛したい」
下唇を優しく食まれる。
「嫌か?」
切実な声色で問われてしまえば拒否などできない。
以前の深く愛されていた悦びを体が思い出して、下腹がきゅんと切なくなった。
「そんなわけない」
今度はサリエラが彼の顔を引き寄せ唇を奪う。
触れ合うだけだったキスは次第に深くなり、互いの呼吸をも飲み込むように貪り合った。
ミケルの手が再び肌を撫でた。
背中、脇腹、腰をなぞり鼠径部に触れる。
すでに潤い始めた秘処に指の腹が添わされた。
溢れ始めた愛液を、節張った指が入り口にまんべんなく塗り広げていく。
徐々にほぐされていく花弁はふっくらと色付いた。
サリエラの唇が解放され、ミケルの顔が下がっていく。
お腹にちゅっと音を立ててキスをされ、少しくすぐったい。
そのまま続けて足の付け根から内ももにかけて口付けられていく。
指の動きは止まることなくゆるゆると入り口を撫で続けている。
いつまでたっても快感の核心に触れてもらえない体が、次第に疼き腹の奥でじわじわもどかしさがくすぶる。
「ああ、赤いな」
秘裂の間近でミケルが呟く。
その視線は充血して膨れた蕾へ一心に注がれている。
こんなにじっくり観察されることなんて今までなかった。
羞恥が押し寄せ頬が熱くなるのがわかる。
彼の顔が割れ目に吸い寄せられる。
「あっ待っ……」
これからなにをされるのか悟り慌てて制止する。
動きを止めたミケルは悲しげに眉を下げて言う。
「……だめか?」
大きな図体に似合わず肩を落とししゅんとする姿は、叱られてしまった子犬のようだった。
まるで自分が悪いことをしているような気分になる。
潤みを増した彼の瞳がより罪悪感を煽ってくる。
「あ……だって、今までこんなこと……」
されたことはなかった。
指で愛されることはあっても唇が秘処に触れたことはない。
「したい」
切実な声色で懇願され、きゅっと心が疼く。
すがるような瞳に囚われ、サリエラは頷いていた。
ふっと目を細めミケルが柔らかく笑う。
あまり笑顔を振り撒くタイプではないので不意打ちでときめいた。
彼はふとももにいくつもキスを降らせていく。
ミケルの動きから目が離せなくなっていた。
徐々に近付いていく唇に期待と羞恥が入り混じる。
恥丘に触れ、核心にやわく吸い付かれた。
「ッ……」
肌の表面を撫でるだけでは得られない鋭い快感が走る。
反射的に腰がびくりと跳ねた。
入り口をほぐす指はそのままに、片側の手は膝裏に差し込まれてさらに足を開かせられた。
自身の秘められた場所に顔を埋めるミケル、恥ずかしさと愉悦でその姿を直視できなくなった。
固く目を閉じ、意志に関係なく溢れる嬌声を両手で抑え込むが無意味で、与えられ続ける愛撫に敏感に反応する体は素直に甘い吐息を零す。
ざらつき濡れた感触がじっとりと表面を這っていく。
舌の熱さとぬめりがまとわりついて、核が愉悦に震える。
終始ぞくぞくと腹の奥に快感が送られていく。
抗えない体を震わせ、声を零すことしか出来ない。
ふと蜜口が押し広げられる感覚がした。
ずっと入り口を撫で解していた彼の指がゆっくりと押し入ってきた。
とろとろになったそこはなんの苦もなく受け入れる。
ごくごく浅い内側をまんべんなく撫でられる。
ゆっくりと、襞のひとつひとつまで丹念に指が添う。
完全に中が指を受け入れたところで、腹側の膨れた部分を軽く押された。
指の腹で押し上げ、同時に外側の秘核も刺激される。
