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獣人彼氏とまどろむ朝にらぶえっち
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昇ったばかりの陽光が寝室に差し込む。
ベッドで眠っているセイランの瞼に光が降り、眩しさで目が覚める。
ぼんやりする意識の中、起き上がろうと体に力を入れるが身動きが取れない。
セイランの胴体には、背後から逞しい腕が二本巻き付いていた。
昨夜一緒に眠りについたアンスの腕だ。
背中にぴたりと密着する彼に意識を集中する。
規則正しい寝息から、まだ夢の中だということだけはわかった。
呼吸音の中にごろごろと喉を鳴らす音が混じる。
「……アンス?」
顔だけ振り返り愛しい男の名を呼ぶ。
「……ん…………ぅ、ん………………」
アンスはセイランの首筋に顔を埋め、はっきりしないくぐもった声を上げる。
返事のようにも聞こえるが、おそらく寝言だろう。
起こさないように片腕を上げ、彼の頭へ手を添える。
さらさらの髪はプラチナに輝いていて、とても触り心地がいい。
頭の上にある三角の耳はふわふわの毛皮に包まれ、時折ぴるぴると震えている。
アンスは猫獣人だが、毛皮に覆われた頭上の耳と尻尾以外は人間の容姿と大差ない。
幼い頃、孤児だった彼をセイランの両親が引き取った縁で、本当の家族のようにずっと一緒に育ってきた。
親元を離れてからもずっと寄り添って生きている。
セイランが独り立ちしたのは二十歳になる年、ちょうど二年前のこと。
娘のひとり暮らしを不安がっていた両親を、アンスがとんでもない言葉で説得した。
『セイランと結婚して、俺が一生守ります!』
突然両親にそう告げた時、セイランは驚きを隠せなかった。
婚約どころか、ふたりは交際すらしていなかったからだ。
セイランは密かにアンスに想いを寄せていたので、嬉しさ半分動揺半分といったところだった。
ちぐはぐな順序だったが、両親への結婚宣言の後でアンスからの好意もしっかりと聞くことが出来た。
婚約と巣立ちが許され、今ではふたりで慎ましやかな同棲生活を送っている。
彼の柔らかな毛並みを撫でながら懐かしい思い出に自然と頬が綻んだ。
セイランが過去に思いを馳せていると、急にアンスがもぞりと動いた。
「っ!」
彼の掌がセイランの脇腹を撫でる。
なにかを探るように体の線がなぞられていく。
夜着のワンピース越しの刺激がくすぐったくて、反射的に身をよじった。
声を出して笑ってしまいそうになるのを堪え彼を振り返る。
目は開かれていない。
寝ぼけているのだろう。
睫毛が長いな、と見惚れていると、アンスの鼻と額がうなじにごしごし擦りつけられた。
ぴたりとくっつけられた鼻で、すん、と空気の音がわかるほど匂いを嗅がれている。
「っちょ、っと……」
眠っているとはいえ、熱心に嗅がれるのは気恥ずかしい。
止めようと彼の腕を掴むがびくともしない。
「アンス」
呼びかけにも返事はない。
覚束ない手元はいまだセイランの体をまさぐっている。
それは徐々に位置を変え、ついに両のふくらみへ辿り着いた。
掌でやんわり包み込まれ揉みしだかれていく。
見えているのでは、と疑わしい程しっかりと愛撫している。
「っぁ」
まだ柔らかい胸の先端を、彼の指がかすめる。
体が昨夜の情事を思い出し、セイランの唇から甘い吐息が零れた。
やっぱり起きているのかと顔を見るも、まだ瞳は閉じられたままだ。
本当に眠っているなら起こすのは忍びない。
起こさないように腕から逃れようと試みるも、力では敵わなかった。
抵抗は早々に諦め、しばらくアンスの好きにさせることにした。
多少気にはなるが、彼が目覚めない以上どうすることもできない。
セイランも二度寝を決め込むことにした。
「……ぅ、ん…………」
アンスが小さく呻きながらうなじに吸いついた。
柔らかでわずかに濡れた刺激を肌が快感として拾う。
「っん、……アンス?」
彼の手に触れ声を掛ける。
返ってくるのは規則正しい呼吸の音だけ。
まだ眠っている。
「……はあ」
幸いにも抱き締めるだけで、胸を弄んでいた手の動きは止まっていた。
胸に触れたままなのは気になるが、どうしようもないと今度こそ諦め、セイランは本格的に二度寝の姿勢に入る。
が、油断したのも束の間。
