彼女の匂いに欲情する獣耳彼氏

山吹花月

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彼女の匂いに欲情する獣耳彼氏

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 帰宅したイリアとヴォルフの目の前には複数の瓶。
 小さなグラス一杯分の、鮮やかな桃色のとろりとした液体が入っている。
 久々の外食でお酒も入り気分盛り上がったふたりは、酔った勢いに任せてお遊びの秘薬を購入していた。
「それにしてもたくさん買ったね、俺たち」
 帰り道でいくらか酔いの醒めたヴォルフが苦笑する。
「だね」
 イリアも同じ表情になる。
 数本に一本の確率で、時間限定で獣耳と尻尾が生えるパーティーグッズ。
 普段こういった類のものは買わないふたりだが、酔った勢いで嬉々として購入したのだった。
「まあ折角だし飲んでみようか」
 ヴォルフは瓶を手に取り、貼られたラベルを熟読している。
「そうね」
 イリアも同じく瓶を取る。
 注意点は特に無く、アルコールとの飲み合わせは問題ないようだ。
「はい、じゃあ乾杯」
 開栓し、軽く瓶を合わせて乾杯する。
 ふたり同時に一気に飲み干す。
 あらゆる花の蜜を集めて煮詰めたように甘ったるい。
 一瓶を一気に飲み切り、互いに目を見合わせて待つも変化はない。
「……やっぱりまがい物かあ」
 彼が心底残念そうな声を出す。
「まあ、パーティーグッズだしね。あと二本あるし、残りも飲んでみようよ」
 イリアは二本の栓を開け、一方を彼に渡す。
 もう一度乾杯し飲み干す。
 沈黙し待ってみるも変化なし。
「やっぱりなにも起こらな……ッ!」
 ヴォルフが急に言葉を止める。
 慌てて自身の頭に手をやり、わしわしと掻き始める。
「どうしたの?」
「なんかむずむずして……あ!」
 彼の両手からふわふわの被毛が覗く。
「えっ嘘!」
 イリアは彼の手を掴み頭からどかせる。
 ぴょこりとふたつの獣耳がヴォルフの頭上に立ち上がった。
 ヴォルフの髪色と同じ栗色。
 ちょっとくせっ毛でふんわりしているところも同じだ。
「え、ええっ……可愛いッ……!」
 彼女の声に耳がぴるぴると動いた。
「動くの!?」
「なになに!? 俺よくわかんないんだけど!」
 生やしている本人には動かしている自覚がないらしい。
「ということは」
 彼の後ろに回って腰のあたりを確認する。
「やっぱり!」
 ふさふさの長毛をまとった立派な尻尾が生えていた。
「お……おお……」
 ヴォルフは自身の尻尾を見ながら感嘆の声を漏らす。
「すごい、動かせる」
 上下にぱたぱた振って見せてくれた。
「本当だったんだね、この薬」
「でもなあ……」
 ヴォルフの獣耳がへにょりと伏せられる。
「なんで俺だけ……」
 呼応して尻尾も情けなく垂れ下がった。
「どうせならイリアに生えてくれればよかったのに」
 随分と落胆した声で彼が言う。
 よっぽどイリアの獣耳姿が見たかったようだ。
「まあまあ、可愛くていいじゃない」
 彼の頭に手を伸ばし撫でる。
 ふわふわの感触が気持ち良くて何度もよしよししてしまう。
「…………」
 彼は無言で受け入れている。
 しっぽが軽やかに揺れているので多分喜んでいる。
 普段彼の頭を撫でる機会なんてほとんどないので、なんだか新鮮で楽しくなってくる。
「本当に可愛いなあ」
 恋人の獣耳姿は想像以上の破壊力だった。
 正直そういった趣味はないイリアだが、新たな扉を開いた気分だった。
 ヴォルフが悔しがっている気持ちがちょっとだけわかった。
 掌に伝わるもふもふが心地良くて、彼の頭を撫でる手を止めることができない。
「……もういいだろ」
 ヴォルフに手首を掴まれ強制的に終了させられた。
 満更ではない表情をしているし、尻尾はパタパタと嬉しそうに振れているので、嫌がっているわけではないはず。
「なんかさ、いつもより」
 掴まれた手が引かれ、そのまま彼の胸の中に抱き寄せられた。
 ヴォルフの鼻がイリアの耳元に埋められ、すん、と音を立てて匂いを嗅がれる。
「お前から良い匂いがして」
 かぷりと耳朶が甘噛みされた。
「うまそうで」
 耳の裏に彼の熱い舌が添った。
 濡れた感触が官能を呼び、イリアの背筋が甘く震える。
 ちゅ、と軽やかな音を立てながら何度も肌にキスが落とされていく。
「匂い? なんだろ。店で食べたスープかな?」
「そうじゃなくて」
 軽々と抱き上げられ、そのままベッドに運ばれた。