外と中から同時に官能を高められ、快感に震えた内側がミケルの指を締め付ける。
「まだ1本なのに、きつ……」
彼がどこか嬉しそうに言葉を洩らす。
返事をする前に再び愛撫が再開されて、サリエラの口からは色付いた声が零れるばかりだった。
「っぁ、待っ……」
込み上げていた絶頂感に咄嗟に制止の声が出る。
止まらない刺激にミケルを見ると一瞬目が合う。
「ぅあっ、ん、ぁあッ」
サリエラの声は届いているはずなのに彼の愛撫は止まらない。
的確に一番いい悦い所から指と唇を離さない。
反論する余力をすべて快楽に塗り替えられ、サリエラは瞬く間に頂上へと追い立てられた。
一気に熱が弾け、下腹から全身へ気持ちいい波が打ち寄せる。
腰が数回大きく跳ね、そこでやっとミケルの唇が離れた。
サリエラは詰めていた息を吐き出し肩で洗い呼吸をする。
心臓が強く脈打ち汗が滲む。
まだ上がったままの息を無理矢理落ち着け、自身の体を沈めることに精いっぱいだった。
目は開けられないものの、彼の気配を間近に感じる。
両腕で優しく抱き寄せられ額にキスが降りた。
軽やかな音を立ててこめかみや頬へも口付けられる。
いつまでたっても唇に辿り着かない。
痺れを切らしてサリエラから彼へキスを送る。
一瞬たじろいだ気配はしたものの、すぐに背に大きな手が回された。
抱き締められ何度もキスをする。
角度を変え、舌を交え、隅々まで互いを味わう。
「……っ」
視線が絡んだ。
熱に浮かされた獣のように滾る瞳。
濃い雄の色が滲んでいる。
唇が離れ、鼻先が触れ合う距離で見つめ合う。
わずかに微笑み頷いて見せる。
ミケルとひとつになりたいという気持ちを込めて。
彼が避妊具の準備をする。
自身の猛りへ施し、ふとももを割り開く。
秘裂をなぞるように先端で擦られ甘く疼いた。
何度かなぞられた後、入り口に彼の先端が押し当てられる。
じりじりと侵入してくるそれは心なしかいつもより張り詰めているようだった。
「ぁ、大き……っんぁ」
ぐっと一気に押し込まれ嬌声が零れる。
「っ煽るなよ。……痛くないか?」
ミケルは余裕なく眉を寄せつつもサリエラの髪を撫で気遣う。
ぶっきらぼうな声色だが彼の優しさが伝わってくる。
「ん、平気」
彼の眉間の皺を人差し指で撫でてみる。
そこで自身の表情に気付いたのか、ミケルはほんのり気まずそうに視線を逸らした。
触れるサリエラの手を取り自身の首に回させる。
すぐに唇が重なり、照れ隠しなのかなとちょっと微笑ましくなる。
キスに答え彼の口付けを堪能する。
全体がしっとり合わさり心地いい。
控えめに入ってきた舌先はサリエラのそれを小さくくすぐった。
先端だけが絡み合ういやらしさと、すべてを味わえないもどかしさで、感覚の均等が崩れる。
もっと欲しくなってしまう。
堪らず彼の口内へ押し入ればすぐに応えが返ってきた。
熱く濡れた肉厚がまとわりつく。
舌を絡ませながら、ミケルの腰がわずかに奥を突く。
「んっぅん……」
油断しきっていた蜜壺が悦びでひくつき甘い声が零れた。
締まったことで彼の物へ襞がよりまとわりついて気持ち良さが増す。
奥に熱杭を押し付けられたまま荒々しく口内がねぶられる。
舌の絡み合いが抽挿での刺激を彷彿とさせて、下腹がきゅんとときめく。
期待しきった秘処は潤いを増していく。
なのにミケルは一向に動こうとしない。
唇ばかりが貪られ、置いてけぼりの腰の奥が次第にじくじく疼き始める。
「な、んで……」
動かないの?
