「俺とセックスしないと、アンタ、消えるよ?」

山吹花月

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 はりきって今後の計画を練ってみる。

「まずは消滅しない方法を考えてみようかな」

 とは言ったものの、本に記されていた方法はひとつ。

「体液かあ……」

 昨晩のキスからの時間を考えると、どうやらキスでは半日しかもたないらしい。

 一番効率が良いのは性交渉と書いてあったことを思い出す。

「体液摂取ってことは、その、なにも付けずにありのままってことよね」

 エリナ自身これまで男性経験がないわけではないが、軽率な行動に至ったことは無いのでしっかりを避妊をしていた。

「妊娠とかの心配も出てくるよね普通」

 自分の身さえ守れるかわからない状況で無責任に子供を持つほど軽々しい性格ではない。

「過去の渡り人さんはどうしてたのかな」

 参考文献をしっかり熟読したいと思い立つが、あの本はソファー脇に置いたままだった。

 扉の向こうからうっすら話声が聞こえるので、ここでエリナが出ていけばユミトが嫌な顔をするだろう。

 本はひとまず諦めて、先程まで透けていた自身の手を見る。

 今は不自然な部分もなくあの不快な冷えもない。

「のんびり待つか」

 頬杖をつき鼻歌交じりに窓の外を眺めながら時間を潰した。




「…………おい」

 頭上から振るぶっきらぼうな声がエリナの意識を引き戻した。

 いつの間にか机に突っ伏して眠っていたらしい。

 窓から差し込んでいたはずの陽はほぼなくなり、屋外はぽつぽつと街灯が灯っている。

「消えかかってるだろうが」

 掴まれた自分の手を見ると指先が揺らぎ始めていた。

 ユミトが当然のように顔を近付け口付けてくる。

 寝ぼけたまま、エリナは彼の舌を受け入れた。

 言葉は乱暴なのにキスは丁寧なんだよな、などとまるで他人事のように考えながら愛撫を受ける。

 ひとしきり口内をねぶられ唇が解放された。

「やっぱりキスだけじゃあまりもたな……ッ!」

 ユミトの言葉を遮り強引に唇を奪った。

 これまでされたみたい今度はエリナから舌をねじ込む。

 彼の舌に自身のそれを絡めながら薄く目を開く。

 目の前のユミトの瞳に驚き焦る様子が浮かんでいるのが見えて優越感を感じた。

 早々に舌を引き上げちゅっと軽い音を立てて彼を開放する。

「なんだよ、随分積極的だな」

 ユミトからは先程までの動揺は消え、片側の口角を上げ挑発的な笑みを浮かべている。

「渡り人、私がこの世界で生き残るためにはセックスが必要なのよね?」

 ユミトの胸ぐらを強引に引き寄せ問う。

「まあ、それが一番手っ取り早いな」

 すっかり余裕を取り戻したユミト。

「なら、抱いて?」

 エリナの言葉にユミトが一瞬目を見開いた。

 が、すぐさま余裕の笑みを浮かべ鼻で笑う。

「おいおい昨日とは別人だな」

「で?」

 彼の軽口には応じず続ける。

「できないならしなくてもいいわよ。他の人を探すから」

 ぱっと掴んでいた手を離し彼を開放する。

「待てって」

 ユミトの横をすり抜けようとした時、手首を掴まれ引き寄せられた。

「誰もできないなんて言ってないだろ」
 
 

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