ふくらみに触れていた指が動き、先端の飾りへ伸びた。
先程とは違い的確にそこを捕らえ擦る。
夜着の布がかすめて小さな愉悦が生まれた。
規則的な摩擦に、そこはみるみる硬く敏感になっていく。
「っん、ぅ……起きて、る?」
問いかけに返事はない。
答えの代わりに、胸の頂点を捕らえた指が更なる刺激を続ける。
指の腹で突起の側面や上辺を撫で上げ、くまなく愛撫が施されていく。
セイランの体は確実に快感を拾い昂っていった。
「っぅぁ」
こりこりと硬くなった先端をいじられ、熱を帯びた吐息が洩れる。
「も、う……アンス! 起きてるでしょ」
「あ、ばれた?」
背後から首を伸ばし、アンスが顔を覗き込んだ。
金と青のオッドアイと視線が絡む。
彼の瞳はいたずらっぽく笑い細められていた。
「なんなの……って、もう、んぁ」
止まっていた指が再び尖りを擦り始めた。
人差し指と親指でやわく挟まれこねられる。
布が擦れる感触がもどかしい。
耳に吐息を感じた直後、耳朶を優しく食まれた。
ざり、と少しざらついた舌が耳の輪郭を舐め上げていく。
唇の柔らかさと舌のざらつき。
ふたつの甘い刺激がより情欲を追い立てる。
耳裏を舐め上げられたまらず腰が跳ねた。
「揺れてるよ? ここ」
アンスの腰がセイランの臀部に押し付けられた。
すでに硬い彼の熱が、夜着の上からでもわかるほど雄々しく滾っている。
「きもちい?」
耳と胸の蕾を同時に責められる。
吸いつく水音がいやらしく、聴覚からも官能を刺激されていく。
「ぁ、んっ……きもち、い……」
「どっちが? ……こっち? それとも、これ?」
アンスが耳元で囁く。
交互に耳と胸をいじられ、どちらにも腰が跳ねる。
首筋にかかる吐息にさえも反応して背筋が甘く震えた。
「どっち、も……」
「はは、欲張り。可愛い」
嬉しそうなアンスの声の後、焦らされたそれぞれの敏感な場所両方へ愛撫が再開された。
セイランの体を知り尽くした手と舌は、余すことなく彼女の弱点を愛していく。
「っふ、ぁ……」
夜着の裾から侵入したなにかに内ももを撫でられ、あられもない無防備な嬌声が洩れる。
ふさふさと豊かな毛並みの感触。
アンスの長く艶やかな尻尾だった。
皮膚の薄い部分を毛先でじっくりくすぐられていく。
明確に与えられない刺激がもどかしい。
「俺の尻尾、好きだよね」
喉の奥で小さく笑いながら彼がからかう。
「そ、うだけど……変な意味じゃ、っん」
抗議のため振り返るとそのまま唇を塞がれた。
少しだけ冷えた彼の唇がしっとりと心地いい。
アンスの手がセイランの肩に触れ、そのままベッドへ沈められた。
キスをしたまま、彼の手が体をなぞっていく。
敏感な確信には触れず、脇腹や腕にゆったりと指が添わされる。
「ほら、ばんざい」
夜着の裾が掴まれ促される。
キスと愛撫でとろけた思考では抗うこともできず、素直に従う。
「あれ? 思ったより乗り気だね?」
セイランが体を浮かせた隙に布がめくられ剥ぎ取られる。
身を守るものは下部の下着だけとなった。
陽に照らされ、肌が細部まで露わになる。
「散々触ったのは誰よ」
照れ隠しで拗ねた口調になってしまう。
「俺」
気にするどころか、アンスは嬉しそうに笑った。
彼はシャツを脱ぎ捨て、引き締まった肉体を惜しげもなくさらした。
昨晩の暗闇では見えなかった、きめ細やかな肌の質感まで陽光が照らし出している。
見惚れているうちに彼の顔が胸に寄っていた。
弾力のある唇が先端を挟み、やわく吸う。
直接的なのに穏やかな愛撫。
濡れた舌の感触が艶かしくて、秘処がひくりと反応した。
アンスは口と指で丹念にセイランの体を愛していく。
時折セイランの表情を上目遣いに確認する。
澄ました表情をしているが、瞳に情欲の色が滲んでいる。
そのことにセイランは満たされ嬉しくなる。
自身の快楽よりもセイランの心地よさを優先するアンス。
時々いじわるな顔を見せるが、セイランの嫌がることはしない。
ゆっくり丁寧に愛撫を続ける彼に愛おしさが込み上げてきた。
自分も触れたくて、彼の耳元を指でくすぐり撫でた。
「っぅぁ、そこは」
滑らかな毛並みを揺らし、アンスが耳を震わせる。
こしょこしょと掻いてやると、首をすくめながらも小さく喉を鳴らし始めた。
目を閉じ彼女の手を堪能する表情はうっとりしている。
アンスのこの顔が好きで、セイランはいつもここを撫でたくなってしまう。
「セイ、ラン……っ、はい、耳はもう終わり」