視線で訴える。
「なに?」
絶対にサリエラの言いたいことを理解している口振りでミケルが問いで返す。
中は刺激を求めて誘うようにわなないている。
なのに言葉では素直に発することが出来ず、動いて欲しいのに言えないでいた。
もじもじと言い淀むサリエラをあやすように、ミケルは唇に吸い付く。
下唇を食み、上唇を軽く吸い、口端にちゅっと音を立ててキスをされた。
「だから、もう……」
「ん?」
察してくれともう一度声をかけるが望みは叶えられない。
あくまでサリエラが言葉にするのを待っているつもりらしい。
「意地悪すぎない?」
そう簡単には素直になれない。
悔しさと羞恥で強がって見せる。
「言えよ。聞きたい」
問答無用で煽られる。
「ぁ、ぅ……」
至近距離で見つめられているこの状況で懇願するのは恥ずかしすぎる。
苦し紛れに彼の首に巻きつけた腕で強引に引き寄せる。
耳に唇が触れるほどの距離でか細く言う。
「動い、て…………ぁ、んッ」
内襞を引きずりながら熱杭が抜け落ちるギリギリまで抜かれた。
突然の摩擦で急激に愉悦が湧く。
その悦が冷めぬうちに再びゆっくりと打ち込まれる。
腹側の壁を抉るように最奥へ押し込まれる。
待ち望んだ刺激に腰の奥が痺れていく。
ゆったりとしたストローク。
硬く張り出した部分が中の粘膜をくまなく擦っていく。
一層感じやすい箇所には念入りに押し付けられ、みるみる快感が溜まっていく。
最奥をぐりぐりと押された時、込み上げる感覚に気付く。
内側が愉悦で震え始める。
果てを迎えそうな気配。
「ぁ、待って……うそ……」
こんなにゆっくりとした抽挿で高みを越えた経験がなく、サリエラは涙声のような声を上げる。
未知の感覚に少しだけ怖くなり、ミケルの首に必死にすがる。
彼の唇が頬に触れた。
肌を撫でるだけの優しいキス。
あやされているみたい。
ほっと心が解ける。
同時に抑圧が和らぎ一気に快感が押し寄せる。
奥から湧き上がる波に抗うことが出来なくなり、サリエラは頂点を越えた。
まだ硬さを保っている彼の質量は大きく、内が震えて締め付けるたびに更なる小さな波を呼ぶ。
律動は止まり、ミケルの大きな手に頭を撫でられていた。
小さく続く絶頂感とてのひらの優しさで感覚が混乱してくる。
時々降るキスも心地がいい。
何度も肩で息をし、やっと落ち着いてきた頃、まだ昂ったままのミケルのことを思い出す。
「体、起こせる?」
彼の問いに、全身の感覚を確認してみる。
まだ脱力感は残っているがなんとか動けそうだ。
頷くと、二の腕と腰を取られ軽々と体を起こされる。
彼と向き合って座る体制にされた。
繋がったままの中へさらに彼が食い込みきゅんと震える。
ミケルが腰を支えてくれているとはいえ、油断すると気持ち良さに脱力して倒れ込みそうになる。
彼の首筋へ抱き付き体を支える。
「動くぞ」
耳元で呟く彼に頷く。
わずかに腰が押し付けられた。
そんな些細な動きにさえ最奥が反応して嬌声が洩れる。
揺するように彼が律動を始める。
体勢が崩れないように彼に必死で身を寄せる。
正面で触れ合う肌も気持ちが良い。
心地よい密着感の合間に、胸の先端が擦られ鋭い刺激が生まれる。
違った気持ち良さで両方から追い立てられ、快楽で思考がぐずぐずに蕩かされていく気分だった。
薄く開いた口元からは、意志とは関係なく小さな喘ぎが洩れ続けた。
「サリエラ、大丈夫か?」
ミケルの声にも甘さが滲んでいる。
「ん、もっと」
無意識に懇願する言葉が出ていた。
「ッ……」
ずくりと熱杭が大きくなった気がした。
腰を掴む手に力がこもり一層強く打ち付けられる。
すでに足からは力が抜け、繋がりへと全体重がかけられている。
硬い彼の先端が最奥に密着し、さらに奥へと押し込まれていく。
大きな圧迫感さえ気持ち良くて声が止まらない。
