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「これが夜着?」

 露天風呂を出て、脱衣所に用意されていた淡い水色の衣服を手に取った。

 見慣れない形をしている。

「ユカタっていうんだって。ここに腕を通して……」

 ロキが説明を交えながらユカタを羽織る。

 仕上げに帯が巻かれ、ほぼ大きな一枚の布に見えていたものがあっという間に衣服に変わる。

「すごい! なんでできるの?」

「ここを紹介してくれた職場の人に教わったんだ。初めてだったけど上手くいってよかった。クレオちゃんにも着せてあげる」

 要領を得たのか、ロキは慣れた手付きでクレオのユカタも整えていく。

「できた」

「わあ、ありがとう」

 初めて袖を通す衣服が嬉しくて、クレオは回ったり手を広げたりしながらながらユカタを見つめた。

「…………」

 クレオを見つめながら急にロキが黙り込んだ。

 表情を窺うと険しい目つきでクレオのユカタを凝視している。

「ロキ?」

「ぁ、どう? 苦しくない?」

 クレオが声を掛けると我に返ったらしく、すぐにいつものロキに戻った。

「うん、ちょうどいいよ」

「よかった。じゃあ今日はもう寝ようか」

 その後は違和感もなく普段の彼だったので、クレオは気に留めないでおいた。




 瞼を照らす眩しさで意識が徐々に浮上していく。

 わずかに小鳥のさえずりが聞こえ、クレオはゆっくり目を開いた。

 見慣れない部屋、数秒考えたところでロキと旅行中だということを思い出す。

 起き上がらずにぼんやりしていると、なんとなく視線を感じた。

「おはよう」

 振り向くとロキと目が合った。

「おはようロキ。早いね」

「うん……」

 どことなく歯切れが悪い。

 寝起きの気だるさというよりは、なにかに困っているような印象だ。

「朝食まではまだ時間がありそうだね」

「うん。…………ねえクレオちゃん、気付いてないの?」

「え?」

 ロキは無言でクレオのユカタを指差す。

「ッ……!」

 視線を落とした先にはほぼ帯しか残っていない無残な姿のユカタ。

「なっ、えっ!?」

 盛大に肌をさらしてフトンの上に転がっている状態だ。

 昨晩着せてもらったはずのユカタはただのしわくちゃな布になり下がっていた。

 慌てて寝返りを打ちロキに背を向ける。

 着崩れを正そうとするが、慣れない形状のためうまくいかない。

「誘ってるのかと思ったのに」

「違っ……」

 ユカタに悪戦苦闘していると、ロキに腰を抱かれて引き寄せられた。

 うなじに吸いつかれてクレオの体がぴくりと跳ねる。

「昨日からずっと思ってたんだけど……」

 やっとの思いで着直したユカタの上をロキの手が撫でていく。

「ユカタってすごく着やすいけど、ここからこうやって……」

 布が合わさる部分にロキの手が滑り込む。

「すぐ脱がせられちゃうなって」

 折角着たユカタは彼の手によってあっけなくはだけさせられた。

 ふくらみに直に触れられやわく揉まれる。

「触りやすい」

 もう片方の手はふとももを撫で下着の上から恥丘をなぞった。

「首元も見え方がえっちで、すごくいい」

 再びうなじにロキの唇が触れた。

 敏感な部分の近くをゆるやかに刺激されているのになかなか核心には触れてもらえない。

 すでに期待し始めているクレオの体は下腹にもどかしさを募らせた。

「足、もじもじしてる」

 じれったさに耐えかねた腰がくねり、じっとしていることができなかった。

「このまましちゃおうか、ユカタを着たまま」
 
 

 
 
 
 
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