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「エラさん……」

 鼻先が触れ合いそうな距離で名を呼ばれる。

 上擦って少し掠れた声が色っぽい。

 声は出さずに、イリオの頬を包み引き寄せる。

 じっくりと唇を重ね、味わう。

 柔らかくて心地いい。

「っ……」

 彼が息を詰める気配がする。

 薄く目を開けると、劣情に満ちた雄々しい瞳と視線がぶつかる。

 イリオは目の前に居る自分に欲情しているんだ。

 そう考えると心臓がどくんと強く打った。

 愛しく思う人が自身に心揺り動かされている姿は、見ていて悪い気はしない。

 堪らなくなって彼の首に腕を回す。

 そのままイリオがのし掛かってきた。

 荒々しく唇を貪られる。

 激しく求められている感じがして嬉しい。

 唇を割り舌が侵入してくる。

 熱い濡れたざらつきが口内をねぶっていく。

「っふ、ぁ……」

 彼を直接感じたのは久々かもしれない。

 キスはしていたとはいえ、触れるだけの軽やかなものだった。

 久し振りに生々しく感じる彼の熱。

 擦られていくのが心地よくて、吐息と声が洩れてしまう。

 口内への愛撫はそのままに、彼の手がエラの体を撫でていく。

 夜着越しに触れられていく感覚。

 じれったい摩擦がみるみる期待を高めていく。

「エラさん、我慢できないって顔してる」

 撫でる手を止めないままイリオが呟く。

 片側の口角を上げ意地悪く笑っている。

 事実、その通りだった。

 でもそれを素直に認めるのはやはり恥ずかしい。

 咄嗟に言葉が出てこなくて顔を背ける。

「なんで答えてくれないの?」

 イリオの唇が耳朶に触れた。

 甘く噛み、吸い付くように耳の輪郭をなぞっていく。

「さっきは誘惑してくれたのに」

 熱く濡れた感触。

 舌で丹念に耳殻をなぞられている。

「ねえ、エラさん」

 吐息と舌が肌をくすぐり官能を高めていく。

 甘く震え、小刻みに跳ねる体を抑えられない。

「言って? 僕にどうされたかったのか」

 耳の裏から首筋へ、唇と舌が這わされていく。

 求めてくれるのは嬉しいが、具体的に言い表すには随分と勇気が必要だ。

 どう返したものかと考えあぐねていると、腕を引かれて体が起こされた。

 イリオと向かい合って座る体勢になる。

 起こされた反動でふらつき、咄嗟に彼の首にすがった。

「なんで言ってくれないんです?」

 耳元でイリオが囁く。

 背に彼の手が触れじれったい手付きで背骨をなぞられた。

 エラがすぐに答えられないでいると、耳から首筋へ順にキスが降っていく。

「僕、嫌われてます?」

 わざとらしく上目遣いで彼に問われる。

「違……」

「じゃあ、言ってください」

「っわ……!」

 抱き寄せられそのまま持ち上げられた。

 イリオのふとももに跨る姿勢になり、腰が抱き寄せられ体が密着する。

「僕のこと、好き?」

 下腹部に当たる彼の熱。

 くっと押し付けられ、昂る質量を見せつけられる。

「っん、すき……」

「僕と、したかった?」

 さらに擦りつけられ、彼の熱を思い出した内側がきゅんと疼く。

 恥じらいが勝り言葉を紡げないでいると、彼が体を離した。

 急に寂しさが募ってイリオを見る。

「ねえ、言って? 僕としたかったの?」

 髪ごと首筋を撫でられ、ぞくりと甘く震える。

 もっと触れてほしい。

「……ぅん」

「なあに、聞こえませんよ」

 声色からして絶対に聞こえている。

 わざと聞き返されているのは明白だった。

 少し悔しくなる。

 彼の手を強引に握り、胸へと宛がう。

「いっぱい、触って」

 イリオが一瞬驚いた表情になる。

 自分で煽ったくせに。

「もっと、気持ち良くして?」

 羞恥を押し殺して、精一杯意地悪く笑って見せる。

 仕返しだ。

「ッ……もう、そういうところだって言ってるじゃないですか」

 後頭部を引き寄せられ、喰らうように唇が重ねられた。

 容赦なく中を暴いてくる彼の舌。

 激しさに咄嗟に顔を引こうとするが、後頭部が彼の手で押さえられていて逃れられない。

 驚きで縮こまっていたエラの舌はいとも簡単に絡め取られていった。

 根元から丹念に舐め上げられ、吸われ、甘噛みをされる。

 一気に様々な快楽を与えられてくらくらしてしまう。

 力が抜けてしまって彼の胸にすがるようにもたれかかった。

「まだですよ」

 背から腰、臀部をなぞったイリオの指がエラの秘処に触れる。

「もっともっと愛させてください」

 
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