律動が速くなりサリエラへ伝わる振動も強くなってくる。
与えられるがまま、感触がすべてを愉悦に変えて全身を支配していく。
再び押し寄せてくる果ての気配にもう抵抗する術は残っていない。
揺さぶられるままに快楽を享受し、弾けた熱で身を震わせた。
サリエラがミケルを締め付け、彼が小さく呻く。
息を詰めた気配と共に、背を震わせ彼も頂点を迎えた。
どくどく脈打つ感覚が自身のものなのか彼の熱なのか、もうわからなくなっていた。
「サリエラ……」
甘さを帯びた声に、緩慢に首を起こしミケルと視線を合わせる。
「お前だけだ、好きなのは」
熱の冷めやらぬ潤んだ瞳でまっすぐ射抜かれる。
「私も、ミケル、だけ」
愉悦の余韻と心地よい倦怠感に瞼が重くなる。
眠ってしまう前に彼に言葉で答えたい、と必死に声にしたつもりだが届いたかどうかは定かではない。
睡魔が限界を迎え目を閉じる。
「愛してる」
夢なのか現実なのか、どちらかわからないふわふわとした心地の中、彼の言葉を聞いた気がした。
荒々しい足音と触れ合う肌から伝わる鼓動から、かなり余裕がないことがわかる。
ベッドに放り出されるくらいはあるかも、と思っていたが予想に反して慎重にゆったりとシーツへ下ろされた。
すぐさま彼が覆い被さってくる。
そのまま唇を重ねられ、食むようにキスが降る。
可愛らしい触れるだけの口付けは、すぐに喰らうように貪る荒々しいものに変わった。
ミケルのふとももに足を割られ、タオル越しに秘処を圧迫される。
わずかに揺すられた刺激が蕾に伝わって腰がもどかしくなってくる。
無意識に内ももで彼の足を挟み擦ってしまう。
少しミケルが笑った気配がした。
薄く目を開けると、キスをしたまま視線がかち合う。
嬉しそうに目を細めている。
喜ぶ彼の表情、最後に見たのはいつだっただろうか。
見惚れていると熱い舌が押し込まれた。
絡め取られて、すり寄る表面のざらざらした感触さえも甘く蕩けるような錯覚に陥る。
呼吸もままならない激しさで、苦しいはずなのにどこか陶酔感がある。
荒々しくねぶられ、彼から必死で求められている感覚が嬉しくて心地いい。
切なげに吐息を零しながら熱いキスが続く。
熱烈な口付けからサリエラへの情欲や恋慕が伝わってくる。
浮気などと彼を疑っていた自分が馬鹿らしくなる。
愛おしさが込み上げ彼の髪を撫でた。
さらさらと指の間を滑っていく手触りが気持ちいい。
気付いたミケルが唇を離す。
「……なに」
頭を撫でられることが気恥ずかしいのか、不機嫌なようなむくれた顔をしている。
そんな彼がまた愛おしくて、両手で髪を掻き乱す。
「好きだなあって」
ミケルの瞳が驚きで見開かれる。
すぐに視線を逸らされた。
「……っ」
なにか言いたげにもごもごしている。
口下手な彼なりに懸命に言葉にしようとしてくれているのがわかる。
待っていたら言葉ではなく抱擁が帰ってきた。
彼の両腕が背とシーツの間に滑り込み、ほんの少しだけ彼の重みを体に感じる。
タオル越しにもわかるほど彼の心臓が速い。
「好き、だ……俺の方が」
耳元でぽそりと呟かれる。
滅多に聞けない睦言に、一気に自身の体温が上がったのがわかった。
きゅうっと心臓が締め付けられて苦しい。
咄嗟に言葉が出ず、真横にある彼の頭に自身の頬をすり寄せた。
媚び過ぎたかと急に恥ずかしくなる。
「っん」
耳に濡れた感触が走った。
ミケルに耳朶を食まれている。
上下の唇で咥えやわやわと挟まれる。
時折熱い舌が肌を濡らし、ぞくりと甘い痺れが生まれた。
輪郭をゆったりなぞり、唇で耳の形を辿っていく。
先程の口付けと打って変わって、優しい愛撫が切なくて心地いい。
丁寧に唇を寄せられて慈しまれていく。
ひとつひとつのキスから恋慕を伝えてくるよう。
心が満たされじんわり温かくなる。
