上 下
16 / 19

16

しおりを挟む
「エラさん……」

 鼻先が触れ合いそうな距離で名を呼ばれる。

 上擦って少し掠れた声が色っぽい。

 声は出さずに、イリオの頬を包み引き寄せる。

 じっくりと唇を重ね、味わう。

 柔らかくて心地いい。

「っ……」

 彼が息を詰める気配がする。

 薄く目を開けると、劣情に満ちた雄々しい瞳と視線がぶつかる。

 イリオは目の前に居る自分に欲情しているんだ。

 そう考えると心臓がどくんと強く打った。

 愛しく思う人が自身に心揺り動かされている姿は、見ていて悪い気はしない。

 堪らなくなって彼の首に腕を回す。

 そのままイリオがのし掛かってきた。

 荒々しく唇を貪られる。

 激しく求められている感じがして嬉しい。

 唇を割り舌が侵入してくる。

 熱い濡れたざらつきが口内をねぶっていく。

「っふ、ぁ……」

 彼を直接感じたのは久々かもしれない。

 キスはしていたとはいえ、触れるだけの軽やかなものだった。

 久し振りに生々しく感じる彼の熱。

 擦られていくのが心地よくて、吐息と声が洩れてしまう。

 口内への愛撫はそのままに、彼の手がエラの体を撫でていく。

 夜着越しに触れられていく感覚。

 じれったい摩擦がみるみる期待を高めていく。

「エラさん、我慢できないって顔してる」

 撫でる手を止めないままイリオが呟く。

 片側の口角を上げ意地悪く笑っている。

 事実、その通りだった。

 でもそれを素直に認めるのはやはり恥ずかしい。

 咄嗟に言葉が出てこなくて顔を背ける。

「なんで答えてくれないの?」

 イリオの唇が耳朶に触れた。

 甘く噛み、吸い付くように耳の輪郭をなぞっていく。

「さっきは誘惑してくれたのに」

 熱く濡れた感触。

 舌で丹念に耳殻をなぞられている。

「ねえ、エラさん」

 吐息と舌が肌をくすぐり官能を高めていく。

 甘く震え、小刻みに跳ねる体を抑えられない。

「言って? 僕にどうされたかったのか」

 耳の裏から首筋へ、唇と舌が這わされていく。

 求めてくれるのは嬉しいが、具体的に言い表すには随分と勇気が必要だ。

 どう返したものかと考えあぐねていると、腕を引かれて体が起こされた。

 イリオと向かい合って座る体勢になる。

 起こされた反動でふらつき、咄嗟に彼の首にすがった。

「なんで言ってくれないんです?」

 耳元でイリオが囁く。

 背に彼の手が触れじれったい手付きで背骨をなぞられた。

 エラがすぐに答えられないでいると、耳から首筋へ順にキスが降っていく。

「僕、嫌われてます?」

 わざとらしく上目遣いで彼に問われる。

「違……」

「じゃあ、言ってください」

「っわ……!」

 抱き寄せられそのまま持ち上げられた。

 イリオのふとももに跨る姿勢になり、腰が抱き寄せられ体が密着する。

「僕のこと、好き?」

 下腹部に当たる彼の熱。

 くっと押し付けられ、昂る質量を見せつけられる。

「っん、すき……」

「僕と、したかった?」

 さらに擦りつけられ、彼の熱を思い出した内側がきゅんと疼く。

 恥じらいが勝り言葉を紡げないでいると、彼が体を離した。

 急に寂しさが募ってイリオを見る。

「ねえ、言って? 僕としたかったの?」

 髪ごと首筋を撫でられ、ぞくりと甘く震える。

 もっと触れてほしい。

「……ぅん」

「なあに、聞こえませんよ」

 声色からして絶対に聞こえている。

 わざと聞き返されているのは明白だった。

 少し悔しくなる。

 彼の手を強引に握り、胸へと宛がう。

「いっぱい、触って」

 イリオが一瞬驚いた表情になる。

 自分で煽ったくせに。

「もっと、気持ち良くして?」

 羞恥を押し殺して、精一杯意地悪く笑って見せる。

 仕返しだ。

「ッ……もう、そういうところだって言ってるじゃないですか」

 後頭部を引き寄せられ、喰らうように唇が重ねられた。

 容赦なく中を暴いてくる彼の舌。

 激しさに咄嗟に顔を引こうとするが、後頭部が彼の手で押さえられていて逃れられない。

 驚きで縮こまっていたエラの舌はいとも簡単に絡め取られていった。

 根元から丹念に舐め上げられ、吸われ、甘噛みをされる。

 一気に様々な快楽を与えられてくらくらしてしまう。

 力が抜けてしまって彼の胸にすがるようにもたれかかった。

「まだですよ」

 背から腰、臀部をなぞったイリオの指がエラの秘処に触れる。

「もっともっと愛させてください」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

Snow blossom

もちっぱち
恋愛
名前が雪で女の子みたいだと コンプレックスを抱く男子高校生と 双子姉妹で同じ人を好きになるという 悩みを払拭したい桜との恋愛小説です。 春に咲く桜と季節外れの雪が 登場人物とリンクするそんな物語です。

妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 双子として生まれたエレナとエレン。 かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。 だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。 エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。 両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。 そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。 療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。 エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。 だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。 自分がニセモノだと知っている。 だから、この1年限りの恋をしよう。 そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。 ※※※※※※※※※※※※※ 異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。 現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦) ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

【完結】最愛の王子様。未来が予知できたので、今日、公爵令嬢の私はあなたにフラれに行きます。理由は私に魔力がありすぎまして、あなたは要らない。

西野歌夏
恋愛
 フラれて死んだので、死に戻って運命を変えようとしたが、相手から強烈に愛されてしまい、最終的に愛のモンスター化された相手に追われる。結果的に魔力の才能がさらに開花する。  ディアーナ・ブランドンは19歳の公爵令嬢である。アルベルト王太子に求婚される予定だったが、未来を予知してフラれようとするが。  ざまぁといいますか、やってしまったご本人が激しく後悔して追ってきます。周囲もざまぁと思っていますが、長年恋焦がれていた主人公は裏切られていた事に非常に大きなショックを受けてしまい、吹っ切ろうにも心が追いつかず、泣きながら吹っ切ります。  死に戻ったので、幸せを手にいれるために運命を変えようと突き進む。1867年6月20日に死に戻り、1867年7月4日に新たな幸せを掴むという短期間大逆転ストーリー。 ※の付いたタイトルは性的表現を含みます。ご注意いただければと思います。

【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。 そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。 毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。 もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。 気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。 果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは? 意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。 とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。 小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

女性恐怖症な第一王子様、でも私だけは大丈夫らしいです

新野乃花(大舟)
恋愛
ノーレッドはまだ22歳という若さでありながら、第一王子の仕事をしっかりとこなすほどの能力の高さを持っていた。スラッとした美しい体型に端正な顔立ちをしており、そんな彼の事を人々は完璧な人間であると表現し、絶大な人気を博していた。…が、彼には誰にも言えない大きな秘密が一つだけあった。というのも彼は、女性恐怖症と言えるほどに女性が苦手で、時に体に触れるだけで気絶することもあるほどの状態であった…。彼自身もその事に悩んでいたある日の事、彼はひょんなきっかけから一人の女性、アリッサと出会う。どういうわけか、ノーレッドはアリッサに対してだけはまったく平気に接することができ、二人は時間とともにその距離を縮めていく。ノーレッドがアリッサにのみ恐怖感を感じないのは、彼女がこの世界ではない別の世界から転生してきた人間らしいからなのだが…。

処理中です...