「甘いお前の香り。いつもより濃くて、そそる」
 そのまま押し倒され唇を奪われた。
 喰らいつくように覆われる。
 唇の合わさる感触を楽しんでいたのも束の間、早急に彼の舌先が割り入ってくる。
 強引に押し込まれた肉厚のざらつきで絡め取られ、口内がくまなくねぶられていく。
 いつもより荒々しい。
 薄く目を開くと視線がかち合った。
 すがめたヴォルフの瞳は興奮を隠そうともしていない。
 雄の色を濃く滲ませるその視線に、ぞくりと腰が甘くわなないた。
 唇を貪ることは止めないまま、彼の両手がイリアの体をまさぐる。
 わずかに触れる柔らかな圧で服の上からくまなくなぞられた。
 布越しでもわかる彼の熱い掌。
 まだ敏感な核心には触れられていないのに、これまで何度も自身を愛してきた彼の手の感覚を体が勝手に思い出して奥が熱くなる。
 キスから解放され、空気が一気に肺に流れ込む。
 イリアが呼吸を整える間もヴォルフの唇は愛撫を続ける。
 頬をなぞり耳朶が甘く嚙まれる。
 すぐに歯は離れ、代わりに唇で柔らかく包まれた。
 リップ音を立てながら耳の輪郭が丁寧になぞられる。
 時折与えられる熱い舌のざらつきと唇の柔らかさがイリアの肌を敏感にしていく。
 首筋に吸いつかれ、思わず体が跳ねる。
「なんか、いつもより感じてる?」
 彼の熱い吐息にくすぐられ、それさえも快感を予感させて身をくねらせてしまう。
「わかんな……ぁっ」
 イリアの返事を待たずに彼の両手が双丘に添う。
 ふんわりと包まれ愛撫される。
「もうここ、立ってるのに?」
 ヴォルフの親指がふくらみの頂へ押し込まれる。
 すでに硬さを持った先端がこりこりと擦られた。
 布のすれる感覚に、ぞくぞくと腰に愉悦が落ちていく。
「ねえ、教えてよ。これ嫌? 気持ち良くない?」
 あくまで下手したてに出る彼。
 言葉とは裏腹に指先を止めることは無く、的確にイリアの体の熱を上げていく。
 みるみる快楽が溜まっていき、背をしならせびくびくと体が震えてしまう。
「ねえって」
 耳元に彼の熱い吐息がかかる。
 肌をくすぐる空気にさえ腰の奥が甘く疼く。
「ッん……きもち、い……」
 か細くイリアが呟いた。
 ヴォルフがわずかに笑う気配がする。
「可愛い」
 鼻先が触れ合うほどの近さで視線が絡む。
 嬉しそうに細めた彼の瞳の奥には、雄の劣情が滲んでいる。
「素直な良い子はもっと気持ち良くしてあげないとね」
 服の裾がゆっくりとたくし上げられた。
「咥えてて」
 衣服の端を口元に持ってこられる。
 彼に素直に従い唇で挟む。
 露わになった肌に彼のキスが降り、時折甘く吸いつかれた。
 だんだんとふくらみの頂点へ唇が近付くにつれて体が期待する。
「っ……」
 頂が口に含まれ甘く疼く。
 声にならない吐息が零れた。
 目の前にある彼の獣耳がぴくりと反応する。
 愛撫が続き、彼女から小さく声が零れるたびにぴんと立つ。
「イリアの声可愛くて、やばいな」
 うわごとのように彼が呟く。
 目の前でぴるぴると動く耳に思わず手を伸ばしていた。
 付け根のあたりを指先でこしょこしょと掻くと、わずかに耳が伏せられた。
「痛くない?」
「ん、気持ちいい。けどこっち、集中して?」
 すぐに獣耳から手が剥ぎ取られてしまう。
 彼は硬くした舌先を先端に押し込み、もう片方は指で摘まみこりこりと擦ってきた。
 舐めるだけの柔らかな刺激と違い、ぴりぴり痺れるような愉悦が生まれて甘やかな吐息が溢れてくる。
 自身の無防備な声が恥ずかしくなり、イリアは手の甲で口元を抑え嬌声を耐えた。
「なんで? 聞かせてよ」
 口を塞ぐ掌にヴォルフのキスが降る。
 潤んだ瞳と寂しげに下げられた眉。
 頭上の獣耳がぺたんと伏せられているのがさらに悲しげな雰囲気を醸し出している。
「手、どけて?」
 あくまで彼は手を出さない。
 イリア自身の意志で行動させる気だ。
 根負けしてゆっくり手を引っ込める。
 曝け出す羞恥とわずかな高揚感で頬が熱くなるのがわかった。
 目の前の彼は嬉しそうに口角を引き上げている。
「いっぱい聞かせて」
 再開された愛撫に体はすぐに反応した。
 色付いた声がとめどなく溢れ、我慢しきれずに腰が揺れる。
「腰上げて」
 素直に従うと、一気に下着まで取り払われ秘処を露わにされる。
「そのまま」
 下がっていった彼の顔がそこに埋まり、柔らかい唇の感触が恥丘に触れる。
 内ももから鼠径部までゆっくり丁寧にキスが落とされていく。