彼にも愛しさを伝えたくてうなじから背中を優しく撫でた。
ミケルがわずかに体をよじり甘く息を零す。
良い反応に嬉しくなって背から脇腹、肩など夢中で指先を滑らせていく。
「っ、……ちょっと待て、ッ」
熱っぽい声と共に、彼の体を堪能していた両手は呆気なく拘束された。
軽々頭上でまとめられる。
ミケルの手にたいして力は入っていないので痛くはない。
抜け出してみようと少し力を込めたが彼も同じく力を込める。
逃がしてはもらえないらしい。
悟って体の力を抜くと、彼の唇が額に触れた。
目尻、頬、顎を辿って首筋へキスが落とされる。
しっとり吸い付く唇は柔らかく心地いい。
かすめるわずかな吐息さえ心地よく感じられ、次第に肌が敏感になっていくのがわかった。
ミケルが甘く吸いつくたびにぴくりと小さく震え反応する。
すでに期待し始めているサリエラの体を焦らすように、唇での愛撫はゆったり進んでいく。
耳元から首筋を下がって鎖骨へ辿り着いた。
薄い皮膚に柔らかな唇が押し付けられていく。
ちりっとしたわずかな痛みを感じた。
彼が鎖骨の下に跡を付けていた。
襟で隠れる部分ではあるが、少し屈むと見えてしまいそうな位置。
「跡、見えちゃう」
「見せつけてろ」
赤くなった肌の上に舌が這わされぞくりと甘く疼く。
濡れたざらつきが熱くて情欲を煽る。
そのままキスをしながらいくつも跡を残された。
白い肌に赤い花が咲く。
完全に衣服で見えない場所なのに、彼の執着を見せつけられているようでむず痒い。
恥ずかしいけど嬉しい。
「綺麗だな」
自分の残した跡をじっくり見つめてミケルがつぶやく。
吐息すら感じる距離。
タオルが取り去られる。
肌を堪能していた彼の唇がふくらみの先端に触れた。
すでに主張を始めていたそこは穏やかなキスにさえ反応する。
口に含み軽く吸われれば、ぞくぞくと背筋が愉悦で震える。
丁寧に舐め上げ唇と舌でしごかれる。
片側は指で挟まれ、擦られ、異なるふたつの刺激が体の熱を高めていく。
無意識に零れる吐息が色を帯び、小さく喘ぎが洩れた。
ゆったりとした愛撫は快感ともどかしさを生み腰を震えさせる。
腕を拘束していた彼の手が緩んだ。
手首から肘をなぞり、二の腕の柔らかい皮膚を撫でながらふくらみへ辿り着く。
そのまま背中に触れ背骨に添って指が滑る。
くすぐったさと小さな悦に背が反る。
さっきの仕返しをされたのだと悟り視線で抗議してみる。
見上げたミケルと目が合う。
少し笑っている。
してやったりという顔。
ちょっと悔しくてむくれていると、さらに彼が破顔する。
「なにが可笑しいのよ」
悔しくなってわざとらしく不機嫌な顔をしてみる。
「いや、可愛いなって」
「はっ? ……んっ」
今までの寡黙な性質はどこに行ったのか。
随分と甘やかな言葉を滑らかに紡がれる。
慣れない素直な睦言に、サリエラの方が言葉を詰まらせた。
彼女が反論を探し出す前に唇が重ねられた。
触れるだけのキス。
甘やかで柔らかくて心地いい。
言葉も行動も甘すぎる。
「……いつもと違いすぎ」
咄嗟に可愛くない言葉が出た。
「本当はいつもしたかった」
親指で頬をなぞられる。
「ぐずぐずに甘やかして気持ち良くして、俺のこと以外考えられなくしてしまいたい」
まっすぐな瞳に射抜かれ心臓が高鳴る。
真剣な言葉と表情にどきどきする。
「もっと愛したい」
下唇を優しく食まれる。
「嫌か?」
切実な声色で問われてしまえば拒否などできない。
以前の深く愛されていた悦びを体が思い出して、下腹がきゅんと切なくなった。
「そんなわけない」
今度はサリエラが彼の顔を引き寄せ唇を奪う。
触れ合うだけだったキスは次第に深くなり、互いの呼吸をも飲み込むように貪り合った。
ミケルの手が再び肌を撫でた。
背中、脇腹、腰をなぞり鼠径部に触れる。