夢中で撫でていると手を掴まれ強制的に中断された。
「もっと触りたい」
「また今度。今は俺が触りたい」
掴まれた手に彼の指が絡められ、そのままベッドに縫い留められた。
再び彼の唇がふくらみの先に吸い付く。
熱く湿った舌が、立ち上がった尖りの側面を丁寧に舐め上げていく。
繋いでいない手が蠢き、腰のラインをなぞって下肢へ向かう。
肌を撫でる指がくすぐったさと小さな官能を生む。
鼠径部に辿り着いた彼の手によって下着もあっという間に剥ぎ取られた。
胸への愛撫を続けながら、すでに潤んだ蜜口を節張ったアンスの指が探る。
愛液が掬い取られ、ゆっくりと花弁へ塗り広げられた。
指が滑るたびにくちゅりと水音が聞こえる。
いやらしいその音で聴覚からも羞恥が煽られていく。
充分にとろみをまとった指が割れ目を遡り、すでに充血した秘核を見付ける。
「っ……」
鋭い快感が走り、一際大きく腰が跳ねた。
「痛かった?」
見上げてくるオッドアイと視線が絡む。
首を振り笑って見せると、アンスも嬉しそうに目を細めた。
ゆっくりと指が動きを再開する。
円を描くように蕾の表皮が撫でられていく。
敏感なそこは穏やかな刺激すら鋭い愉悦へと変え、セイランの体を火照らせた。
感じるたびに蜜壺の奥がぎゅっと締まり潤いが溢れる。
それをもう一度指先が掬い取り、興奮で充血した蕾に塗りつけていく。
ぷっくりしたそこに指の腹が添わされ、くりくりと左右に揺すられた。
「ん、ぁ、ぁあッ」
突き抜けるような快感に、堪らず甘い声がせり上がってくる。
打ち寄せる悦に生理的な涙が零れた。
絶え間なくもたらされる気持ち良さに足が震え始める。
「このまま、イく?」
溢れる嬌声に阻まれ言葉が出てこない。
何度も頷き、繋いだ手に力を込めるだけで精一杯だった。
「ん、了解」
セイランの弱いところを丹念に指が刺激し続ける。
絶妙な加減で煽られた粒は、快感を全身にまき散らしていく。
溢れる。
そう感じた直後、溜め込んだ熱が弾け絶頂を迎えた。
秘園はひくつき中がどくどく脈打って熱い。
彼の指はすでに蕾を開放しているのに、気持ちいい波が収まらない。
「いい顔」
唇が重ねられた。
濡れた表面が合わさって心地がいい。
愉悦の波が引くのと同じ頃、アンスの唇も離れていった。
脱力し、快感の余韻でとろんと閉じかけた瞳でアンスを見る。
「ん、眠い?」
彼はセイランの髪をひと房持ち上げ口付けた。
優しい手付きとは裏腹に、視界の端に映った彼の中心は昂ぶりを失っていない。
昨晩も散々愛し合ったばかりだからか、セイランの体を気遣ってこのまま事を終えるつもりなのだろう。
アンスの心も体も満たしてあげたい。
衝動のまま、それ以上触れようとしない彼の手を引き寄せ掌へキスをし吸い付く。
舌を這わせ見せつけるように指を舐め上げる。
ぴくりと彼の手が震えた。
アンスの表情が扇情的に歪む。
「っ、煽り上手」
にっと片側の口端を上げた彼の瞳に、情欲が濃く滲む。
「手じゃなくて、こっち」
キスが降る。
差し込まれた舌が口内をねぶっていく。
体をなぞって下がった彼の指が蜜口を撫でた。
入り口の感触を確かめるように優しく触れられる。
「ん、すぐ、平気」
いつもの解す仕草を言葉で制止する。
充分過ぎるほど濡れていることは自分が一番よくわかっていた。
早くアンスが欲しくて先を促す。
「でも解さないと苦しくない?」
「っ……昨日いっぱいしたから、大丈夫。だぶん」
昨夜愛され尽くした光景が脳裏をよぎる。
欲情するアンスの魅惑的な視線が鮮明に蘇る。
彼に乱された自身の姿をも思い出し、羞恥で思わず顔を逸らした。
「……ああもう。これ以上煽ってどうするつもり?」
乱暴な声の後で額に口付けが落とされた。
「待ってて」
下衣の前を寛げ、アンスは手早く避妊具の準備を整えた。
「足、開くよ」
ふとももの間に彼が来る。
はち切れそうな熱杭の先端が秘口に押し当てられた。
「ぅ、んっ」
触れた途端、体はそれが与える快楽を思い出し悦ぶ。
入り口の襞が中へ誘おうと勝手にひくついてしまう。
「……っ」
アンスが息を飲む気配がした。
眉を寄せわずかに苦しそうに見える。
「痛い?」
「まさか」
張り出した先端がほんの少し押し込まれる。
「セイラン、平気?」
痛みはない。
むしろ早く奥に欲しくて腰が揺れそうになる。
「うん」