 なだらかな丘に触れた彼の左右の親指が、くっと肉を割り開いた。
 むき出しになった秘核はすでに赤く充血している。
 ねとりと舌が這う。
 濡れたざらつきに刺激され、蜜壺がきゅっと締まった。
 充分に唾液をまとわせた肉厚でまんべんなく舐め上げられていく。
 溢れる悦で腰が跳ねるのを止められない。
 蕾を舐めながら彼の指が秘烈を撫でた。
 すでに溢れ始めていた蜜が塗り広げられ、入り口が解されていく。
 少しの圧迫感と共に指先が割り入ってきた。
 内側の襞を撫でながらじっとり奥へと進んで行く。
「ほらここ、わかる? 今触ってるの」
 腹側の壁に彼の指の腹が押し付けられている。
 とんとんと一定のリズムで刺激され、じわじわ滲む愉悦が腰の奥に溜まっていく。
 もどかしく腰が揺れてもそこから彼の指は離れない。
「痛くない?」
 覗き込んでくる彼。
 痛くはなく、むしろ気持ちいい。
 しかしそのままの気持ちを伝えるのは恥ずかしくて、何度も頷くに留まる。
「よかった」
 ヴォルフは安堵の息を漏らした。
 決して激しくない穏やかな圧。
 断続的に与えられる悦に抗えなくなってきているのが自分でわかった。
 熱が込み上げるような感覚と押し出される嬌声。
 いつもよりも早く訪れた絶頂の気配に戸惑う。
 抵抗を試みるも無駄で、我慢出来ずイリアはあっという間に果てを迎えた。
 中が痙攣してヴォルフの指を締め上げる。
 何度か震えたのちにようやく快楽の波が弱まり、詰めていた呼吸を再開することが出来た。
 ゆっくりと指が抜き去られる。
 肩で息をするイリアの髪や頬をヴォルフが優しく撫でた。
 呼吸が落ち着くまで待ってくれている心遣いが嬉しい。
「大丈夫?」
 頷けば彼は柔らかく微笑む。
 気怠く投げ出された腕を彼の首に回し続きを促す。
「入らせて」
 手早く彼は避妊具を自身に施す。
 入り口に宛がわれた彼の剛直。
 わずかに押し込まれただけでいつもよりも大きな質量を感じる。
「いつもより狭い、かな」
「ヴォルフが大きいんだってば」
「ッ……あんまり煽らないでよ」
 嬉しそうだが困ったと言った表情で、彼が頭上の耳をぺたんと伏せる。
「つらかったら言ってね」
 いつもより時間をかけ、ゆっくりと熱杭が入ってくる。
 やっと奥まで収まり彼が詰めていた息を吐く。
「キス、しよ」
 髪を撫でられながら甘くキスをされる。
 慈しむみたいに優しい口付け。
 彼の好意がキスから注がれているみたいで心地が良い。
「動くよ」
 慎重に律動が始まる。
 圧迫感にもすぐに慣れ、そこは瞬く間に快感を拾い始める。
 彼の気遣いだろうが、緩慢な動きが逆にくすぶりを焦らしてくる。
 自分でもわかるほど内側がもどかしくわなないている。
 じくじくと内側から快楽を押し上げられて嬌声が零れていく。
 決して激しくない抽挿ちゅうそうなのに、良いところばかりが擦り上げられて気持ちが良い。
「とろとろになってる顔、可愛い、好き」
 ヴォルフの顔が寄り唇が重なる。
 キスで塞がれ息が苦しいのにそれさえ快楽に変わる。
「っぅ、ごめん……もう……」
 彼の余裕のない声を皮切りに、激しく肌のぶつかる音とぐちゅぐちゅ掻き回す水音が響く。
 荒々しく揺さぶられているのに、的確にイリアのい場所が責め立てられていく。
 最奥へ何度か突き入られ内壁がぎゅうぎゅうと剛直を締め付ける。
 全身が強張り込み上げる絶頂感にイリアは息を詰めた。
 彼女の締め付けに煽られたヴォルフも後を追い果てを迎えた。


 ほんの少し眠ってしまったようだ。
 まどろみから意識が浮上し重い瞼を上げると、ヴォルフと目が合う。
 寝顔を見られていたことが気恥ずかしい。
「体、平気?」
「うん」
 額にキスが降る。
「なくなっちゃったね」
 元通りのなだらかな彼の頭部を撫でる。
 もっともふもふの感触を楽しみたかったので、イリアはわずかに寂しさを覚えた。
「今度はイリアのが見たい」
 よほど悔しかったらしいヴォルフはとても真剣な顔で言う。
「はいはい」
 慰めるように触れるだけのキスを送った。
「絶対だからね?」
 必死な彼の表情に思わず吹き出す。
「わかったってば。また今度ね」
 彼の新たな一面を見た気がしてほんのりと心が温かくなる。
 同時に自身が意外と獣耳が好きであることがわかり驚いた。
 またヴォルフの獣耳が見れるかもしれないことが嬉しくて、イリアは抑えきれない笑みを浮かべた。
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