すでに潤い始めた秘処に指の腹が添わされた。
溢れ始めた愛液を、節張った指が入り口にまんべんなく塗り広げていく。
徐々にほぐされていく花弁はふっくらと色付いた。
サリエラの唇が解放され、ミケルの顔が下がっていく。
お腹にちゅっと音を立ててキスをされ、少しくすぐったい。
そのまま続けて足の付け根から内ももにかけて口付けられていく。
指の動きは止まることなくゆるゆると入り口を撫で続けている。
いつまでたっても快感の核心に触れてもらえない体が、次第に疼き腹の奥でじわじわもどかしさがくすぶる。
「ああ、赤いな」
秘裂の間近でミケルが呟く。
その視線は充血して膨れた蕾へ一心に注がれている。
こんなにじっくり観察されることなんて今までなかった。
羞恥が押し寄せ頬が熱くなるのがわかる。
彼の顔が割れ目に吸い寄せられる。
「あっ待っ……」
これからなにをされるのか悟り慌てて制止する。
動きを止めたミケルは悲しげに眉を下げて言う。
「……だめか?」
大きな図体に似合わず肩を落とししゅんとする姿は、叱られてしまった子犬のようだった。
まるで自分が悪いことをしているような気分になる。
潤みを増した彼の瞳がより罪悪感を煽ってくる。
「あ……だって、今までこんなこと……」
されたことはなかった。
指で愛されることはあっても唇が秘処に触れたことはない。
「したい」
切実な声色で懇願され、きゅっと心が疼く。
すがるような瞳に囚われ、サリエラは頷いていた。
ふっと目を細めミケルが柔らかく笑う。
あまり笑顔を振り撒くタイプではないので不意打ちでときめいた。
彼はふとももにいくつもキスを降らせていく。
ミケルの動きから目が離せなくなっていた。
徐々に近付いていく唇に期待と羞恥が入り混じる。
恥丘に触れ、核心にやわく吸い付かれた。
「ッ……」
肌の表面を撫でるだけでは得られない鋭い快感が走る。
反射的に腰がびくりと跳ねた。
入り口をほぐす指はそのままに、片側の手は膝裏に差し込まれてさらに足を開かせられた。
自身の秘められた場所に顔を埋めるミケル、恥ずかしさと愉悦でその姿を直視できなくなった。
固く目を閉じ、意志に関係なく溢れる嬌声を両手で抑え込むが無意味で、与えられ続ける愛撫に敏感に反応する体は素直に甘い吐息を零す。
ざらつき濡れた感触がじっとりと表面を這っていく。
舌の熱さとぬめりがまとわりついて、核が愉悦に震える。
終始ぞくぞくと腹の奥に快感が送られていく。
抗えない体を震わせ、声を零すことしか出来ない。
ふと蜜口が押し広げられる感覚がした。
ずっと入り口を撫で解していた彼の指がゆっくりと押し入ってきた。
とろとろになったそこはなんの苦もなく受け入れる。
ごくごく浅い内側をまんべんなく撫でられる。
ゆっくりと、襞のひとつひとつまで丹念に指が添う。
完全に中が指を受け入れたところで、腹側の膨れた部分を軽く押された。
指の腹で押し上げ、同時に外側の秘核も刺激される。
外と中から同時に官能を高められ、快感に震えた内側がミケルの指を締め付ける。
「まだ1本なのに、きつ……」
彼がどこか嬉しそうに言葉を洩らす。
返事をする前に再び愛撫が再開されて、サリエラの口からは色付いた声が零れるばかりだった。
「っぁ、待っ……」
込み上げていた絶頂感に咄嗟に制止の声が出る。
止まらない刺激にミケルを見ると一瞬目が合う。
「ぅあっ、ん、ぁあッ」
サリエラの声は届いているはずなのに彼の愛撫は止まらない。
的確に一番いい悦い所から指と唇を離さない。
反論する余力をすべて快楽に塗り替えられ、サリエラは瞬く間に頂上へと追い立てられた。
一気に熱が弾け、下腹から全身へ気持ちいい波が打ち寄せる。
腰が数回大きく跳ね、そこでやっとミケルの唇が離れた。
サリエラは詰めていた息を吐き出し肩で洗い呼吸をする。