セイランが頷くと、性急な動きで硬く滾る彼自身が割り入ってきた。
「ん、ぁあっ」
待ち望んだ熱が粘膜を抉じ開けていく。
圧迫感すらも気持ち良く、セイランの唇から甘い嬌声が零れた。
「っ……」
アンスの吐息も熱い。
充分に潤い柔らかいままだった中はすぐに彼の形に添った。
隙間なく密着し、熱杭が震えるわずかな振動さえ愉悦に変わる。
奥までみっちりと埋め尽くされ、最奥が圧迫されてお腹の中心がむずむずと疼く。
動こうとしないアンスに、セイランの体が先に根を上げた。
疼く蜜壺が無意識に彼を締め付ける。
中で彼のものを抱き締め、もっともっとと物欲しげに襞がひくりと痙攣してしまう。
自身の意志に関係なく反応を始めた恥ずかしさで頬が熱くなる。
「中、熱……」
アンスがゆるく腰を揺らす。
奥は触れ合ったまま、腰を擦りつけるように刺激される。
それはセイランの弱点を的確に捕らえていた。
たまらず締め付けてしまう。
ますます狭くなった中を、昂る杭がくまなく擦り上げていく。
押し寄せる気持ち良さでさらに締まり蜜が零れた。
「すごく濡れてるのに、締め付け、たまんない」
アンスの上擦る声に吐息が混ざる。
律動が早まり、肌のぶつかる乾いた音の間隔が狭まる。
「も、う……イく……っ、セイラン」
切羽詰まった言葉の直後、容赦なく腰が打ち付けられた。
穿たれるがまま彼に翻弄され、内側を蹂躙されていく。
激しい動きに反して狙いはぶれない。
滾る熱は何度もセイランの最奥を突き上げた。
「っん、ぁあ……ッ!」
嬌声と共にセイランが二度目の果てを迎える。
アンスの杭をぎゅうぎゅうと締め付け痙攣が続く。
さらに狭まった蜜壺をもろともせず、彼は腰を止めることなく激しく抽挿を繰り返した。
「っ……!」
息を詰め、抉るように熱杭を押し込まれる。
背を震わせ彼も精を吐き出した。
乱れた息を整え、彼自身がゆっくりと中から引き抜かれる。
「っん」
抜き去る感触でさえ、果てたばかりの体は快感として拾ってしまう。
「……っはあ」
後始末を終えたアンスが隣へ倒れ込んだ。
逞しい腕が伸び、セイランの体を抱き締める。
少し高くなった彼の体温が気持ちいい。
ゆったりと振られている尻尾が時々足に当たってくすぐったい。
「セイラン、今日も可愛かった」
軽い音を立てて額にキスが落とされた。
「……恥ずかしいこと言わないでよ」
彼の柔らかく笑った顔や視線がくすぐったくて思わず強がる。
素直になれない自身に少し自己嫌悪しながら、仕返しとばかりに彼の尻尾を軽く掴んで誤魔化す。
「事実だし」
振り払うどころか手首に尻尾の先が巻き付いてくる。
艶やかな毛並みが心地よくて、指先で撫で感触を楽しんだ。
「好き、セイラン」
オッドアイにまっすぐ見つめられる。
透き通った瞳の美しさに見惚れてすぐに言葉が出てこない。
自分ばかり魅了されているようで悔しくなって、強引に彼の唇を奪った。
アンスは驚いた様子で目を見開き硬直している。
意趣返しに成功し、セイランは小さくほくそ笑んだ。
「私の方がアンスのこと好きだし」
みるみる彼の頬が染まる。
アンスは、甘い言葉を自分で言うのはなんてことないのに言われるのには弱い。
「今日も可愛かったよ、アンス」
ここぞとばかりにお返しをする。
セイランも甘い言葉を囁かれる側だと弱いのだが、自分から発するのには抵抗がない。
むしろ照れたアンスの顔が好きで隙あらば言ってやりたいと思っている。
にっといたずらっぽく笑って見せたら、頭を抱き寄せられ彼の胸に押し付けられた。
頭上から深いため息が聞こえる。
「敵わないなあ」
どこか嬉しそうに笑う声が弾んでいる。
「嫌?」
「逆」
頬が大きな両手で包まれた。
掌の熱と頬の温度が混ざり合っていく。
「大好き」
穏やかに笑うアンスの顔に陽光が差す。
光を反射したオッドアイがきらきらと輝いた。
敵わないのはお互い様か、とセイランは心の中で呟く。
愛おしくなって彼の喉を撫でれば、困惑しながらもすぐにごろごろと鳴らし始めた。
だんだんと瞼が閉じ、心地よさと眠気の間のような表情になっていく。
「アンス、もうちょっと寝ようか」
彼の体へすり寄りぴたりとくっつく。
耳を胸板へ押し付ければ、喉の音が心地よく鼓膜を揺らす。
「ん、そうだね」
アンスの腕がセイランを包む。
彼の体温と匂いに包まれたら一気に睡魔が襲ってきた。
「私も、大好き」
