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しおりを挟むロキの腕にさらに力がこもり腰が押し付けられた。
硬く張り詰めた杭がタオル越しにクレオの肌を突く。
他の肌と触れる感触が違うのでどうしてもそこに意識が向いてしまう。
薄く目を開くと、眉間に皺をよせ扇情的に表情を歪めるロキが視界に広がる。
いつも穏やかで優しい表情の彼が自身とのキスで昂っている。
そうさせているのは自分だと思うと愛しさと高揚感で胸がきゅんと疼いた。
名残惜しそうに唇が離れていく。
間近で見る彼の青い瞳は雄の劣情を隠しもしない。
「こっち向いて膝立ちになれる?」
言われるがままロキに向き直る。
「タオル、取らせて?」
恥ずかしさでタオルを握る手をなかなかゆるめることができない。
それと同時に彼に肌をさらしたいという真逆な感情も湧き上がってくる。
「お願い」
ロキの手がクレオのそれに重なった。
意を決して頷くと、柔らかく微笑んだ彼がクレオの手ごとタオルを外していく。
「綺麗」
ふくらみを食い入るように見つめながらロキが呟く。
見られている。
そう自覚することでさらに羞恥が増す。
沸騰しそうなほど顔が熱い。
「触ってもいい?」
今触れられたら高鳴る鼓動がばれてしまう。
戸惑って即答できないでいると、ロキが顔を覗き込んできた。
「嫌、かな?」
指先を握られ、わずかに小首を傾げ問われる。
上目遣いで眉を下げる表情は庇護欲をそそり、なんでも願いを叶えてあげたくなる。
「恥ずかしい、だけ。嫌じゃない」
羞恥で声が震える。
「痛くしないから。体の力抜いてて」
ロキの両手がふくらみに添った。
「……柔らかい」
慎重に揉み込まれていく。
自身のものとは違う大きく節張った手にまた胸がときめく。
「ここ、立ってきたね」
まだ触れられていない胸の先端が硬くなっていた。
「美味しそうだな」
言い終わるが早いか、尖りがロキの口内に含まれた。
「んぁっ……まっ、て……」
突然の刺激に背がしなった。
熱く濡れた感触に包まれ、そこは敏感に反応する。
すぐに鼻にかかった甘ったるい吐息が洩れた。
「ほとんど触ってないのに反応が良いね。最初からは気持ちよくなれないって聞いてたけど……どうして?」
ロキの瞳が鋭くなる。
問いただすような視線、演技か不貞を疑われているのだろうか。
クレオはこれまで恋仲になったのはロキだけ。
誰かに体を許したのも今日が初めて、彼だけだ。
くすぶる劣情が抑えきれず、自身の手で触れることが少なからずあった。
愛しい人に触れてもらえない切なさはあれど、身体的な快楽は少なからずクレオの慰めにはなった。
回数を重ねるごとに感度が増し、初めて誰かに触れられた今でさえすぐに官能を見出せる体になっていた。
はしたないと軽蔑されるかもしれないと思うと、クレオは素直に答えることが出来ず沈黙する。
「ここ触られるの、もしかして初めてじゃない?」
「違っ……」
「じゃあなんですぐに答えられないの?」
言いながらロキはふくらみの先端へ指を添わせた。
二本の指でつまんでこりこりと擦られる。
尖りはすぐに快感を生み、くぐもった嬌声が零れ始めた。
「なんでここ、こんなに硬くなってるの? 元々弱いの?」
ここで適当に頷いておけば丸く収まることはわかっている。
だが、些細なことでもロキに嘘をつくことははばかられた。
「ねえ、なんで?」
だんだんロキの声に悲しみが滲んでくる。
彼を傷つけたいわけじゃない。
羞恥を抑えこんで口を開いた。
「自分……で……」
彼の手が止まる。
引かれてしまったかもしれないと思うと怖くて、硬く目を閉じたまま彼を見ることができなかった。
「自分でって?」
「っ……自分で、触ってた」
彼からの反応がない。
いたたまれなくなってまくし立てる。
「どうしても体が疼いて……。でもロキに触れてもらえないから自分でするしかなくて……」
顔が熱い。
まだ彼がなにも言わないことが恐ろしい。
こんな人だと思わなかった、と幻滅されたらどうしよう。
離婚を言い渡されたらどうしよう。
様々な憶測が脳裏を駆け巡る。
「……なにそれ」
やっと返ってきた言葉の意味を理解できずにいると、ロキの腕の中に抱きすくめられた。
「僕に触られたかったの?」
耳元で囁かれる。
「う、ん……」
変に誤魔化して誤解されたくないので素直に頷く。
「なにそれ、かわいい」
背を包む腕に力が込められた。
「気付いてあげられなくてごめんね」
彼の声色はいつもの優しさを帯びていた。
拒絶されていないことがわかり安堵する。
「僕もずっと触れたかった。でも、大事にしたいから我慢しようって思って。それが逆にクレオちゃんを悩ませていたんだね」
ロキの手が髪に触れ、そのまま頬を撫でてクレオの顔を包んだ。
「今までの分も、これからたくさん愛させて」
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