心臓が強く脈打ち汗が滲む。
まだ上がったままの息を無理矢理落ち着け、自身の体を沈めることに精いっぱいだった。
目は開けられないものの、彼の気配を間近に感じる。
両腕で優しく抱き寄せられ額にキスが降りた。
軽やかな音を立ててこめかみや頬へも口付けられる。
いつまでたっても唇に辿り着かない。
痺れを切らしてサリエラから彼へキスを送る。
一瞬たじろいだ気配はしたものの、すぐに背に大きな手が回された。
抱き締められ何度もキスをする。
角度を変え、舌を交え、隅々まで互いを味わう。
「……っ」
視線が絡んだ。
熱に浮かされた獣のように滾る瞳。
濃い雄の色が滲んでいる。
唇が離れ、鼻先が触れ合う距離で見つめ合う。
わずかに微笑み頷いて見せる。
ミケルとひとつになりたいという気持ちを込めて。
彼が避妊具の準備をする。
自身の猛りへ施し、ふとももを割り開く。
秘裂をなぞるように先端で擦られ甘く疼いた。
何度かなぞられた後、入り口に彼の先端が押し当てられる。
じりじりと侵入してくるそれは心なしかいつもより張り詰めているようだった。
「ぁ、大き……っんぁ」
ぐっと一気に押し込まれ嬌声が零れる。
「っ煽るなよ。……痛くないか?」
ミケルは余裕なく眉を寄せつつもサリエラの髪を撫で気遣う。
ぶっきらぼうな声色だが彼の優しさが伝わってくる。
「ん、平気」
彼の眉間の皺を人差し指で撫でてみる。
そこで自身の表情に気付いたのか、ミケルはほんのり気まずそうに視線を逸らした。
触れるサリエラの手を取り自身の首に回させる。
すぐに唇が重なり、照れ隠しなのかなとちょっと微笑ましくなる。
キスに答え彼の口付けを堪能する。
全体がしっとり合わさり心地いい。
控えめに入ってきた舌先はサリエラのそれを小さくくすぐった。
先端だけが絡み合ういやらしさと、すべてを味わえないもどかしさで、感覚の均等が崩れる。
もっと欲しくなってしまう。
堪らず彼の口内へ押し入ればすぐに応えが返ってきた。
熱く濡れた肉厚がまとわりつく。
舌を絡ませながら、ミケルの腰がわずかに奥を突く。
「んっぅん……」
油断しきっていた蜜壺が悦びでひくつき甘い声が零れた。
締まったことで彼の物へ襞がよりまとわりついて気持ち良さが増す。
奥に熱杭を押し付けられたまま荒々しく口内がねぶられる。
舌の絡み合いが抽挿での刺激を彷彿とさせて、下腹がきゅんとときめく。
期待しきった秘処は潤いを増していく。
なのにミケルは一向に動こうとしない。
唇ばかりが貪られ、置いてけぼりの腰の奥が次第にじくじく疼き始める。
「な、んで……」
動かないの?
視線で訴える。
「なに?」
絶対にサリエラの言いたいことを理解している口振りでミケルが問いで返す。
中は刺激を求めて誘うようにわなないている。
なのに言葉では素直に発することが出来ず、動いて欲しいのに言えないでいた。
もじもじと言い淀むサリエラをあやすように、ミケルは唇に吸い付く。
下唇を食み、上唇を軽く吸い、口端にちゅっと音を立ててキスをされた。
「だから、もう……」
「ん?」
察してくれともう一度声をかけるが望みは叶えられない。
あくまでサリエラが言葉にするのを待っているつもりらしい。
「意地悪すぎない?」
そう簡単には素直になれない。
悔しさと羞恥で強がって見せる。
「言えよ。聞きたい」
問答無用で煽られる。
「ぁ、ぅ……」
至近距離で見つめられているこの状況で懇願するのは恥ずかしすぎる。
苦し紛れに彼の首に巻きつけた腕で強引に引き寄せる。
耳に唇が触れるほどの距離でか細く言う。
「動い、て…………ぁ、んッ」
内襞を引きずりながら熱杭が抜け落ちるギリギリまで抜かれた。
突然の摩擦で急激に愉悦が湧く。
その悦が冷めぬうちに再びゆっくりと打ち込まれる。