半分まどろんだ意識の中で発した言葉は伝わったかわからない。
きゅっと彼の腕に力が込められ髪にキスをされた気配がした。
ベッドで眠っているセイランの瞼に光が降り、眩しさで目が覚める。
ぼんやりする意識の中、起き上がろうと体に力を入れるが身動きが取れない。
セイランの胴体には、背後から逞しい腕が二本巻き付いていた。
昨夜一緒に眠りについたアンスの腕だ。
背中にぴたりと密着する彼に意識を集中する。
規則正しい寝息から、まだ夢の中だということだけはわかった。
呼吸音の中にごろごろと喉を鳴らす音が混じる。
「……アンス?」
顔だけ振り返り愛しい男の名を呼ぶ。
「……ん…………ぅ、ん………………」
アンスはセイランの首筋に顔を埋め、はっきりしないくぐもった声を上げる。
返事のようにも聞こえるが、おそらく寝言だろう。
起こさないように片腕を上げ、彼の頭へ手を添える。
さらさらの髪はプラチナに輝いていて、とても触り心地がいい。
頭の上にある三角の耳はふわふわの毛皮に包まれ、時折ぴるぴると震えている。
アンスは猫獣人だが、毛皮に覆われた頭上の耳と尻尾以外は人間の容姿と大差ない。
幼い頃、孤児だった彼をセイランの両親が引き取った縁で、本当の家族のようにずっと一緒に育ってきた。
親元を離れてからもずっと寄り添って生きている。
セイランが独り立ちしたのは二十歳になる年、ちょうど二年前のこと。
娘のひとり暮らしを不安がっていた両親を、アンスがとんでもない言葉で説得した。
『セイランと結婚して、俺が一生守ります!』
突然両親にそう告げた時、セイランは驚きを隠せなかった。
婚約どころか、ふたりは交際すらしていなかったからだ。
セイランは密かにアンスに想いを寄せていたので、嬉しさ半分動揺半分といったところだった。
ちぐはぐな順序だったが、両親への結婚宣言の後でアンスからの好意もしっかりと聞くことが出来た。
婚約と巣立ちが許され、今ではふたりで慎ましやかな同棲生活を送っている。
彼の柔らかな毛並みを撫でながら懐かしい思い出に自然と頬が綻んだ。
セイランが過去に思いを馳せていると、急にアンスがもぞりと動いた。
「っ!」
彼の掌がセイランの脇腹を撫でる。
なにかを探るように体の線がなぞられていく。
夜着のワンピース越しの刺激がくすぐったくて、反射的に身をよじった。
声を出して笑ってしまいそうになるのを堪え彼を振り返る。
目は開かれていない。
寝ぼけているのだろう。
睫毛が長いな、と見惚れていると、アンスの鼻と額がうなじにごしごし擦りつけられた。
ぴたりとくっつけられた鼻で、すん、と空気の音がわかるほど匂いを嗅がれている。
「っちょ、っと……」
眠っているとはいえ、熱心に嗅がれるのは気恥ずかしい。
止めようと彼の腕を掴むがびくともしない。
「アンス」
呼びかけにも返事はない。
覚束ない手元はいまだセイランの体をまさぐっている。
それは徐々に位置を変え、ついに両のふくらみへ辿り着いた。
掌でやんわり包み込まれ揉みしだかれていく。
見えているのでは、と疑わしい程しっかりと愛撫している。
「っぁ」
まだ柔らかい胸の先端を、彼の指がかすめる。
体が昨夜の情事を思い出し、セイランの唇から甘い吐息が零れた。
やっぱり起きているのかと顔を見るも、まだ瞳は閉じられたままだ。
本当に眠っているなら起こすのは忍びない。
起こさないように腕から逃れようと試みるも、力では敵わなかった。
抵抗は早々に諦め、しばらくアンスの好きにさせることにした。
多少気にはなるが、彼が目覚めない以上どうすることもできない。
セイランも二度寝を決め込むことにした。
「……ぅ、ん…………」
アンスが小さく呻きながらうなじに吸いついた。
柔らかでわずかに濡れた刺激を肌が快感として拾う。
「っん、……アンス?」
彼の手に触れ声を掛ける。
返ってくるのは規則正しい呼吸の音だけ。
まだ眠っている。
「……はあ」
幸いにも抱き締めるだけで、胸を弄んでいた手の動きは止まっていた。
胸に触れたままなのは気になるが、どうしようもないと今度こそ諦め、セイランは本格的に二度寝の姿勢に入る。
が、油断したのも束の間。
ふくらみに触れていた指が動き、先端の飾りへ伸びた。
先程とは違い的確にそこを捕らえ擦る。
夜着の布がかすめて小さな愉悦が生まれた。
規則的な摩擦に、そこはみるみる硬く敏感になっていく。
「っん、ぅ……起きて、る?」
