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 パンが焼けるいい香りでクレオの意識は浮上した。

 重たい瞼を上げると、差し込む陽光で目がしぱしぱする。

 ふたりで眠っていたはずのベッドにロキの姿はない。

 ほんのりと気怠い上体を起こすと着た記憶のない夜着を身にまとっていた。

「ロキが着せてくれたのかな」

 昨晩の記憶が蘇る。

「……っ!」

 羞恥で全身が熱くなり一気に目が覚めた。

「ッ、シャワー浴びよう」

 じっとしていられなくなって勢いよくベッドを飛び出した。

「おはよう。ロキ」

 浴室へ行く前にキッチンにいた彼に声を掛けた。

「おはようクレオちゃん。体は大丈夫?」

「うん、平気」

 笑いかけてくるロキを見てなんだか嬉しくなってしまう。

 愛しさが込み上げて彼の背中に抱きついた。

「なあに? まだ寝ぼけてる?」

「そうかも」

「クレオちゃんは寝ぼけててもかわいいね」

 ロキに回していた手を取られ指にキスをされた。

「あと少しでパン焼けるから、シャワー浴びておいで」




「はい、あーん」

 ロキがひと口大にちぎったパンをクレオの口元へ寄せる。

 言われるがまま素直に口を開けて頬張る。

「次はスープ、はい」

 同じようにスプーンが差し出され、それにも素直に口をつける。

 普段から優しくクレオを甘やかしがちなロキだが、食事の介添えまではしていなかった。

 湯浴みを終えてからロキの対応がいつも以上に手厚い。

 濡れた髪を拭き櫛で梳かし、抱き上げテーブルセットの椅子へクレオを運ぶと朝食をひとつひとつ差し出してくる。

 浴室を出てからクレオはなにひとつ自分でやっていない。

「ぁ、ありがとうロキ。もうあとは……」

 甘やかされる嬉しさもあるが、さすがに恥ずかしくなってきた。

「え……」

 ロキがあからさまにしゅんと肩を落とす。

 そんなに落ち込むほど楽しんでいたのか。

 俯く彼の表情が暗くて罪悪感が湧く。

「や、やっぱりお願いしようかな」

 クレオの言葉にロキの顔がぱっと明るくなる。

「もちろん。はい、あーん」

 心底嬉しそうな顔をされてしまうとなにも言い返せない。

 正直恥ずかしいことに変わりはないが、ロキが笑顔になってくれるならいいか、と素直に甘やかされることにした。




「今日は家でゆっくりしようか。はい」

 食後の片付けを終え、ソファーに座ったロキが両手を広げる。

「後ろからだっこさせて?」

 にこにこと嬉しそうに手を広げるロキは微笑ましい。

 素直に彼の足の間に収まる。

「クレオちゃんあったかい。落ち着く。良い匂いするし」

「同じ石鹸だよ?」

「そうなんだけど、僕のより甘い感じがする」

 ロキはクレオの耳の裏に鼻を埋め、すんと鼻を鳴らし香りを楽しんでいる。

「肌も柔らかくて綺麗だし」

 耳朶にキスが降り、ロキの唇はそのまま首筋を辿った。

 くすぐったさとわずかに湧いた愉悦でクレオの体がぴくりと反応する。

「首、弱いのかな」

 ふっと笑ったロキの吐息が肌をくすぐる。

「うなじも綺麗」

「ッん」

 軽く甘噛みをされた。

 直後何度も柔らかく唇を押し当てられ、相反する刺激にくらくらする。

 彼が触れるたびにじれったくなってくる。

「だめ、逃げないで」

 無意識にそらしていた体を両腕で引き戻された。

「ぁっ……」

 抱き締められた拍子に腰へ硬いものが当たる。

 昨夜自身を貫いた熱。

 その時の感覚をみるみる思い出し中がひくつく。

「腰、揺れてる」

 首への口付けを続けながらロキが呟く。

 クレオの意識とは関係なく腰を彼の主張へ押しつけていた。

 体が悦び期待しているのを感じる。

 腹に巻きついていた彼の両手が服越しにふくらみを包む。

「もう硬くなってるね」

 すでに尖っていた先端はすぐに見つかってしまう。

 ロキの指先が添い、円を描くようにじっくりとさすられた。

 直接触れるよりも淡い刺激なのに、布が擦れて気持ちがいい。

 彼の舌が耳の輪郭をなぞりいやらしく水音を立てた。

 二ケ所を同時に愛されて快楽でとろけてしまう。

 体の力が抜け意識がふわふわと心地よくなってくる。

 ロキにもたれかかり与えられるまま愉悦に浸った。

「そのえっちな顔、好き」

 劣情を滲ませた瞳が寄り、唇が重なる。

 舌が押し入ってきてあっという間に絡め取られる。

 閉じられなくなった口元からくぐもった吐息が洩れた。

「どうしよう、最後までしたくなっちゃった」


 
 
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