腹側の壁を抉るように最奥へ押し込まれる。
待ち望んだ刺激に腰の奥が痺れていく。
ゆったりとしたストローク。
硬く張り出した部分が中の粘膜をくまなく擦っていく。
一層感じやすい箇所には念入りに押し付けられ、みるみる快感が溜まっていく。
最奥をぐりぐりと押された時、込み上げる感覚に気付く。
内側が愉悦で震え始める。
果てを迎えそうな気配。
「ぁ、待って……うそ……」
こんなにゆっくりとした抽挿で高みを越えた経験がなく、サリエラは涙声のような声を上げる。
未知の感覚に少しだけ怖くなり、ミケルの首に必死にすがる。
彼の唇が頬に触れた。
肌を撫でるだけの優しいキス。
あやされているみたい。
ほっと心が解ける。
同時に抑圧が和らぎ一気に快感が押し寄せる。
奥から湧き上がる波に抗うことが出来なくなり、サリエラは頂点を越えた。
まだ硬さを保っている彼の質量は大きく、内が震えて締め付けるたびに更なる小さな波を呼ぶ。
律動は止まり、ミケルの大きな手に頭を撫でられていた。
小さく続く絶頂感とてのひらの優しさで感覚が混乱してくる。
時々降るキスも心地がいい。
何度も肩で息をし、やっと落ち着いてきた頃、まだ昂ったままのミケルのことを思い出す。
「体、起こせる?」
彼の問いに、全身の感覚を確認してみる。
まだ脱力感は残っているがなんとか動けそうだ。
頷くと、二の腕と腰を取られ軽々と体を起こされる。
彼と向き合って座る体制にされた。
繋がったままの中へさらに彼が食い込みきゅんと震える。
ミケルが腰を支えてくれているとはいえ、油断すると気持ち良さに脱力して倒れ込みそうになる。
彼の首筋へ抱き付き体を支える。
「動くぞ」
耳元で呟く彼に頷く。
わずかに腰が押し付けられた。
そんな些細な動きにさえ最奥が反応して嬌声が洩れる。
揺するように彼が律動を始める。
体勢が崩れないように彼に必死で身を寄せる。
正面で触れ合う肌も気持ちが良い。
心地よい密着感の合間に、胸の先端が擦られ鋭い刺激が生まれる。
違った気持ち良さで両方から追い立てられ、快楽で思考がぐずぐずに蕩かされていく気分だった。
薄く開いた口元からは、意志とは関係なく小さな喘ぎが洩れ続けた。
「サリエラ、大丈夫か?」
ミケルの声にも甘さが滲んでいる。
「ん、もっと」
無意識に懇願する言葉が出ていた。
「ッ……」
ずくりと熱杭が大きくなった気がした。
腰を掴む手に力がこもり一層強く打ち付けられる。
すでに足からは力が抜け、繋がりへと全体重がかけられている。
硬い彼の先端が最奥に密着し、さらに奥へと押し込まれていく。
大きな圧迫感さえ気持ち良くて声が止まらない。
律動が速くなりサリエラへ伝わる振動も強くなってくる。
与えられるがまま、感触がすべてを愉悦に変えて全身を支配していく。
再び押し寄せてくる果ての気配にもう抵抗する術は残っていない。
揺さぶられるままに快楽を享受し、弾けた熱で身を震わせた。
サリエラがミケルを締め付け、彼が小さく呻く。
息を詰めた気配と共に、背を震わせ彼も頂点を迎えた。
どくどく脈打つ感覚が自身のものなのか彼の熱なのか、もうわからなくなっていた。
「サリエラ……」
甘さを帯びた声に、緩慢に首を起こしミケルと視線を合わせる。
「お前だけだ、好きなのは」
熱の冷めやらぬ潤んだ瞳でまっすぐ射抜かれる。
「私も、ミケル、だけ」
愉悦の余韻と心地よい倦怠感に瞼が重くなる。
眠ってしまう前に彼に言葉で答えたい、と必死に声にしたつもりだが届いたかどうかは定かではない。
睡魔が限界を迎え目を閉じる。
「愛してる」
夢なのか現実なのか、どちらかわからないふわふわとした心地の中、彼の言葉を聞いた気がした。
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