問いかけに返事はない。
答えの代わりに、胸の頂点を捕らえた指が更なる刺激を続ける。
指の腹で突起の側面や上辺を撫で上げ、くまなく愛撫が施されていく。
セイランの体は確実に快感を拾い昂っていった。
「っぅぁ」
こりこりと硬くなった先端をいじられ、熱を帯びた吐息が洩れる。
「も、う……アンス! 起きてるでしょ」
「あ、ばれた?」
背後から首を伸ばし、アンスが顔を覗き込んだ。
金と青のオッドアイと視線が絡む。
彼の瞳はいたずらっぽく笑い細められていた。
「なんなの……って、もう、んぁ」
止まっていた指が再び尖りを擦り始めた。
人差し指と親指でやわく挟まれこねられる。
布が擦れる感触がもどかしい。
耳に吐息を感じた直後、耳朶を優しく食まれた。
ざり、と少しざらついた舌が耳の輪郭を舐め上げていく。
唇の柔らかさと舌のざらつき。
ふたつの甘い刺激がより情欲を追い立てる。
耳裏を舐め上げられたまらず腰が跳ねた。
「揺れてるよ? ここ」
アンスの腰がセイランの臀部に押し付けられた。
すでに硬い彼の熱が、夜着の上からでもわかるほど雄々しく滾っている。
「きもちい?」
耳と胸の蕾を同時に責められる。
吸いつく水音がいやらしく、聴覚からも官能を刺激されていく。
「ぁ、んっ……きもち、い……」
「どっちが? ……こっち? それとも、これ?」
アンスが耳元で囁く。
交互に耳と胸をいじられ、どちらにも腰が跳ねる。
首筋にかかる吐息にさえも反応して背筋が甘く震えた。
「どっち、も……」
「はは、欲張り。可愛い」
嬉しそうなアンスの声の後、焦らされたそれぞれの敏感な場所両方へ愛撫が再開された。
セイランの体を知り尽くした手と舌は、余すことなく彼女の弱点を愛していく。
「っふ、ぁ……」
夜着の裾から侵入したなにかに内ももを撫でられ、あられもない無防備な嬌声が洩れる。
ふさふさと豊かな毛並みの感触。
アンスの長く艶やかな尻尾だった。
皮膚の薄い部分を毛先でじっくりくすぐられていく。
明確に与えられない刺激がもどかしい。
「俺の尻尾、好きだよね」
喉の奥で小さく笑いながら彼がからかう。
「そ、うだけど……変な意味じゃ、っん」
抗議のため振り返るとそのまま唇を塞がれた。
少しだけ冷えた彼の唇がしっとりと心地いい。
アンスの手がセイランの肩に触れ、そのままベッドへ沈められた。
キスをしたまま、彼の手が体をなぞっていく。
敏感な確信には触れず、脇腹や腕にゆったりと指が添わされる。
「ほら、ばんざい」
夜着の裾が掴まれ促される。
キスと愛撫でとろけた思考では抗うこともできず、素直に従う。
「あれ? 思ったより乗り気だね?」
セイランが体を浮かせた隙に布がめくられ剥ぎ取られる。
身を守るものは下部の下着だけとなった。
陽に照らされ、肌が細部まで露わになる。
「散々触ったのは誰よ」
照れ隠しで拗ねた口調になってしまう。
「俺」
気にするどころか、アンスは嬉しそうに笑った。
彼はシャツを脱ぎ捨て、引き締まった肉体を惜しげもなくさらした。
昨晩の暗闇では見えなかった、きめ細やかな肌の質感まで陽光が照らし出している。
見惚れているうちに彼の顔が胸に寄っていた。
弾力のある唇が先端を挟み、やわく吸う。
直接的なのに穏やかな愛撫。
濡れた舌の感触が艶かしくて、秘処がひくりと反応した。
アンスは口と指で丹念にセイランの体を愛していく。
時折セイランの表情を上目遣いに確認する。
澄ました表情をしているが、瞳に情欲の色が滲んでいる。
そのことにセイランは満たされ嬉しくなる。
自身の快楽よりもセイランの心地よさを優先するアンス。
時々いじわるな顔を見せるが、セイランの嫌がることはしない。
ゆっくり丁寧に愛撫を続ける彼に愛おしさが込み上げてきた。
自分も触れたくて、彼の耳元を指でくすぐり撫でた。
「っぅぁ、そこは」
滑らかな毛並みを揺らし、アンスが耳を震わせる。
こしょこしょと掻いてやると、首をすくめながらも小さく喉を鳴らし始めた。
目を閉じ彼女の手を堪能する表情はうっとりしている。
アンスのこの顔が好きで、セイランはいつもここを撫でたくなってしまう。
「セイ、ラン……っ、はい、耳はもう終わり」
夢中で撫でていると手を掴まれ強制的に中断された。
「もっと触りたい」
「また今度。今は俺が触りたい」
掴まれた手に彼の指が絡められ、そのままベッドに縫い留められた。
再び彼の唇がふくらみの先に吸い付く。
熱く湿った舌が、立ち上がった尖りの側面を丁寧に舐め上げていく。
繋いでいない手が蠢き、腰のラインをなぞって下肢へ向かう。
肌を撫でる指がくすぐったさと小さな官能を生む。
鼠径部に辿り着いた彼の手によって下着もあっという間に剥ぎ取られた。
胸への愛撫を続けながら、すでに潤んだ蜜口を節張ったアンスの指が探る。
愛液が掬い取られ、ゆっくりと花弁へ塗り広げられた。
指が滑るたびにくちゅりと水音が聞こえる。
いやらしいその音で聴覚からも羞恥が煽られていく。
充分にとろみをまとった指が割れ目を遡り、すでに充血した秘核を見付ける。
「っ……」
鋭い快感が走り、一際大きく腰が跳ねた。
「痛かった?」
見上げてくるオッドアイと視線が絡む。
首を振り笑って見せると、アンスも嬉しそうに目を細めた。
ゆっくりと指が動きを再開する。
円を描くように蕾の表皮が撫でられていく。
敏感なそこは穏やかな刺激すら鋭い愉悦へと変え、セイランの体を火照らせた。
感じるたびに蜜壺の奥がぎゅっと締まり潤いが溢れる。
それをもう一度指先が掬い取り、興奮で充血した蕾に塗りつけていく。
ぷっくりしたそこに指の腹が添わされ、くりくりと左右に揺すられた。
「ん、ぁ、ぁあッ」
突き抜けるような快感に、堪らず甘い声がせり上がってくる。
打ち寄せる悦に生理的な涙が零れた。
絶え間なくもたらされる気持ち良さに足が震え始める。
「このまま、イく?」
溢れる嬌声に阻まれ言葉が出てこない。
何度も頷き、繋いだ手に力を込めるだけで精一杯だった。
「ん、了解」
セイランの弱いところを丹念に指が刺激し続ける。
絶妙な加減で煽られた粒は、快感を全身にまき散らしていく。
溢れる。
そう感じた直後、溜め込んだ熱が弾け絶頂を迎えた。
秘園はひくつき中がどくどく脈打って熱い。
彼の指はすでに蕾を開放しているのに、気持ちいい波が収まらない。
「いい顔」
唇が重ねられた。
濡れた表面が合わさって心地がいい。
愉悦の波が引くのと同じ頃、アンスの唇も離れていった。
脱力し、快感の余韻でとろんと閉じかけた瞳でアンスを見る。
「ん、眠い?」
彼はセイランの髪をひと房持ち上げ口付けた。
優しい手付きとは裏腹に、視界の端に映った彼の中心は昂ぶりを失っていない。
昨晩も散々愛し合ったばかりだからか、セイランの体を気遣ってこのまま事を終えるつもりなのだろう。
アンスの心も体も満たしてあげたい。
衝動のまま、それ以上触れようとしない彼の手を引き寄せ掌へキスをし吸い付く。
舌を這わせ見せつけるように指を舐め上げる。
ぴくりと彼の手が震えた。
アンスの表情が扇情的に歪む。
「っ、煽り上手」
にっと片側の口端を上げた彼の瞳に、情欲が濃く滲む。
「手じゃなくて、こっち」
キスが降る。
差し込まれた舌が口内をねぶっていく。
体をなぞって下がった彼の指が蜜口を撫でた。
入り口の感触を確かめるように優しく触れられる。
「ん、すぐ、平気」
いつもの解す仕草を言葉で制止する。
充分過ぎるほど濡れていることは自分が一番よくわかっていた。
早くアンスが欲しくて先を促す。
「でも解さないと苦しくない?」
「っ……昨日いっぱいしたから、大丈夫。だぶん」
昨夜愛され尽くした光景が脳裏をよぎる。
欲情するアンスの魅惑的な視線が鮮明に蘇る。
彼に乱された自身の姿をも思い出し、羞恥で思わず顔を逸らした。
「……ああもう。これ以上煽ってどうするつもり?」
乱暴な声の後で額に口付けが落とされた。
「待ってて」
下衣の前を寛げ、アンスは手早く避妊具の準備を整えた。
「足、開くよ」
ふとももの間に彼が来る。
はち切れそうな熱杭の先端が秘口に押し当てられた。
「ぅ、んっ」
触れた途端、体はそれが与える快楽を思い出し悦ぶ。
入り口の襞が中へ誘おうと勝手にひくついてしまう。
「……っ」
アンスが息を飲む気配がした。
眉を寄せわずかに苦しそうに見える。
「痛い?」
「まさか」
張り出した先端がほんの少し押し込まれる。
「セイラン、平気?」
痛みはない。
むしろ早く奥に欲しくて腰が揺れそうになる。
「うん」
セイランが頷くと、性急な動きで硬く滾る彼自身が割り入ってきた。
「ん、ぁあっ」
待ち望んだ熱が粘膜を抉じ開けていく。
圧迫感すらも気持ち良く、セイランの唇から甘い嬌声が零れた。
「っ……」
アンスの吐息も熱い。
充分に潤い柔らかいままだった中はすぐに彼の形に添った。
隙間なく密着し、熱杭が震えるわずかな振動さえ愉悦に変わる。
奥までみっちりと埋め尽くされ、最奥が圧迫されてお腹の中心がむずむずと疼く。
動こうとしないアンスに、セイランの体が先に根を上げた。
疼く蜜壺が無意識に彼を締め付ける。
中で彼のものを抱き締め、もっともっとと物欲しげに襞がひくりと痙攣してしまう。
自身の意志に関係なく反応を始めた恥ずかしさで頬が熱くなる。
「中、熱……」
アンスがゆるく腰を揺らす。
奥は触れ合ったまま、腰を擦りつけるように刺激される。
それはセイランの弱点を的確に捕らえていた。
たまらず締め付けてしまう。
ますます狭くなった中を、昂る杭がくまなく擦り上げていく。
押し寄せる気持ち良さでさらに締まり蜜が零れた。
「すごく濡れてるのに、締め付け、たまんない」
アンスの上擦る声に吐息が混ざる。
律動が早まり、肌のぶつかる乾いた音の間隔が狭まる。
「も、う……イく……っ、セイラン」
切羽詰まった言葉の直後、容赦なく腰が打ち付けられた。
穿たれるがまま彼に翻弄され、内側を蹂躙されていく。
激しい動きに反して狙いはぶれない。
滾る熱は何度もセイランの最奥を突き上げた。
「っん、ぁあ……ッ!」
嬌声と共にセイランが二度目の果てを迎える。
アンスの杭をぎゅうぎゅうと締め付け痙攣が続く。
さらに狭まった蜜壺をもろともせず、彼は腰を止めることなく激しく抽挿を繰り返した。
「っ……!」
息を詰め、抉るように熱杭を押し込まれる。
背を震わせ彼も精を吐き出した。
乱れた息を整え、彼自身がゆっくりと中から引き抜かれる。
「っん」
抜き去る感触でさえ、果てたばかりの体は快感として拾ってしまう。
「……っはあ」
後始末を終えたアンスが隣へ倒れ込んだ。
逞しい腕が伸び、セイランの体を抱き締める。
少し高くなった彼の体温が気持ちいい。
ゆったりと振られている尻尾が時々足に当たってくすぐったい。
「セイラン、今日も可愛かった」
軽い音を立てて額にキスが落とされた。
「……恥ずかしいこと言わないでよ」
彼の柔らかく笑った顔や視線がくすぐったくて思わず強がる。
素直になれない自身に少し自己嫌悪しながら、仕返しとばかりに彼の尻尾を軽く掴んで誤魔化す。
「事実だし」
振り払うどころか手首に尻尾の先が巻き付いてくる。
艶やかな毛並みが心地よくて、指先で撫で感触を楽しんだ。
「好き、セイラン」
オッドアイにまっすぐ見つめられる。
透き通った瞳の美しさに見惚れてすぐに言葉が出てこない。
自分ばかり魅了されているようで悔しくなって、強引に彼の唇を奪った。
アンスは驚いた様子で目を見開き硬直している。
意趣返しに成功し、セイランは小さくほくそ笑んだ。
「私の方がアンスのこと好きだし」
みるみる彼の頬が染まる。
アンスは、甘い言葉を自分で言うのはなんてことないのに言われるのには弱い。
「今日も可愛かったよ、アンス」
ここぞとばかりにお返しをする。
セイランも甘い言葉を囁かれる側だと弱いのだが、自分から発するのには抵抗がない。
むしろ照れたアンスの顔が好きで隙あらば言ってやりたいと思っている。
にっといたずらっぽく笑って見せたら、頭を抱き寄せられ彼の胸に押し付けられた。
頭上から深いため息が聞こえる。
「敵わないなあ」
どこか嬉しそうに笑う声が弾んでいる。
「嫌?」
「逆」
頬が大きな両手で包まれた。
掌の熱と頬の温度が混ざり合っていく。
「大好き」
穏やかに笑うアンスの顔に陽光が差す。
光を反射したオッドアイがきらきらと輝いた。
敵わないのはお互い様か、とセイランは心の中で呟く。
愛おしくなって彼の喉を撫でれば、困惑しながらもすぐにごろごろと鳴らし始めた。
だんだんと瞼が閉じ、心地よさと眠気の間のような表情になっていく。
「アンス、もうちょっと寝ようか」
彼の体へすり寄りぴたりとくっつく。
耳を胸板へ押し付ければ、喉の音が心地よく鼓膜を揺らす。
「ん、そうだね」
アンスの腕がセイランを包む。
彼の体温と匂いに包まれたら一気に睡魔が襲ってきた。
「私も、大好き」
半分まどろんだ意識の中で発した言葉は伝わったかわからない。
きゅっと彼の腕に力が込められ髪にキスをされた気配がした。
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